ブルーアーカイブ 透き通る青春よ永遠なれ   作:Jon.Do

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アビドス対策委員会篇完結記念のスチルストーリーです。


第三十.伍話 青い、蒼い海

 夜の静寂がいつも以上に重く部屋にのしかかる。

 いつものように、どうしても眠れない夜だった。

 

 こういう夜に無理に目を閉じても、ろくなことにならない。浅い眠りの隙間に、決まって「あの夢」が滑り込んでくるからだ。容赦なく照りつける太陽、乾いた風、生徒会の腕章、そして──砂漠に倒れ伏した、優しかった先輩の姿。

 

 もぞ、もぞ。

 

 布団の中で何度も寝返りを打ってみるけれど、シーツが擦れる音だけが虚しく響く。こういう時に限って、枕元の時計の針はちっとも進んでくれない。

 胸の奥がじわじわと冷たい何かに侵食されていくような感覚の中、ふと、ある人の顔が頭に浮かんだ。

 

「……先生、まだ起きてるかな」

 

 ぽつりと溢れた独り言。

 

 吸い寄せられるように枕元からスマホに手を伸ばし、液晶の明かりで目を細めながら、連絡先をスクロールする。見つけたのは、「坂田先生」というお馴染みの名前。

 

 画面の端に表示された時間は……22時。

 大人が起きているか、あるいはもう寝ているか、なんとも微妙な時間帯だ。もしもう布団に入っていたら、大迷惑だよな。そう思って一度は画面を伏せようとした。けれど──どうしても、あの気怠くて、でも不思議と安心する声が、今この瞬間に聞きたくなってしまって。

 

 気が付けば、躊躇う前にその番号へと指を添えていた。

 ツーツーと、耳元で繰り返される無機質なコール音。

 心臓がいつもより少し早く脈打つのを感じながら待っていると、数回目のコールの後、ぷつ、と音がして、遮断されていた向こう側の空気が繋がった。

 

『はあい、もしもし……』

 

 受話口から聞こえてきたのは、ついこの前までアビドスの対策委員会室で、ソファに寝転がりながら漫画を読んでいたあの男の、いつも通りの低くて気怠げな声。

 その声が耳に届いた瞬間、ホシノの胸が、ぎゅっと切なくなるような、温かいような、不思議な高鳴りをあげた。

 

「……う、うへへ。先生、こんな時間にごめんね? 夜回り中のおじさん、なんだけどさ」

 

『あー……ホシノか。なんだよ、こんな時間に。夜回りって、お前またサボってどっかで寝転がってんじゃねーの? ったく、おじさん名乗るなら夜は早く寝て朝早く起きる健康的な生活を目指しなさいって』

 

 電話の向こうから、寝返りを打つような衣擦れの音と、ボリボリと頭を掻く音が聞こえてくる。その生活感に溢れた音だけで、ホシノの胸を満たしていた冷たい気配が、すうっと霧散していくようだった。

 

「ひどいなあ、おじさんはいつでもアビドスの平和を守るために目を光らせてるんだよ? ……まぁ、今はちょっとベッドの上でゴロゴロしながら、夜のパトロール中なんだけどさ」

 

『それただの寝っ転がってる自宅警備員だろーが。いいから寝ろ寝ろ、明日も学校あんだろ』

 

「うへへ、先生の声聞いたら目が冴えちゃってさ。先生は何してたの? また夜遅くまでイチゴ牛乳飲みながら、週刊誌でも読んでた?」

 

『失礼なこと言うな。俺だってたまには大人の男として、こう……夜の静寂の中で今後の人生設計とか、シャーレの明日の予算案とか考えてたんだよ。まぁ、3分で諦めてさっきまでチョコモナ○ジャンボ食ってたけど』

 

「あはは、やっぱりいつもの先生だ。よかった、変わってなくて」

 

 ホシノはスマホを両手で包むように持ち直し、耳にぴったりと押し当てた。暗い部屋の中、スマホの液晶画面だけが彼女の顔を淡く照らしている。オッドアイが画面の向こうの「先生」の姿を思い描くように、穏やかに細められた。

