ブルーアーカイブ 透き通る青春よ永遠なれ   作:Jon.Do

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銀さんがアロナと出会ったので初投稿です。


第四話 サムライ・ミーツ・AI暴girl

 暗い部屋の中、平べったい板のようなものを手にしたワカモは、困ったように右に左に首を捻っている。

 置かれていた際の配置や厳重な防壁から、これが連邦生徒会長の遺した最重要の遺物だとは分かるのだが……叩いても撃っても落としても、掠り傷一つ付かない未知のソレに、益々首を傾げてしまう。

 

「───── うーん……これが一体何なのか、全く分かりませんね。これでは壊そうにも……あら?」

 

「げっ」

 

 背後に漂う、先ほど戦場で感じた異質な気配。それに気付いたワカモがゆっくりと振り返る。

 そこに立っていたのは、つい先ほど、生身かつ木刀一本という文字通りの単騎で巡航戦車を完全制圧してしまった男だった。

 その白髪の男は、あからさまに「うっわ、めんどくせー奴に出会しちまった……」という思考を隠しもしない、盛大に間抜けた声を漏らす。

 

 戦場の喧騒から離れた静寂の中、先ほどよりもずっと近くで見る、彼の姿。

 

「あら」

 

 その男はだらしなさのある天然パーマの髪を湛え、底の知れない死んだ魚のような眼差しを、此方へと真っ直ぐに向けており……

 

「あららら……」 

 

 半分だけ着流しを脱いで露出した頑強な腕は、あの鉄の怪物を力任せに抉じ開けた暴力的な説得力を宿すほどに太く、逞しく……

 

「……あ、ああ……」

 

「えーと、……何? 銀さんの顔になんか付いてる?」

 

 自分へ向けられた視線を全く気にする様子もなく、男は平然と間の抜けた顔で首を傾げ、こちらの緊張感を削ぐような気の抜けた声で問いかけてきて……

 

「し、し……」

 

「し?」

 

 銀時は奇妙なものを観察するような眼差しのまま、間合いを詰めるように彼女へと一歩歩み寄り────

 

「失礼致しましたァァァァァ!!」

 

「うおわっ!? 」

 

 突如として鼓膜を激しく震わせた、少女の、地鳴りのような爆音の大絶叫。

 それと同時に、ワカモは手にした平べったい板を銀時の胸元へとこれ以上ないほど丁寧に、かつ大慌てで押し付ける。

 

「……なんだったんだアイツ……」

 

 呆然と立ち尽くす銀時の目の前で、狐面の少女は開け放たれた窓の外へとまるで脱兎の如き勢いで飛び降り、そのまま一瞬で退散していく。

 

 その騒がしい後ろ姿を窓から見下ろしていると、自分の背後へとカツ、カツ、と静かに響くヒールの音が近付いているのに気付いた。

 

「……お待たせしました、先生」

 

「おー、リンちゃんじゃん。遅かったな。んで、目的のものってコレか?」

 

「……はい、そうです。それが、連邦生徒会長の遺した端末です」

 

 銀時が掲げる白い平べったい板を見て頷くものの、リンはどこか一歩引いたような、戸惑いの混ざった眼差しで銀時を見遣る。

 当然だろう。リンも先程の……たった一人で、しかもどこにでもあるような薄汚い木刀一本で、巡航戦車を瞬時に沈黙させたあのデタラメな光景を、上空のヘリの中からしっかりと目撃していたのだ。

 

(……連邦生徒会長は、なぜこんなやる気のない不審な大人をわざわざ指名したのか……と、先ほどまでは甚だ疑問に思っていましたが。……彼は、本当に一体……)

 

 何者、なのだろうか。

 

 一見だらしない男の奥底に隠された、底の知れない圧倒的な「武」の気配。

 そんな彼女の内心の戦慄や思考など1ミリも知らないと言った様子で、銀時は手にしている板をこんこん、と指の背で叩いたり、様々な角度に傾けて裏表をまじまじと眺めたりしていた。

 

「……あ、そ、そんなに乱暴に扱わないでください! それが大切なものって言ったでしょう!?」

 

 コツコツ、と無造作に指先で叩いている銀時の様子にハッ、と我に返ると、リンは慌てた様子でステップを踏み出し、彼のその手元を止めた。

 

