窓の外からは心地よい日光が差し込み、小鳥の囀りが鼓膜を震わせて、少しずつ意識を覚醒させてゆく。
大きな欠伸を漏らし、バキバキと音を立てる背中を思いきり伸ばしつつ目を開けると、そこにはふんす、と誇らしげに鼻息を漏らして、どこか自慢げな顔をするアリスの顔がすぐ目の前にあった。
「……何してんの」
寝起きの掠れた声で、銀時が顔をしかめる。アリスは身を引くことなく、腕を組んで大物風の笑みを浮かべた。
「ククク……ようやく気がついたか。キミは運がいい。我が目覚めの儀式に立ち会う栄誉を授けよう」
「……えっと、……言葉、大分覚えられたみてえ、だな……?」
重い頭を叩きながら、銀時が引き気味に尋ねる。昨日の今日で、確かに流暢にはなっている。なっているのだが。
「キミの言葉を肯定しよう、哀れな必滅者よ」
「ダメだ。ボキャブラリーのベクトルが偏りすぎて180°転回してるわコイツ。学習能力の伸び代を全部厨二病の肥やしにしやがってる……」
銀時が顔を両手で覆ってため息をつくと、ソファーの毛布からごそごそと緑色の耳が這い出てきた。
「ふわ……おはようございます……ん、……アリスちゃん、どのくらい言葉を覚えたんだろ……」
目をこすりながら起き上がるミドリに続き、スチールロッカーの横で丸まっていた黄色いパーカーのフードが、ゆっくりと持ち上がる。
「ふぁ、あ……みんな、おはよ、う……」
「クハハ! おお、我が同胞たる君達も目覚めたか! 今日は実に運がいい! 世界が我らの進撃を祝福している!」
アリスが腰に手を当て、部室の朝日に向かって高らかに言い放つ。そのあまりに変わり果てた語彙力を前にして、目覚めたばかりの二人の声が見事にハモった。
「「……すっごく偏ってる!?」」
ユズとミドリが完全にフリーズする中、突然、部室の扉ががらりと勢いよく開かれた。
ひと足先に目を覚ましてどこかへ出かけていたモモイが弾むような足取りでアリスへと歩み寄り、
「おっはよーう! アリスちゃん、これ!」
と、満面の笑みで一枚のプラスチックカードを手渡した。それはミレニアムサイエンススクールのロゴが刻まれた、真新しい学生証だった。それを受け取ったアリスは、カードを裏表とひっくり返して一度不思議そうに首を傾げた。
「……? パンパカパーン! アリスは『正体不明の書物』を手に入れました!」
「おっ、また言葉が洗練されてるね! さっすがアリス、飲み込みが早い!」
「洗練っていうか、明らかに昨日のレトロRPGのアイテムテキストに大分引っ張られてると思うんだけど……。何でもかんでもファンタジー風に脳内変換する癖がついちゃってない?」
ミドリが寝癖のついた頭を押さえながら、早くも始まった姉の全肯定スタイルに鋭いツッコミを入れる。アリスは渡された書類の端に書かれている学生証、という単語に首を傾げた。
「学生証……?」
「そう、その学生証はね、ミレニアムの学生であることを証明する、とっても大事なカードだよ! ヴェリタスに頼んで生徒名簿をハッキ……こほん。ちょっとデータベースにアクセスして登録してもらったから、これでアリスも正式なミレニアムの生徒! 私たちの、本当の仲間になれたんだ!」
「おい待て、この前からヴェリタスヴェリタス言うから、どんなお堅い情報処理部かと思ってたら、普通に名簿改ざんしてくるハッキング犯罪集団なの!?」
そんな銀時のモモイへのツッコミを他所に、受け取った学生証をじっと眺めていたアリスはそれを大事そうに自らの首へとかけた。そして、胸元で揺れるカードにそっと手を添える。
「仲間……なるほど、理解しました。──パンパカパーン! アリスが正式な仲間としてパーティーに合流しました!」
モモイはそんなアリスの笑顔に満足そうにうんうん、と頷くと、早速とばかりに彼女の手を握り部室から廊下へと出る扉を指差した。
