機動戦士ガンダムSEED DESTINY ~空白の少女~   作:割戸三葉

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150.ダイスゲーム 1

ダイダロスへ向かうエターナルの前方で、メサイア防衛隊の戦列が大きく崩れた。

 

MA形態のムラサメが防衛隊の頭上を高速で横切り、振り向いたザクの射線を外へ引きずっていく。

開いた中央にはジュール隊が入り込み、左右へ散ろうとした機体を3機のドムトルーパーが待ち受けていた。

 

ヒルダが中央を走る。

その両脇をマーズとヘルベルトが固め、正面から集中した射撃をシールドで分け合うように受け止めた。

 

「右、来るよ!」

「任せろ!」

「そのまま行け、ヒルダ!」

 

マーズが右から回り込んだグフを押し返し、ヘルベルトの大型ビーム砲が左側のザクを戦列から追い出す。

2機が開いた中央をヒルダが抜け、ビームサーベルを振り抜いた。正面にいたザクのライフルが切断され、続いて飛び込んだムラサメがその脇を抜ける。

 

3機が離れた次の瞬間には、もう別の三角形を作っていた。

ヒルダを狙えば左右から撃たれ、マーズかヘルベルトへ向けば中央からヒルダが踏み込んでくる。

 

デュエルブリッツで前線を押していたイザークの視線が、思わず3機へ向いた。

 

「なんだ、そのMSは……」

 

ずんぐりとした機体だった。

見た目から想像する重さを感じさせず、3機が互いの死角を塞ぎながら防衛隊の中へ食い込んでいく。

 

その上をムラサメが通り抜ける。

ザフト側が上へ照準を向けた瞬間、ドムトルーパーが正面を押し、下へ向き直ればムラサメが背後へ回った。

 

「隊長、右が開くぞ!」

 

ディアッカの声に、イザークはすぐ正面へ視線を戻した。

大型砲の射撃に追われた2機のザクが左右へ散り、その間へジュール隊が入り込む。

 

エターナルの前に、ダイダロスへ続く細い進路が生まれ始めていた。

 

その時、通信が割り込んだ。

 

「ジュール隊長! 応答しろ!」

 

イザークのモニターにメサイア防衛隊を指揮する隊長が映る。

背後では警報と報告が重なり、声にも焦りが滲んでいた。

 

「聞こえている」

「一体どうしたんだ! 任務を放棄するつもりか! 貴隊まで敵に回れば、ここを守り切れん!」

 

イザークは接近してきたグフの斬撃をシールドで外し、すれ違いざまに武器を持つ腕を切り落とした。

 

「レクイエムを撃つことが任務だと言うのか!」

「議長からの命令だ! 我々はザフト軍人だぞ!」

「あのような兵器を用いるなど、ザフトのやることではない!」

 

デュエルブリッツが再び前へ出る。

 

「俺たちはエターナルを通す。死にたくなければ道を開けろ!」

「イザーク・ジュール……!」

 

防衛隊長の顔が歪む。

数秒後、通信が切れた。

 

「全機、メサイア前面へ後退! 防衛線を組み直せ! せめて要塞には近づけるな!」

 

防衛隊が一斉に下がった。

要塞側からの支援射撃が厚くなり、後退したMSがその射線へ重なるように陣形を組み直す。

 

イザークもジュール隊を止めずに前へ出した。

 

「深追いするな! エターナルの進路を開ければいい!」

「了解!」

 

ムラサメが左右へ広がり、ドムトルーパー3機も前線へ戻る。

押し込まれていた防衛隊がメサイアを背に持ち直し、両軍のビームが正面で激しく交差した。

 

その戦場へ、後方から4つの機影が近づいてきた。

 

「エターナル、後方より高速接近! MS4機!」

「所属は?」

「不明です!」

 

バルトフェルドが後方表示へ目を向ける。

 

小さい。

胴体と同じほど大きな翼を広げた4機が、宇宙を泳ぐ魚のように戦場へ入ってくる。

 

先頭を飛んでいた1機が上へ。

残る3機も左右と下方へ散り、ジュール隊とムラサメ隊を大きく囲んだ。

 

各機の背面から、尻尾のような有線ドラグーンが伸びる。

 

緑色のレーザーが空間を横切った。

 

1本が上を塞ぎ、2本目が斜めに走る。

さらに別方向から光が重なり、エターナル側のMS群の周囲へ幾何学的な線が増えていった。

 

