ブルーアーカイブ 透き通る青春よ永遠なれ   作:Jon.Do

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お祭り騒ぎなので初投稿です


第二十八話 背中で語れ

「……! 敵発見! 攻撃を受けています!」

 

 カイザーPMC基地の広大なオペレートルームに、通信員の緊迫した叫びが響き渡った。

 メインモニターに映し出されたのは、基地の防衛ラインが次々と赤く染まっていく壊滅の光景。それにカイザー理事はカメラアイを瞬かせ、デスクを激しく叩きながら直ちに号令を発した。

 

「慌てるな! 戦力を集結させろ! 東と西、それに北の対デカグラマトン部隊もすべて呼び戻せ! 相手はたかが数人の子供とあの男だけだ、数で踏み潰してやれ!!」

 

 しかし、理事が勝利を確信して傲慢に笑ったその直後、北方部隊からの緊急連絡を受けた通信員がモニターを確認し、その顔を恐怖に引き攣らせて声を震わせた。

 

「ほ、北方部隊から連絡! 迎撃に向かった部隊が、わずか3名の生徒と接触! 映像を送ります、相手は────!」

 

 モニターに映し出されたのは、カイザーの誇る近代兵器が文字通り一瞬で鉄屑へと変わっていく、圧倒的な「暴力」の嵐だった。

 

 ──────────

 

『……敵、一個大隊規模と確認しました。じきに射程範囲内に入ります』

 

 通信機の向こうから、風紀委員会行政官の天雨アコの、いつになく冷静なオペレーションの声が響く。

 

「……はあ」

 

 その声を聞きながら、風紀委員長の空崎ヒナは深くため息をついた。その手には、彼女の代名詞とも言える巨大な機関銃が、既に冷徹な殺意を孕んで握られている。

 

「……なんで私までアビドスの、しかもあの無礼な男のためにこんな砂漠で戦わなきゃいけないわけ?」

 

 不満を隠そうともせず、スナイパーライフルを肩に担ぎ直したのは銀髪の少女、銀鏡イオリだ。ゲヘナの門前で銀時に文字通り押し除けられ、銃口を掴まれた時の恐怖と屈辱が、まだ彼女のプライドをチクチクと刺激しているようだった。

 

「それを言ったら私もです……。医療活動のボランティアならまだしも、他校の自治区で一個大隊を相手に実戦だなんて」

 

 救護担当の火宮チナツが、救護装備を抱え直し、困ったように眉を下げて息を吐く。

 

『まあまあ、みなさん。この一件を完璧に処理したら、たまっている反省文のノルマを数何十枚かチャラにしてくれると、先ほど委員長から直々に言質をいただきました。頑張りましょう?』

 

 通信機からアコの楽しげな声が聞こえると、イオリとチナツは顔を見合わせ、それなら仕方ない、とばかりに小さく息を吐いて武器を構え直した。

 ヒナは白砂の舞う荒野の先、砂煙を上げて迫り来るカイザーPMCの黒い軍勢を見据え、その紫色の瞳を酷く鋭く、冷酷に細めた。

 

「……文句は後で。みんな、行くよ」

 

 小柄な身体から、ゲヘナ最強の「怪物」としての圧倒的な覇気が膨れ上がる。

 

「先生には……誰一人、近づかせない」

 

 ヒナが命じた刹那、彼女の持つ機関銃が火を噴いた。

 

 ズガガガガガガガガガガガガッ!!!! 

 

 遮るもののない広大なアビドス砂漠に、敵の装甲を一瞬で肉片ごとハチの巣に変える、あまりにも恐ろしいキツツキのような猛烈な銃声が轟き渡った。

 

 ──────────

 

『……! 敵、確認しました! 距離2キロ、まもなく接敵します!』

 

 通信機からアヤネの緊迫した声が響く。それと同時に、前方から複数のカイザーPMC兵の装甲車両が砂煙を上げて迫り来るのが見えた。

 

「おいおい、もう敵さんのお出ましかよ。おちおちしてられね……」

 

 銀時がそうボヤき、腰の木刀へと手をかけた、その刹那。

 

 ドゥウゥゥゥン……ッ!!! 

