コロッサル•バウンティ   作:担々餅

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新章です


惑星ノクターン編
ご指名ありがとうございまーす


 

 

 

 

宇宙を漂うアルマの安物シャトル。

 

コックピットの中で、アルマは座席を最大限まで倒し、ほとんど寝そべるような姿勢で端末をいじっていた。

 

惑星パクスを脱出してから、数日が経っていた。

 

「……はぁ。星核ハンターの新しい目撃情報、まだ出てねえな」

 

カフカたちの足取りは、ぱったりと途絶えていた。エルドラド・セカンドでの一件以来、星核ハンターはどこかに潜伏しているのか、賞金首データベースにも新しい情報は上がってきていない。

 

「数百億……数百億が、また遠のいていく……」

 

アルマは天井に向かってだらしなく呟いた。パクスでもらった2000万信用ポイントは、確かに今日明日の生活には困らない額だ。しかし、星が買えるレベルの懸賞金には、塵にも等しい。

 

「あークソ、また日銭仕事探すしかないか」

 

アルマはスマートフォン型の端末を操作し、いつもの賞金首データベースや、地域の求人情報を漁り始めた。

 

宇宙海賊、密輸業者、小規模なテロ組織。どれもこれも、懸賞金は数万から数十万信用ポイント程度。アルマの実力からすれば一瞬で片付けられる相手だが、報酬がそれに見合っていない。

 

「……ん?」

 

その時、端末に新しい通知が表示された。

 

【緊急指名依頼:アルマ様へ】

【依頼主:長春商会系列・ヴェール特別事務局】

【内容:重要物品の回収協力】

【報酬:応相談(最低保証額1000万信用ポイント〜)】

【場所:惑星ノクターン】

 

「……指名? 俺が?」

 

アルマは目をこすって、もう一度画面を見た。間違いない。「アルマ様へ」という、明確な個人名指定の文字が表示されている。

 

「うおおおお、ついに俺の実力が認められたか!? エルドラドでの一件が噂になって、ヴェールってとこから直接指名が来た……!?」

 

アルマはガバッと座席から飛び起きた。

 

「最低保証額1000万って書いてあるし、『応相談』だから、もっと跳ね上がる可能性もある……! これは、これは、行くしかねえ……!」

 

アルマは目をギラギラさせながら、依頼の詳細を読み進めた。

 

「惑星ノクターン……? なんか聞いたことあるような、ないような……まあいいや、行ってみればわかるか」

 

惑星ノクターンの座標が、自動的にナビゲーションシステムに転送される。

 

「待ってろ、俺を指名してくれた依頼主さんよ……! この俺が、その『重要物品』、サクッと回収してやんよ……!」

 

アルマはシャトルのエンジンを起動した。

 

「次こそ、永遠のニートライフへの第一歩だ……!」

 

シャトルは超空間へと跳躍し、惑星ノクターンへと進路を取った。

 

§ § §

 

惑星ノクターン。

 

宇宙の交易路の中継地点として栄えてきたこの星は、表向きは「眠らない不夜城」として知られる、煌びやかな歓楽惑星だった。

 

惑星全体が、常に「夜」の状態に保たれている。これは天体の配置による自然現象だが、その永遠の夜を埋め尽くすように、無数のネオンサインと提灯のような照明が街全体を彩っていた。エルドラド・セカンドの「金ピカ」とは違う。ノクターンの光は、ピンク、紫、青緑、橙色――様々な色彩が混ざり合い、まるで万華鏡の中に迷い込んだかのような賑やかさだ。

 

着陸ポートにシャトルを停めたアルマは、タラップを降りた瞬間、思わず大きく息を吸い込んだ。

 

「……うわあ」

 

アルマの第一声は、感嘆だった。

 

通りには、無数の屋台や露店が軒を連ねている。香辛料の効いた肉を焼く匂い、甘い砂糖菓子の匂い、見たこともない異星の果物の匂い――様々な匂いが混ざり合い、アルマの鼻腔を刺激した。

 

通りを行き交うのは、様々な種族の旅人や商人たち。笑い声、楽器の音、客引きの声、値段交渉の声――あらゆる音が重なり合って、街全体が一つの生き物のように息づいていた。

