転生者やめなって!キヴォトスでモビルスーツをばら撒くのは恥ずかしい行為なんだよ! 作:AGIの素
同じ格納庫の最後の一機であるドムを仕留めた偽マフティー(偽)は、開いた隔壁から身を乗り出して中通路へと出る。
「ん?……スタビライザーの調子が悪いか。ジムといえど所詮は前期生産型か。再現に拘るのはいいが欠陥まで再現する必要は一体…?」
重力下での無茶な動きにジムの内部機器が故障してしまったらしい。モビルスーツという巨大な体を動かすにあたって、姿勢制御や揺れの軽減は深刻な問題と言えよう。
完全に沈黙したわけではないため技術でカバーすることも出来ているが、少なくともこのまま戦闘を続けたいとは思わない。
揺れの激しさに顔を顰めるが、それでも中通路を進んでいき、目当てのイフリートが眠る第1ドックへ繋がる道を進んでいく。
どうやら第1ドックも解放されているらしく、中央には横倒しで鎮座するイフリートと先んじて護衛に来たであろうモビルスーツが周囲を警戒していた。
ただし、その護っている機体が問題だ。
「軽キャノンだと…?このジムといい、何を考えている…。ビーム兵器搭載機をまだ世に出せないと言うからイフリートが選ばれたというのに、その阻止にビーム兵器持ちとは…」
待ち構えていたのは【RGM-79】軽キャノン。
型式番号がジムと同じだが、それはとある平行世界においてガンダムが奪取されたことによりデータが集まらず、ガンダムの量産タイプとしてのジムではなく、残ったガンキャノンをベースにより汎用性を高めた量産機だ。
同じ型式番号、ガンダムの量産タイプではないからと侮るなかれ。
生産性に優れたジムの装甲材はチタン合金だが、軽キャノンの装甲はガンダムやガンキャノンと同じルナ・チタニウム合金だ。
装甲厚や盾の有無で実際はガンダムやガンキャノンよりも脆いだろうが、ただのジムよりも硬いことは間違いない。
武装は肩のビーム・キャノンに加えて、ビーム・スプレーガンよりも高火力、長射程のビーム・ライフルと白兵戦用のビーム・サーベルと、三種のビーム兵器を同時に運用可能なジェネレーター出力を持っている。
先ほどの戦闘音が聞こえていたのだろう。下手に動かずイフリートの警備と仲間の合流を優先したのかもしれない。
機動性は軽いジムに軍配が上がるだろうが、この基地内ではその優位性もどれだけ活かせるか。ましてこちらはスタビライザーに不調を抱えている。真正面から向かうのは得策ではないだろう。
「よし、やってみるか…」
ひとまず、仲間を装って近づく。
当然音も丸聞こえな上隠れられる場所もそうない。直ぐに軽キャノンがこちらの接近に気付きビーム・ライフルを構える。
そこで、偽マフティー(偽)はジムの片手を上げて気さくに振る舞う。
それにより、咄嗟に撃たれるなどということはなかったが、ビーム・スプレーガンの射程まで後少しといった所で軽キャノンが何かに気付いたようにビーム・ライフルを構えてオープンチャンネルで警告する。
『待った!そこのジム止まれ!……さっきの戦闘音は何だ?それに装甲に傷がある。……まさか、襲撃者じゃないだろうな?……違うならその場で止まりオープンチャンネルを開け!』
流石に誤魔化しきれないかと偽マフティー(偽)は言われたとおりに立ち止まり両手を挙げる。
大人しく従う様子に少しほっとした軽キャノンのパイロットだったものの、一向に開かれないオープンチャンネルに不安と疑念が芽生える。
『おい、何してる!そのままオープンチャンネルを繋げるんだ!』
焦った軽キャノンパイロットは声を荒げて再度勧告するが、流石にこれ以上は有無を言わさず撃ってくるだろうと察した偽マフティー(偽)は仕方なくオープンチャンネルを開く。
『何だ、できるならもう少し早く…』
「後ろだ!イフリートが動いている!」
『なっ…!?』
ホッとしたのも束の間。危機感を煽るような声に咄嗟に振り返ってライフルを構える。
しかし、当然イフリートは依然として横たわったまま。それに一瞬頭が真っ白になる軽キャノンパイロットだったが、直ぐにその警告の声が事前に顔合わせをした面々と異なることに気がついた。
『しまった!』
