ひぐらしのなく頃に~神楽舞   作:晃晃

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第49話 前原圭一の退屈な日常

「ごめんねごめんね魅ぃちゃん、背中に透けてるラインがとってもかぁいかったんだよ。だよ☆」

 

俺を3回ばかり地に這わせてようやく正気に返ってくれたレナが詩音に謝罪する。いまいち反省してないのだろうか、そのうっとりした表情はやめい。

 

「別にいいんだけどさ、そんなの私だけじゃないじゃん……」

 

まだ恐怖が抜けきらないのだろうか、背後にかばう俺の背中にツインキャノンを押しつけながら身を震わせつつも、口を尖らせる詩音だった。

 

「羽入だって、レナ自身だっていいわけだしさ」

 

うむ、確かに羽入の背中のラインは俺も時々無性になぞりたくなる。実際三日に一度は無意識になぞってしまって、わきの下を通過したあたりでハリケーンミキサーを顔面に食らうことになるわけだが。

 

「だって、自分の背中は自分で見えないんだよぅ」

 

それも道理ではあるのだが……というか、見えたら自分の背中のラインにも萌えるのだろうか、この不思議生物は。

 

「ともかく落ち着いてくれたならよかったということで、ここは和解だな。ほら、二人とも握手握手」

 

おずおずと俺の後ろから出て詩音がレナの差し伸べてきた手を握る。俺は二人の背中をぽんと叩いて、笑って見せた。

 

「はぅっ!?」

 

ぞくりと身をすくめたレナが、一瞬で涙目になってこちらを見上げる。

 

「け、圭一くん……!?」

 

「おしおきだ」

 

にやりとしてそう言ってやった。

 

「え? え? な、何したの?」

 

ぎゅっと自分の身体を両手で抱きしめて身動きできなくなっているレナと、にやにやしている俺の顔を交互に見て、いったい何が起きたのかという表情の詩音。

 

「み、魅ぃちゃん……本当にごめんね。だから、あの……お願いしていいかな。かな」

 

泣きそうになりながらおずおずと背中を向けるレナ。

 

「へ?……って、うわ。あの一瞬で!?」

 

背中を叩くふりをして俺がはずしたレナのホックを甲斐甲斐しく留めなおしてやるあたり、詩音も結構人がいいのだろうな。

 

「圭一くんって、時々信じられないことするよね……」

 

背中をこっちに向けたままセーラーの下に手を入れて微妙な調整をしながら、真っ赤になって肩越しに俺を睨んでくるレナはなんだか可愛い。

 

「レナ、ほかにも何かされたの?」

 

「この前はね、レナがダム現場でお昼寝してたら、……目が覚めたときには圭一くんがにやにやしながら座ってて、着てた服が全部うしろ前になってたんだよ!?」

 

「ぜ、全部!?」

 

「うん。靴下も下着も全部だよ、信じられないよ!」

 

ふ。この悪戯の天才たる前原圭一にとってそんなのは朝飯前なのさ。……といいつつも一部苦労したのは確かだが、目が覚めたときのレナの顔は傑作だったからそれも報われたってもんだ。隠れ家で全部着直したレナが、泣きながら鉄パイプを振り回して襲い掛かってきたのも今となってはいい思い出だぜ。あやうく死ぬかと思ったが。

 

それとレナ、ひと気がないとはいえ女の子がゴミ山なんかで無防備に寝るんじゃありません。それを懲らしめるために涙をのんで仕掛けた俺の親心というものを何故理解しない。

 

「そ、そこまでいくと変態っていうのも、ひとつの才能なんじゃないかって思えてくるね……」

 

なにゆえ命がけでお前を救った正義の味方に、心底から呆れた視線を向けるのだ詩音。あと微妙に距離をとるのも納得がいかないぞ。

 

とにかく朝っぱらから校舎裏でそんな平和なひとときを過ごした俺たちは、校長先生が鳴らす予鈴を合図に教室へと向かった。

 

「みぃ、仲良し3人組プレイは終わったのですか?」

 

梨花ちゃん、そこ、プレイはいかん。せめてタイムとかそんな感じにしなさい。

 

「体育倉庫。仲良し3人組。マット運動。ツインキャノン。ライン引き。……見えたッ!」

 

きゅぴーん☆と額に閃光を走らせて悟史が妄想ワールドへと入り込む。

 

……どうでもいいが、最後のはいったいどこにどう関係しているのか、ちょっぴりの好奇心が疼くな。いつだって世界を動かしていくのはちょっぴりの好奇心だよな?