「それこそが連邦生徒会長の遺したもの、『シッテムの箱』なんですから」

 

「……シッテムの箱、ねえ。箱っつーか、どう見ても板の方が正しくね? 現代っ子がよく持ってるアレだろ、iP○dとかいう文明の利器だろコレ」

 

 手にしているものの名前を知り、銀時が再びソレへと死んだ魚のような視線を落とす。

 

「見た目こそ普通のタブレット端末に見えますが、実はその正体については何も分かっていないものです。製造元であるメーカーも、搭載されているOSも、システム構造も……。動く仕組みのすべてが不明なんです。ですが連邦生徒会長は、このシッテムの箱は先生のモノで、先生がこれを使えば、タワーの制御権を回復させられるはずだと言っていました」

 

「……いや、こんなの全然知らねえんだけど。そもそも俺がここに来た経緯だってサッパリ覚えてねえのに、いきなりそんなデカいもん預けられても困るわ。パスワードとか設定されてたらどうすんの? 案外『gintoki1010』とかで開いちゃったりする?」

 

「ふざけている場合ではありません。……けれど、連邦生徒会長がそう言っていたのですから、そうなのです。あなたにはそれを起動させる資格があるはずです」

 

 一歩も引かないリンの断定的な物言いに、銀時は心底めんどくさそうに片眉を上げた。

 

「何? 連邦生徒会長ってそんな独裁者みてーな奴なん? あのカラスは白だって言ったら、白を黒に塗り潰してでも黒って答えなきゃいけねえタイプの、一番上の人が絶対のブラック企業なん?」

 

 ハァ、と盛大なため息を吐きながら、銀時は預けられた「箱」を両手で持ち直した。

 

 ────その、瞬間のことだった。

 

 それまでただの頑丈な鉄板のようだった端末の画面が、突如として眩い光を放ち、様々な電子文字が網膜を焼くように浮かび上がる。

 

「うおっ!? え、なにこれ、いきなりバックライト全力展開!? 目が、銀さんのデリケートな眼球がア──ーッ!!」

 

 パスワードの入力を求められた画面に、銀時自身は何も操作していないにもかかわらず、どこか不穏で詩めいた言葉が勝手に、かつ滑らかに打ち込まれてゆく。

 

 ──── 我々は望む。七つの嘆きを。

 

「え、やだこれ、何このポエミーな文字列。めちゃくちゃ怖いんだけど。ウイルス!? もしかして呪いのビデオ的なサムシング!?」

 

 ──── 我々は覚えている。ジェリコの古則を。

 

「ねえリンちゃん!? 勝手に動いてんだけどコレ! 電源ボタンどこ!? 長押しすれば消え……っておーい! リンちゃんいなくなってるゥゥゥ!?」

 

 驚いて振り返るが、いつの間にかリンは銀時と距離を取り、部屋の隅で防護姿勢を取るように身を低くしていた。冷たい。あまりにも対応が冷たすぎる。

 そんな銀時のパニックを置き去りにしたまま、端末は無機質なシステム音を部屋に響かせた。

 

『接続パスワード承認。現在の接続者情報は坂田銀時、確認できました』

 

「待って!? なんで俺の名前知ってんの!? 承認しないで!? 登録情報、今すぐ『坂田金時』に書き換えて!! 銀さんこれ以上ややこしいことに巻き込まれたくねえんだけど!?」

 

 必死に画面を連打する銀時の悲鳴も虚しく、システムは淡々と最終段階へと移行していく。

 

 

 

 ──── シッテムの箱へようこそ、坂田銀時先生。

 生体認証及び認証書生成のため、M.OS ARONA(アロナ)に変換します。

 

 

 

 その文字が浮かび上がると同時に、端末から放たれた光は部屋全体を包み込むほどに膨れ上がり、銀時の視界を真っ白に染め上げてゆくのだった。

 

 ──────────

 

 ……あまりにも眩い光に目を閉じ、少ししてからゆっくりと瞼を開くと、周囲の光景は一変していた。

 さっきまでいたはずの暗いシャーレの部室ではなく、そこはまるで、どこか浮世離れした「教室」のど真ん中だった。

 

「……え、どこここ」

 

 慌てて周囲を見回すが、誰もいない。

 空は遮るものもなくどこまでも青く広がっているが、見上げればその天井は、何かしらの激しい攻撃を受けたかのように無残に崩落している。しかし不思議なことに、足元の床にはその瓦礫などの惨状は一切なく、むしろ清潔ですらあった。

