誤字脱字、呼称の間違いの報告などありがとうございます。私も点検しているつもりですが見落とすことがあるので、これからもご指摘いただけたら幸いです。
騒乱の次の日。ミレニアムサイエンススクール、C&Cの部室。
そこではネルを前にして、アスナ、カリン、アカネが申し訳なさそうに少し俯いていた。
「なるほど……ゲーム開発部。知らねえ部活だったが……そいつらにしてやられたってことか」
ネルはソファに深く腰掛け、天井を睨みつけながら低く呟いた。その言葉に、アカネが小さく頭を垂れる。
「……申し訳ありません、この依頼を受託して作戦を準備したのは私です。メイド部の名前に傷をつけてしまいました……」
「んなこたぁどーでもいい」
「え……?」
拍子抜けしたように顔を上げるアカネを他所に、ネルは鼻を鳴らした。
「それに、ここに戻った時にリオから連絡があった」
「セミナーの会長から?」
カリンが訝しげに眉をひそめる。
「ああ、依頼は撤回。なかったことに、だとよ」
「!?」
「それは、一体なぜ……?」
納得がいかないという表情のアカネに、ネルは面倒そうに頭を掻いた。
「知ったことかよ……聞けばヒマリは態々セミナーにヴェリタスやゲーム開発部の合同襲撃計画の情報を流してたらしいじゃねえか。二人とも確かめてみたくなったんじゃねえか?」
「私たちメイド部の力を、ですか?」
「逆さ。あのアリスとかいう奴と……ギントキ、とかいう先生の力を、だよ。……カリン、アスナ、お前らはあの大人と戦り合ったんだろ? どんな印象を持った?」
ネルに話を振られ、アスナはいつもの天真爛漫な様子から一転、どこか楽しげに、しかし真剣な目で記憶を巡らせた。
「うーんとね、すっごく変な感じだったの! 私の動く先を全部見切って……んーん、まるでそう動くって知ってるみたいに避けてて。先生がどう動くかも全然分からなかったの!こう動く、いや、こっちかも?って、なんて言うのかな……考えが全然読めなかったんだ。正直言って、私も私の銃口を弾こうとしてくる木刀から逃げるのに精一杯だったかも!」
アスナが身振り手振りを交えて語る言葉をカリンは静かに、しかし悔しさを滲ませながら引き継いだ。
「……俄には信じられなかったが、あの大人は49ミリの大口径弾を木刀で弾いていた」
「木刀? 太刀筋? ……さっきから聞いていれば、まさかそいつ、銃さえ使わずにいたのか?」
「ああ、そうだよネル先輩。あの先生は銃なんて最初から最後まで一丁も持ってなかった」
カリンは悔しそうに拳を握りしめ、あの一瞬の光景を思い返すように視線を落とす。
「離れた建物の屋上から、完璧なタイミングで不意を突いたはずだった……。だけどあの人は、空中で強引に身体を捻りながら、私の放った大口径弾をその木刀一本で叩き伏せて軌道を逸らした。……ただの木の棒で、あの質量を、だ」
超高威力の対物狙撃銃から放たれるのは、戦車をも穿つ鉄の塊だ。弾速も威力も、通常の銃弾とは文字通り桁が違う。それを遥か遠方の屋上からの狙撃にもかかわらず、正面から木刀で受けて生きていられる人間など、キヴォトスの常識では到底あり得なかった。
「へえ……」
ネルの口から、低く地を這うような声が漏れる。
スカジャンのポケットに突っ込まれた両手が、微かに、しかし確かに震え始めていた。それは恐怖などではない。近接戦においてミレニアム最強、いや、キヴォトス全域を見渡しても並ぶ者のいない絶対の自負を持つ美甘ネルの肉体が、未知の強者への渇望に歓喜しているのだ。
「銃も持たねえで、木の刀一本でアタシらの弾を叩き落とす昔気質のサムライ、ねえ……」
ネルはゆっくりとソファから立ち上がると、首の骨をゴキリ、と荒々しく鳴らす。