 

『なんだよ、改まって。アビドスの方でなんかあったか? 砂嵐がひどいとか、バカイザーの連中がまた不穏な動きしてるとか、あるいはシロコがまた銀行の金庫の図面広げてるとか』

 

「ううん、みんなはもうぐっすり寝てるよ。アビドスはいつも通り、静かで、ちょっとだけ砂っぽい、いつもの夜。……ただね、ちょっとだけ、おじさん寂しくなっちゃったのかな」

 

『寂しい? お前が?』

 

「そうそう。昼間はみんなとワイワイやってるから忘れてるんだけどさ、夜になって一人で布団に入ると、この部屋が広すぎるような気がしてね。ほら、おじさんってデリケートだから」

 

『自分でデリケートとか言う奴にデリケートな奴はいねーよ。……まぁ、眠れない夜ってのは誰にでもあるわな。俺だって、たまに「あー、明日起きたら髪の毛全部抜け落ちてたらどうしよう」とか考えて夜通し天井見つめることあるし』

 

「それ、ただのハゲへの恐怖じゃん。私の深刻な悩みと一緒にしないでよ」

 

 クスクスと笑いながら、ホシノはそっと足を伸ばし、布団の温もりを確かめるように身を縮めた。

 電話越しに聞こえる銀時の呼吸は、少し深くて、どこか安心感を誘うリズムを持っていた。彼が隣にいるわけではないのに、その声があるだけで、一人きりの部屋の冷たさが薄れていく。

 

『悩みの深さに貴賤はねーんだよ。髪の毛の一本一本にはな、俺の魂が宿ってんの。それが抜けるってことは魂の切り売りなの。……まぁそれは置いといて、ホシノ。お前、なんか悪い夢でも見たか?』

 

 銀時の声のトーンが、ほんの少しだけ低く、優しくなった。

 冗談の中にそっと混ぜ込まれた、本質を突く問い。ホシノは一瞬だけ息を詰め、それから小さく、シーツに頭を押し付けるようにして頷いた。

 

「……先生には、敵わないなあ。うへへ、見透かされちゃった」

 

『見透かすも何も、お前の声、いつもよりちょっと硬ぇんだよ。無理して「うへへ」とか言ってる時の声は、大体なんか溜め込んでる時だって、俺じゃなくてもわかるっつーの。……で、何があったよ。借金のことでまだ不安か?』

 

 銀時は、アビドスにいまだ残る借金問題によるストレスだと思っているのだろう。ホシノはその勘違いを訂正するつもりはなかった。自分の過去にある、あの先輩のこと、そして自分が背負い続けている傷のことは、まだ誰にも話すつもりはなかったからだ。

 

「……ううん、ちょっとね。色々と考えちゃって。前を向いて歩いてるつもりなんだけど、時々こうやって、夜の暗闇が全部砂漠に見えちゃう時があるんだ。自分が何もできなかったっていう無力感とか、そういうのがブワッと押し寄せてきてさ」

 

 ホシノは胸元をぎゅっと片手で掴んだ。

 

 あの時、自分がもっと強ければ。……あの時に、この先生がいてくれたら。そんな「もしも」の数々が、今でも時折、彼女の心を鋭く抉る。それは銀時にはまだ隠している、彼女だけの秘密の痛みだった。

 

『……まぁ、過去のことやら先の不安やらを考えるなと言っても、そりゃ無理な話だ。人間生きてりゃ、どうしても後ろ髪引かれる思いってのはあるもんだからな。頭じゃわかってても、心が追いつかねーなんてことはザラにある』

 

「先生……」

 

『痛ェことや辛ェことがあったってのは、それだけお前が一生懸命生きてたって証拠だろ。忘れちまうより、よっぽど人間らしくていいじゃねーか。後悔なんてのはな、生きてる奴の特権なんだよ。だから、その痛みを無理に消そうとしなくていーんじゃねーの? 痛いまま、重いまま、抱えて歩きゃいいんだよ。お前にはもう、それを一緒に背負ってくれる頼もしい後輩たちがいるだろ』