 

 さらに教室の壁の外に目をやると、まるで防壁のように無造作に、大量の勉強机が空高くにまで積み上げられている。

 

「待って、本当にどこここ!? 崩壊学級?!? 空間の使い方がアーティスティックすぎて、銀さんついていけないんだけど! ……って、んん?」

 

 どこかの学校の教室のようだが……不思議と、非現実的で無機質な印象を覚えるその空間。

 

 その教室の教壇のすぐ目の前で、一人の少女がポツンと置かれた勉強机へとだらしなく顔を埋め、気持ちよさそうにスヤスヤと眠っていた。

 水色の髪に、どこか見覚えのあるようなデザインのセーラー服。

 

「くうぅぅぅ……くうぅぅぅ……むにゃ、カステラにはぁ……いちごミルクより……バナナミルクのほうがぁ……あう、むにゃ……くうぅぅぅ……」

 

 よだれでも垂らしそうな勢いで、幸せそうに寝言を呟く少女。

 そんな彼女の頭上には、まるで自転するように淡く輝く、不思議な水色の輪────「ヘイロー」が浮かんでいる。

 あまりにも緊張感のないその姿を前に、怪訝そうに眉を顰めながら歩み寄る。

 

「……なんだコイツ」

 

「えへっ……まだたくさんありますよぉ……」

 

 そう呑気に寝言をむにゃむにゃと呟いている少女の頬を指先でつついてみると、

 

「うにゃ……まだですよぉ……しっかり噛まないと……」

 

「……」

 

 銀時は再び彼女の頬をつつく。

 

「あぅん、でもぉ……」

 

「……」

 

 更にその丸まった背中を指先でツンツンとつつくと、そこでガタッ……と椅子が派手にずれる音が響き、ようやく少女が身を震わせて目を覚ました。

 

「ううん、まだ、ねむ……んん、んん……?」

 

 少し不機嫌そうに小さな眉を顰めながら、小さな手でゴシゴシと目を擦る。そこでようやく視界のピントがはっきりとしてきたのだろう。少女は目の前に立つ銀時をじい……と穴が開くほど見据えてから、みるみるうちにその表情を驚愕に染め上げていった。

 

「え、なん……!? せ、先生!? この空間に入ってきたってことは、ま、ま、まさか……坂田先生……ですか!?」

 

「……先生ってどうも呼ばれ慣れねえけど……まあ、外の連中含めてそーゆーことになってるみてえだな、うん。あとよだれ拭けよ、よだれ」

 

「う、うわぁぁ!? そ、そうですよね!? もうこんな時間なんですか!? うわ、わぁぁ! ど、どうしよう!? 落ち着いて、落ち着いて私……素数を数えるの、こういう時は……! 1、2、3、5、7……あっ、1は素数じゃないですぅぅ!」

 

「どこの神父だよオメーは!?」

 

 盛大に一人でノリツッコミをして勝手に限界を迎えている少女に、銀時は益々ツッコミを重ねた。

 

 だんだんと落ち着きを取り戻した少女は、ばたつかせていた手をようやく下ろすと、銀時に向かって健気に胸を張って告げる。

 

「えっと……その……あ、そうだ! 自己紹介! まずは自己紹介からです!」

 

 起きたばかりで少しピョンピョンと跳ねていた髪を小さな手で一生懸命に直してから、スカートの裾を少し持ち上げてぺこ、と綺麗にお辞儀をした。

 

「私はアロナ! この『シッテムの箱』に常駐しているシステム管理者でありメインOS、そして、これから先生を全力でお手伝いする最高の秘書です!」

 

 キラーン、と効果音が聞こえそうなほどの満面の笑み。

 しかし、そんな可愛らしいアピールを向けられた銀時は、これっぽっちも心が動かされていない死んだ魚の目で、頭の後ろをポリポリと掻いた。

 

「……システム管理者? 秘書ォ? お前みたいな、お菓子のオマケのカードみたいなちんちくりんが?」

 

「ちんちくりんて随分な言い草ですね! 怒りますよぷんぷん! これでも私は、このキヴォトスにおいてもの凄く、お偉くて重要でスーパーな存在なんですからねっ!」

 