「何をする気だ?」

 

ディアッカが照準を動かす。

 

ムラサメ1機が、前方に開いた隙間へ加速した。

機体が緑色の線を越えたところで、右後方を飛んでいたバンパイアが反転する。

 

ビームが横腹へ突き刺さった。

 

「っ!」

 

ムラサメが姿勢を崩し、2射目が胴体を撃ち抜く。

火球が広がった瞬間、近くにいたザク2機が左右へ散った。

 

右へ逃げた1機の前へレーザーが滑る。

パイロットが上方へ進路を変えると、そこには別のバンパイアが回り込んでいた。

 

「上だ!」

 

警告と射撃がほぼ同時だった。

ビームがザクの胸部を貫き、機体が爆発する。

 

イザークが周囲を見る。

 

緑色の線は固定されていない。

4機が動くたびに角度が変わり、開いた空間が閉じ、別の場所に新しい隙間が生まれている。

 

「線だけを見るな! その先にいる機体を見ろ!」

 

デュエルブリッツがライフルを撃つ。

狙われたバンパイアが上昇すると、有線ドラグーンも引かれ、1本のレーザーが大きく傾いた。

 

イザークがそこへ踏み込む。

 

左下のバンパイアが射撃位置へ入る。

シールドで1射を弾いたところへ、さらに右後方から光が伸びた。

 

ディアッカの砲撃がその間へ割り込み、2射目を撃とうとしたバンパイアを追い払う。

 

「こいつら、逃げ道を作って待ってやがる!」

 

ディアッカの声が硬くなる。

 

防衛隊も動いた。

バンパイアがジュール隊の進路を狭めた外側からザクとグフが押し寄せ、レーザーの間へビームを重ねてくる。

 

エターナル側の前進が止まった。

 

「防衛隊、前へ! 今のうちに包囲しろ!」

 

メサイア側が押し返す。

ジュール隊のザクがシールドで射撃を受け、その脇へムラサメが入ろうとすると、緑の線が進路を横切った。

 

ムラサメは機首を振る。

動いた先へバンパイアが照準を合わせる。

 

イザークのライフルが先に飛び、相手を射撃位置から追い出した。

 

「4機を同時に崩すぞ! 各隊、別方向から仕掛けろ!」

 

ジュール隊が一斉に散開する。

 

バンパイアも形を変えた。

上にいた1機が後退し、左の1機が高度を下げる。緑色の線が折れ曲がるように移動し、広がったジュール隊をいくつかの小さな区画へ分断した。

 

イザークが1機へ踏み込む。

相手が距離を取った先へディアッカが砲撃を重ねる。

 

バンパイアは横へ滑り、空いた位置へ別の1機が入った。

 

レーザーが繋がり直す。

 

「ちっ……!」

 

再び進路が閉じる。

 

その光景を少し離れた場所から見ていたヒルダが、機体を前へ向けた。

 

「マーズ、ヘルベルト」

「なんだ?」

「あたしを真ん中まで通しな」

「了解」

「やるか」

 

3機のドムトルーパーが並ぶ。

 

ヒルダが中央。

マーズとヘルベルトが左右へ出て、シールドを前へ構えた。

 

「行くよ!」

 

3機が一気に加速する。

 

正面へ緑色のレーザーが滑った。

ヒルダは速度を落とさず、そのまま線を越える。

 

右奥にいたバンパイアがビームを放つ。

 

マーズが前へ入り、シールドで受けた。

 

次は左上から来る。

ヘルベルトが機体を寄せ、2射目を防ぐ。

 

「連携なら、こっちだって負けてないよ!」

 

2機の間からヒルダが飛び出した。

 

正面のバンパイアが射撃を切り、横へ逃れる。

ヒルダはそこまで追いつき、ビームサーベルを振り抜いた。

 

相手が翼を畳むように身を翻す。

斬撃を避けるために大きく動いた機体へ、有線ドラグーンが引かれた。

 

緑色の線が大きく傾く。

 

別の1機が穴を埋めようと動く。

その進路へイザークの射撃が飛んだ。

 

「今だ! 全機散れ!」

 

ジュール隊とムラサメが一斉に四方へ抜ける。

 

バンパイア4機の位置が広がった。

それぞれが新しい配置へ移ろうとするところへ、ジュール隊が射撃を重ね、ムラサメが高速で横切って進路を削っていく。

 