その獰猛な瞳の奥に、かつてないほどに熱く、純粋な闘争の火が爆ぜる。全身の血が沸騰するような感覚に、ネルの口元は自然と好戦的な笑みへと歪んでいった。
「……アカネ、ゲーム開発部の情報は勿論。先生のことは徹底的に洗え。キヴォトスに来てからのことから全部だ」
低く、だが有無を言わせぬ絶対的なリーダーのトーンだった。スカジャンの下で、彼女の細い肩が愉悦に小さく跳ねている。
「一体なぜ……? リベンジ、ですか?」
アカネはいつもの物静かな調子で、しかしその眼鏡の奥の瞳に鋭い光を宿して問いかけた。これまでにないネルの執着。それが敗北の雪辱戦を意味するものなのか、それとも。
「その表現は少しばかり癪だが……興味が湧いた。ゲーム開発部の奴らはきっとあたし達に一泡吹かせたと思ってるだろうし……その先生のことが気になっちまったんでね」
ネルはちっと舌打ちをしながら浮かべた凶悪な笑みを消そうとはしなかった。ポケットから引き抜いた両手はもう戦いたくて堪らないと言わんばかりに硬く握り締められている。ミレニアムの最高武力、その闘争本能のすべてが、あの「サムライ」という一点にロックオンされていた。
「──一手、死合ってもらおうじゃねえか」
──────────
「……ぶえっきし!!!」
鏡によるデータの複製を無事に終え、ついにその本質へと迫らんとする『G.bible』。それを携えてゲーム開発部の部室へとやってきたマキと、いよいよその秘められた謎を開くべく、緊張した面持ちでゲーム機を立ち上げていたミドリ。六人が息を呑む静寂を、銀時のとてつもなく下品で大きなクシャミが跡形もなくぶち壊した。
あまりの爆音に、接続コードをいじっていたマキがビクッと肩を跳ね上げて首を傾げる。
「どうしたの、先生。風邪でも引いた?」
「知らね、あーやだやだ。夏風邪って変に拗れっからなあ。今日はあったかくしてさっさと寝とかねーと……。ああダメだ、鼻水がマーライオンの如く決壊しそうなんだけど」
鼻の頭を真っ赤にしながらだらしなく机に突っ伏す銀時を見て、隣でコントローラーを握っていたモモイが、ここぞとばかりにニッシシと意地の悪い笑みを浮かべた。
「あはは! 夏風邪はバカがひくって言うからね!」
「だーれーがバカだゴルァ!」
次の瞬間、銀時の手が伸びてモモイの側頭部をガツッと挟み込むとそのまま拳でぐりぐりと締め上げる。けれど、そこは当然しっかり力加減がされているのを分かっているのか、モモイは痛がる風もなくキャッキャと楽しそうに笑い声を上げた。
「うわーん! 将来の天才ゲームクリエイターへの体罰反対! 先生がゲーム業界の未来の巨匠に暴力を振るってまース!」
「うるせー、巨匠になる前にその生意気な口をミリ単位で矯正してやろうかコラ」
ジタバタと暴れるモモイを適当にあしらっていると、部屋の隅で巨大なレールガンを丁寧に拭き上げていたアリスが、ポンと手を叩いて目を輝かせた。
「そう言えば、噂をされるとクシャミするって聞いたことあります! どこかの町のアドベンチャーNPCが言っていました!」
「だーれがこんなアラサー男の噂する必要あんだよ。小皺が少し増えたね、とかすれ違うと少し香ばしいよねってか? 大きなお世話だっての」
やれやれと肩をすくめ、いつもの死んだ魚の目で鼻をこする大人。そのあまりにも情けない背中を冷ややかな目で見つめながら、画面の起動処理を終えたミドリが深くため息をつく。
本人は来る歳波や加齢臭を気にしているようだが、先生が噂になるなんてことはネガティブなことに限らないだろう、とミドリは呆れていた。現に今日、寮から部室に向かう時だって、廊下や中庭で周りの生徒たちがヒソヒソと先日の大立ち回りについて噂をしていたのだ。