 

「シロコちゃんたち、か……。うん、そうだね。あの子たちがいるから、私は今、ここにいられるんだと思う」

 

『だろ? なら、お前が一人で夜中にメソメソしてるの見つかったら、あいつら本気で心配するぞ。特にシロコあたり、次の日にゃお前の睡眠不足を解消するために、どっかの安眠グッズ専門店を襲撃する計画立てかねんぞ』

 

「あはは! ありそう、シロコちゃんなら本当にやりかねないや」

 

 想像してホシノは心から笑った。

 

 目を開けると、いつの間にか部屋の暗闇は恐怖ではなく、ただの慣れ親しんだ自分の部屋に戻っていた。彼の声が、彼女の心を暗い思考の泥沼から、現在のこの温かい場所に引き戻してくれたのだ。

 

『笑えたな。ならよし。……ほら、もうそろそろ眠くなってきたろ?』

 

「……うん。なんだか、先生の声聞いてたら、急に肩の荷が下りたみたい。さっきまであんなに遠かった眠気が、すぐそこまで来てる気がする」

 

『そりゃよかった。大人の包容力ってやつに感謝しな。じゃ、俺はチョ○モナカのゴミ捨てて寝るから──』

 

「あ、待って、先生」

 

 銀時が電話を切ろうとしたその瞬間、ホシノは慌てて引き留めた。

 まだ、切りたくなかった。この心地よい繋がりを、もう少しだけ、自分のわがままで繋ぎ止めておきたかった。

 

『ん? なんだよ、まだなんかあんのか?』

 

「えっと……その、ね」

 

 ホシノは布団の中で、スマホを握る手にぐっと力を込めた。心臓が、先ほど夢の恐怖で跳ね上がっていたのとは全く違う理由で、激しくドキドキと音を立て始める。

 顔が急激に熱くなっていくのが自分でもわかった。暗い部屋で一人、赤面しているなんて、とてもじゃないけれど誰にも見せられない。

 

「その、今度……水族館に行かない?」

 

『水族館? なんだ急に』

 

「う、うへへ……。いやさ、ずっと前に、商店街の福引きか何かで、水族館のペアチケットをもらってたんだけどさ。ほら、期限がもうすぐ切れちゃいそうで。でも、二人分しかなくてさ、対策委員会のみんなで行くには足りないでしょ?」

 

 一気にまくし立てる。言い訳の言葉を頭の中で必死に組み立てながら、ホシノは枕に顔を半分埋めた。

 

「だから……その、もし先生の都合がよければ、私に付き合ってくれないかなって。……先生と、いきたいなあ」

 

 最後の言葉は、自分でも驚くほど小さくて、か細い声になってしまった。

 

 いつもの「おじさん」の仮面が、今この瞬間だけは完全に剥がれ落ちて、ただの一人の女の子としての本音が、受話口を通じて電波に乗っていく。

 

「デート、……な、なんちゃって……! うへへ、おじさんとデートなんて、先生も退屈しちゃうよね?」

 

 沈黙が怖くて、すぐに冗談めかした言葉で上書きしようとする。

 心臓が破裂しそうなほどに脈打つ中、ホシノは息を止めて、画面の向こうの銀時の返答を待った。

 数秒の、ひどく長く感じられる静寂。

 やがて、受話口の向こうから、観念したような、けれどどこか優しい溜め息が聞こえてきた。

 

『……ったく。お前な、そういう可愛いセリフはもっとこう、ちゃんとした男の子に言うもんだろ。俺みたいな枯れたおっさん誘ってどーすんだよ』

 

「……私は、先生とがいいんだよ?」

 

『……しゃあねえな。チケット無駄にするのも勿体ねーし、たまにはイルカショーでも見て癒されるのも悪かねーか。来週の週末、空けといてやるよ』

 