 

「パクスとは大違いだな……」

 

アルマはぼそりと呟いた。

 

白と銀の無機質な世界。誰も喋らず、誰も笑わない、息の詰まる星。それと比べれば、ノクターンはまさに対極だった。

 

「これだよ、これ! 緑はないけど、まあ……これくらい賑やかなら、息は詰まらないな!」

 

アルマはフードを少しだけ後ろにずらし、街並みを眺めながら歩き出した。

 

「うわ、あの串焼き、めちゃめちゃ美味そうな匂いするじゃん……。あっちの店も、なんか色とりどりの飲み物が並んでて……。どれから手をつけたらいいんだ……」

 

依頼のことなど、一瞬で頭から飛びかけていた。

 

「……いや、待て待て。まずは依頼だ、依頼。腹が減っただけで仕事を忘れるな、俺」

 

アルマは自分に言い聞かせながら、端末を取り出し、依頼の詳細をもう一度確認した。

 

「ヴェール特別事務局……。集合場所は、街の中心部にある建物らしいな」

 

アルマは端末のナビゲーションに従って、賑やかな大通りから、少し奥まった路地へと足を向けた。

 

§ § §

 

路地に入ってから、アルマは何かに気づいた。

 

「……あれ?」

 

すれ違う人々の中に、明らかに「観光客」や「商人」とは違う雰囲気の連中が、ぽつぽつと混ざっていることに気づいたのだ。

 

腰に大型のブラスター銃を提げた、いかつい体格の男。背中に巨大な戦斧を背負った、覆面をした人物。指先に妙な機械の義手を取り付けた、目つきの鋭い女。

 

「……なんか、こういう奴ら多いな」

 

アルマは歩きながら、天賦の才を僅かに働かせた。彼らの「気配」を、何気なく数えていく。

 

一人、二人、三人……。視界に入る範囲だけで、十人以上。さらに、視界の外、建物の陰や上層階の窓の奥にも、似たような「気配」がいくつも潜んでいるのが感じられた。

 

「……まさか」

 

アルマはふと、自分が受け取った依頼のことを思い出した。

 

【緊急指名依頼:アルマ様へ】

 

「俺、宛て……だよな?」

 

アルマは端末をもう一度確認した。確かに自分の名前が指定されている。

 

しかし、この街にいる「武装した連中」の数を考えると、どう考えても異常だった。

 

「……これ、もしかして」

 

アルマの脳内で、嫌な予感がじわじわと広がっていく。

 

「俺だけじゃなくて……他の賞金稼ぎとか、傭兵連中にも、似たような『指名依頼』が大量にばら撒かれてる……ってこと?」

 

ふと、すれ違ったいかつい男が、何やら端末を確認しながら呟いているのが聞こえた。

 

「……『あなただけに特別な依頼を』ねえ……。おいおい、こんな美味い話、いったい何人に『特別』って言って回ってんだよ」

 

「……」

 

アルマの中で、何かがガクッと崩れる音がした。

 

「……俺、指名されたんじゃ、なかったのか……」

 

しばらく、アルマは路地の真ん中で立ち尽くした。

 

頭上を見上げると、上層階の窓からも、武装した影がいくつもこちらを見下ろしている。みんな同じような「指名」を受けて、同じ場所に向かっているのだろう。

 

「……まあ……」

 

アルマは少しの間、肩を落としていた。しかし、それは本当に少しの間だった。

 

「……いや、まあ、いいか」

 

アルマはフードを被り直し、不敵な笑みを浮かべた。

 

「『指名』が建前でも、依頼自体は本物なんだろ? 『重要物品』が一つだけなら……早い者勝ち、ってことだよな?」

 

アルマは路地の奥を見据えた。

 

「だったら、さっさと話を聞いて、さっさと動いた方が得だ」

 

その瞬間、アルマの足取りは一気に早くなった。

 

「待ってろよ、『重要物品』……! 俺が一番にゲットしてやるからな……!」

 

§ § §

 

ヴェール特別事務局――表向きは、長春商会の出張所という体裁を取った、街の中心部にある豪奢な建物だった。

 

アルマが受付で名前を告げると、すぐに上層階の応接室へと案内された。

 

