主はアニメしか履修していません。
智音の口調が難しすぎる...
勇太達は高3になっているので、映画take on meの後、という設定です。
色々ガバガバ設定なので不快に思った方はすみません。
6月2日(土)AM5:30
ふわ、と大きなあくびをして、俺は目を覚ました。
なぜこんな早起きをしているのか。それはーーーーー
「お兄ちゃん、六花さん、行ってきます」
「おう、気をつけてな」
今日から月曜まで、樟葉は2泊3日の修学旅行だ。
まだ薄暗い朝、キャリーケースをゴロゴロと引きずりながら歩くという修学旅行特有の時間は、何物にも代えがたいワクワクを孕んでいるものである。
俺の中学の修学旅行のことは、思い出したくないが。
「待って。樟葉。これを」
そう言って六花が右手を差し出す。
「六花、それはなんだ」
「私の魔力を込めた魔石。樟葉が私の家族であるというだけで、組織に狙われる可能性がある。そして旅先では、私は守ってやれない。だが、これを持っていれば、樟葉の身に危険が迫った時守ってくれる。」
「ただの修学旅行だぞ」
「終嶽呂公、ちゃんとわかっている」
「なんだそのラスボスみたいなやつは...樟葉、荷物も多いし無理に持って行かなくてもいいんだぞ?」
「ううん、持って行くよ。ありがとう、六花さん」
そう言って微笑む樟葉。
こんな中二病患者に渡されたよくわからないものをちゃんと受け取ってくれるなんて。
我が妹ながら、なんてよくできた子なのだろうか。
「じゃあ改めて、行ってきます」
「おう」「うむ」
キィ、バタン、と大きな音を立てて玄関のドアが閉まるのを確認し、樟葉は大きく息を吐いた。
「お兄ちゃん、気づいてないのかな。六花さんが私のこと、家族って言ったの」
それは、もはやプロポーズのようなものではないかと思うのだが。
「六花さんも何気ない風に言うんだもんなあ...二人ともニブいんだから」
まあ、そんな二人だからこそ、樟葉も安心して家を空けられるというものだ。
普通のカップルが家に二人っきりで暮らすなど、どんな爛れた生活を送るのか想像したくもないが、あの二人は良くも悪くもそうはならないと断言できる。
樟葉がジャカルタから帰ってくるまで二人で何もせず過ごしていた前科もあるのだし。
それでも当時より、修学旅行や駆け落ちなどのイベントを経て、少しずつ、本当に少しずつ2人の距離は縮まってきている。
「それでも、そろそろ何か進展するといいね、六花さん」
その呟きは、早朝の肌寒い風に流されていった。
◆◆◆
「樟葉のためとはいえ、お前がこんなに早起きするのは珍しいな」
「プリーステスと同居していた時には、このくらいの時間には起きていた」
「ああ、確かにお前、俺が起きる時間にはもう制服着て俺の部屋にいたしな...じゃあなんでうちに住み始めてからは起きなくなったんだ?」
「それは...」
「それは?」
「それ...は............」
言葉に詰まったのか、みるみる顔を赤くした六花は逃げ出してしまった。
「あ!おい!
....なんだ、あいつ」
◆◆◆
富樫家を勢いよく飛び出し、バン!とドアを閉めてドアにもたれかかる。
まだ顔が赤い気がするが、早朝の涼しさが頭を心地よく冷やしてくれる。
少ししたら戻ろう。そう考えていると、カン、カン、と上階から階段を降りる足音が聞こえてきた。
「にーっはっはっはっは!ここで会ったが百年目!勝負よ!邪王真眼!」
マフラーをなびかせながら六花の前に現れたのは、魔法魔王少女ソフィアリング・SP・サターン7世こと、七宮智音だった。
「ソフィア...」
◆◆◆
二人で朝食を摂ろうと向かったのは近所のハンバーガーショップだった。
モーニングセットを注文し、マフィンにパティを挟んだ簡易バーガーとブラックコーヒーが2人の前に並んだ。
智音は一口コーヒーを口に含み、顔をしかめた。
例え口に合わなくても、コーヒーはブラックを選ぶ。それが中二病というどうしようもない生き物なのである。
目の前の六花も同じように顔をしかめるのを確認したところで、本題に入る。
「それで、邪王真眼はあんなところで何をしてたの?」
「...ダークフレイムマスターからの問いに、私はまたしても逃げ出してしまった」
「問いって?」
「私が勇太の家に住み始めてから寝坊が多くなったのはなぜか、と聞かれた」
「なんでなの?」
「..........」
「なんで?」
「...勇太が
起こしてくれるから...