 その言葉を聞いた瞬間、ホシノは布団の中で小さくガッツポーズをした。胸の奥に広がっていた夜の冷たさは完全に消え去り、代わりにトクン、トクンと、甘くて温かい高鳴りだけが、いつまでも彼女の身体を満たしていた。

 

 ──────────

 

 そして当日。キヴォトスの中心街に建てられているアクアリウム……銀時の世代だと水族館、という慣れ親しんだ言葉の方がしっくりくるだろう。

 二人はその入り口の前で、青く巨大に掲げられた鯨のメインビジュアルポスターに圧倒されていた。

 

「……うへー、これがアクアリウムかあ。なんだか入り口からして、おじさんの知ってるアビドスとは大違いの文明の香りがするねえ」

 

「へーえ、最近の水族館ってのはこんなオシャレ空間になってんのか……。俺の知ってる水族館っつったら、もっとこう、全体的に潮臭ぇ場所だったんだけどな」

 

「先生おじさんくさーい……」

 

「普段からおじさん自称してサボり倒してるオメーに言われたくねーよ」

 

 銀時はいつも通り耳を穿りつつ、隣に立つホシノを見下ろした。文句を言いながらも、彼女の手にはすでに案内用のパンフレットがしっかりと握られており、そのオッドアイはページの隅々まで熱心に追っている。あからさまに期待に胸を膨らませているのが、隠しきれていない。

 そんな彼女の様子を見て、銀時は肩をすくめて息を吐き出した。

 

「……なぁホシノ。オメーそのパンフレットの握り締め方からして、全部のコーナーを見て回る気満々じゃねえか。どんだけテンション上がってんだよ」

 

「だって、本物の魚なんてご飯のおかずか、図書館の本か……あとはぬいぐるみでしか見たことなかったんだもの。こんなにたくさんの種類が生きて泳いでるのを見られるなんて、テンション上がるに決まってるよ〜」

 

「あー、そっか。アビドスって砂漠だもんな。……ま、海のねえ山育ちが初めて海を見てテンション上がって服のまま飛び込んじゃうようなもんか」

 

「うへへ、飛び込みはしないけどね? ……でも、先生は楽しみじゃなかったの? おじさんのわがままで、無理やり連れ出しちゃったかなあ、なんて」

 

 ホシノはパンフレットから少しだけ顔を上げ、上目遣いに銀時の顔を覗き込んだ。冗談めかした口調の裏に、ほんの少しだけ相手を気遣うような、繊細なニュアンスが混じる。

 

「……ちげーよ。誰が楽しみじゃねーっつったよ。その、……こーゆー健全でオシャレな外出に慣れてねえし。どーゆーテンションで居ればいいのかわからねーだけだっての」

 

 銀時は少しだけ決まり悪そうに視線を逸らし、頭の後ろをガリガリと掻いた。その少し不器用な態度に、ホシノの胸の奥がぽっと温かくなる。

 

「……ふうん、そっかあ。先生も緊張することあるんだねえ。うへへ、大人の余裕ってやつはどこ行っちゃったのかな? ──じゃあさ、ここ! 『海のトンネル』! ここは絶対に行こうね。ジンベエザメとか大きなクジラとかが頭の上を泳いでいって、まるで本物の海の中で眺めてるみたいに楽しめるらしいし!」

 

「へいへい、元気がいいこって。疲れたっておんぶしてやらねーからな、しっかり付いてきやがれ」

 

 そう言って歩き出す銀時の後に、ホシノは嬉しそうに並んだ。二人は肩を並べ、光と水が織りなすアクアリウムの、少しひんやりとした青い世界の中へと入っていった。

 

 ──────────

 

 色鮮やかな熱帯魚館や、どこか奇妙で神秘的な深海魚館を抜け、二人はお目当ての『海のトンネル』エリアへと足を踏み入れた。

 

 その途端、ホシノのオッドアイは今日一番の輝きを放ち、明らかなほどにテンションを上げていた。

 視界いっぱいに広がるのは、本当に深い海の中に潜ったかのような青一色の景色。最新鋭の設備というだけあって規模は相当に巨大なもので、何千匹もの魚の群れが光のカーテンをくぐり抜け、色とりどりの珊瑚礁が独自の生態系を作っている。見上げれば、頭上のアクリルガラスの向こうを、巨大な鯨の腹部がゆっくりと、優雅に横切っていく姿まで見えるほどだった。