「よーし、これで服装も学生証も、話し方もどうにかなったし……あとは武器を手に入れないとね! よーし、アリス! ついてきて! 案内してあげる!」
「案内……?」
「私たちの学園、ミレニアムサイエンススクールをだよ!」
──────────
モモイがアリスの手を引っ張るようにして、日差しの差し込む校舎の廊下をタタタッと歩いて行く。その後ろを、銀時とミドリがやれやれといった様子でついていく。ちなみに、極度の対人恐怖症である部長のユズは、部室のロッカーの中でお留守番ということになっていた。
「ミレニアムだけじゃなくて、このキヴォトスの生徒はみんな、自分の命の次に大事な固有の武器を持ってるの。だから、これから一緒に活動するアリスも、自分だけのカッコいい武器を持たないとね!」
「武器……。敵対存在の排除、およびパーティーメンバーを護るための、鉄の牙……。アリス、理解しました」
「調達する方法は色々あるんだけどさー。このミレニアムで一番手っ取り早く武器を手に入れられる場所といえば……ここ!」
モモイが勢いよく足を止めてビシッと人差し指をさしたのは、一般的な部室というよりかは、どこかの町工場か格納庫の入り口のような、重厚で煤汚れた鉄製の扉だった。その上部には、焦げ付いた文字で『エンジニア部』という看板が掲げられている。
「エンジニア部ねぇ……。名前からして、こりゃまた江戸の源外のジジイと気が合いそうな、油臭ぇ奴らがウジャウジャいそうな場所だな」
「ゲンガイ……? 誰ですか、その人」
銀時が懐かしそうに目を細めて呟いた言葉を、隣を歩いていたミドリが聞き咎めて小首を傾げた。
「なに、俺がこのキヴォトスに来る前に住んでた場所で、四六時中油まみれになってた偏屈な発明家ジジイさ。腕は確かだし国宝級のすげーもん作んのはいいんだけど、その度にろくでもねぇ騒動を起こして街をブッ壊すお騒がせクソジジイでね」
「へえ、そちらにもそんな変わった人がいたんですね……。ここにいる人たちも、様々な機械や最先端のテクノロジーを開発したり直したりして、学園から『マイスター』という特別な称号を与えられた凄い生徒達なんですから」
ミドリが誇らしげに胸を張って説明を付け加える。
「そうそう! 機械のジャンクパーツだけじゃなくて武器のカスタマイズや開発も一手に引き受けてるプロ集団だから、部室には使ってない試作型の武器とかも色々置いてあるはずなんだよね! じゃ、早速いってみよー!」
そうしてモモイはノックもそこそこに「おーい、みんな、おっはよー!」と、その分厚い鉄製の扉を全力で横へとガラガラと引き開けた。
──────────
「……なるほど、大体理解できたよ。新しい仲間により良い武器をプレゼントしたい……と」
モモイからの弾丸のような説明を受け、ウタハは指先が油まみれであることなど一切お構いなしに、細い人差し指を自分の顎に添えて深く頷いた。そして、どこか誇らしげにふわりと知性的な笑顔を浮かべる。
「そういうことであれば、エンジニア部に来たのは素晴らしい選択だね。ミレニアムでの勝敗というものは、優れた技術者の腕に左右されるもの。……ほら、あっちの部屋の隅に、これまで私たちが作った数々の試作品がある。そこにあるものなら、好きなものを持って行って構わないよ」
ウタハが作業用ゴーグルを額に上げながら親指で指し示した先には、一見するとガラクタの山にも見えるが、どれも怪しい駆動音を立てている近未来的なメカニックや重火器がゴロゴロと転がっていた。
そんなウタハの太っ腹な言葉に、モモイは両手を天高く上げて大喜びした。
「やったぁ! ありがと、ウタハ先輩! 持つべきものはやっぱり話のわかるマイスターだよね!」
すると、試作品の山の陰から、犬のような黒い垂れ耳を生やした小柄な一年生の少女──ヒビキが、工具箱を抱えたまま静かにアリスの元へと歩み寄った。