マーズとヘルベルトもヒルダの左右へ戻った。

 

今度はエターナル側が4機を囲む。

 

バンパイアの1機が上へ抜けようとした。

ディアッカの砲撃がその進路へ走り、機体は横へ滑る。

 

そこへムラサメ2機が射撃を重ねた。

 

翼端の装甲が弾ける。

 

「きゃっ……!」

 

幼い悲鳴が通信へ漏れた。

 

ジュール隊の射撃がわずかに乱れた。

 

「……今の」

「子供の声……?」

 

エターナル艦橋でも同じ通信を拾っていた。

バルトフェルドの視線がモニターへ向く。

 

「発信元は?」

「今、被弾した敵機です」

 

傷ついたバンパイアは旋回し、残る3機の方へ戻っていく。

翼の一部を失っただけで推進は衰えず、再び有線ドラグーンを外側へ向けた。

 

「攻撃を続けろ!」

 

イザークの声が戦場へ響く。

 

「相手はまだ戦える! 止まればこっちがやられるぞ!」

 

デュエルブリッツがライフルを向ける。

照準の中央へ、先ほど声を上げたバンパイアが入った。

 

ビームが走る。

 

光は機体の肩口をわずかに外れ、その後方へ消えた。

 

イザークは次の標的へ照準を移す。

 

ヒルダが別の1機へ踏み込み、マーズがその退路を塞ぐ。

バンパイアが上方へ逃れると、今度はジュール隊のザクが待っていた。

 

射撃に追われて高度を下げる。

配置へ戻る前にヘルベルトの砲撃が正面を横切った。

 

4機が少しずつ中央へ寄せられていく。

 

緑色のレーザーが何度も伸びる。

繋がりかけた線は、ジュール隊かドムトルーパーの攻撃で位置をずらされ、そのたびに形を変えた。

 

メサイア防衛隊も外側から射撃を続けている。

ディアッカがそちらへ砲口を向け、接近したザクを追い払った。

 

「隊長、こっちだけ見てると外から食われるぞ!」

「分かっている! 防衛隊も押し返せ!」

 

エターナルを挟み込もうとしていた戦線が、再び広がっていく。

 

4機のバンパイアは互いの死角を塞ぐように距離を縮めた。

翼を傷つけた機体も、先頭に立つ1機のすぐ後ろへ入る。

 

緑色の光がもう一度、ジュール隊の前へ伸びた。

 

イザークはシールドを上げる。

 

「来るぞ! ここから先へ出すな!」

 

*****

 

アカツキとネメシスの光刃がぶつかり、2機の間で粒子が散った。

 

大型ビームサーベルを受け流したアカツキが横へ抜ける。

ネメシスは回転しながら4本の補助腕を開き、左右からビームナイフを差し込んできた。

 

ネオはシールドを傾けて右の刃を流し、左をサーベルで弾く。

機体を沈めた頭上へ3本目が走り、姿勢を戻すところへ4本目が伸びた。

 

アカツキが後方へ跳ねる。

 

ネメシスも距離を詰め、大型ビームサーベルを振り下ろした。

ネオはサーベルを合わせながら機体を横へ流し、刃が噛み合った瞬間に力を逃がす。

 

2機が離れた。

 

ネオは黒い機体を見つめたまま、眉を寄せる。

先ほどから胸の奥に残っている感覚が消えない。

 

相手の強さに対する緊張とも違う。

顔も知らないパイロットの存在そのものが、妙に神経へ触れていた。

 

「妙な話なんだが」

 

通信を開く。

 

「お前と戦ってると、どうにも気分が悪い」

 

短い間のあと、No.2が答えた。

 

「同感だ」

「そっちもか」

「理由は分からない」

 

ネメシスが加速する。

 

会話を続けながら大型ビームサーベルが横薙ぎに走り、ネオはアカツキを上へ振った。

その下へ補助腕が2本伸び、逃げた先をさらに2本が追う。

 

シールドとサーベルが連続して光刃を弾く。

最後の1本を外したところで、アカツキが一気に距離を開いた。

 

ネオは照準を合わせる。

 

「まずは、こいつがどこまで硬いかだな」

 

シラヌイの3連ビーム砲が火を噴いた。

 

複数の太い光がネメシスへ集中する。

No.2が機体を傾け、1射を外した。残る光が肩と胴体を捉える。

 