 

 遥か後方の空を震わせるような重低音とともに、強烈な砲撃の音が砂漠の静寂を切り裂いた。

 直後、銀時たちの目の前に迫っていたカイザーの装甲車両のド真ん中に、巨大な光柱と爆煙が立ち上る。正確無比な面制圧砲撃が、敵がいると思われるエリアを文字通り一瞬で薙ぎ払った。

 

「これは……トリニティのL115榴弾砲……!?」

 

 シロコが弾着の硝煙を見つめ、驚きに目を見開く。

 突然の圧倒的な支援射撃に困惑するアビドス一同の前に、アヤネが転送した通信ホログラムがパッと展開された。そこに映し出されたのは、不気味な紙袋をすっぽりと頭から被った一人の少女の姿だった。

 

『あ、あう……どうも……。お怪我は、ありませんか……?』

 

『ヒフミさん!? 一体どうしてトリニティの榴弾砲を……!』

 

 アヤネが通信画面の向こうの少女に声を荒らげるが、紙袋の少女はあからさまに動揺して左右に激しく首を振った。

 

『い、いいいいいえ! 私は阿慈谷ヒフミなどではなく、あの、えっと、いえ、鬼兵隊の若頭ファウストや! 断じてヒフミじゃないやで、だ、断じて! ゲヘナやトリニティとは一切関係のない、砂漠の無法者ですからね!?』

 

 紙袋の隙間から覗く目が激しく泳いでいる。明らかに無理のあるエセ関西弁と設定にノノミたちは苦笑いを浮かべたが、銀時はその様子にニヤリと笑い、着流しの懐に手を突っ込んで片手を上げた。

 

「……若頭、すまんのう。こんな派手な露払いしてもらっちまって。親分涙で前が見えねーや」

 

『い、いえ、むしろこんなことしかできず……というか、これは我が鬼兵隊による理不尽な暴力的砲撃であって、トリニティ総合学園は一切関与しておらんからな! か、勘違いは無しやで! そこんとこ書類に書かれたらナギサ様からのお説教が大変なことになるんやから……あ、あうっ!』

 

 完全にボロを出している紙袋の少女に、ノノミはいつも通りの優しい笑みを向け、ホログラムに向かって手を振った。

 

「ありがとうございます、ファウストさん!」

 

『……皆さんも、頑張ってください。大切な人を取り戻すために……! 陰ながら、応援しています!』

 

 最後はいつもの優しく、芯のある少女の声に戻り、ファウストからの通信がぷつりと切れた。

 砂漠の真ん中、榴弾砲の嵐によって完全に沈黙した敵陣の残骸を見つめながら、銀時は首の骨を鳴らし、包帯の巻かれた手をゆっくりと下ろした。その瞳には、すでに戦う大人の色がある。

 

「……さあて、ここで戦術授業だ。これだけ盛大な火力支援を浴びせたあとは、なーんだ?」

 

「無論、間髪を入れない突撃」

 

 シロコが即座に答え、アサルトライフルの銃口をまっすぐ正面の敵基地へと向けた。

 

「せーかい。……行くぜ、お前ら」

 

「よーし、突撃ぃぃぃ!!」

 

 セリカの叫び声を合図に、アビドス対策委員会と一人の「先生」は、榴弾砲の爆炎が未だ燻るカイザーPMCの防衛線へと一斉に飛び込んだ。

 

 前面の瓦礫の向こうから、生き残った膨大な数のオートマタ兵が、一糸乱れぬ機械的な動きで銃口を並べてくる。赤く光るカメラアイが迎撃の照準を合わせた瞬間、その視界を遮るように白い着流しが猛烈な速度で躍り出た。

 

「ガタガタうるせえんだよ、ポンコツどもがァァ!!」

 

 銀時は満身創痍の身体を爆発的な踏み込みで加速させ、最前列のオートマタ兵の懐へと滑り込んだ。

 引き抜かれた木刀が、斜め下方から顎をカチ上げる軌道で一閃される。

 

 バキィィィンッ!! 