 

「そこ、悟史君。不健全な妄想を繰り広げるんじゃありません、朝の会を始めますよ!」

 

教室に入ってきた知恵先生が、目敏く妄想ワールドの展開を感じ取って注意する。

 

はっとした悟史は知恵先生を見るなり慌てた様子で手をあげた。

 

「あ、先生!」

 

「はい、なんですか?」

 

出席簿を教壇の上に広げながら首をかしげる先生。沙都子に関する連絡か何かだろうか?

 

「なるべくですけど、もうすこし薄い色がいいと思うんです。あと、それが現実だとはわかっていても上下の色が違うのは男子の夢が壊れます。僕たちはまだ、夢見ることを許されてもいい年頃だと思うんです!」

 

ぶわっと涙を流しながら言う同志サニーの視線を追えば……なるほど、確かに先生の定番ワンピースも白だからな。俺を含め、分校の男子生徒全員が力強くうなずく。目のつけどころがシャープになってきたな悟史、俺もうかうかしちゃいられないぜ。

 

「は、はい? なんのことだか先生、よくわからないんですが……」

 

知恵先生はちょっぴり天然なのか、それとも悟史が目覚めた新しいキャラクターにまだ慣れていないのか、意味がわからないという顔をしていた。

 

「わかりました、ここは先生の好きなカレーにたとえましょう。カレーはそれだけでもとてもおいしいし、いろんな食材がジャストフィットするとても素敵なメニューですよね、知恵先生」

 

「あら、悟史君。今とてもいいことを言いました。先生ハナマルあげちゃいます☆」

 

一瞬にして満面の笑顔になる知恵先生だった。

 

「ですが、そのおいしいカレーに添えられていた飲み物が生ぬるいホットおしるこで、しかもその中にスプーンが突っ込まれていたら、微妙にがっかりな気分になりませんか?」

 

言われて先生はそれを想像し……、すこし笑顔を曇らせた。

 

「甘いものも辛さが引き立ちますけど、確かに生ぬるいおしるこというのはちょっと微妙な組み合わせかもしれませんね……」

 

「おおむね、僕の言いたいのはそんなところです」

 

悟史は毅然とそう言って席についた。憤懣やるかたないという表情だ。

 

「そ、そうですか……あぁッ、可愛い生徒がこんなに真剣に主張を繰り広げていることがいまひとつ理解できずにいるだなんて……カレーの探求者として失格だわ!」

 

先生、そこ教師です。本音がポロリとこぼれてます。

 

「ということで悟史君、時間をあげますのでお昼までにホットおしるこを買いにいってきてくれると嬉しいです。先生、あなたの言うことをちゃんと理解するためにお昼はその組み合わせで食べてみることにします!」

 

「え、ええっ……!?」

 

悟史が愕然とする。……夏なのにホットおしるこなんか売ってる自販機、村の中にあっただろうか。最悪興宮まで行かないといけないかもしれないな……知恵先生、まったく悪気がないのに恐ろしい罰を与えるものだぜ……!

 

がんばれ悟史、お前の誠実な気持ちはきっと知恵先生に伝わるさ!