応接室の扉が開くと、そこには、丸々と肥えた体型に、これでもかというほど高価な装飾品を身につけた中年の男が、ふかふかのソファに座って待っていた。

 

「おお、おお! あなたが、アルマ様ですね!」

 

男は、わざとらしいほどの満面の笑みを浮かべ、大げさに両手を広げた。

 

「ようこそ、ようこそ! このノクターンへ! 私はヴェール特別事務局の局長、ガロアと申します!」

 

「……どうも」

 

アルマは、フードの奥から、その男――ガロアを観察した。

 

笑顔は完璧。態度も恭しい。しかし、その目の奥には、計算高さと、わずかな焦りのようなものが見え隠れしていた。

 

「アルマ様のご活躍は、もちろん存じております! あのエルドラド・セカンドでの一件……いやいや、星核ハンターの刃と互角に渡り合われたとか! 素晴らしい! 我々は、ぜひアルマ様のお力をお借りしたく、こうして特別にお声をかけさせていただいたのです!」

 

「……特別に、ね」

 

アルマは、ソファに腰を下ろしながら、ぼそりと呟いた。

 

「ええ、もちろんです! アルマ様だけに、この重要な依頼を……! あ、申し遅れましたが――『ヴェール』とは、このノクターンの裏側に広がる非合法な取引や組織のネットワーク全体を指す名称でございます。我々は、長年このノクターンの裏の秩序を、陰ながら守ってまいりました」

 

「……あー、はいはい。それで、依頼の内容は?」

 

アルマは、ガロアの言葉を適当に切り上げた。

 

(……どうせ、こいつも『特別』とか言いながら、似たような台詞を何十人にも言ってるんだろうな)

 

路地で見た、武装した連中の数。ガロアの「特別」という言葉に滲む白々しさ。アルマの中では、もうほとんど答えは出ていた。

 

しかし、それを今ここで指摘したところで、何かが変わるわけでもない。

 

(依頼自体が本物なら、それでいい。さっさと話を聞いて、さっさと行動するだけだ)

 

ガロアは、アルマの反応に一瞬だけ戸惑ったような表情を見せたが、すぐに笑顔を取り繕い、話を続けた。

 

「ゴホン……失礼。それでは、依頼の内容についてご説明いたします」

 

ガロアは、手元の端末を操作し、一枚の写真を表示した。

 

そこに映っていたのは、街の外れにそびえる、古びた荘厳な霊廟だった。

 

「こちらは『静寂の霊廟』。我々ヴェールを長年取りまとめていた、先代のボスが眠る場所です」

 

「……ボス?」

 

「ええ。先代のボスは、つい先日、病でお亡くなりになりました。その霊廟には、ボスが生前、大切に保管していた『重要物品』が安置されています」

 

「重要物品って、具体的に何なんだ?」

 

「それが……」

 

ガロアは、少し声を落とした。

 

「我々にも、正確には分からないのです。ただ、ボスは生前『これは、計り知れない価値を持つ宝だ』とおっしゃっていました。霊廟の奥に厳重に保管されており、誰も詳しく調べたことがない、と」

 

「……宝、ねえ」

 

アルマの目が、わずかに輝いた。

 

(計り知れない価値……! それが本当なら、最低保証の1000万なんて、はした金になる可能性も……!)

 

「アルマ様には、その『重要物品』を、霊廟から回収していただきたいのです。霊廟には、ボスが生前仕掛けた様々な防衛機構が残っており、一般人では立ち入ることすら困難な状態でして……」

 

「ふむふむ」

 

「回収していただいた『重要物品』は、こちらで鑑定の上、その価値に応じた報酬をお支払いいたします。最低保証額は1000万信用ポイントですが、もし本当に『計り知れない価値』を持つ品であれば……」

 

ガロアは、わざとらしく言葉を切った。

 

「……億単位の報酬になることも、ある、と?」

 

アルマが、思わず前のめりになった。

 

「あくまで『応相談』ですが……可能性としては、ゼロではないでしょうね」

 

「……よし、わかった」

 

アルマは、勢いよく立ち上がった。

 

「その依頼、受けた。霊廟は街の中心部、だったよな?」

 