 頬を風船のように膨らませて「ぷんぷん!」と身振り手振りで抗議してくるアロナだったが、すぐに表情をガラリと変え、胸元で両手をぎゅっと握りしめてキラキラとした純粋な眼差しを銀時に向けた。

 

「……私は、ここで先生のことをずっと、ずーっと待っていました!」

 

「ええ……出会い頭の突然の重すぎ発言……。銀さんそういうの、キャバクラでしか言われたことないから耐性ないんだけど……」

 

 引き気味に銀時が呆れたように目を細めるのを、アロナはまったく気にする様子もなく楽しげに言葉を続ける。

 

「これから先、頑張って色々な面で先生のことをサポートしますので、不束者ですがよろしくお願いします! というわけで先生、まずは登録のための生体認証を行いますので、此方に来てください! さあさあ!」

 

 勉強机の向こう側から手招きをして急かすアロナに、首を傾げつつ重い腰を上げるように一歩を踏み出す。

 

「テンション高えな、おい……。認証たって、具体的に何すりゃいーのよ? 指紋? それとも何、最近のスマホみたいに顔面をカメラに晒せばいいわけ?」

 

 気怠げに尋ねると、アロナは机から少し身を乗り出し、こちらへとツン、と小さくて白い人差し指を差し出してきた。

 

「……なに?」

 

「さあ、この私の指に、先生の指を重ねてください!」

 

「はぁ?」

 

 生体認証というからには、何か仰々しい機械のパネルにでも触れるのかと思えば、あろうことかどこぞの有名な宇宙人映画の如く、指と指を直に触れ合わせろと言う。

 銀時が「おいおい、そんなファンタジーな方法でデータが読み取れるわけねーだろ」と怪訝そうに目を細めていると、アロナはぷく、と片頬を膨らませた。

 

 そして、その白い指先を少しだけ震わせながら、「いいから早くしてください! ……私だって、こういうのちょっと恥ずかしいんですから……」と、だんだんと視線を逸らして消え入りそうな声で細く告げた。

 先ほどまでの高テンションから一転、ほんのりと頬を赤らめて俯くアロナの姿に、銀時は「やれやれ」と頭をガリガリと掻く。

 

「はいはい、分かりましたよ。これでお望み通り宇宙のトモダチになれりゃ満足か?」

 

 そうボヤきながら、銀時は無骨で大きな人差し指を、彼女の小さな人差し指の先へと触れ合わせた。

 

「うふふ。……まるで、指切りして約束してるみたい、ですね?」

 

「ねえ、言葉の節々にそこはかとない重さを感じるの気のせい? 銀さんの気のせいだよね?」

 

「これでもちゃんと、指紋情報は入力されてるんですよ!」

 

「何、キヴォトスの女の子ってこんなスルースキル高えの? 人の話聞いてくんない奴らばっかなの? 傾奇者ばっかりなの?」

 

 銀時が本格的に自分の胃の辺りを心配し始めた、まさにその時だった。

 二人の指先が触れ合っていた境界から、波紋のように淡い青い光がシュワシュワと広がり、認証が終わったのかパッとアロナの指が離れた。

 

「──── はい! 認証終わりました!」

 

 アロナは満足げに手を後ろに組むと、一転してすっきりとした満面の笑みを銀時に向けた。

 

「あと、ついでにシステム経由で先生がここに来るまでの経緯も大体わかりました。連邦生徒会長が行方不明になってしまって、そのせいでキヴォトスのすべての行政を司るタワーを制御する手段がなくなってしまった、と……」

 

「……あー、それはさっき外にいたメガネのねーちゃんにも聞いた。聞いたんだけどもよ」

 

 と銀時が首の後ろをガリガリと掻きながら続ける。

 

「どうして『俺』がここに来たのか、そこんとこの一番大事な経緯を皆目全然覚えてねーんだよ。それどころか、ここ数日の記憶がどうにも曖昧っつーか……なんかこう、モヤがかかったみたいにサッパリ思い出せねーんだわ」

 

「どうしたんでしょう、短期的な記憶喪失のようなものなのでしょうか……?」

 

 と、人指し指を顎に当てて「うむむ……」とアロナは健気に考え込むが、すぐに「でも、先ずは!」と勢いよく顔を上げた。

 