黒い装甲に赤い輝きが走った。

 

命中した一点から光が広がり、胸部から肩、背面へ流れていく。

ネメシスはその輝きをまとったまま火線を抜け、速度を上げた。

 

ネオの目が細くなる。

 

「厄介だな」

 

ビームライフルを構え、接近してくるネメシスへ撃つ。

2射が黒い装甲へ当たり、同じように赤い光となって散った。

 

No.2は射撃の中を詰めてくる。

 

ネオはライフルを下げ、サーベルへ持ち替えた。

 

大型ビームサーベルが右上から来る。

アカツキが受け流し、すぐ腹部へ蹴りを入れようとする。

 

ネメシスの補助腕が脚を狙った。

 

ネオは蹴りを途中で引き、機体を反転させる。

背後へ回ろうとした瞬間には、別の補助腕がすでにサーベルを構えていた。

 

「そこまで来るか!」

 

ビームナイフがシールドを擦る。

火花が流れ、その陰から主腕の大型ビームサーベルが突き込まれた。

 

アカツキはシールドで刃の側面を押し、軌道を胸部から外す。

そのまま肩をぶつけ、ネメシスを押し返した。

 

ネオが前へ出る。

サーベルを振り上げた時には、No.2も補助腕2本を交差させていた。

 

光刃が重なる。

 

残る2本が左右から迫り、ネオは攻撃を切り上げて下方へ抜ける。

 

下がった先へネメシスが追う。

ネオが右へ進路を決めた瞬間、No.2の機体はすでにその方向へ傾いていた。

 

「……またか」

 

左へ切り替える。

そこにも大型ビームサーベルが振られる。

 

ネオは距離を取った。

 

シラヌイから2基のドラグーンが離れた。

1基がネメシスの右へ、もう1基が上方へ回り込む。

 

右からビーム。

続いて上から光が走る。

 

No.2が左下へ移動する。

 

ネオはそこへアカツキを踏み込ませた。

正面からサーベルを振るうつもりだった。

 

ネメシスの大型ビームサーベルが先に左下へ向く。

 

ネオは操縦桿を引いた。

 

アカツキが直前で上へ跳ねる。

 

大型ビームサーベルが足元を通過し、その上からアカツキのシールドがネメシスの肩へ叩き込まれた。

 

黒い巨体が横へ流れる。

 

ネオは追いながらサーベルを振るう。

No.2が補助腕で受け、別の腕を脇腹へ回した。

 

ネオの身体が先に反応した。

アカツキが機体を捻り、ビームナイフが装甲の表面を掠める。

 

「考えてから動くと、先に来る……か」

 

2基のドラグーンがもう一度ビームを放つ。

No.2が射線から外れたところへネオが入る。

 

今度は直前まで攻撃方向を決めない。

正面へ踏み込んでから、No.2の大型ビームサーベルが動いた瞬間に左へ抜けた。

 

アカツキのサーベルがネメシスの脇腹へ届く。

 

黒い装甲が赤く光る。

切断には至らず、接触した部分に熱が残った。

 

No.2が反転する。

 

ネオはすぐ離れた。

2基のドラグーンも射撃を終えてアカツキへ戻っていく。

 

ネメシスの背後から黒いドラグーンが1基飛び出した。

 

砲撃ではない。

鋭い刃を向けたまま、アカツキの左後方へ回り込む。

 

ネオは正面の6本腕を見ながら、ドラグーンの位置も視界の端へ入れた。

 

No.2が踏み込む。

 

大型ビームサーベルをサーベルで弾き、続く補助腕をシールドで受ける。

ネオが右へ抜けようとしたところへ、背後のドラグーンが切り込んできた。

 

アカツキが急停止する。

 

黒い刃が目の前を横切った。

 

停止を待っていたようにネメシスの補助腕が伸びる。

ネオはシールドで1本を受け、サーベルで2本目を弾いた。

 

3本目が肩を狙う。

アカツキはネメシスの胸部を蹴り、その反動で包囲から外へ飛んだ。

 

No.2も押し戻される。

 

ネオがライフルを抜き、脇腹へ続けて撃つ。

ビームは赤い光となって散るものの、No.2はその場所をわずかに庇うように機体を捻った。

 

ネオはそこを見逃さなかった。

 

サーベルへ持ち替え、同じ場所へ詰める。

 

黒いドラグーンが戻ってくる。

今度はもう1基が反対側から離れ、2つの刃がアカツキの進路へ入った。

 

