幻想のお酒屋さん。   作:KB753

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春雪異変編
第一話 幻想郷のお酒屋さん(再編集)


 

 

眠りこけている私に、元気なお日様がご挨拶をしてくる。それは全ての人に平等であるはずなのに、どうしてか自分にだけ少し当たりが強い気がしてならない。

 

さらに私は2日間に渡る不眠不休素敵なマイホーム綺麗にしましょう計画の影響で、さらに当たりが強く感じる。目が焼けてしまいそうだ。

 

 

「許さんぞ太陽。いつも私の安眠を邪魔しよってから…」

 

 

私の名前は里奈。どこにでもいるしがないお酒売りの人であり、この瞬間だけ布団を世界一愛している自信がある者である。

ノソノソと私は布団から這い出る。

 

今の月は弥生あたり。季節外れの雪が降る。さむいよぉ…

なんで今頃雪降ってんの?

もう春頃だよ?

もうひな祭りの日過ぎちゃったよ?

川凍って厄流しできなかったじゃん、厄たまってんじゃないのよどうしてくれんの!?やる気なくてしきた…。

 

本当はずっと布団にくるまっていたいが、それだけではこの世の中生きては行けない。なんとも世知辛い世の中だ。

 

 

 

 

家の2階から降りた後軽い食事をすませ、店の準備を進める…っと、その前に身だしなみを整えないと。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

鏡の前に向かう。パッチリ二重の瞳と茶色より少し黒めの長い髪。ストレートのキメ細かい自慢の髪なのに、ピョコっと上に伸びてるナゾの毛1つ。

これはアホ毛です。頑張ってクシで溶かそうとしても成功したことがない、私のトレードマークである。

 

ちなみに鏡は外の世界のものだが、香霖堂という所で売られていたので買った。決して安くはなかったが私も年頃の女の子、少しは身だしなみが気になってしまうのだよ。

 

ぱっぱと身だしなみを整えたあと、服を着替える。水色を基調とした小袖に、腹巻きみたいに黄色目の帯を巻く。

小袖と言っても動きにくいので、足の付け根のところから分割してみた。

そうしたらかなり動きやすくなり、大股全力ダッシュをしてもパ〇チラすることもなくなった。やっぱり動きやすいっていいね。

 

 

「こんなものでしょ。早く店の準備をしないと…」

 

 

そう呟いた後、私はすぐにお店の開店準備にかけ出す。

 

私はお酒屋を営んでいる。

お手頃価格の日本酒から外の世界の希少なお酒まで様々なものを売っているぞ。品揃えなら誰にも負けない自信がある。

 

あと、お店の名前は決まっていない。周りの人からは「里奈のお酒屋」と呼ばれている。

色々考えたんだけどねぇ…。いい名前思いつかなくて、この呼び名しっくりくるしもうこれでいいかなぁなんて。

 

…とはいってもこれは凄い寝坊だなぁ。これ開店まで間に合うか?

 

 

 

 

「おっ里奈じゃねえか!今回はちょっと早めに来ちまったみたいだな。アッハッハ!」

 

 

家にでて物売りの準備を進めようとすると、私の店前で威風堂々と立っていた人が気さくに話しかけてきた。おそらく開店を待っていたのだろう。

この人は私の店の常連客である。有難いことに結構繁盛していて、お手伝いさん1人を雇っているほどだ。

 

 

「あ、おはようございます…っとすいません、まだ店開いてないんで準備ができるまで待ってくださいね。世間話はその後で!」

 

 

私はそう言ってその場を離れようとする。別に話したくないわけではなく、普通に時間がないからだ。

 

開店時間まであと四半刻(15分ほど)しかない。他の店は日の出から開店の準備をすすめ、大体明け五つ(8時ほど)から店やってるけど、私はそれより一刻程遅い。理由は色々あるが、いちばんは朝に弱いからかな。

 

それなのに遅れるとなると、なんだかちゃんと朝早くから準備をしている方たちに申し訳ない気持ちが湧いてくる。

 

 

「そうか悪い、仕事の邪魔しちまったみたいだな。…せっかくの機会だ。手を貸させてくれねぇか?」

 

「ええっいいんですか!是非お願いします、もちろんちゃんとお礼はしますから!」

 

 

なんたる僥倖!これは日頃の行いの良さがでてしまったか。

とりあえず今運んでいる大きな酒樽の置き場所を指定し、さっさと倉の在庫からお酒を取り出しに行く。

これなら間に合いそうだ。

 

 

 

 

「…なんっとか間に合ったぁ!…っとと、忘れるとこでした。手伝ってくれたお礼ですけど…これなんてどうです?」

 

 

そういうと机の上に置いてあった酒瓶を常連さんに渡す。なんとか開店時間の2分前に全ての準備が終わった。ありがとう常連さん。貴方は私の神様だ!