 

 火花を散らしながら、強固な合金製の頭部が首ごと天高く吹き飛んだ。オイルを噴き上げて倒れ込むスクラップを盾にするように引き寄せると、銀時はそのまま後続の群れへと力任せに投げつける。

 質量兵器と化したオートマタが仲間の列をなぎ倒す隙を見逃さず、銀時は泥臭く洗練された戦塵の歩法で次々と間合いを詰めていった。

 

『右、2、上空からドローン接近中!』

 

 背後からアヤネの緊迫したオペレーションが届くと同時に、上空から不気味なプロペラ音を響かせて十数機の攻撃型ドローンが襲来した。ホバリングしながら、一斉に下方の銀時へとガトリングの照準を合わせる。

 

「先生、そのまま進んで! 上は私たちが落とす!」

 

 シロコが砂を蹴り、走りながらアサルトライフルを構えた。鋭い視線がドローンの不規則な軌道を完全に捉える。

 タン、タン、タン、と無駄のない正確無比な精密射撃。放たれた弾丸は的確にドローンのローターや電子頭脳を撃ち抜き、次々と空中分解させていく。

 

「こっちも負けてらんないのよ! 邪魔なハエども、一匹残らず叩き落とす!!」

 

 セリカが並走しながら、タクティカルリロードを鮮やかに決めて弾幕を張った。シロコが撃ち漏らした個体や、側面から回り込もうとするドローンの隙を突き、容赦のない速射で迎撃していく。

 

「みんな格好いいですね☆じゃあ、私はあっちの大物を引き受けますよ〜!」

 

 ノノミがいつもと変わらないおっとりとした笑みを浮かべ、その視線をさらに上空、砂漠の陽炎の向こうからローター音を轟かせて急接近する巨大な影へと向けた。それは、重装甲を施されたカイザーPMCの戦闘ヘリだった。

 

「ミニガンさん、今日も火を噴いちゃってください!」

 

 ノノミは華奢な身体で、人間が到底一人で扱えるはずのない巨大なガトリングガンを構え、その重厚な銃口を天空へと突き上げた。

 直後、銃身が猛烈な速度で回転を始め、砂漠の音すべてをかき消すほどの破壊的な駆動音が炸裂する。

 

 ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥンッッ!!!! 

 

 毎分千発を超える圧倒的な弾幕が、逆光の空をオレンジ色の光の帯で染め上げる。迫り来る戦闘ヘリのミサイルは着弾する前に空中ですべて撃ち落とされ、大口径弾がヘリの防弾ガラスを一瞬で粉砕、ローターの基部を容赦なく抉っていく。

 黒煙を吹き上げながら、戦闘ヘリは荒野へと斜めに墜落し、派手な大爆発を起こして沈黙した。

 上空が炎と硝煙で埋め尽くされる中、地上の銀時の猛攻はさらに加速していた。

 

「おいおい、お嬢ちゃんたち。そんな派手にやられたら、大人の面目が丸潰れだろーがよォ!!」

 

 包帯の隙間からじわりと血を滲ませながらも、銀時は吠えた。

 迫り来るオートマタ兵の腕を掴んで強引に引きちぎり、その腕を棍棒代わりに別の個体のカメラアイへと突き刺す。返り血ならぬ黒いオイルを浴びて着流しを染めながら、木刀を大上段から叩きつけた。

 

 ドガァァァンッ!! 

 

 残存する数体のオートマタの頭部を、一振りの強烈な横薙ぎでまとめて消し飛ばす。ガシャガシャと金属の残骸が砂の上に崩れ落ち、周囲にいた敵の防衛第一波は、地上も上空も完全に全滅していた。

 

「ふぅ……。ったく、ポンコツの分際で手間取らせやがって。……おいお前ら、ケガはねーか?」

 

 振り返れば、シロコ、ノノミ、セリカの三人が、多少の砂埃に塗れながらも、一切の動揺を見せずに銃口の煙をフッと吹き消していた。

 

「ん、問題ない。先生の方こそ、傷口は?」

 

 シロコが心配そうに銀時の包帯を見つめる。

 

「ヘーキヘーキ、これくらいアドレナリンで全部チャラよ。……つつ、痛たたたっ……! クソ、やっぱアドレナリン先輩でも限界あんなコレ! 治癒能力サボってんじゃねーよ俺の細胞!」