ネオは最初の1基をシールドで弾き、2基目の下を潜る。

そのままネメシスへ近づこうとしたところで、大型ビームサーベルが正面へ振り下ろされた。

 

サーベル同士が激突する。

 

押し込む力はネメシスの方が強い。

アカツキの腕が少しずつ下がる。

 

左右から補助腕が迫った。

 

ネオはシールドを1本へ叩きつけ、もう1本を機体の回転で流す。

回転の勢いを使い、そのままネメシスの大型ビームサーベルを外へ押し出した。

 

アカツキの蹴りが肩へ入る。

 

距離が開く。

 

No.2の荒い呼吸が通信へ混じった。

 

ネオは攻撃の手を止めず、ライフルを2射する。

No.2は1射目を外し、2射目を装甲で受けながら前へ出た。

 

呼吸だけが先ほどより明らかに深くなっている。

6本の腕の動きには乱れがなかった。

 

「その息で続けるのか」

 

ネオが低く声を掛ける。

 

「悪いことは言わない。下がった方がいいんじゃないか」

 

数秒、返事がない。

通信にはNo.2の呼吸だけが流れる。

 

「笑えない冗談だ」

 

黒いドラグーンがネメシスへ戻る。

 

No.2は大型ビームサーベルを構え、アカツキを正面へ捉えた。

4本の補助腕も広がる。

 

ネオもシールドを前へ出し、サーベルを構え直す。

 

「そうか」

 

No.2が加速した。

 

アカツキも真正面から踏み込み、金色と黒の2機が再び激突した。

 

*****

 

ミネルバとアークエンジェルは、互いの側面を奪い合うように進路を変え続けていた。

 

両艦の間をミサイルが行き交い、近接防御機関砲の弾幕がその数を削る。

主砲が動けば相手は艦を振り、副砲の射線へ入れば上下へ艦体を逃がす。

 

ここまでの砲撃戦で、どちらも一方的な損傷を許していない。

被弾する位置を選び、使える装甲と火器を残しながら戦ってきた。

 

タリアは戦術表示の一点を見ていた。

 

アークエンジェルの右舷。

 

セラが対空火器を狙い続けた場所だけ、迎撃の密度が明らかに薄い。

 

「ナイトハルト、発射!」

 

ミネルバ両舷のミサイルランチャーから多数のミサイルが放たれた。

 

正面へ集めず、アークエンジェルの左側へ大きく広げる。

白い艦が右へ回れば、その先だけ弾幕が薄くなる形だった。

 

「ミサイル多数! 左方へ広がっています!」

 

ミリアリアの報告を聞き、マリューが戦術表示へ目を向ける。

 

「右へ追い込む気ね。ノイマン、回頭方向に気をつけて」

「了解!」

 

アークエンジェルが艦首を下げながらロールする。

 

「イーゲルシュテルン、迎撃!」

 

残存する近接防御機関砲が火を噴き、迫るミサイルを次々と撃ち落とす。

左舷側の濃い弾幕を避けながら、艦は右へ流れ始めた。

 

タリアがその動きを見る。

 

「トリスタン、右舷前方へ照準!」

「トリスタン、照準!」

 

ミネルバのビーム砲が動く。

 

同時にインパルスが艦の下方から飛び出した。

ルナマリアはアークエンジェルの右前方へ回り込み、ビームライフルを構える。

 

「艦長、右へ回り込む!」

 

連続したビームがアークエンジェルの進行方向を横切った。

 

ノイマンが回頭を深くする。

白い艦の右舷がミネルバ側へ向く。

 

「今よ!」

「トリスタン、撃て!」

 

ビーム砲から2本の光が放たれる。

 

アークエンジェルが艦首を沈める。

1本目は上部を通過し、2本目が右舷外装を掠めた。

 

装甲板が弾ける。

 

「右舷第4区画に被弾!」

「機関は?」

「正常です!」

 

マリューはすぐ正面を見る。

 

「ノイマン、右を長く見せないで。左へ戻して」

「はい!」

 

アークエンジェルが左へ切り返す。

 

そこへインパルスが上方から降りてくる。

ルナマリアがライフルを撃ち、左へ戻ろうとする進路へ光を置いた。

 

ノイマンはさらに艦首を下げ、ビームの下を抜ける。

 

アークエンジェルの主砲がミネルバへ向く。

 