どこから、そして誰が流したかもわからない、あの夜の映像。暗闇の廊下でC&Cのエージェントによる対物大口径弾の狙撃を木刀一本で薙ぎ払い、そのまま凄まじい近接戦を繰り広げている大人の動画がミレニアムの限定的なネットワーク内で密かに拡散されていた。それをスマホで囲んでは、「シャーレの先生って結構ワイルドじゃない?」「普段のあの気怠そうなトコとのギャップが結構イイかも……」なんて、黄色い声を交えて噂をしていたのを、ミドリはしっかりと耳にしていたからだ。
「……やっぱり唐変木……」
当の張本人がその自覚ゼロなのだから、本当に世話が焼ける。ゲーム機の液晶から漏れる青白い光が部室を照らす中、接続を終えたマキが、画面の一角を指差しながら思い出したように声を上げた。
「あ、そういえば……『G.bible』を解凍してる時に、『key』ってフォルダを見つけたんだよね」
その言葉に、ふとモモイが横から画面を覗き込む。たしかに、展開された『G.bible』の膨大なデータフォルダの最下層に、ひっそりと『key』と名称の入れられた独立したフォルダがあるのを目にした。
「なにこれ……ケイ、って読むのかな?」
「ケイ……?」
アリスが不思議そうにその響きを復唱すると、すかさずミドリがコントローラーを置いてモモイに鋭いツッコミを入れた。
「もう、『キー』でしょ! 鍵のこと!! お姉ちゃん本当に高校受験合格したの!?」
「な、合格したからここにいるんでしょーが! ミレニアムの入試なめんな!」
そんな騒がしい双子間の言い合いを完全に無視し、マキはぽりぽりと頭を掻きながら、プログラマーとしての真面目な顔で画面を見つめる。
「この『key』ってフォルダのことは、結局何一つわからなかったんだよねー。私たちの知ってる機械語じゃ絶対に解読できないような、すっごく複雑で特殊な構成をしててさ。二人とも、この『key』って何のことか心当たりない?」
「うーん、全然わからん……。ゲームの隠し要素か、バグ防止のシステムファイルじゃないの?」
モモイが腕を組んで唸る中、ミドリは顎に手を当てて静かに記憶を辿り、ひとつの可能性を口にした。
「……もしかして『key』ってさ。あの廃工場で私たちに『G.bible』の情報を渡してくれた、あの検索システムのことなんじゃないかな?」
その言葉に、それまで鼻をほじりかけていた銀時が、ふと視線を落として口を開く。
「あー、モモイの全クリ直前のセーブデータを躊躇なく一瞬で削除しやがったあのアホシステムか。つっても、あそこのパソコンじゃねえとまともに起動できねーんじゃねーの? もし何か俺たちに用があんなら、またあんなふうに勝手にテキストでも吐き出してくんだろ、画面いっぱいにさ」
「……それもそうですね。取り敢えず今は、目の前にある『G.bible』の解読の方が先です」
ミドリは銀時の現実的な指摘に納得し、頭を切り替えるように頷いた。マキは作業用のアウトプットデータを手際よく自分の端末に転送すると、椅子から立ち上がって手を振る。
「この『key』ってフォルダのことは、ヴェリタスの部室に戻ってから先輩たちとも一緒に少しずつ調べてみるよ。じゃ、私はそろそろ戻るね!」
「うん、ありがとねマキちゃん! すっごく助かった!」
「マキ、今度会う時はちゃんとウチの秘書を通してアポ取ってよね! なんたって私たちは『TSC2』で大ヒットを飛ばして、一躍時の人になる予定だし!」
鼻を高くしてふんぞり返るモモイに、マキは呆れ半分、期待半分の笑みを浮かべた。
「あははっ、そんときはサイン頂戴ね。楽しみにしてるよ!」
バタバタと賑やかに、マキはゲーム開発部の部室から出ていった。静かになった室内で、ミドリの操作する画面がいよいよ『G.bible』の核心データを読み込み始めた。