 その言葉を失うほどの壮大さに、普段は冷めている銀時でさえも、思わず「ひゅう」と小さく口笛を吹くほどに圧巻されていた。

 

「─── あれが、本物の鯨!? すごい、すごい大きい! わ、あ……ホント、すごーい……!」

 

「こいつぁ……確かにすげーな。こんなでけえ水槽、俺も人生で初めて見たわ」

 

「あ、あれ見て先生! お魚があんなにたくさん群れて泳いでる! あはは、カワイイ……!」

 

 ホシノは隣に立つ銀時の服の裾をぎゅっと掴みつつ、すっかりその美しい景色に見入っていた。跳ねるように色んな魚を指差していた彼女だったが、少ししてから、ふと動きを止め、小さく俯いた。

 

「……ん? どーした、ホシノ」

 

 銀時が頭の後ろに組んでいた手を下ろし、怪訝そうに覗き込む。

 

「……んーん。何でもない、って言ったら嘘になるかな。私一人、こんなに楽しんでていいのかなって、ちょっとだけ思っちゃって。チケットの枚数的に仕方なかったけど、シロコちゃんやノノミちゃん、みんなも連れて来てあげたかったなあ……って」

 

 ぽつりと溢れた本音。やはり先輩として、後輩たちの顔が頭をよぎってしまうのだろう。

 そんな彼女に、銀時は呆れたような、けれどどこか優しい薄い笑みを溢した。目前のガラスの向こうで、ちょんちょん、とリズムよく浮かんでいる小さな魚を眺めながら、気怠げに口を開く。

 

「……余計な心配だろ、そりゃ」

 

「そう……?」

 

「そーだよ。人間、たまにはこうしていつも一緒にいる奴らとは離れて、全く違う空気吸いたくなる時だってあるからな。お前はいつも対策委員会で『先輩』って役割を一人で背負ってんだ。こーゆー時くらいただの『ホシノ』で居ていーんじゃねーの? 息抜きだよ、息抜き」

 

「……ただの私、かあ」

 

 ホシノはその言葉を噛み締めるように呟き、見上げるほど大きな銀時の横顔をじっと見つめた。

 いつもだらしなくて、頼りなくて、だけど絶対に折れない大きな背中。……一人で何もかも背負い込んで、カイザーに囚われた自分をその体をボロボロにしながらも助けてくれた人。この人が紡ぐ言葉は、どうしていつも、自分の欲しかった場所に綺麗に収まってしまうのだろう。

 

「……ね、先生」

 

「あん?」

 

「前にさ、生徒は先生に甘えるもんだ、って言ったよね?」

 

「あ? あー……そんな高尚なこと俺が言ったっけ? 幻聴じゃねーの?」

 

「うん、間違いなく言ってた。おじさんの記憶力は抜群なんだから。だからー……」

 

 ホシノは一歩、銀時との距離を詰めると、隣に並ぶ彼の太い腕に、そっと両手で抱きつくように寄り添った。衣服越しに伝わる、男の人のしっかりとした体温と硬さ。

 突然のその大胆な行動に、百戦錬磨のはずの銀時も流石にびく、と身体を強張らせ、戸惑った声をあげる。

 

「お、おい……何ですかその急な密着イベントは。俺の心臓跳ね上がってんだけど」

 

「うへへ、自分の発言には責任取らないとだよ、せーんせ」

 

 銀時の腕に顔を埋めるようにして、ホシノは決して顔を見せようとはしなかった。けれど、ふわりと広がるピンク色の髪の隙間から覗く彼女の小さな耳は、まるで熟したリンゴのように、真っ赤に染まっていた。




ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます。

ホシノのアクアリウムスチルのあのテンションの上がり様、すごく可愛いですよね。やっぱり女の子は笑顔が一番です。
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