機動戦士ガンダムSEED DESTINY ~空白の少女~ 作:割戸三葉
『対象機、撤退を開始』
レイが呟く。
「……逃がすかよ!」
シンがインパルスを急加速させた。
『シン、待て! 戻れ!』
アスランの声。
だがシンは止まらない。
「あと少しなんだよ! ここまで好き勝手やっといて、逃げられてたまるか!」
インパルスが単独で白いMSを追いかける。
『なにがあと少しだ! このままでは――戻――』
デブリ帯で通信状態悪化する。
「くそっ……!」
しかしシンは尚も前へ出る。
いいように弄ばれた、あの白いMSを目指して――
****
暗いデブリ群の向こうで、それは静かに停止していた。
待っている……そう見えた。
『接近継続を確認』
オープン回線であの少女の声が聞こえてくる。
『
次の瞬間、ドラグーンが再び散開する。
赤線――
だが、今度のシンは止まらなかった。
「もう見えんだよッ!」
インパルスが急加速。赤線の隙間へ機体を滑り込ませる。
ドラグーンからのビーム――回避。
赤線――ビーム――回避。
普通なら不可能な軌道。
だがシンは強引に突破していく。
『……』
白い機体が僅かに動きを見せる。
そして次の瞬間、白いMSからドラグーンが追加で射出、再配置される。
だが、一瞬遅い。
「そこだぁッ!」
ビームライフル発射。
ドラグーンが1基爆散した。
『ドラグーン損失を確認』
少女の声は変わらない。
だが、赤い蜘蛛の巣に僅かな綻びが生まれた。
「やれるじゃねぇか!」
シンはさらに踏み込む。
赤線が減る。
包囲密度が落ちる。
そこへインパルスが突っ込む。
2基目、3基目――
ドラグーンが撃ち落とされていく。
『空間支配率低下…接近を許容』
それでも少女の声は淡々としていた。
だが次の瞬間、シンが突っ込んだ。
蜘蛛のような赤い線。強制的な回避誘導。精密射撃――
その全てを超えて、インパルスが真正面から踏み込んでくる。
初めて白い機体が大きく動いた。
旋回、同時に指先展開――ヒートクローが閃く。
だが、シンの動きは止まらない。
「うおおおおッ!!」
インパルスのビームサーベルが振り抜かれる。
そして閃光。
次の瞬間、インパルス背部が、敵のヒートクローによって切り裂かれる。
同時にレギナント左側スカート装甲が爆散した。
衝撃波と火花、そして警告音。
両機が弾き飛ばされる。
「っ……!」
シンが操縦桿を引き戻す。だが反応が鈍い。
攻撃を受けて背部スラスターの機能が失われていた
インパルスが制御を失い、デブリ帯へ流されていく。
その向こう。
白い機体もまた大きく姿勢を崩し停止していた。
砕けたドラグーン残骸が周囲を漂う。
だが、白いMSはまだこちらを見ていた。
残存しているドラグーンを展開、赤線形成
シンの喉が鳴る。
「まだやるのかよ……!」
インパルスがビームライフルを構える。
だが推力不足のせいで照準が安定しない。
完全に推力ユニットが破壊されていた。
しかし、相対する白い機体もまた微動だにしない。
長い沈黙。
突然、ドラグーンの光が消える。
赤線も消失。
完全停止。
「……は?」
シンが眉をひそめる。
撃墜した――そう判断するにはあまりにも静かだった。
だが機体はまだ爆発していない。
コクピット反応も微弱ながら残っている。
「……なんなんだよ、お前」
シンはビームライフルを向けたまま動けない。
今なら撃てる。
だが、引き金を引く気にはどうしても湧かなかった。