「私、一年生のヒビキ。……その子、見たところあんまり重い武器の扱いに慣れてなさそう。よかったら、私が何か扱いやすくていいものを見繕ってあげる……」
「ジャジャーン! アリス、ヒビキから装備の選定をします!」
そうしてモモイやミドリ、アリス、そしてヒビキの四人が「これはどう?」「いや、それは出力が高すぎて自爆する……」などとわいわい楽しげに発明品を選び始める。
そんな少女たちの賑やかな様子を他所に、銀時は作業机のあちこちに乱雑に置かれた、一風変わった試作品の数々をぼんやりと眺めながらウタハへと口を開いた。
「随分と気前がいいじゃねーの。技術屋の偏屈な奴らって大抵自分の作ったおもちゃを他人に触られるのを反吐が出るほど嫌うもんだと思ってたが、大分予想が違ってたわ」
「ふふ、発明品は使われて初めて輝くものだからね。ここに置いてあるのは試作品とは言え、その精度とスペックは市販品を遥かに凌駕している。……ところで、シャーレの坂田先生だったか。あなたも何か気になったものがあればどうかな? キヴォトスでは珍しいが、近接武器も幾らかデータ収集のために開発はしていたからね」
「お、マジか。じゃーお言葉に甘えちまおっと。……お、これとか良さそう。重さもちょうどいいし、持ち運び便利そうだし。伸ばしたら俺の木刀と同じくらいの長さしてるし」
銀時が手にしたのは、一見すると何の変哲もない、メカニカルなデザインの金属製警棒だった。片手で軽く振ると、シャキィンと心地よい金属音を立てて伸縮する殴打用の武器だ。それを手の中で馴染ませる銀時を目にして、ウタハが満足げに目を細めた。
「ふむ、数ある兵器の中からそれを選ぶとはお目が高い。……ほら、一回それを縮めた状態で、そこにある空の缶コーヒーに先端を向けてみて。そのあと、鍔のところにある赤いスイッチを押すんだ」
「お、これか? なんだなんだ、もしかしてスイッチ一つで先端からビームでもぶっ飛んで、缶コーヒーごと背後の壁に大穴でも開ける感じ? やべーな、大人の男のロマン詰まってんじゃねーの」
銀時は言われた通りにワクワクしながら警棒の先端を缶にロックオンし、親指で鍔のスイッチをぽちりと押し込んだ。
直後。ブゥン、という静かな起動音と共に、警棒の先端から放たれた赤いレーザー光線が缶コーヒーのバーコードを高速スキャンした。
すると空中に鮮やかなホログラム画面が浮かび上がり、そこにはミレニアム管内にある20箇所程度の売店や購買部の名前と、様々な銘柄の缶コーヒーの値段が、上位から1円単位で安い順に見事なリストになってずらりと並べられていた。
「……ナニコレ」
期待していたビームが出ず、代わりに表示された極めて生活感溢れるお買い物リストを前に、銀時は完全に死んだ魚の目を点にさせた。
「素晴らしいだろう。これを使えば、キヴォトス全域の全ての店舗のデータベースから厳選し、今この瞬間、最も安いものを見つけ出せる──名付けて、貧乏生徒必涎の『最安値サーチ機能付き長型警棒』さ」
「なんでそんな物騒な武器に主婦向けの超家庭的な機能持たせてんだよ!! 敵を殴り倒した後に『あら、卵は隣のコンビニの方が5円安いわね』とか確認すんのか!? 地味にめちゃくちゃ役に立ちそうな機能なのが余計に腹立つわ!!」
「ふむ、気に入らなかったか……実用性と経済性を兼ね備えた逸品だと思ったんだけどね。ならばこれはどうかな?」
ウタハは全く悪びれる様子もなく、次に作業机の奥から、何やら禍々しい棘のついた金属製の大型ハンマーをゴトッと引きずり出してきた。
「これは『熱源探知型自動超振動ハンマー』。いかなる強固な装甲に守られた敵であっても、その中心核を即座に感知し、超高周波の振動で内部から粉砕する」