 

泣きながらホットおしるこを求めて教室を飛び出していく悟史の背中を見つめ、生暖かいエールを送る俺だった。

 

「……あぅあぅ、なんだか雛見沢が世界でも有数の変態生息地として、着実に戻れない一歩を踏み出しつつあるのは気のせいでしょうか」

 

「誰かさんがそこにいるだけで確実に謎のウィルスは広まっていくからね。来年くらいには雛見沢の新たな風土病として認知されてもおかしくないわ」

 

古手姉妹の意味のわからない会話をスルー。

 

そこへ校長先生がやってきて、形ばかりの始業式が始まる。

 

校長はいつものように威風堂々とした直立不動で居並ぶ生徒たち(北条兄妹の席だけ空席となっているが)を見渡し、その元気な姿を確認して頷くと、重々しく口を開いた。

 

「諸君、夏休みはどうだったかね。暑さでやられた人もいるのではないかな。心頭滅却すれば火もまた涼しという言葉があるが、先生はこの夏、焼き土下座30秒の記録達成を目標に精進を重ね、それを無事極めることができた」

 

おお、と生徒たちの間から感嘆の声が漏れる。校長先生の額と手に巻かれた包帯が痛々しいが、それは男の勲章だ。

 

「諸君もこの夏をそれぞれの目標に向かって邁進してくれたものと思う。どうかこの2学期も大きな目標を掲げ、立ちふさがる障害をその拳で叩き伏せ、そのことで官憲に咎められたならその官憲を叩き伏せ、常に昨日の自分を乗り越えることを忘れずに全力全開で過ごしてほしい。最後に、この言葉を贈ろう。……“漢(をとこ)であれ”ッ!」

 

うむ、短いながらも含蓄の深い話だった。先生を見習って、俺も我が覇道を邁進するぜ!

 

「……私たち女だけど、どうすればいいんだろうね?」

 

「魅ぃ、漢というのは肉体の性別でははかれませんのです。魂の問題なのですよ」

 

お、梨花ちゃんはわかっているな。さすが異世界の漢過ぎる魔法少女と中身を同じくするだけのことはあるぜ。

 

ともかく始業式はぶっちゃけて言えばそれだけなので、あとはお昼まで2時限ばかり通常の授業をして今日は終わりだ。

 

「ねーねー圭ちゃん、ここ教えてよ」

 

詩音がさっそく教科書とノートを開いて、質問をしてくる。

 

「どれ……お、結構複雑な応用問題をやってるじゃないか。夏休みの宿題も終わってるみたいだし、最近頑張ってるな」

 

そう言って詩音を撫でてやると、顔を赤くしながらえへへと嬉しそうに笑う。

 

「……だって、圭ちゃんと同じ高校に行きたいし」

 

なるほど、そういう理由があったのか。動機は不純だが、ようやく勉強する気になってくれたのは嬉しいところだ。

 

「あ~、魅ぃちゃんずるいよ、レナも圭一くんと同じ高校がいいな!」

 

いつも真面目なレナならきっと大丈夫さ。レナは貴重な3年間一緒に通える同い年の学友なので、嫌だといっても俺が無理やりコーチして一緒のところを受けさせるけどな。

 

「そういえば、圭一は高校はどうするつもりなのです?」

 

羽入が尋ねてくる。

 

言われてみれば、どうするんだろうな。ここいらの高校についてはよく知らないが、進学校みたいなところはあるんだろうか?

 

「まさか、東京に帰っちゃうとは言いませんよね……?」

 

「おいおい、それこそまさかだぜ。大学はまだどうなるかわからないけど、すくなくとも高校まではこの村から通うつもりだ」

 

俺がそう言ったら、羽入だけでなく梨花ちゃんもレナも詩音も一様に安堵の表情を浮かべる。そもそも、俺たちが高校生になるのはまだ2年半も先の話なんだがな。

 

「そんな顔しなくても部活メンバーは全員同じ高校に入れてやるから、覚悟しとけよ!」

 

「……圭一くん。理由がいまひとつわかってないところが鈍感かな」

 

レナが笑いながらそう言ったが……はて、仲間同士一緒にいたい以上の理由がどこにあるというんだ。

 

「みー、閃いた! 魅ぃと悟史が3年、圭一とレナが2年、羽入が1年ばかり浪人すればボクも沙都子も全員同じ学年で3年間いっしょに通えるのですよ!」

 

「ちょ、3年浪人ってひどくない!?」

 

相変わらず無茶を言うなこいつは。俺は梨花ちゃんの頭にぽんと手を乗せて、

 

「悪いがそいつは無理だ、梨花ちゃん」

 