「ゴットフリート、撃て!」

 

大型ビーム主砲が火を噴いた。

 

「回頭!」

 

ミネルバが右へ艦を振る。

1本が艦首の脇を抜け、2本目が左舷上部を掠めた。

 

艦橋が揺れる。

 

「左舷外装損傷! 第6区画、気密維持!」

「火災は?」

「ありません!」

 

タリアはアークエンジェルの回頭を追う。

 

「イゾルデ!」

「イゾルデ、発射!」

 

3連装実弾砲から大型砲弾が放たれた。

 

1発目がアークエンジェルの下方へ。

2発目は上昇した先へ。

3発目がさらに回頭後の位置を狙う。

 

ノイマンは最初の砲弾を見て艦首を上げ、続く2発目へロールを重ねた。

3発目が左舷後部を掠め、外装を大きく吹き飛ばす。

 

「左舷後部に被弾!」

「補助スラスター1基、出力低下!」

「姿勢制御で補って!」

 

アークエンジェルが速度を上げる。

一度距離を取る動きに見えた。

 

タリアは追わず、ミネルバをわずかに左へ振った。

 

その時、アークエンジェルが急に回頭する。

 

「敵艦、反転!」

 

マリューは右舷を一瞬だけミネルバへ見せた。

 

「来るわよ」

 

タリアが身を乗り出す。

 

「ナイトハルト、右舷へ集中!」

「発射!」

 

ミネルバからミサイルが飛び出す。

 

アークエンジェルは発射を待っていた。

ノイマンが操舵輪を切り、白い艦が大きくロールする。

 

右舷へ向かっていたミサイルの正面へ、損傷の少ない艦底側が入る。

 

「イーゲルシュテルン、迎撃!」

 

近接防御機関砲の弾幕が広がり、ミサイルが次々と爆発した。

 

爆煙の向こうでアークエンジェルがさらに回る。

 

「ゴットフリート、ミネルバ!」

「撃て!」

 

大型ビーム主砲が爆煙を貫いた。

 

タリアが目を見開く。

 

「取り舵!」

 

ミネルバが艦首を振る。

光束が右舷外装を掠め、装甲の一部が吹き飛んだ。

 

「右舷に被弾! 第8区画外装損傷!」

 

アーサーが報告を上げる。

 

「右舷を餌にしたのね……」

 

タリアの視線が鋭くなる。

 

アークエンジェルはそのまま距離を詰めてくる。

右舷の弱点を隠すより、一度晒してこちらの攻撃方向を決めさせた。

 

今度はアークエンジェルが主導権を取っている。

 

両艦からミサイルが飛び交う。

 

インパルスがミネルバの前へ出た。

ルナマリアは接近するミサイル群へライフルを連射し、先頭の数発を撃ち落とす。

 

爆発が連なり、残ったミサイルが左右へ分かれる。

 

「左側、私が抑える!」

 

インパルスが左へ飛ぶ。

ケルベロスを構え、アークエンジェルの前方へ太いビームを放った。

 

光は艦体を狙わず、白い艦がそのまま旋回した先を横切る。

 

ノイマンが舵を戻した。

 

「進路を切られました!」

「上へ逃がして!」

 

アークエンジェルが上昇する。

 

タリアがすぐ次を命じる。

 

「トリスタン、上方へ!」

「トリスタン、照準!」

 

ビーム砲がアークエンジェルを追う。

 

マリューも射線を見る。

 

「ノイマン、右へ! 短くよ!」

「了解!」

 

白い艦が右へ滑る。

 

右舷側の迎撃火器が少ない。

ルナマリアはすぐその方向へ機体を向けた。

 

アークエンジェルからミサイルが放たれる。

 

インパルスが途中で照準を変え、迫る弾頭へライフルを連射した。

数発が爆発し、その破片の間を残りが抜ける。

 

「ナイトハルト、迎撃!」

「ナイトハルト!」

 

ミネルバ側から放たれたミサイルが正面でぶつかり、白い閃光が両艦の間を埋めた。

 

爆光の向こうからアークエンジェルが現れる。

 

「ゴットフリート、照準!」

「トリスタン、照準!」

 

2隻の砲塔がほぼ同時に動く。

 

ノイマンがミネルバの砲口を見て艦を傾ける。

ミネルバもアークエンジェルの主砲から外れようと艦首を振った。

 