──────────
「よーし! みんな集まって! 『G.bible』を開くよ!」
マキが出ていった後、モモイは鼻息をふんっ、と荒く鳴らして興奮を隠せない様子で、部室にいるミドリ、ユズ、アリス、そして銀時の四人に呼びかけて、全員がゲーム画面の周りへと集まった。
「みんなが知ってる通り、この『G.bible』の中に何が書かれているかは、今やほとんど誰も知らない。けど、最後にこれを読んだことがあるっていう伝説のカリスマ開発者は、こう語ってるんだ。──『ゲーム開発における秘技。みんなが知っているようで、誰も知らなかった奇跡』……ってね。私たちは、この奇跡を知るために、たくさんの苦難を乗り越えてここまで来たんだ!」
モモイが拳を握りしめて熱弁を振るうと、ミドリも画面を見つめたまま、強く深く頷いた。
「うん……最高のゲームを作るために。そして、この大切な、みんなの居場所を守るために」
「もしミレニアムプライスで賞を取れなきゃ、ゲーム開発部は解散、部室は引き渡し……ユズはあの寮の部屋に戻って、会いたくもない奴らに会わなきゃいけなくなる。それに、アリスは……」
モモイがそこで言葉を濁し、アリスへと視線を向ける。身元の証明すら曖昧なアリスにとって、この部活という「盾」を失う意味は、あまりにも大きすぎた。
張り詰めかける部室の空気を、銀時がいつもの気だるげな声でふっと遮る。
「……おいおい、ダメだった時の陰気臭いタラレバを今から考えてどうすんだよ。まあでも……そん時はそん時だ、アリスはうちの万事屋で引き取ってやるさ。ちょうど溜まりに溜まった書類仕事やらの手伝いやらが欲しかったとこだしよ」
「……先生と一緒なのは、とても嬉しいのですが……」
アリスが青い瞳をパチパチと瞬かせながら、まっすぐにそう告げる。銀時は予想外のピュアな肯定に、逆にバツが悪そうに目を丸くしてボヤいた。
「……マジで嬉しいんだ、そこ……」
「ですが、アリスは……みんなとここに、みんなと一緒にここにいたいです。ゲーム開発部の一員として、クエストをクリアしたいです」
小さな、だが確かな意志の籠もった言葉。それを聞いたモモイは最高の笑顔でアリスの肩を叩いた。
「……うん! 当たり前でしょ! 私たちは最高のゲームを作って、絶対にこの部室を守る! ……アリス! お願い、ボタンを押して!」
ミドリがゲーム機を差し出し、アリスの小さな指が、起動のエンターキーの上にそっと添えられる。アリスはみんなの顔を一度見回すと、力強く声を上げた。
「はい! ──── 『G.bible』……起動です!!」
アリスがエンターキーを押した途端、青白い液晶画面が激しく明滅し、一列のテキストが滑り込むように表示され始めた。
『G.bibleの世界へようこそ』
「は、始まった……!」
モモイがごくり、と喉を鳴らして息を呑む。全員の視線が、その小さな画面に釘付けになった。
『最高のゲームとは何か……この質問に対して世界中で様々な答えが模索され続けてきました。作品性、人気、売り上げ、素晴らしいストーリー、爽快感、鳥肌の立つ演出など……そういったものが最高のゲームの条件として語られることは多いですが、それはあくまでも真理の枝葉に過ぎません』
格調高く、どこか厳かさすら漂う文章が滑らかにスクロールしていく。
『最高のゲームを作る秘訣、それはたった一つです。そしてこのG.bibleにはその真理が秘められています』
「おー、結構それらしいじゃねえか。まるで意識高い系のエッセイ文の前書きみてえだな」
銀時が少しだけ感心したように腕を組む。
「い、いよいよ……真理の核心に……!」
「なんだか本当にすごそう……」
