イチャラブが安定して書けるように頑張ります。
駆け落ちから2ヶ月が経過し、俺たちの関係も前に進む...かと思いきや、俺と六花は何ら変わらないいつも通りの日常を送っていた。
「ふんふんふーんふーん♪」
放課後、鼻歌を歌いながらご機嫌で歩く六花と、その隣を歩く俺は、いつも通り『極東魔術昼寝結社の夏』の部室に向かっていた。
そういえば、俺たちも3年だし受験勉強に取り掛かるべきなのではないだろうか。
というか、この部活の引退時期っていつなんだ?
くみん先輩はなんやかんやずっと居た気がするし...
などと考えつつ部室の扉を開けると、丹生谷と凸守が先に部室に来ていたようだ。
「だーかーらー! ここは絶対こっちの方が良いでしょうが!」
「何を言うデスかニセサマー! 絶対に凸守の案の方が良いに決まっているデース!」
仲が良いのは結構だが、その喧嘩はもう生徒会室でやれば良いのではないだろうか。
呆れていると、2人がこちらに気づいて詰め寄ってくる。
「ねえ富樫くん!富樫くんは私の案が良いと思うわよね!?」
と、何か文章が書かれたプリントを押し付けてくる丹生谷。
「マスターなら、この凸守の素晴らしいアイデアを肯定してくれるに違いありませんデスよね!?」
と、こちらもプリントを掲げて六花に詰め寄る凸守。
一概にはどちらとも言えず俺たちが言葉を失っていると、後ろからななちゃん先生が気配もなく現れた。
「2人ともこんなところにいたの〜、さ!まだまだ書類は残ってるんだから、お仕事に戻りましょうね〜」
口調は優しいが、荒ぶる2人の襟首をガッと掴んで引きずっていく様はまるで熟練の戦士のようだった。
「ちょっと先生、まだ話は終わってないんです!話してください!」
「離すデス!凸守はマスターのサーヴァントとして、いついかなる時もお側にお仕えしなければならないのデース!」
などと言いながら連行される2人。
「ななちゃん...私の背後を取るとは、まさか暗殺術を極めているのか!? 恐ろしい相手...」
「そんな馬鹿な、と言いたいところだが、今のななちゃん先生の登場には俺も気がつかなかったな」
俺たちはそんな様子を見ながら、いつも通りの日常会話を繰り広げていた。
鞄を置き、一息ついて俺は気づいた。
部室に2人っきりだということに。
なんだかんだ凸守が魔法陣に細工をしていたり、
丹生谷が生徒会の仕事に疲れた時にここでお茶を飲んでいたり、
大学の授業がない日はくみん先輩が昼寝をしていたりしたので、
俺たち2人だけになるのは初めてだった。
家では樟葉が買い物に行ったりしている時、当然俺と六花は家に2人きりということになるのだが、普段俺たちは自室で各々の時間を過ごしているため2人っきりであるという実感が薄い。
買い物や登下校は2人でしているが、それも周囲に人の目があるため2人っきりであるという感覚はあまり無かった。
しかしどうだこの空間は。
畳が敷かれているためどこにでも寝そべることができ、間仕切りもないので常にお互いの存在を意識することになる。
そして丹生谷と凸守は生徒会に連行されたためしばらく戻ってくることはない。
くみん先輩も今週は来れなさそうだと言っていたし、それならくみん先輩目当てに訪れる一色も当然来ない。
そして何より、この部屋は内側から鍵がかけられる。
こんな環境に付き合っている彼女と2人きりで入れられた俺がどんな妄想をしても誰も責められないだろう。
だが、俺は高校を卒業するまでは手は出さないと決めているのだ。
以前凸守のケーキのせいで酔ってしまい、そのまま六花と同じ布団で眠ってしまったことがあったが、あれも樟葉の鑑定によると限りなく白に近いということなのでノーカンになった。
ともかく、俺は六花を一生大切にしたいと思っている。
だからこそ、今は我慢の時なのだ。
俺の勝手な欲望で、六花を傷つけることなどあってはならない。
そう自身を戒め拳を握っていると、六花が俺の後ろで何かをし始めた。
しゅるしゅるという衣擦れの音。
パサ、と何かが落ちる音。
一体俺の後ろで何が起きているのだろうか。
「勇太、ちょっと」
声を掛けられ、身体が跳ね上がりそうになるのを気合いで止める。
そして極めて平静を装い、振り返る。
「な、なんだ、どうした?」
「これ...」
六花は水着姿になっていた。
どうやら制服の下に朝から着ていたようだ。
黒を基調としたビキニ。
胸の辺りや腰回りにヒラヒラとした黒のレースが着いている。
やっぱりどうしても黒がいいんだな。
「あれ、水着なら似たようなのを持ってなかったか?」