「撃て!」

「トリスタン、撃て!」

 

光が交差する。

 

ゴットフリートの1射がミネルバの上部装甲を掠め、センサーの一部を弾き飛ばす。

トリスタンのビームもアークエンジェル右舷を捉え、すでに傷ついていた装甲へ新しい焼け跡を残した。

 

両艦が互いに距離を取る。

 

「上部センサー、予備へ切り替え!」

「了解!」

 

タリアは損傷表示を確認し、正面へ戻る。

 

アークエンジェルも回頭を始めていた。

右舷側の表示には複数の警告が重なっている。

 

マリューがノイマンへ声を掛ける。

 

「次から右回頭を浅くして。向こうは完全にあそこを見てるわ」

「了解!」

 

インパルスがミネルバの脇へ戻る。

 

「艦長、まだ行けます!」

「ええ。今度は追いすぎないで。アークエンジェルの向きを制限して」

「了解!」

 

ルナマリアが再び加速した。

 

ミネルバのミサイルランチャーが次弾を装填する。

アークエンジェルの主砲も角度を変え、右舷を庇うように艦体が傾いた。

 

タリアはその動きを見据える。

 

「次、来るわよ。全員、集中して」

 

2隻の戦艦は傷ついた艦体を動かしながら、再び互いの射線を探し始めた。

 

 

 

 

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アスハ家のハラキリ令嬢(作者:アキ山)(原作:ガンダムSEED)

これはIFの世界のお話。▼ウズミ・ナラ・アスハに実子がおり、その娘がカガリの妹として健やかに生きていた世界。▼オーブは連合に敗北し父は自爆、姉は宇宙に脱出したという絶体絶命の状況。▼国に残された末娘は自らの出自と時代の波に翻弄されることになる。▼しかし娘は一つだけ普通の子供と違うところがあった。▼母親の薫陶によって、民と家の名誉の為なら死ぬ事も厭わない武家幼…


総合評価:1885/評価:8.33/連載:6話/更新日時:2026年08月28日(金) 21:01 小説情報

C.E.に転生した男がとにかく生きようと奮闘する話(作者:QAAM_M1911)(原作:ガンダム)

ガンダムSEEDの世界に失敗作のコーディネーターとして転生した男が、どうにか生き残ろうと軍人になるお話。▼


総合評価:3983/評価:7.1/連載:44話/更新日時:2026年07月27日(月) 23:29 小説情報

はーい、マユで~す! でもごめんなさい、いまマユは生体CPUになってるのでお話しできません(作者:何を書けばいいんだ)(原作:ガンダム)

CE71年、大西洋連合が実施したオーブ解放作戦によって発生した激しい戦闘の最中、マユ・アスカは流れ弾によって吹き飛ばされ絶命したかに思えた。▼だが彼女は死んでいなかった、瀕死の重傷を負いつつも生き残った彼女はブルーコスモスによって加工され、生体CPUメリー・ゴーランドとして生まれ変わったのだ。▼しかし、過去の記憶を抹消された彼女の脳内にはなぜかガンダムSEE…


総合評価:10224/評価:8.67/完結:32話/更新日時:2026年07月07日(火) 12:07 小説情報

地獄の氷叢さん家(作者:M.T.)(原作:僕のヒーローアカデミア)

地獄の轟くん家以上に地獄の氷叢分家の女の子がヒーローを目指すお話。▼燈矢くんや外典くんを見て、氷叢の血が濃くなりすぎた末路が気になって執筆した作品です。▼※注意▼・女主です。▼・お話の都合上、青山くんが出てきません。すまんな。▼・他作品のクロスオーバーをやり出す可能性があります。▼・オリ主の必殺技や一部設定のみ、以下のキャラの要素があります。▼ ・クザン(O…


総合評価:2149/評価:7.89/連載:75話/更新日時:2026年10月04日(日) 09:21 小説情報

善意の剥製(作者:タロットゼロ)(原作:僕のヒーローアカデミア)

「あの子が持ち上げたのは法律じゃない。鉄の塊だ」▼九歳で奇跡を起こし。▼数カ月後に社会に疑われ。▼十四歳で、彼女は「完璧な淑女」として、かつて自分を捨てた世界を否定し始める。▼【警告】この物語に、救世主(ヒーロー)は現れません


総合評価:1430/評価:7.23/連載:32話/更新日時:2026年10月04日(日) 00:01 小説情報


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