緊張状態で敵の居場所が分からないという事態において、明確な指示と危険を知らせる警告を出されれば、少なからずそちらに意識を向けてしまうというもの。
チームアップの期間が長ければ惑わされることはなかったであろうが、今回は抽選による即席チームだ。いくら事前に話していても、咄嗟の判断が追いつかないのも無理はないと言えよう。
回転させた頭部のカメラアイが最後に捉えたのは、突き出されたビーム・サーベルが己のコクピットブロックへと突き立つ瞬間であった。
沈黙する軽キャノンからビーム・サーベルを引き抜く。
殆どの点でこのジムに勝る軽キャノンは、しかしてただ一発の弾薬すら消費することなく撃破された。
「この場合はノリスの名言を使えるかもしれんな」
イフリートを守る警備を突破した偽マフティー(偽)はコクピットハッチを開き、悠々とイフリートの上へと着地する。
「コックピットを明けっ放しとは。ここの技術者は前線を知らんと見える」
こんなことを宣っているが、実情は奪取予定が入っている*1ため、乗り込みやすいように台に寝かしてハッチを開いているだけである。
勿論この発言もそれも全て織り込み済みのネタであるが。
早速とばかりに乗り込んだ偽マフティー(偽)は慣れた手つきで起動。各種武装のチェックやシステムの確認を急ぐ。
どうやら要望通りに各イフリートが使用した武装の殆どがマウントしてあるらしい。
携行武装はショットガンにヒート・サーベル。左腕部にはグフ・カスタムと同一の35mm3連装ガトリング砲を装着。背部にはジャイアント・バズとヒート・ランサーを背負い、機体各部にイフリート・シュナイドが使用していたヒート・ダートが無数に取り付けられている。
ついでに何故かガンダムハンマーもハロ柄のものが置いてあったが、普通にいらなかったので放置。ハンマー狂いでもいるのだろうか。
こうして完全武装イフリートが起動する。機動性は従来のものと比べれば落ちるだろうが、EXAMシステムに耐えうる運動性は伊達ではない。
重量物をマウントしても尚、ゲルググすら超える推力で他の同世代のジオン系モビルスーツと比べれば上位にあるだろう。
「よし、動くか」
操作系はジムと異なるが、むしろ初期はザクだらけだったためにジオン系に慣れている者は多い。
起動に成功し、後はここから脱出するだけ…とはならない。
今回の主目的は奪取と共にキヴォトス内にモビルスーツを流すための基礎を整えるものでもある。
イフリートだけを持ち逃げすればいい話ではないのだ。
侵入時に外から見た限りでは、目当てのザクトレーナーなどは外縁部に安置されていた筈だ。
しかしながら、まだ予備パイロットは3人残っている。普段ならば物の数ではないと言いたいところだが、ここが基地内という閉所空間であることに加えて、ジム、軽キャノンといったより高性能のビーム兵器搭載モビルスーツが現れたことで若干の緊張を覚える。
いくらモビルスーツとはいえど、鋼鉄で作られたハンガーや通路内でビーム兵器を釣瓶打ちされればたちまち蜂の巣だ。
特に、イフリートは機動性や運動性は保証されているが、ここはモビルスーツが満足に機動戦を行うには少しばかり狭い。装甲は従来の超硬スチール合金な上、ゲルググ等のようなビームコーティングつきの盾などもないとなれば尚更に。
とはいえ、今泣き言を言っても仕方がない。迷いを振り切るように偽マフティー(偽)は操縦桿を握りしめた。
脳内にはある言葉が鮮明にリファインされていた。
「やってみせろよマフティー!」
そう口にし、かぼちゃマスクの下で笑みを作る。
私は偽マフティーだ。だれが何と言おうと偽マフティーなんだ。
「何とでもなる筈だ!」
そう宣言し、イフリートは飛び出した。
仮にビーム兵器持ちだとしてもこの世代ならばやりようはある。
ジムは動作と複雑な機動性ではこちらが勝るし装甲も上。軽キャノンやガンキャノンが出てきても十分仕留めることは出来る。
そう。それこそガンダムが相手でもなければ―――。
すると移動通路の角から3機のモビルスーツが現れる。
それは特徴的なフォルムにツインアイ。V字のアンテナがついたモビルスーツで――。
「ガンダムだと!?」