「お、今度こそガチの武器じゃねーの。こういうのでいいんだよ、こういうので」
銀時がホッとしたのも束の間、ウタハは自慢げに人差し指を立てて付け加えた。
「そして特筆すべきは、その超振動の応用技術だ。戦闘が終わった後は、このハンマーの打撃面に冷やご飯と卵を投入し、スイッチを入れることで、内部の超高速振動がミリ秒単位で具材を撹拌。お米の水分を完璧に保ったまま、極上の『パラパラ黄金チャーハン』を自動射出する」
「戦闘後にチャーハン撃ち出してどうすんだよ!! 敵陣のド真ん中で『お、パラパラで美味いなコレ』とかやってる暇ねーだろ! どんだけ食い意地張った戦場だよ!!」
「フッ、まだ驚くには早いよ。ならばこれはどうだ」
次にウタハが自信満々に差し出してきたのは、鈍い銀色に光る、見るからに頑丈そうな金属製の大型近接防御用シールドだった。裏面にはなぜか取っ手と並んで、何やら怪しい電子パネルがついている。
「これは『超高密度対衝撃バリケード・シールド』だよ。至近距離からの敵の重火器による銃撃ですら無傷で防ぎきり、そのまま盾の角で敵を叩き潰す近接打撃にも使える」
「おー、いいねぇ。これなら身を守りながらいざって時は鈍器として大暴れできるわ。機能もシンプルだし、今度こそ変な裏機能なんかねーだろな?」
「勿論だとも。ただ……キヴォトスの日差しは強いからね。前線での長期にわたる防衛戦を想定し、盾の表面に特殊な集光パネルを仕込んである。防弾しながら溜めた太陽光エネルギーを内側に循環させることで──なんと、裏面のパネルで『自家製カツオの藁焼きタタキ』が燻製風に香ばしく仕上がる仕様さ」
「だからなんでさっきからいちいち調理機能にシフトすんだよ!! 盾の裏でカツオがファイヤーしてんじゃねーか! 命がけの防衛戦でビール欲しくなっちゃうだろーが!!」
呼吸困難になりそうな勢いでツッコミを連発する銀時に対し、ウタハはふむ、と深く顎を引いて最後の切り札と言わんばかりに、棚の特等席から一本の神々しい「日本刀」を恭しく取り出した。
「ならば坂田先生。近接武器の極み、この『高周波振動ブレード・十六夜』はどうかな。あらゆる物質の分子結合を寸断するレーザーエッジを搭載し、ひとたび振るえば鋼鉄の戦車すら一刀両断にしてみせる。これなら文句はないよね?」
その抜身の刀身から放たれる圧倒的なオーラと、美しく明滅する刃文に、銀時は今度こそ息を呑んだ。
「……へえ。こいつはマジで大したもんだ。これなら俺が本気で振り回しても刃こぼれ一つしなさそうだし……で? 一刀両断にした後は、やっぱりアレか? スライスされた戦車がそのままチンジャオロースにでもなるってか?」
「まさか。我々エンジニア部はそんな安易な機能はつけないよ」
ウタハはフッと鼻で笑うと、鍔の近くにあるスイッチと刀の柄の底にある小さなノズルを指差した。
「このスイッチを押してごらん。このノズルからいつでも適量の『醤油』が出る」
「お前もかよォォォォォォ!!」
銀時の魂からの絶叫がエンジニア部にこだました。
あまりにもデジャヴすぎるその機能に、銀時はかつて江戸の街で「これでも喰らえ」とばかりに醤油を射出してきた、あの頑固ジジイの作った木刀の姿を強烈に思い出していた。
「どこ行っても技術屋の脳みそってのは醤油で行き着く先が一緒なのかよ!! なんだよ『いつでも適量』って! 刺身食う時に便利だねってバカ!! 完全に源外のジジイの血縁者だろお前!!」
そんな二人の醤油を巡る押し問答を完全に蚊帳の外に置き、アリスは天井から頑丈な滑車とチェーンで吊り下げられたままの、異様な存在感を放つ巨大な「何か」に釘付けになっていた。
「……これは?」
アリスがその巨大な鉄の塊を見上げ、水色の瞳でじっと凝視する。