「は、はい! こちらに地図と、霊廟内部の簡単な情報をまとめた資料がございます」

 

ガロアは、慌てて端末を操作し、資料をアルマの端末に転送した。

 

「健闘を、お祈りいたします、アルマ様」

 

「ああ」

 

アルマは、資料を確認しながら応接室を出た。

 

廊下を歩きながら、アルマは小さく息を吐いた。

 

「……『特別』とか言いながら、絶対他にも同じこと言ってる依頼主、何人もいるんだろうな」

 

アルマは、フードを被り直した。

 

「まあ、いいさ。億単位の可能性がある、っていうのは本当っぽいし……それなら、これは『早い者勝ちの大チャンス』ってことだ」

 

アルマの足取りは、街の中心部――『静寂の霊廟』へと向かって、一気に速度を上げた。

 

§ § §

 

その頃、宇宙の彼方。

 

星核ハンターの移動アジトでは、カフカが優雅に紅茶を飲みながら、端末の画面を眺めていた。

 

「……そろそろ時間ね」

 

画面には、エリオから送られてきた「脚本」の断片が表示されている。

 

【惑星ノクターン:静寂の霊廟にある重要物品の回収。実行者:カフカ、銀狼】

 

「銀狼、準備はできた?」

 

カフカが呼びかけると、隣の部屋からキーボードを叩く音が響いてきた。

 

「もちろん。ノクターンの座標、もう入力済み。あとは出発するだけ」

 

銀狼が部屋から出てきながら、肩を竦めた。

 

「ねえ、カフカ。今回、アルマに会えるかな」

 

「さあ、どうかしらね。エリオの予言には、特に何も書かれていなかったけれど」

 

「ちぇー、つまんないなー」

 

その時、廊下の奥から、ドスドスと不機嫌な足音が近づいてきた。

 

「……俺も行く」

 

姿を現したのは、刃だった。その表情は、いつもの「世界に飽きた死んだ目」よりも、さらに不機嫌そうな色を帯びていた。

 

「あら、刃ちゃん。予言には、あなたの名前は入っていないわよ」

 

「知っている」

 

刃は短く答えた。

 

「だが、行く」

 

「予言にない行動をするのは、エリオの計画に支障が出るかもしれないわ」

 

「知っている」

 

刃はもう一度、同じ言葉を繰り返した。その声には、わずかに苛立ちが滲んでいた。

 

「……ノクターンに、小僧が来るかもしれない、という可能性が、ゼロではないのだろう?」

 

「ゼロじゃないけど、限りなく低いと思うわよ」

 

「それでも、ゼロではない」

 

刃は腕を組み、不機嫌そうに壁にもたれかかった。

 

「あの剣の感触を、もう一度味わいたい。それだけだ」

 

カフカは、刃のその様子を見て、思わず小さく笑った。

 

「……刃ちゃんがそんなに『行きたい』って自分から言うの、珍しいわね」

 

「茶化すな」

 

「茶化してないわよ。ただ……ちょっと、可愛いと思って」

 

「……」

 

刃は無言で、さらに不機嫌そうに眉根を寄せた。

 

「で、結局どうするの? 刃ちゃんも連れて行く?」

 

カフカが銀狼に尋ねると、銀狼は端末を操作しながら答えた。

 

「うーん、エリオの予言には『カフカと私』の二人って明記されてるからなぁ。第三者が同行すると、予言の整合性にどんな影響が出るか、ちょっと読めないんだよね」

 

「……」

 

刃の表情が、さらに曇った。

 

「最悪、刃が行くことで予言が大きくズレて、重要物品の回収自体に失敗する……みたいなことも、ゼロじゃないと思う」

 

「……」

 

刃は、何も言わなかった。ただ、その目には、明らかな「不満」と「諦め」が混じっていた。

 

「ごめんね、刃ちゃん。今回は、置いていくわ」

 

カフカは、刃の肩に軽く手を置いた。

 

「もし、ノクターンであの子に会えたら……あなたのことも、ちゃんと伝えておくから」

 

「……べつに、伝えてくれなくてもいい」

 

刃はそう言いながらも、その声には、明らかな未練が残っていた。

 

「ただ……もし、本当に会ったら……」

 