「サンクトゥムタワーの問題からなんとかしなければなりません! シャーレのビルが取り返せても、タワーが使えないとキヴォトスの大混乱は止まりませんから!」

 

「えー、ホントにそんな大層なこと、お菓子のおまけみたいなお前にできるでござるかあ? 実はただのテトリス専用機でしたー、みたいなオチじゃねえの?」

 

「もー、バカにしないでくださいよ! 私は凄いってところを、今から先生にドカンと見せつけてやるんですから!」

 

 ふんす、と鼻を鳴らしたアロナは、その場でゆっくりと目を閉じ、両腕を左右に大きく広げた。

 途端に、それまでのんびりとしていた教室の空気が一変する。周囲にはSF映画さながらに、ホログラムの電子ウィンドウが幾つも幾つも激しく展開され、彼女の唇からは、先ほどまでの幼さを感じさせないシステマチックな呟きが淡々と紡がれてゆく。

 

「制御権へのアクセス開始……完了。ダウンロード、完了……サンクトゥムタワー行政システム、完全掌握……」

 

 その少女の細い呟きに連動するように、シッテムの箱から放たれる青い光の波動が、閉ざされた暗い部屋から外の世界へと一気に解き放たれ……そしてくるん、とアロナがその場で回ると自慢げに微笑みを浮かべた。

 

「……はい、これでサンクトゥムタワーの制御権を私の統制下に置くことができました!」

 

『シッテムの箱』の画面の中で、アロナがこれ以上ないほど誇らしげに小さな胸を張った。

 だが、そのあまりにもあっけらかんとしたドヤ顔に、銀時はケッと喉を鳴らしつつ頭の後ろで両手を組んだ。

 

「……どーだか。口先だけなら、銀さんだって今すぐこの世界の神にでもなれるわ」

 

「あー! 信じてませんね!? 泣きますよ!? 私、泣いたらめちゃくちゃ面倒くさいんですからね!?」

 

 先ほどよりも更にぷくーっと頬を膨らませ、駄々をこねるようにジタバタと暴れだすアロナ。そのあまりにスケールの小さい幼児退行っぷりに、銀時は容赦なく顔をしかめる。

 

「自分で自分のこと面倒くさいって言うんじゃねーよちんちくりん! どんな脅し文句だよ!」

 

「もー! ……これでお望みなら、今のキヴォトスは先生の支配下にあるも同然なのに……。お望みとあれば、キヴォトスの半分……いや全部を先生のものにして差し上げてもいいんですよ?」

 

 悪びれもせず、むしろ極上のプレゼントを提案するかのように、アロナは満面の笑みでとんでもないスケールの独裁計画を口にした。

 

「待って!? なんか裏ボスの魔王みたいな物騒なこと聞こえたんだけど!? 秘書AIってそんな『世界の半分をくれよう』みたいなダークサイドな機能ついてんの!?」

 

「あ、でも先生さえ承認してくだされば、この制御権をそのまま連邦生徒会に移管できますよ!」

 

キリッとした表情に戻り、何事もなかったかのように綺麗に話を切り替えるアロナに青筋を浮かべながらも、銀時は疲れたようにため息を漏らしてから手をヒラヒラと振った。

 

「おーい! 都合の悪いツッコミだけ華麗にスルーすんな! なんなんだよホント! ボケてツッコミをスルーされることほど寂しいことってあんまねえんだぞ!? ……まあ、移管するならさっさと移管しとけ。俺、行政とか政治とか、そーゆーお堅いルールは皆目知らねえし。そういうのは上のお偉いさんに丸投げするに限るわ」

 

「分かりました! それではマスターの承認を確認。これよりサンクトゥムタワーの制御権を連邦生徒会へと移管します!」

 

 アロナが笑顔で画面のホログラムをパチンと指で弾くと、キヴォトスの空を貫く巨大なタワーの光が、本来の穏やかな色彩を取り戻していくのだった。




ここまで読んでくださりありがとうございました。

シナリオを読みながら作業している際に、初めからだとかになってしまうと「オワァァァァァァァ!?!?」と奇声を上げるようになりました。

次の一話で恐らくプロローグ終了です。実験的に綴った物語ですので、これ以降の物語を書くかどうかは……まあ、その、ね?やる気を煽ってくだされば嬉しいです。

それでは明日の21:00にまた。

追記:地の文の追加をしました。
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