柿崎隊のA 作:名無しのボーダー隊員
「・・・・・・本当に、俺の隊でいいのか?」
ボーダー本部の食堂ではB級19位の柿崎隊隊長柿崎国治がコップ一杯の水を勢い良く飲み干したあと、神妙な面持ちで対面に座っているB級ソロ隊員櫻井拓真にそう尋ねた。
「今更、何を言ってるんですか柿崎さん」
小さい溜息を吐きながら水を飲み干す。
そして、若干呆れた表情で拓真は柿崎に対してそう返答する。
「いや・・・お前の能力なら他の部隊の方がいいんじゃないかと思って」
下を向き、弱々しい表情で柿崎は呟く。
柿崎が隊長を務める柿崎隊はB級19位、決して高い順位では無い、むしろB級下位に位置する隊である。
それに対して、拓真は今月B級隊員に昇格したばかりの隊員ではあるが、対近界民戦闘訓練で7秒という驚異的な記録を叩き出し、非公式なランク戦ながも現役のA級隊員にも勝利するほどの優秀な隊員だ。
そんな拓真がB級下位である柿崎隊に入隊するのは誰しもが有り得ないと思う程だった。
「柿崎さん・・・俺は、柿崎さんの誘いだから入隊を決めたんです。今更、違う部隊に入隊する気はありません、もちろんその部隊がA級だとしても」
「・・・・・・分かった、これからよろしく頼む」
「はい、こちらこそよろしくお願いします柿崎隊長」
しかし、拓真が選んだのは柿崎隊でありその決心は変わらず、真っ直ぐ柿崎の目を見つめそう宣言する。
その決心に応えるかのように柿崎は手を差し出し、二人は固い握手を交わす。
「あっ、お帰りなさいザキさん」
「あぁ、ただいま真登華」
「どうも、お邪魔します」
勧誘を終えた柿崎は拓真を連れて自分の作戦室に戻ると、オペレーターである宇井真登華がパソコンを弄りながら出迎える。
「櫻井先輩がザキさんと一緒に居るってことは勧誘を成功したんだね」
「あぁ、これからよろしくな宇井」
「お帰りなさい、隊長。無事、櫻井先輩の勧誘を成功したんですね」
「これからよろしくお願いします、櫻井先輩」
「あぁ、これからよろしくな巴、照屋」
数分後、作戦室の奥から柿崎隊万能手照屋文香と銃手巴虎太郎が現れた。
拓真は二人にそれぞれ声を掛け握手を交わす。
「さてとこれで拓真の顔合わせも終わったことだし、今から拓真の歓迎会だな。場所はいつもの店でいいな」
顔合わせを終えた柿崎隊は新たに加わった拓真の歓迎会を行うため、行き付けの焼肉屋に向かって行った。
「これは、お前の歓迎会でもあるんだから遠慮なく食べろよ」
「はい、ありがとうございます柿崎さん」
焼肉屋に到着した一行はそれぞれ椅子に座り焼肉を食べ始めた。
柿崎は遠慮からかあまり焼肉に手を付けない拓真にそう促し、宇井と巴は美味しそうに焼肉と白米を交合に頬張っていた。
「櫻井先輩、一つお聞きしてもいいですか?」
そんな中、照屋はおもむろに橋を置き、拓真にそう尋ねる。
「俺の答えられる範囲なら何でも答えるぞ」
焼肉を食べながら拓真はそう答える。
「何で、先輩は私達の隊に入隊したんですか。先輩の実力ならB級上位部隊はもちろんA級部隊からも勧誘はあったはずですよね?」
「おい、文香・・・別に今聞かなくっても・・・・・・」
「別に大丈夫ですよ柿崎さん。確かにB級上位やA級部隊からの勧誘があったのは事実だが、俺が柿崎隊に入隊するのを決めたのは柿崎さんの人間性だ」
「お・・・俺の人間性!?」
「はい、人間性です。柿崎さんに勧誘の話を頂いた時に何故か分からないんですけど、柿崎さんならこの身を預けられると思ったんです」
照屋に入隊の理由を聞かれた拓真はB級上位部隊やA級部隊からの勧誘があったことを認めながら、柿崎隊に入隊した理由は隊長である柿崎国治の人間性だと答えた。
この答えに当の本人である柿崎は口に含んだ飲み物を軽く吹き出しながら、驚きの声を上げた。
「・・・・・・櫻井先輩となら、仲良くして行けそうです」
「俺もお前たちとなら何事も無くやって行けそうだよ」
照屋は拓真の答えに何らかの共感を覚えたのかそう言ったあと、未だに戸惑っている柿崎を他所に焼肉を食べ始めた。
その後、二時間ほど拓真の歓迎会は続いたのだった。