人形達が描いた線に残された弾幕は、アリスさんを中心として広がっていく。その弾幕は華のように美しく、洗練されていた。
弾一つ一つが微妙に違う挙動をしながら、高密度な弾幕が展開される。
私は距離をとってよくよく観察をする。まず、人形達はアリスさんの周りに広がり、少し膨れながら私の方に緑色の弾幕を打つ。その弾の軌道は少しだけ左側にそれながらこちら側に近づいてくるよう。
やがて人形達は、弾幕を打ちながら円を狭める。
その後暫くして弾の色が青色に変化し、内側に打ち始める。それは反対方向へと広がっていき、やがて色が変化する前の弾幕に追いつく。青色の弾は反対方向へと広がっていた為、右側にそれながらこちら側に向かってきており、弾幕の美しさと避けにくさを両立させている。
ただ、弾の挙動が先程のスペルよりは大きく曲がっておらず、左右から挟み撃ちなどは起こらないだろう。目の前に来た弾を少しずつギリギリで躱しながら、そのままアリスさんへと私は攻撃を続ける。
◆◆
「…降参よ。私の負けだわ。」
スペルカードが里奈に当たる事はないと悟ると、私はそう言い、周りにある弾を全て無くした。
「さっさと行きなさい。魔理沙に追いつかなきゃ行けないのでしょう?」
「あ、わかりました…。」
里奈がなにか言いたげな表情をしている。
彼女は恐らく、霊夢や魔理沙とは違う別の「才能」を持っている。美しさを重視したからと言っても、私のスペルを避けるのは簡単なことでは無い。だがこの子はスペルすら使わず全て避けきった。
「行く前に1つ聞いていいかしら?」
「はい、なんですか?」
「貴方、弾幕を避ける時は何か考え事をしたりしているの?」
「あー…そうですね、基本的には段幕の解析とは言ったらアレですけど、弾幕をよく観察してそれがどうこちらに向かってくるのかを考えてます。」
なるほど、恐らくこの子は目がいいのであろう。霊夢のように勘で相手の弾幕を避けるのではなく、しっかりと相手を観察して避ける。そんな避け方をするのか。
「逆に言うとランダム性が強かったり、早い弾幕がにがてなんです。あと挙動が読めないって時もありますし。アリスさんの弾幕は弾の速度が遅くて、挙動が読めたので私の避け方と相性がとても良かったんですよね。」
「なるほどね。ありがとう、参考になったわ。」
「それじゃあ、私は行きますので。」
◆◆◆
アリスさんと軽く会話を交わし、私は異変解決へ向かおうとする。すると、
「最後に1つ、貴方は結構自分を卑下しているみたいだけど。貴方は貴方が思っている以上に強い、霊夢や魔理沙に引けをとらないくらいにね。おそらく、霊夢達も同じ事を思っているわ。もう少し自信を持ってもいいと思うわよ。」
アリスさんがそんな事を言ってくれた。
「…ありがとうございます。」
自分は霊夢や魔理沙達と同じくらい強い。
そうなのかな。
多分だけど、アリスさんはお世辞を言うような性格じゃない、この人は思った事はストレートに言う人だ。この言葉は本心からなのだろう。
けど。いやだからこそ、あの時自分が逃げ帰ってしまった事に負い目を感じてしまう。
あの2人が体を張っていたのに私は帰った臆病者だと。
「何を考えているのか私は知らないけど、これはあくまでも「遊び」よ。所詮遊び、別に遊びに対して本気になるなということでは無いけれども、遊びのせいで後ろめたさを抱えてしまうなんて馬鹿らしいとは思わないの?」
「…遊び。所詮は遊び…か。」
「貴方、途中で一瞬陰鬱な顔を見せるのよ。自分が相手と遊んでいる間に相手が陰鬱な表情をしてたら楽しいと思える?更に陰鬱な表情をしている相手に負けるなんて、相手からしたら溜まったものじゃないわ。」
「そう、ですね。ありがとうアリスさん。」