 

 銀時は強がった直後、脇腹を押さえて顔を歪め、その場に激しく膝をついた。無理な大振りを繰り返したせいで、巻かれていた包帯のあちこちから、再びじわりと赤い血が滲み出してきている。

 

「あーもう! 言わんこっちゃない! だからまだ寝てろって言ったのよこのバカ先生! ……って、ちょっと待って。この音、まさか……!」

 

 セリカが慌ててリュックから救急キットを取り出そうとしたその瞬間、彼女の耳がピクリと跳ね上がった。

 地響きを伴う、重厚な金属の駆動音。ズズズ……と砂を噛みながら、確実にこちらへ近づいてくる不穏な履帯の音が、荒野の空気を震わせる。

 砂煙の向こうから姿を現したのは、カイザーPMCの誇る重装甲の主要戦車だった。その巨大な主砲が、容赦なく銀時たちへと照準を合わせ始める。

 

「くそ、ここで戦車かよ……。より取り見取りにも程があんだろ、バカイザーの野郎……」

 

 銀時が木刀を杖代わりに無理やり立ち上がろうとするが、その前にシロコがすっと立ちはだかった。その瞳には、一切の臆病さもない、冷静な決意が宿っている。

 

「……先生はここで休んでて。今度は私たちが、戦車をぶっ壊すとこ、見せてあげる」

 

 シロコはアサルトライフルを構え直し、小さく息を吐いた。

 

「……へいへい。じゃあお言葉に甘えて、銀さんは少しだけここで隠居してますよ。トシには勝てねーわ、トシには」

 

 銀時はそうぼやきながらも、少女たちの邪魔にならないよう、近くの崩れた防壁の影へと泥臭く身を隠した。

 ズズズ、と砂を噛むキャタピラの音が鼓膜を震わせ、戦車の巨大な主砲が少女たちを睨みつける。だが彼女たちの背中に、怯えや迷いは微塵もなかった。

 防壁の影に背中を預け、冷たいコンクリートの感触を味わいながら、銀時は小さく息を吐き出す。包帯の隙間から流れる血がじわりと熱い。だが、その痛みさえ、どこか遠いことのように思えた。

 

(……あんな小娘だった奴らが、こんなにも頼もしく思えるなんてな)

 

 目を閉じれば、アビドス高校の部室で出会ったあの頼りない少女たちの姿が鮮明に思い出される。

 借金の額に頭を抱え、大人に怯え、世界の不条理にただ押し潰されそうになっていた、あの小さな背中。

 それがどうだ。今や、牙を剥く鋼鉄の怪物を前にして、一歩も引かずに武器を構えている。

 

(大人が誰も背負わねえなら俺が背負うって……格好つけて言ってみたはいいがよ。とっくに前を走ってやがんだ、アイツらは。誰に教わったわけでもねえのに、自分の足で、自分の意志で、守りたいもののために泥をすする覚悟を決めちまってる)

 

 銀時は自嘲気味に、けれど酷く楽しそうに口元を緩めた。

 

(寂しいねぇ。俺がもう守ってやる必要もねーくらい、立派な女になっちまって……)

 

 銀時がそう心の中で呟いた瞬間、少女たちの反撃が始まった。

 

「アヤネ、敵戦車の駆動系と装甲の薄い部分のデータをちょうだい」

 

 シロコが砂を蹴って走り出す。

 

『了解しました! すでにスキャンは完了しています。戦車の後部排気口、および砲塔のターレットリングが最も装甲が薄いです! 今、サポートドローンを向かわせます!』

 

 アヤネの迅速なオペレーションとともに、上空からアビドス仕様のサポートドローンが数機、凄まじい速度で戦車に向かって急降下していった。ジャミング電波とスモークが周囲に散布され、戦車の光学センサーを完全に狂わせる。

 視界を奪われ、狂ったように主砲を乱射する敵戦車。その激しい砲撃の合間を縫うように、セリカが砂塵を蹴って側面へと回り込んだ。

 

「目眩ましに引っかかってるんじゃないわよ! こっちを見なさい!!」

 