そんなアリスの隣に、音もなく、しかし強烈な自己主張を伴って歩み寄ったのは、金髪のショートヘアに大きなメガネをかけた少女──コトリだった。コトリは人差し指でメガネのブリッジをキラン、と知性的に輝かせながら、胸を張って説明を始めた。
「ふっふっふ、それに目をつけるとはお客さんもお目が高い! 実に素晴らしい鑑識眼をお持ちですね!」
「え、えっと……? 」
「説明が必要とあらば、いつでもどこでも、三度の飯より解説が大好き! エンジニア部が誇るマイスターの一人、豊見コトリです! あなたがアリスちゃんですね! 話は聞いていますよ、ゲーム開発部待望の4人目のパーティーメンバー!」
コトリはマシンガンのように言葉を紡ぎながら、目をキラキラと輝かせてアリスの手をがっしりと握り、激しく上下にシェイクした。その圧倒的なコミュ力の波動にアリスが呆然とする中、二人の後ろから試作品選びを終えたモモイとミドリが近づいてくる。
「あ、コトリちゃん久しぶりー。相変わらずテンション高いね。……ところで、アリスちゃんが見てるこれって一体何なの? まるで、SF映画に出てくる……すっごくおっきな大砲みたいだけど」
ミドリが天井を見上げ、その異様なスケールの鉄塊に少しだけ引き気味に尋ねる。
その問いを待っていましたとばかりに、コトリのメガネが再び鋭く光った。
「いい質問です、ミドリちゃん! これこそは、我がエンジニア部が下半期の部内総予算の実に70%以上を惜しげもなく注ぎ込み、持てる技術の粋を集めて極秘裏に開発した──『宇宙戦艦搭載用超大型レールガン』です!」
「宇宙戦艦って……またとんでもないことを……」
流石のモモイも、目の前にあるものの規模の大きさに少し引き気味になって呟いた。しかしそれに構わずコトリは説明を続けてゆく。
「エンジニア部ではヘリコプターや汎用作業ロボの他に、宇宙戦艦の開発を目標としているのです! このレールガンはその宇宙戦艦に搭載し、大気圏外での戦闘を目指した、ミレニアム史上類を見ない試みなのですよ!」
フンスと鼻を鳴らさんばかりの勢いで熱弁するコトリの言葉に、モモイの瞳がみるみるうちに輝きを取り戻していく。
「待って……やっぱり聞いただけでワクワクしてくる……!」
「さすがエンジニア部! 今度は上手くいってるんだね!?」
隣から身を乗り出したミドリも、期待に満ちた声を上げた。しかし、二人のキラキラとした視線を浴びたコトリは、急にシュンと肩を落とした。
「……そうだとよかったんですが……」
コトリはそう呟いて遠い目に涙を浮かべると、深く大きなため息をついた。
「いつだって技術者を苦しめるのは、想像力の欠如ではなく予算……。我が部の下半期予算の七十パーセントを投じて開発できたのは、この一門だけなんです。宇宙戦艦そのものを作るのには、この何千倍の予算が必要になることやら……」
「そんなの計画段階でわかることじゃん! なんで作っちゃったのさ!?」
もっともすぎるモモイのツッコミが響き渡る。そこへ、腕を組んだウタハが静かに、しかし堂々とした足取りで歩み寄り、不敵な笑みを浮かべて口を開いた。
「愚問だね、モモイ。それは……」
ウタハの合図とともに、その場にいたエンジニア部の三人──ウタハ、コトリ、そしていつの間にか背後に控えていたヒビキが、一糸乱れぬ見事な唱和で声を揃えた。
「「「ビーム砲はロマン!!!」」」
「バカだ!! 頭良いのに馬鹿の集団がいる!!」
一分の迷いもないその叫びに、モモイは全力で絶叫するのだった。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
芙蓉篇での「醤油が出る」ネタはアニメで見た時は腹を抱えて大笑いしたものです。あーゆーギャグネタをホイホイ出せるくせに不器用過ぎて愛に狂ったストーリーを描かせたら右に出るもののないゴリラのセンスってヤバいなと思います。