「ん?」

 

「……『次は俺が行く』と、伝えておけ」

 

カフカは、その言葉を聞いて、思わず噴き出した。

 

「ふふっ……わかったわ。ちゃんと伝えておく」

 

刃は、ふんと鼻を鳴らして、踵を返した。

 

「俺は部屋に戻る。出発の準備、しっかりしておけ」

 

刃が去っていく後ろ姿を見送りながら、銀狼がぼそりと呟いた。

 

「……刃って、なんか最近、わかりやすくなったよね」

 

「そうね」

 

カフカは、優雅に紅茶を一口飲んだ。

 

「少しだけ、人間らしくなったと思うわ」

 

§ § §

 

刃が部屋へと戻った後、銀狼は端末に向き直り、ノクターンの情報網に深くハッキングを仕掛けた。

 

「お、出た出た」

 

銀狼は、画面に表示された膨大なリストを眺めながら、にやりと笑った。

 

「やっぱりすごい数の『指名依頼』が出てるね。しかも全部、文面が同じ。これ、完全にコピペじゃん」

 

「あらあら」

 

カフカが、優雅に紅茶を飲みながら、画面を覗き込んだ。

 

「ヴェール側が、重要物品の存在に気づいて……でも、それが何かは正確に把握できていない。だから手当たり次第に協力者を募った、ってところね」

 

「だろうね。文面も『あなただけに』とか『特別に』とか、お決まりの台詞ばっかり」

 

銀狼は、リストをスクロールしながら、依頼を受けた人物の名前を一つ一つ確認していく。

 

「えーと……賞金稼ぎギルドの常連、傭兵団のリーダー、フリーランスの戦闘員……うわ、本当にすごい数だね、これ」

 

その時、銀狼の手が、リストの一点で止まった。

 

「……あ」

 

「どうしたの?」

 

「カフカ、ちょっとこれ見て」

 

銀狼は、画面を指でさした。

 

そこには、こう表示されていた。

 

 

【依頼対象:アルマ】

【ステータス:依頼受諾済み】

 

 

カフカの目が、ゆっくりと見開かれた。

 

「……あら」

 

「これ、絶対あのアルマだよね? 」

 

「間違いないでしょうね」

 

カフカの口元に、ゆっくりと笑みが広がっていった。

 

「あの子も、依頼を受けて、ノクターンに来ているのね……」

 

「ねえねえ、これってつまり」

 

銀狼が、わくわくした様子で、カフカに詰め寄った。

 

「私たちと、アルマが、同じ『重要物品』を取り合うことになる……ってこと?」

 

「そういうことになりそうね」

 

カフカは、紅茶のカップを優雅に置いた。

 

「私たちはエリオの予言で『重要物品』を回収しに行く。アルマも、ヴェールの依頼で同じ『重要物品』を回収しに行く……どうやら、目的は一致しているようね」

 

「うわー、これは面白いことになりそう!」

 

銀狼は、興奮した様子で、両手を打ち合わせた。

 

「ねえ、刃に教えてあげなくていいの? アルマがノクターンにいるって知ったら、絶対『俺も行く!』って言い出すよ」

 

カフカは、少し考えるような表情を見せた。

 

「……そうね。でも、今教えたら、刃ちゃんが無理を言って、本当についてきちゃうかもしれないわ」

 

「それは……まあ、ありそうだね」

 

「今はまだ、黙っておきましょうか。もし、本当にあの子と鉢合わせたら……その時に、ちゃんと伝えるわ。『次は俺が行く』という、刃ちゃんからの伝言も含めて」

 

カフカは、くすりと笑った。

 

「さて、銀狼。私たちも、ノクターンに向かいましょうか」

 

「了解!」

 

銀狼は、モニターを操作し、ノクターンへの座標を設定した。

 

「いやー、これは退屈しないで済みそうだなぁ」

 

星核ハンターの移動アジトは、静かに超空間へと跳躍し、惑星ノクターンへと進路を取った。

 

その先には、アルマが向かっている『静寂の霊廟』が、静かに待っている。

 

享楽の地、ノクターン。

 

その中心で、運命の糸が、再び絡み合おうとしていた。

 

 

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