モモイが顔を火照らせ、ミドリも緊張でゴクリと息を呑んだ。画面のテキストが、ついにその「答え」を導き出す。
『最高のゲームを作るためのたった一つの真理にして秘密の方法……それを今、お教えしましょう』
「き、きます……! 伝説の秘技です!」
アリスの目がらんらんと輝き、ユズもゲーム機を抱きしめるようにして画面を見つめた。次の瞬間、ポツンと短い一言が表示される。
『……ゲームを愛しなさい』
「おおっ、オープニングの演出みたいな感じ! 溜めてからのコレね!」
「そ、そうかな……?」
モモイが興奮気味に声を上げるが、ミドリの顔にはわずかな困惑が走り始める。
なぜなら、画面の挙動が明らかに狂い始めていたからだ。
『ゲームを愛しなさい』
その一言が打ち込まれた途端に、パチパチと文章……いや、そのたった一つの言葉だけが数を増やしてゆく。
ゲームを愛しなさい
ゲームを愛しなさい
ゲームを愛しなさい
ゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさいゲームを愛しなさい
「「「「「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!?!?!?」」」」」
凄まじい速度で液晶画面を埋め尽くしていく狂気の文字列に部室にいた五人が一斉に顔を引き攣らせて絶叫した。
「なんだこれ!? タチの悪いドッキリかよ!? 呪いのビデオかよ!? っていうかどっかで見たことあるぞこの展開ィィィィ!! あんぱん食いすぎて狂ったどっかの山崎の偵察部屋回かよコレェェェェ!?!? ホラーじゃねえかッ!」
銀時が目を見開きながら全力でツッコミを入れた。
「ま、ままままさか、これで終わり、じゃない、よね……? 続きがあるんだよね……?」
その隣でユズが涙目でガタガタと震えだし、それに呼応するようにミドリがあたふたと慌て始めた。
「バグだよね!? バグだよねこれ!? 誰か強制終了して!!」
「な、なにか設定変更とか、次のページに行くボタンとかあるはずじゃ……!?」
パニックに陥ったモモイが、現実逃避するように狂ったようにエンターキーを連打した。すると、画面を埋め尽くして増殖していた「ゲームを愛しなさい」の羅列がピタリと止まり、暗転した後に新たな画面へと遷移する。
『あなたがこのボタンを押したということは、ファイルが壊れたか、それとも何か問題があったのでは、何かしらのエラーによるものなのか……と疑っている状況でしょう』
「だ、だよね!? ああ良かったぁぁ! やっぱりアレだけで終わるはずないよね! ビビらせやがってコンチクショー!」
モモイがホッと胸を撫でおろしたのも束の間、無情なシステムテキストがそれに続いた。
『しかし、エラーではありません』
「ウッソだろオイ!? アレが仕様かよ!! アレがエラーじゃなかったらコレ作ったやつ精神的に相当病んでただろ完全に手遅れなレベルの不審者じゃねーか!!」
銀時の叫びが部室に木霊する中、画面のテキストは冷徹に進む。
『残念ですが、これが結論です』
そして。
呆然と立ち尽くす五人の視界に、トドメを刺すかのように、画面いっぱいにデカデカと太い赤文字でテキストが打ち込まれた。
『ゲームを愛しなさい!』
静まり返るゲーム開発部の部室。液晶の赤い光が、絶望に染まった五人の顔を虚しく照らし出していた。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
あのシーンをアニメで見た時は大笑いしました。腹筋痛かったな……
これからもよろしくお願いします。
少し予定を変えて、早めにエデン条約動乱篇を勧められるかもしれません。その前にワンクッションは置きますけれど。