 セリカが戦車の無限軌道の隙間を狙い、正確に手榴弾を投げ込む。凄まじい爆発音が響き、履帯が派手に吹き飛んで、戦車の巨体がガガガッと激しい音を立ててその場に停止した。

 

「ん、ナイスセリカ。……ノノミ、合わせて!」

 

「はーい、任せてください〜!」

 

 シロコの合図とともに、ノノミがガトリングガンの銃口を戦車の後部へと向けた。

 再び砂漠に轟く、圧倒的なキツツキ音。ノノミの放つ容赦のない弾幕が、弱点である後部排気口へと正確に集中する。何百発もの大口径弾が装甲を削り取り、エンジンブロックをハチの巣に変えた。内部で引火し、戦車の後部から激しい黒煙と炎が噴き出す。

 

「これで、終わり……!」

 

 トドメを刺すべく、シロコが空中へ跳躍した。

 上空から無人支援機によるミサイルを要請。ターゲットは、完全に動きを止めた戦車の砲塔の継ぎ目、ターレットリングの一点。

 シロコが着地すると同時に、上空から降り注いだミサイルが戦車の砲塔へと直撃した。

 

 ドォォォォォォンッッ!!!! 

 

 大爆発とともに戦車の砲塔がひしゃげ、炎を上げながら荒野へと崩れ落ちる。カイザーPMCが誇る鋼鉄の盾は、アビドス対策委員会の見事な連携の前に、文字通り完膚なきまでに叩き壊された。

 静まり返る砂漠に、パチ、パチ、と気の抜けた拍手の音が響く。

 防壁の影から、銀時がよっこらしょと腰を浮かせ、木刀を肩に担ぎながら歩み出てきた。その目はいつもの死んだ魚の目に戻っていたが、口元には隠しきれない誇らしげな笑みが浮かんでいる。

 

「いやー、お見事お見事。バカイザー自慢の鉄クズが、あっという間に燃えないゴミに早変わりだ。……ごくろーさん、お前ら。最高のショーだったぜ」

 

「な、何よ急に格好つけたこと言って……。別に、あんたのためにやったわけじゃないんだからね! 先輩を助けるついでよ、ついで!」

 

 セリカが顔を真っ赤にしてツインテールを振り乱し、ぷいっとそっぽを向いた。

 ノノミは巨大なガトリングガンを抱え直しながら、「ふふ、先生に褒めてもらえると、なんだかいつもよりやる気が出ちゃいますね〜」と、嬉しそうに頬を緩めている。

 

「ん。先生、私たちの戦い、ちゃんと見ててくれた」

 

 シロコは少しだけ耳をパタパタと揺らし、照れ隠しのようにアサルトライフルのボルトを無意味にカチャカチャと動かした。そんな少女たちの初々しい反応に、銀時が

 

「はいはい、ごちそうさまでした」

 

 と耳をほじろうとしたその時、無線機からアヤネの弾んだ声が響き渡った。

 

『熱源スキャンの結果が出ました! この先のエリア、カイザーPMC本部の最深部にある中央実験室まで後もう少しです!!』

 

「ホシノが、すぐそこにいるんだな……」

 

 銀時の目が切り替わる。

 

『はい! 障害となる防衛ラインは今ので全て突破しました。遮るものはもうありません。敷地までは、あと目と鼻の先です!』

 

「よし……! お前ら、俺の足引っ張んじゃねーぞ!」

 

「それはこっちのセリフよ、バカ先生!」

 

 セリカがすかさず言い返し、アビドスの少女たちは一斉に砂を蹴った。

 炎を上げて燃え盛る戦車の残骸や、スクラップと化したオートマタ兵が転がる荒野を、一陣の風のように突き抜けていく五人の影。

 もう迷いも、躊躇いもない。大人の理不尽な契約に縛られた、一人の「家族」を奪還するため、白銀の髪をなびかせる男と少女たちは、陽炎の揺らめくカイザーPMCの牙城へと真っ直ぐに駆け抜けていった。




ここまで読んでくださりありがとうございました。ヒナちゃん可愛いよ、ヒナちゃん。

あともう少しで最終決戦です。もう少しお付き合いくださいませ。
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