――型式番号【RX-79[G]】陸戦型ガンダム
――型式番号【RX-78-01】01ガンダム
――型式番号【FA-78-1】フルアーマーガンダム
それは紛れもなくガンダムであった。
「くっ」
現れた3機のガンダムに一瞬反応が遅れるも、咄嗟にジャイアント・バズを構えるも、敵の砲門は既にこちらに向けられていた。
フルアーマーガンダムの360mmロケット砲とジャイアント・バズの射線が交差する。
この際、イフリートは地を滑るように回避をしながらロクに狙いもつけずにジャイアント・バズを放った。
あちらの攻撃が当たれば即敗北であったことに加えて、あちらが密集しているために巻き込みやすかったのが理由だ。
弾頭は前に出たフルアーマーガンダムのシールドに阻まれ、本体へは届かない。
イフリートの背後で爆発が起きるが、それに構ってはいられない。一時の危機を脱したイフリートは、しかして動きは留めずに狭い基地内を攪乱するように動き回る。
姿勢を下げた瞬間、頭部のあった場所に陸戦型ガンダムのビームライフルがアンテナを掠める。
数でも装甲でも火力でも負けているのだ。ならば機動力で翻弄する以外に勝ち目はない。
これが機種転換直後の兵士であったり、慣熟訓練も満足に受けていない急造のMS乗りならばやりようはあったが、彼らはみなモビルスーツ乗りとしての練度は素人のそれではなく、むしろ個人所有の持ち込みとしてガンダムを持ち出すほどだ。
ガンダム6号機マドロックのような未完成状態での戦車乗りの出撃という事情や精神的なプレッシャーもない。
状況は最悪に近いと言える。
何せ、互いに至近距離からの交戦だ。それも屋内戦ともなれば回避可能な場所が限られ、更にはこちらの火力も劣っている。
ジャイアント・バズは防がれ、ルナ・チタニウム合金をも溶断できるヒート装備も接近しなければ扱えない。
だが装甲と火力、射線の問題で遠距離での撃ち合いは明らかに不利。危険を冒してでもヒート装備を当てる以外の勝ち筋はない。
「私もよくよく運のない男だな」
だがしかし、それで諦めて不貞腐れる程生半可な努力をしたわけでもない。
「モビルスーツの性能の違いが戦力の決定的差ではないということを教えてやる」
再度交差する視線。ジャイアント・バズを放つ。01ガンダムのハイパーバズーカ、およびにフルアーマーガンダムがミサイルベイを解放し、無数のミサイルと共に2連装ビームガンで狙い撃つ。
しかし、ここで偽マフティー(偽)は攻勢に出た。
最警戒するべきビームライフルだけは確実に躱し、次々に発射されるハイパーバズーカのみを35mm3連装ガトリング砲をばら撒いて迎撃。
ハイパーバズーカの爆発が小型ミサイルを巻き込んで誘爆する。
ジャイアント・バズもこれに巻き込まれて相手に痛手を与えることはなかったが、通路を埋め尽くすほどの爆発が起こる。
パイロット達がその爆発に思わず眉をしかめる中、偽マフティー(偽)は操縦レバーを握り込んだ。
通路は爆発に覆い尽くされ、黒煙が視界を防ぐ。
目眩ましを受けながらも、焦ることなく盾を構えて警戒する一同。
それどころか、この視界不良を煙幕としても関係のないバルカンによる弾幕が陸戦型ガンダム、フルアーマーガンダムにより形成される。
中衛の01ガンダムは背部ラックからビーム・サーベルを引き抜き、盾を前に出して構える。
一通り打ち尽くした所で状況確認の為一時射撃を停止し、黒煙が晴れるのを待つ。
相手が超高スチール装甲であることに加え、盾のないイフリートだ。牽制用のバルカンとはいえこの屋内で掃射されてはたまったものではない。
今回の襲撃は実戦の状況や基地襲撃というパターンを想定して、ジャミングやミノフスキー粒子散布環境再現のため機体にはセンサー類にロックがかけられている。
もとより戦闘可能範囲があまりに狭いことから、一方が有利になりすぎるのを防ぐための措置だった。
そして反撃が来ないことから、既に撃破されたか、射撃を受けながらも全力で撤退したか。
そのどちらかであると推測したフルアーマーガンダムのパイロットが一歩前に出る。
しかし、次の瞬間黒煙を斬り裂いてヒート・ランサーが回転しながらギロチンのごとく迫る。
