機動戦士ガンダムSEED DESTINY ~空白の少女~   作:割戸三葉

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03.白い守護者

所属不明艦は静かに進路を変え続けていた。

この宙域から離脱するように。

その退路の前には、赤い網が張り巡らされていた。

 

「くそっ!」

 

インパルスが急加速する。

同時にドラグーンの赤線が動く。

 

シンは咄嗟に機体を捻った。

その瞬間、回避先へ高出力ビーム。

さらに逆方向にも赤線――逃げ道がない。

 

『シン! 無理に前へ出るな!』

 

レイの声が飛ぶ。

 

だがシンは止まらない。

 

「このまま逃がしてたまるかよ!」

 

目前で、所属不明艦は徐々に距離を広げていく。

なのに届かない。

 

白いMSはほとんど動いていない。

それでもドラグーンだけで戦場を支配していた。

赤線が滑る。それだけでインパルスの進行方向が潰される。

避ける、誘導される、止められる。

その繰り返し。

 

『艦長、このままでは対象艦をロストします!』

 

メイリンの声がブリッジへ響く。

 

タリアはモニターを睨みつける。

そこには、戦場全域へ広がる異様な光景が映っていた。

 

白いMS、赤い線、そして――

その中で完全に足止めされているインパルスとザク。

 

「……信じられないわね」

「たった一機で、シン達を……」

 

タリアの呟きにアーサーが息を呑む。

 

「追加を出します。ルナマリア、アスランを出撃!」

 

タリアは即断した。

 

『対象は所属不明機(ボギー)…いえ敵機(バンディット)と断定。敵機能力はドラグーンによるオールレンジ攻撃。無理に突撃せず包囲、撃退を優先しなさい』

『了解!』

 

ガナーザクウォーリア、セイバーが救援に飛び立っていった。

 

*****

 

 

だが、結果は変わらなかった。

4機になっても、誰一人として前へ出られない。

 

その赤い線が4機の動きを先読みするように空間を埋めていく。

前へ出れば射線。

横へ逃げれば誘導。

包囲しようとすれば、その前に退路を塞がれる。

 

「なんなのよ、これ……!」

 

ルナマリアが歯噛みする。

 

「俺たちの動きが全て読まれている……」

 

アスランの声が低くなる。

しかも、白い機体自身はほとんど動いていない。

ただ静かに、後方で輸送艦を守っている。

その間にも所属不明艦はデブリ帯へ近づいていく。

 

「対象艦、熱源減衰! このままではロストします!」

 

艦橋でメイリンが叫ぶ。

 

「全機、深追いは禁止。対象艦の位置情報を優先」

 

だがタリアが短く命じた。

たとえこのままロストしたとしても、無理に突っ込んで犠牲を生むより遥かにマシだ。

そして間もなく、輸送艦の熱源がデブリ帯へ紛れるように消えていく。

――目標ロスト。

 

同時に白い機体は静かに後退を始める。

役目は終わった。そう言わんばかりに。

赤線が消失しドラグーン収納される。

そして、小さくなっていくそれを、シン達は見送るしかなかった――

 

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