「敬語はいいわ、なんだかムズムズするし。早く行きなさい。」
「わかった。また異変が終わったら会いに行くね!アリス…さん。」
「…つけるのね、敬語。」
すみません、なんか敬語つけないとムズムズしちゃって。
◆◆◆
「すごいなこの結界は。素人にゃさっぱり解き方がわからないぜ。何を隠してあるんだろうか。」
あまりに高度な結界を目にし、そうボヤく。
里奈を犠牲にアリスとの戦いをスキップした私は、雲の上へと突き抜けた。雲の上は晴天が広がっており、雪は雲からできるのだと教えてくれている。
そして突き進んで行った先、当たりに桜の花びらが舞う巨大な結界を発見。今、これを何とかして解除できないか試しているところだ。
「あら、魔理沙。」
私を呼ぶ声が響く。その声の主は私の後ろにいた。
「おどろいたな、まだ先にいると思ったんだが。なにせ私は里へ遠回りしていたからな。」
「悪かったわね、先にいなくて。でも良かったじゃない、今から私の後ろを歩いていけそうよ。」
「歩くわけじゃないけどな、そんな気は更々ないが。」
私と霊夢は一気に臨戦態勢をとる。一触即発の雰囲気の中、お互いの魔力を高め合う。
「…まずはこの結界を解いてからにしない?」
「いいぜ、ただお前、これの解き方わかるのか?」
「いや、解けはするとは思うけど…。かなり時間がかかりそうね。」
霊夢は博麗の巫女である。それ故に、幻想郷を包み込む博麗大結界を管理しているはずだ。それは並大抵な事ではない。霊夢の類い稀なる才能と努力があっての技であろう。
そんな霊夢でも簡単には解けない結界。術者はかなりの強さを誇るのだろう。弾幕ごっこにはあんまり関係ないけど。
ただ強い妖怪ほど弾幕は厄介になってる…そんな傾向がある気がする。実際スカーレット姉妹はかなり厄介なスペルカードをもっていた。
「何してるの〜?」
そんな声とともに、1人の騒霊が降ってきた。
赤い円錐型の三角帽子、頂点には緑色の星の飾りがある。少し黒よりの茶色の髪に、内にある活気を覗かせるぱっちりとした二重。白い服の上に赤色のベストをつけ、そいつの前にはピアノ?だったか?そのようなものが浮かんでいる。
リリカ・プリズムリバーだ。黄色の帽子の長女ルナサと、灰色の帽子の次女メルランを姉に持つ末っ子だ。
「おう、丁度良かった。この結界の解き方をお前は知っているか?」
「それはね〜企業秘密。」
「教える気はないのね。なら話は早い、話したくなるようにすればいいだけだもの。」も
そう言うと、霊夢は再び魔力を高め始める。普段は喜怒哀楽の感情がしっかりある奴なのに、異変の時は凄くドライだ。
誰が相手でも、人間でも容赦なく叩きのめすその姿は、妖怪たちからしたら恐怖の象徴とも言えるであろう。まったく、どっちが妖怪なんだか。
「リリカ〜、その子はお友達?」
ふわり、と黄色い帽子を被る霊と灰色の帽子を被る霊がやってきてリリカに声をかけていた。
「ええ、お友達。」
「そうだぜ、お友達だ。結界の解き方を教えて欲しい、お友達直々のお願いだぜ?」
「その前に、一曲聞いていかない?」
メルランがそう聞いてくる。
「お代はとらない、友達だものね。聞いてもらったら帰ってくれれば。」
「友達だものね〜。」
ルナサがそう冷たく言い放ち、リリカがそれに同調する。
「ったく…、こいつらじゃ結界を解けそうにないな。」
「まあいいわ。私の邪魔をするということは異変解決を拒むということ、手加減してあげる道理もないわ。」
さっさとやりましょ…。と霊夢が魔力を高める。
「私達のスペカは…3枚でいいかしら。」
「たった3枚でいいの?それなら私は0枚。」
「流石になめすぎじゃないか?そりゃ失礼だろ、私は1枚。」
私と霊夢は不敵に笑う。
さっさと打ちのめして、結界の先へ行くとするか。