「時が流れるにつれて私のレベルも上昇し、今やあの装備では私にとって力不足になってしまった」
「何がレベル上昇だ、お前この2年でちっとも身長伸びなかったじゃないか」
俺がつっこむと、六花は顔を赤くしてしゃがみこみ、両腕で膝を抱き抱えた。
一体どうしたのだと俺が首を傾げていると、六花が消え入りそうな声で言った。
「...その、胸が...」
「あ、あぁ、そういうことか...」
動揺を押し隠し、ハハ...と笑ってみるが、気まずさを取り払うことはできなかった。
気まずさに耐えきれず、六花から視線を外して壁を見つめる。
しかしやはり俺とて健全な高校生男子、六花の方を横目で見ようとしてしまうのを誰が責められようか。
ちらりと視線だけを送ると、こちらを見つめる六花と目が合った。
と思いきや、ふいっと六花が目を逸らす。
「...勇太は自分の彼女が新しい装備を披露したのに、ちっとも感想を言わない」
頬を膨らませ、拗ねたように言う六花。
その様子を見て、俺も覚悟を決める。
「フッ、どうやらアーティファクトのようだな。強大な魔力を感じる。
邪王心眼の力を持ってすれば、アーティファクトの発見も容易といったところか」
右手の指を開き、人差し指と中指の間から左目が見えるように顔に当て、ポーズを取りながら六花にそう宣言した。
しかし、六花の表情は暗い。
「いつもの勇太の感想が聞きたい。
そうやってゲルゾニアンサスを呼び起こせば私が喜ぶと思ったら間違い」
「あ、あれぇ、ダメか...」
六花からの鋭い指摘が図星だった俺は、たはは...と照れ隠しに後頭部に手を当てながら笑った。
その様子を見た六花の瞳の輝きが弱まる。
唇はぎゅっと引き結ばれ、何かを堪えているようにも見えた。
「わかった。もうい「可愛いよ!」
六花の声に被せるようにして、俺は言った。
「ごめん六花。俺、照れ臭くてさ。
あんまりそういう事言うのに慣れてなくて...
いつもゲルゾニアンサスとか、中二病に頼って逃げてばっかだった。
でも、これからは上手くできるかわからないけど、ちゃんとそういうことも伝えるようにするから」
「...別に、無理して言わなくても良い。
私が一般人のように可愛いと言われる存在でない自覚はある」
「いや、無理なんかじゃない。事実だからむしろ言いたいんだよ。六花は可愛いって」
「うぅ...」
三角座りで膝と胸の間に頭を入れ、赤くなった顔を隠そうとする六花。
「六花、可愛い」
「あぅ...」
しゅううう、と頭から煙が上がっていた。
そんな六花の照れている様子が可愛くて、俺は六花の側まで近づいて囁いた。
「六花、可愛いよ。永遠にお前だけを愛してる」
ついに耐えきれず、ぼん、と六花の頭が爆発した。
自分で自分を支えきれなくなり、勇太の方に倒れ込む。
「おっと」
咄嗟に受け止め、六花を抱き抱えるような形になる。
...これはマズい。
六花はもう頭がショートしているようで目を回しているが、勇太の脳もショート寸前だった。
六花は水着姿なのだ。
当然肌の露出面積が広く、勇太は今まで何度も六花を抱きしめてきたが、これまでのどの瞬間よりも六花の体温が直接伝わってくる。
六花の白い腕はすべすべしているがもちもちしていた、永遠に触っていたくなるような魔力がある。
そして至近距離で六花を見下ろすような体勢になっているため、頭越しに胸の谷間が嫌でも目に入る。
「ゆうたぁ...」
力なく俺を呼ぶ六花。
「どうした?六花」
「すき...」
弱々しい、それでも心のこもった愛の告白に俺は胸が熱くなり、何かがこみ上げてくるのを感じた。
「俺も好きだよ」
そう言って六花の頭を撫でてやると、幸せそうな、それでいて恥ずかしそうな顔をして俯いた。
「あうぅ...」
呻き声を漏らす六花に苦笑しながら、俺は頭を撫で続けた。
当時の俺は気づいていなかったが、この時、部室の入口から様子を盗み見する二人組が居た。
「ちょっとあの2人、めちゃくちゃ進展してるじゃないの」
「邪魔なのデスよニセサマー!凸守にも見せるデス!」
「あんたみたいなおこちゃまにはまだ早いわよ!」
「そんなことないデス!凸守はもう立派なレディーデース!」
「あっ、ちょっと押さないでよ!」
引き戸がレールから外れ、どたーん、と音を立てて倒れる。
「いたた...」
そう言って頭をさする丹生谷と目が合った。
「いいや違うのよ富樫くん!2人の邪魔をするつもりはなくて...」
しどろもどろになりながら弁明する丹生谷。
「お前ら!!!いつから見てたんだよぉー!!!!!!」
部室に俺の叫びが響き渡った。
つづく?