私が朝起きた時、勇太がいつもそばにいてくれる。
勇太がそばにいてくれると、私は私を見失わずに済む。
だから夜、安心して眠れる。
今までは、朝目が覚めた時、邪王心眼の力を失ってしまうのではないかと怖かった。
でも勇太がいる限り、私は邪王心眼を失わない。失っても、また取り戻せる。そう確信できる」
「......つまり、勇者が起こしてくれるのが嬉しくて、寝坊しちゃうってことね?」
図星である。
「うぅ......」
六花はもう頭を抱え、うずくまるしかなかった。
ぐうの音も出ないとはこのことである。
「ねえ邪王心眼、それを、どうして勇者には言えないの?」
「それは...」
「勇者は邪王心眼のことが好きで、邪王心眼も勇者のことが好き。なら、その気持ちを伝えて勇者が喜ぶことはあっても嫌がることはないと思う。
邪王心眼、伝えることは、そんなに怖がることじゃないよ。
勇者は、ちゃんと聞いてくれる。考えてくれる。
それは、知ってるでしょう?」
六花の瞳はまだ潤み、覚悟が決まっているようには到底見えないが、それでも、コクリ、と確かに頷いた。
「私がなんとかしてあげる、と言いたいところだけど、ここはモリサマーの方が適任かもしれないね」
「丹生谷が?」
「そう。あの子、中学の頃恋愛相談乗ったりもしてたの。水晶を使った占いで、的中率は驚異の100%!」
バッ、と手を正面に向けてポーズをとる智音。
「ふむ、流石モリサマー、私の邪王心眼ですら未来を見通すのは容易ではない」
感心し、頷く。
そうと決まれば、今日の方針は決まった。
とりあえず勇太に
『大いなる火種が燻っているので、先に行く。
心配はしなくていい。
始業時間までには戻る』
とメールを送る。
「ありがとう、ソフィア」
そう言って、六花は深く頭を下げた。
それを見て智音は、面食らったように一瞬固まった。
しかしそれも束の間、フッと全身から力を抜いて笑った。
「どういたしまして、邪王心眼」
智音と別れ、学校へと向かう。
今こそ心強い、結社の力を頼るのだ。
「......本当、何やってるんだろ、私」
それは、口にするつもりはなかった言葉だった。
思わず両手で口を塞ぐ。
スーーー、フーーー。
大きな深呼吸を一つ挟んで、智音は、いや、魔法魔王少女ソフィアリング・SP・サターン7世は、叫んだ。
「にーっはっはっはっは!!!!」
◆◆◆
出発が早すぎたせいか、始業時間よりかなり早く学校に着いてしまった。
クラスの教室にはまだ誰もいないだろう。
だが、生徒会室なら。
ガララ、と音を立ててドアを開ける。
「ーそれで、そっちの件は...あら、どうしたの?小鳥遊さん」
「マスター!!!」
こちらを視認するや否や、凸守が飛び込んできた。
「マスター、あのニセサマーが口うるさいのデス!あれをやれ、これをやれと...凸守はマスターのサーヴァントであって、ニセサマーの命令に従う義理は無いのデス!」
「なっ!あんたが生徒会権限で無茶苦茶しようとするからでしょう!?大体、マビノギオンの引用を公 校舎の壁に貼り出すなんて、私が許すわけないでしょ!!!」
わちゃわちゃと、いつものように喧嘩が始まってしまった。
やれやれ、と首を振っていると、書記担当の生徒が声をかけてきた。
「それで、小鳥遊さんは何の用で来たんですか?」
頷き、六花は2人にも届くように声を張り上げた。
「2人とも、相談がある。邪王心眼恋人契約について」
◆◆◆
「...なるほど、それで小鳥遊さんは、富樫くんにもう少し正直でいたい、と」
「凸守は、マスターは今のままで良いと思うデスよ?伝わらないのなら、ダークフレイムマスターが心を読めばいいだけなのデスから」
「ありがとう、凸守。でも、これは私がやりたいこと。
私が、私の言葉で、勇太に気持ちをもっと伝えたい。
今日みたいに逃げ出した時、きっと勇太は探しに来てくれる。
そして勇太は、私の心の準備ができるまで待ってくれる。
でも、それじゃ、今までと同じ。
対等な契約関係とは言えない。
邪王心眼は最強、と勇太は言った。
だから、勇太の信じる最強の邪王心眼であるために、私は進化したい」
それが、六花の本音だった。
勇太の優しいところが好きだ。
しかし、勇太の優しさに甘えている自分に対し、本当にこれで良いのかと疑問を抱いていた。
このままだといつか自分は、勇太に見放されてしまうのではないかという不安もあった。
だから、変わるのだ。
勇太は六花のために変わってくれている。
最初は中二病を生涯封印すると言っていたのに、六花のためにメールアドレスを作ってくれた。
六花のことを想い、考え、邪王心眼を失わせようとしたこともあった。
でも、六花が泣いていた時、勇太は迎えに来てくれた。
不可視境界線なんて無いと言っていたのに、不可視境界線を見つけてくれた。
今度は、六花が変わる番だ。
「...はぁ、富樫くんがよく言ってた、『六花は何も考えてないように見えて、ちゃんと考えてる』って言葉の意味、よく分かったわ。良いわよ、手伝ってあげる」
「凸守はマスターのサーヴァントですから、マスターの進化を手伝うのは当然デス」
「2人とも、ありがとう。それで、どうすれば良いと思う?」
「そうね...1年の時のクリスマスパーティで食べてた、お酒入りのお菓子なんてどうかしら。用意できる?」
「もちろん、マスターが必要だと言うのなら手配するデース」
「凸守、お願い」
「了解デース、今日の放課後、部室に置いておくデス」
「私は放課後、富樫くんが先にお菓子を見つけないように教室で足止めしておくわ」
「分かった。2人とも、感謝する」
そして、決戦の時は来る。