 

 

「おっわざわざ悪いな…って、これ結構上物だろ。いいのか?」

 

 

常連さんがそう言って返そうとしてくる、なんて心優しい人だ。お客様は神様だとはよく言ったものだなぁ…。

ちなみにこれは確かに希少品で、外の世界の酒「ビール」というやつである。水のような味わいだが、喉越しが非常に良く外でも人気のものらしい。

 

 

「いいんですよ。手伝ってくれなきゃ間に合わなかった、それくらいの礼はしなきゃ器が狭いってもんです!」

 

 

そう言って強引にビールを渡す。結構いいお値段するので本当は渡したくない。だって仕入れるの苦労したから。

ただ、苦労したとは言っても仕入れれないわけじゃないし、これくらいは全然いいのである。

 

 

「一応言っときますがね、次から手伝ってもらっても安めの酒しか渡しませんから。お酒目的で早めに来られても困るからね。」

 

「げっマジかよ、せっかく無料でいい酒手に入れる方法見つけたと思ったのに…。」

 

 

なんで人だ、そのビールとりあげたろか。

この人優しいし、多分次同じことがあっても何も貰わなさそう。今回は私が強引に渡したため受け取っただけに過ぎないし。

 

 

「それじゃ、またな里奈。友達と大事に飲むぜこれは〜。」

 

 

そう言って常連さんは去っていった。高級ものを1人で楽しむのではなく、みんなと味わう。

…やはり神であったか。

 

 

 

 

 

 

「邪魔するぞー!」

 

 

居間の方で作業をしてると、入口から声がする。

魔理沙だ。何か用事でもあるのだろうか。

とりあえず要件を聞いてみよう。居間は奥の方にあるので入口まで向かおうと、居間の扉に手を付けようとすると。

 

 

「よっ。調子はどうだ?」

 

 

ガラガラガラ。扉が開いた後、そう言って魔理沙が私の居間に姿を表す。

 

とんがりしてる三角帽子に黒系の服の上から白いエプロン、下着は長めのドロワーズ。いつ見てもザ、魔法使いという服装をしている。長袖ではあるが寒くは無いのだろうかと心配になる。

ていうか…

 

こいつちゃっかり私の私生活スペースまで入り込んできてる!

勿論居間に売ってるものはないし、ちゃんと立ち入り禁止の札は部屋の前に置いてある。

なんて人だ。この人には常識というものがないのか。

 

見られて困るものはないし別にいいのだが!今は昼飯の準備をしているから良かったものの、ヒトに見られたくない行為をしている場合とかもあるかもしれないのに!

 

 

「人の調子を聞く前に人の調子を損ねるとは。ほんとに大したものね。」

 

「悪かったって。次はちゃんと声掛けてから入るから。」

 

「入らないという選択肢を知ってください。」

 

 

なんて野郎だ。この人には常識というものがないのか、ないのか?ないんだろうなぁ…。

 

 

「で、どういったご要件で?」

 

 

こいつが私の私有地まで入り込んで来るってことは、どうせろくでもないことをお願いしようとしてることは確かだ。適当に応じてさっさと追い払うが吉かな。

 

 

「今度、博麗神社で宴会やるんだけどさ。里奈、お酒と料理手伝ってくれないか?」

 

 

…あれ?

「魔法とか変な魔導書とかの実験を手伝えー!」とかなんとか言われるかと思えば、案外普通のお願いをされたぞ?

