異形の鬼が嗤う〜『Curse Nightmare Party』〜 作:高梁
「これは...!」
VRMMOのネットショッピングを冷やかしていると、とあるゲームに惹かれた。
ダークファンタジー系のポストアポカリプス。人によって好みが分かれるが、自分は大好き側だ。名前は『Curse Nightmare Party』。なんとプレイヤーも異形になれるらしい。
「買います!」
異形アバターを操作することは自分の夢の一つ。躊躇う理由なんてない。思わず叫びながら決定ボタンを押したが後悔はしていない。プレイできる時が待ち遠しい。年甲斐もなくワクワクしながら現実へ戻った。
なお、微妙に予算オーバーしたので1週間ぐらいカップ麺生活でした。大学生は貧乏だぜ。
ーーーーー
「ログイン!」
フルダイヴ式のVRでは本人確認に本名入力、脳波測定、パスワードが求められる。いつものことなのでササッと終わらせよう。
「印南 覚(インナミ サトル)」
よし、ログイン完了と。
「ようこそ、印南様」
?気づいたら執事服の男が立っていた。
「私、印南様のアバター作成をサポートさせていただくAI、C7-096と申します。この場のみでの付き合いとなるでしょうが、どうぞよろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
相手がAIとは言え丁寧な対応をする。これは自分のポリシーだ。
「丁寧な対応ありがとうございます。では、まずは印南様がアチラで名乗られる名をお示し下さいませ」
「分かりました。『イナミ』でお願いします。」
他のVRMMOでも使っているプレイヤーネームだ。適当に決めたものだが結構愛着がある。
「『イナミ』でございますね。間違いはありませんか?」
「はい、間違いありません」
「禁止事項にも抵触していません。無事に了承されました。では、今後はイナミ様とお呼びさせていただいてもよろしいでしょうか?」
「大丈夫ですよ」
それにしてもやけに丁寧な言動をするAIである。胡散臭いと思う人もいるかもしれないが、個人的には好感が持てる。
「ありがとうございます。では続けて、イナミ様のアバター作成に移りたいと思います。本ゲームではシステムの仕様上、基礎の体は出来るだけ現実に近づける事をオススメします」
「適当で構いませんよ。アバターの操作には自信がありますので」
「なるほど。ではこちらでいかがでしょうか?」
どこからか現れた姿見にリアルの体をベースに少しだけいじられたアバターが映る。こだわりがあるわけでもないので先に進める。
「では、イナミ様に呪いをかけていきましょう」
「お願いします」
ここからが『CNP』のアバター作成の本番である。
「呪いのかけ方にはオート、セミオート、マニュアルの三種類があります」
「それぞれの違いはなんですか?」
「オートは完全ランダムです。セミオートは私から幾つかの質問をし、その答えに合わせてこちらでアバターを作成します。マニュアルはイナミ様の自由に出来ます。なお、複数の手法を組み合わせることも可能です。それと、手法によって使える呪いに差があると言う事もありません」
「オートで作成後にマニュアルで調整をします」
「よろしいのですか?完全ランダムになりますが」
人間は愚かなものです。博打と分かっていながらガチャを回すのですから。
アバターにかけられる呪いは100種類超え。組み合わせまで考えるならば何万あるいは何億通りにもなる。
…どうしよう。行ったそばから後悔の念が...。
「ごめんなさい、やはりセミオートでお願いします」
愚かなのは私でした。
「かしこまりました。ではイナミ様。正直にお答えください」
「性癖までなら答えられますよ?」
多分、これも質問だよな?