これにギョッとしたパイロットは咄嗟に盾で受ける。
だが、いかに増加装甲で堅牢なフルアーマーガンダムといえど、ヒート系武装の中でも重量級なヒート・ランサーの一撃は防ぎきれない。
腕部の盾を貫通し、左腕の中枢すら焼き切ってようやく止まったそれに態勢を崩しながらも下手人を討とうと右腕の2連装ビーム・ライフルを向けて迎撃を図る。
「いない…!?武器だけだと…!?」
しかし、咄嗟に向けた先にイフリートの姿はない。
戸惑うパイロット達の混乱の隙を突くように、一拍遅れてイフリートが
その装甲に弾痕はない。
イフリートはドムが天井スレスレを移動したことを参考に自身を浮き上がらせ、赤熱化させていないヒート・ダートをクナイのように突き刺して天井に張り付いていたのだった。
「馬鹿な…!あれだけの制圧射撃で一撃も…!?」
慄きながらも迎撃に回るフルアーマーガンダム。 しかしこの距離では肩にあるロケット砲を放つが、ひらりと躱される。
既にヒート・サーベルの間合いだ。今からビーム・サーベルを取り出すのは間に合わない。苦し紛れに右の2連装ビーム・ライフルを向けて牽制。
咄嗟に駄目になった左腕でコクピットを庇うが、イフリートは狙いを変えるとビーム・ライフルの砲身を斬り捨て、ショットガンを頭部に向ける。
放たれた散弾はフルアーマーガンダムの頭部に炸裂し、その装甲に歪な穴を空ける。
しかし、ルナ・チタニウム合金製の頭部は原型を留めていた。
「!」
これならば間に合う。そう確信したフルアーマーガンダムはビーム・サーベルを構えるが、イフリートは頭部を向けてバルカンを放つ。
散弾で広がった装甲の隙間を縫ったそれは見事カメラアイを捉え、その機能を停止させる。
「メインカメラが!」
突如として砂嵐になった画面に戸惑うも、即座にメインカメラのスイッチを切りサブカメラへと切り替えたが、その僅かな時間は高機動戦を得意とするイフリートには致命的だった。
突き立てられたヒート・サーベルはコクピットを正確に刺し貫いた。
「クソっ!やられた!」
「こいつっ、一体どうやって!」
瞬きの間に僚機を落とされた2名が言葉を吐き捨てながら武装を構える。
01ガンダムによる咄嗟の刺突をスラスターを吹かせた素早い挙動でひらりと躱し、反対に逆手に握ったヒート・ダートをコクピット目掛けて突き出す。
01ガンダムは身をよじって躱すも、即座に3連装ガトリング砲が胸部を打ちつける。
僅かな時間ではルナ・チタニウム装甲を貫くことは敵わなかったが、重要部が集中攻撃を受けているという事実はパイロットに危機感を覚えさせる。
距離を取るべく咄嗟に背後に飛び退った01ガンダムを尻目にイフリートは陸戦型ガンダムへと標的を変える。
向かってくる機体にビームライフルを放つが単調な攻撃は容易く避けられる。
続けて胸部バルカンによる牽制が入るもイフリートは意に介さず突き進む。
陸戦型ガンダムは接近戦に備えてウェポンラックをパージし脚部サーベルラックからビーム・サーベルを引き抜いた。
両の手で構えたビーム・サーベルを腰だめに構えた陸戦型ガンダムは背部スラスターを吹かせてイフリートへと吶喊する。
この閉所ならば機体ごとの突進は有効打になり得るし、自然と回避出来る場所も限られる。
避けられたとしても距離を取ることが出来るという腹づもりだろう。
「閉所なら通じると思ってか!」
しかしイフリートは一歩先を行く。
ギリギリまで引き寄せたかと思えばホバー起動でスレスレを躱し肩のフックを掴み急速旋回。
視界から消えたイフリートと急に左に向かってかかったGにより陸戦型ガンダムのパイロットは戸惑い対応が遅れてしまう。
突進の勢いまで落ちた陸戦型ガンダムに、イフリートは背後からヒート・サーベルを突き込んだ。
「これで二つ」
その場に崩れ落ちた陸戦型ガンダムからヒート・サーベルを引き抜くや、自分一人となり焦る01ガンダムへと躍りかかる。
だがそこはパイロットとしての矜持か01ガンダムも負けじと斬り返す。
振り被られたビーム・サーベルが光流を生み薄暗い通路を眩く照らす。