 

ちなみに魔導書やらなんやらの実験を手伝わされるのは、私も多少なりとも魔法が扱えるからだ。

なんでも自分のご先祖さまは昔、代々博麗家に仕えていた巫女の一族だったらしく。

その血筋のおかげか、私は魔法を多少扱えるようだ。

 

この力のおかげで霊夢や魔理沙と友達になれたと言っても過言ではない。この2人とは紅霧異変以降、よく会いに行ったりお酒を提供したりしている。

 

ただ私は、霊夢や魔理沙ほど魔力が強いわけではない。

せいぜい妖精に勝てる程度である。

 

この前の紅霧異変の時も、霊夢の後ろから少し手助けする程度。ちなみに館の中には入らなかった。何故なら命が惜しいから。

 

私は自分の命惜しさに逃げ帰ったのだ。

しかもその事に対し誰も責めはしない。

誰も妖怪に対して勝てる力は持っていないし、逃げ帰ったのはある意味当然ではあるし、それは普通正しい選択肢だ。

 

ただ私はそれに負い目を感じてしまった。

あの異変の後、霊夢や魔理沙とは仲良くなったが、ずっと心の奥底に後ろめたさが残ってしまっている。

 

あの時逃げ帰った私を、どう思っているのだろうか。

わかっている、本当は2人は私に対してその事は何も思っていない事も。

 

 

「いいけど、なんでまた急に?」

 

「そろそろ雪が溶けてくる頃合いだろ?霊夢と話してたらさ、雪溶け後にパァーッとやりたいなって言う話になって。」

 

「それで、どうして私に?」

 

「この前の宴会、ちょっと酒が足りないなって。里奈だったらそこら辺の調節うまそうだし、お酒色々持ってそうだろ?」

 

 

私ではなく酒目当てか。

ふふふいい度胸だ。魔理沙のお猪口にだけ辛子の中に一晩寝かせたヤツにしてやろう。

きっと魔理沙も口から火を吹く魔法を覚えることができて幸せだろう。

 

 

「…ふふふ」

 

「どうした?急に不気味な笑顔を浮かべて。おー怖い怖い。」

 

 

おっと、笑みがこぼれてしまった。仕方ないだろう、楽しみなめのは楽しみなのだから。

 

 

「まあいいけど。けどまだまだ雪が溶ける気配は無さそうだけど?これじゃ春先までは降りそうね。」

 

 

ため息を1つついた後そう答える。まだまだ雪は降り続けており、これは明らかに異常事態だと誰もが薄々気づいている。

まったく。博麗の巫女さんは何をしているのだろうか。

 

 

「霊夢は何してるの?これは明らかに異変でしょ。今すぐにでも調査するべきよ。」

 

「おいおい、こんなに降ってるのにもうそろそろ雪が溶けてくる頃って話、普通するか?」

 

「つまりもう霊夢は動き始めてると。」

 

「そういう事だ。で、私もこれから調査に向かうとこだが…見これを見てくれ。」

 

 

そう言って魔理沙は手を前に出し、見せびらかすように手に待っていたものを見せる。

 

それは桜の花びら。すると雪雲の隙間から太陽の光が差し込む。すると雪が光を反射し、花びらを照らし出した。そのためか、花びらは淡く光を発しているように見える。すっごく綺麗だ。

 

 

「桜の花びら…しかもこれ、普通の花びらじゃない?」

 

「ああ。妖気を帯びてるから、こいつら確実に異変に絡んでいると見て間違いないだろうな。私はこれから、この花びらの出処を辿って行こうと思う。」

 

「…私もついて行っていい?」

 

 

微かに今、声が震えた気がする。やっぱり怖い。

死ぬのかもしれない──。そう思うと、少しだけ脚が竦んでしまう。

 

やっぱり、霊夢と魔理沙はすごいなぁ。怖くないのだろうか、妖怪と戦うことが。相手がルールを破ってこちらを殺す気で攻撃されたら、おそらく私はひとたまりもないだろう。

 

…いや、そうじゃない。霊夢達と肩を並べると決めたんだ…。ここで怖気ついたら、霊夢達と宴会が気まずくてできない。

大丈夫、大丈夫。これは「遊び」。

相手は殺す気なんて一切ないんだ、殺されるわけがない。だったら、やって野郎じゃないの。妖怪たちに目にもの見せてやる!

 

 

「うーん…いいぜ。ただし、自分の身は自分で守れよ?」

 

「勿論よ。言っとくけど、私はあんた達に劣ってるなんて微塵も思ってないからね。」

 

 

そう言って自分を奮い立たせる。

 

 

スペルカードルール。おそらく私たち人間が妖怪に勝てるようにと作られたルールであり、「弾幕ごっこ」という遊び。

これなら私にだってできる。だってこのルールは─────

 

 

美しい方が勝つのだから。

 

 






次回投稿予定は未定ですが、1週間以内に投稿する予定ですます。
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