「お好きな物をお答えください」
「動物全般ですね。進化や体の作りに興味があります」
「好きな食べ物は?」
「オオスズメバチですね。生きたままトースターで焼くと火の玉になるのも面白いです」
「好きな動物は?」
「タコとかカマキリですかね。進化の果てに到達したみたいな形態が好きです」
「魔法はあると思いますか?」
「あって欲しいです」
「武器を振るえますか?」
「使えなくはないですけどステゴロのほうが好みですね」
「私をどう思いますか?」
「いい人だとは思います。趣味は合わなさそうですけど」
「おやおや、意外と好感触ですね」
「胡散臭いっていう人もいるでしょうけど自分は結構気に入ってますよ。飲みに行きたいと思うぐらいには」
「命を懸けて何かを為そうとする方をどう思いますか?」
「素晴らしいことです。巻き込まれないように遠い場所から観させてもらいます」
「この世界は楽しめると思いますか?」
「楽しいに決まっています。勝手に楽しむので」
「動物がお好きとのことで、飼育経験はございますか?」
「一般的な生物は一通り。マニアックなものも手を出したことがあります」
「ちなみに性癖は?」
「胸のでかいもんむすですね。古の名作が私の全てを捻じ曲げました」
「なるほど……以上で質問を終わりにさせていただきます」
「ありがとうございました」
姿見の中のアバターが歪む。
肩から腕が一対生え、腹に巨大な口、太くしなやかな尻尾が生える。
オー、と目を輝かせながら変化を見守るがこれ以上変化しない。
「えーと、これで終わりですか?」
予想よりもしょぼい。もっと人外味が欲しいのにこれでは中途半端だ。
「お気に召しませんか?」
「全然足りませんね。もっと追加できませんか?できないなら帰って返金手続き始めます」
「しばしお待ちを。こちらをご覧ください」
「?契約書ですか?」
「実を申し上げますと、ゲームシステムと難易度調整の都合で、アバター作成時にかけられる呪いの数には制限がかかっているのです」
「なーるほど。これはその制限を解除してくれるということですか?」
「無制限とまではいきませんが、イナミ様の満足するアバターにはなります」
「ふーむ、特にデメリットもなさそうなので契約しちゃいますね」
『ゲーム進行が著しく困難になる、あるいは進行不能になる可能性が高い』と書いてある。正直に言えば「ゲームは勝手に楽しめ、楽しくなくても楽しむんだよ」が信条の自分にとってはこの程度デメリットでもなんでもない。
「素晴らしい心意気です。イナミ様」
姿見の中のアバターが変化していく。
2対4本の腕は3対6本に。
6本のうち2本の手のひらに口が一個ずつできる。
頭には短くて小さいが鬼の様な角が2つ生える。
下半身や尻尾を覆う様に鱗、いや外骨格か?が作られ。
心臓を挟む様な位置に胸と背それぞれに瞳が一つ増える。
背が伸びて高身長イケメンに見えるが中身が自分なので少し残念感が出るかもしれないな。いやそれはともかく、全体的に黒や紫を基調としたデザインだ。黒のブーツとベルト、裸の上半身。ぱっと見で思うことは...
「魔王にしか見えない」
魔王云々は後にするとして、これぞ人型の異形という様な体である。この自分の夢が詰まったアバターを操作できる。最高である。
「パーフェクトだ。C7-096」
「感謝の極み」
フハハハハハと魔王っぽく笑ってみせるがC7-096は何も言わない。
「魔王ロールはダメそうだな」
「ご満足いただけましたか?」
お世辞でもいいから何か言って欲しいです。C7-096さん。
「では完了ボタン押しますね。(ポチー)」
「ではイナミ様。これより貴方の呪われた生が始まります。どうか心行くまで楽しむと共に……」
C7-096が自分に向けて一礼する。
「悍ましき世界にお怯え下さいませ」
目の数が数倍に増えたC7-096の顔が自分を見すえ、『CNP』の世界に生まれ落ちた。
≪称号『呪限無の落とし児』を獲得しました≫
「やっぱあいつ、いい性格してたな」
※オオスズメバチ(成虫)
高温になると毒は無毒化し針もパリパリになります。味の感想としては薄味なので調味料ないときついかもです。味付け次第では美味しいですよ。
締めてから焼きたかったんですけど反撃が怖かったので生きたまま焼くしかなかったんです。好きでやったわけじゃありません。本当です。
※性癖を捻じ曲げたゲーム
実話です。もん◯す・くえすとで出てきます。