イフリートのヒート・サーベルと打ち合ったそれは一撃ニ撃と交差する度に超高熱の粒子と溶鉄を撒き散らし通路に紅い染みを作り出す。
合間にヒート・ダートによる投擲を挟むが、警戒しているのか半身を盾で隠すように戦う01ガンダムには届かない。
「パワーでは敵わんか!」
純粋な白兵戦となった所で機体同士の出力差が現れ始めた。
イフリートは地上戦に特化した高性能機でこそあるが、短時間の高機動戦を得意とする機体故に、フレームの強度やジェネレーター出力では01ガンダムに敵わない。
加えて高熱の実体武装であるヒート・サーベルもビーム・サーベルとの打ち合いに加速度的に消耗している。
これには堪らずイフリートも後退するが、目当ては一度放り捨てたヒート・ランサーだ。
残り少ないヒート・サーベルが尽きれば刀身の短いヒート・ダートしか残らない。故にここで回収する必要があった。
しかしそれを見た01ガンダムは攻勢に出た。
今まで構えていた盾を放り捨て、背部ラックから新たなビーム・サーベルを抜刀。
互いに二刀で相まみえるが、やはり実体武器故にイフリートの動きは鈍くなる。それも本来は両手で扱う筈のヒート・サーベルとの変則的な二刀流ともなれば機体バランスはお察しだ。
しかしやらなければ後はない。
袈裟に振り切られたビーム・サーベルをヒート・ランサーで迎撃。
上から押しつぶすような一撃に、退がることも横へ逃げることもできない。
半ば拘束されたような状態のまま、コクピット目掛けてビーム・サーベルの片割れが狙いを澄ます。
どうにかヒート・サーベルを合わせたが、この膠着状態には限界が来る。後幾ばくかもしないうちに焼き切れたヒート・サーベルを貫いてその刃の先端がイフリートを貫くだろう。
「武装の差が出たか…!だがそれはこちらも同じこと!」
ここで、イフリートは頭を軽く下げヒート・サーベルを握る左手に備わるバルカンへと意識を向ける。
「これを狙っていた!」
頭部バルカンと35mm連装ガトリング砲が同時に火を吹いた。
しかし勝ちを確信したのか01ガンダムのパイロットからの通信が入る。
『その程度の口径ではガンダムの装甲は抜けん!メインカメラを潰したところでここから逃げられはしない!』
それは紛れもない事実だった。
ザクマシンガンの口径は120mm。宇宙戦闘に弾速を遅くしていることと対MS戦に特化していないとはいえ、ルナ・チタニウム製の装甲を抜くには同じ箇所に集中して当て続ける必要がある。
ましてや装弾数も限られ戦闘中の補充も困難な腕部ガトリングと頭部バルカンだ。これまでの戦闘中にも使用していたことを考えれば全弾撃ち尽くしたとしても装甲を貫いてダメージを与えることは不可能だ。
だからこその言葉だろう。しかし、偽マフティー(偽)の狙いはそのどちらでもなかった。
『マニピュレーターを!?いや、抜けるものか!』
精密作業にも用いられるマニピュレーターは繊細だ。これがなければビーム・サーベルを握ることも出来まい。しかしそれでもやはりルナ・チタニウム製の装甲は硬く、コンコンという音と共に弾き返されていく。
焦った01ガンダムが更に押し込もうとしたその瞬間、01ガンダムのマニピュレーターが爆発した。
『何だと!?抜いたのか!?……いや、違う!こいつ、始めからビーム・サーベルの柄をっ!』
「正解だ」
そう。狙っていたのはマニピュレーターではなく、握られているビーム・サーベルそのものだったのだ。
敵の攻撃や作業に備える装甲でなく、あくまでビームの発振装置でしかない柄は、戦闘に耐えられる作りになっているとはいえ、ピンポイントで銃撃されれば精密機械故に容易く壊れる。
そして破壊された勢いは内部のエネルギーを暴発させ、01ガンダムの片手を吹き飛ばしたのだ。
始めから狙っていたこともあって、偽マフティー(偽)は遅れることなくヒート・サーベルを振り抜いた。
01ガンダムの頭部が飛ぶ。
『馬鹿な…!ガンダムが3機がかりで…!』
「最初に言ったが、モビルスーツの性能の違いが、戦力の決定的差ではないということだよ」
直後、振り被られたヒート・サーベルが01ガンダムを貫き、移動通路を朱に染めたのであった。
なんかイフリートでガンダムを三タテするやつ