「み?」

 

「梨花ちゃんだけ浪人してさらに1年遅れそうだしな」

 

「みぃぃぃぃ!? け、圭一、私の成績ってそんなにまずいの? そんなわけないわよね、そうじゃないって言って!」

 

うーむ、涙目で詰め寄られても困るんだが……。正直に思うところを言ってやるのが本人のためだろうか。

 

「いまの成績は悪くないが、解き方よりも答えだけ覚えてるみたいで理解が浅い。このまま行くとたぶん、中1の終わりくらいでがたがた崩れるな」

 

「な……ッ!」

 

梨花ちゃんは口パクだけで『な』『ん』『で』『す』『とー!?』と言いながらスローモーションで教室の床へと沈んでいった。前から思っていたが、やけに芸風の広い幼女である。

 

「くっ……百年の繰り返しで勉強なんかもうとっくにやり尽くしたと思っていたのに。最後の世界でこんな落とし穴が待ってるだなんて、思いもよらなかったわ……!」

 

泣きながらわけのわからないことを口走り、床をがしがしと拳で殴りつける。

 

そして顔を上げ、泣き濡れた目で俺を見つめる。

 

「どうしたらいいの、圭一……! お願い、今朝私の耳元で囁いた、とても教室では口に出せないようなことをしてあげるから私に力を貸して!」

 

ちょっ……、それを言ってる時点でほとんど脅迫なんだが!?

 

「く、口に出せないようなことぉ……?」

 

「それってなにかな、どんなことかな!」

 

「あぅあぅ、まさか梨花にまで……!?」

 

三者三様の反応をみせる俺の愉快な仲間たち。うふふ、もしかして俺、ちょっぴり生命の危機とか迎えちゃってますでしょうか?

 

いや……俺は決して諦めない男、前原圭一。

 

悪辣な幼女に息の根を止められるくらいなら、この身に刻んだ未練を振り絞ってでも立ち向かうべきだ、そうだろ前原圭一ッ!

 

俺は梨花ちゃんの肩をがっしと掴み、咆哮した。

 

「それに加えて一昨日の続きもしていいなら、全面的に協力してやるわぁッ!」

 

思い出すのにコンマ数秒、梨花ちゃんが目を見開いて耳まで赤く染まる。

 

「………………ばか」

 

目を伏せてほんとに小さな声でそう言うのがやっとだった。

 

勝った……、俺は幼女に負けなかった、運命に屈しなかった。ざまあみろッ!

 

背後でぞわりと殺気がうごめく。

 

鉈とスタンガンと私。

 

かろうじてもぎ取った勝利の代償は……とても、大きかった。

 

「…………む?」

 

ふと気づいたら、詩音とレナが俺を覗き込んでいた。

 

「あ。圭一くん、起きたよ! よかった!」

 

「あははは、生きてたよの間違いじゃないの? ほら圭ちゃん、さっさと着替えておいで~!」

 

詩音が笑いながら俺の胸に押し付けたのは、ロッカーに入れてあった俺の体操着だ。

 

「レナたちは先に校庭にでてるね!」

 

よく見れば二人とも体操着に着替えていて、どうやら次の体育の時間になっているらしい。

 

……ということはまさか、クラスの女子たちが着替えている間、俺はこの教室の床の上で気を失っていたというのか……!?

 

なんという屈辱、なんという絶望。俺が死ぬほど悔しがると知っててこんな仕打ちをするとはこいつら鬼か!

 

許さねえ……、サニー、イリー、そしてトミー! この場にいない我が魂の兄弟たちよ、俺に力を貸してくれ……このふざけた世界を変えるほどの力をッ!

 

俺は手早く体操着に着替えると、復讐を胸に宿して教室を出た。

 

……部活メンバーの4人は、にこやかに俺を待ち構えていた。

 

「あぅ、圭一~☆」

 

その並んだまばゆいばかりの笑顔を、泣きっ面に変えてくれるわぁ!

 

「みんな、勝負しようぜ。……ひさしぶりに、キレちまったよ」

 

びっと立てた親指を180度回転させ、地面に向けて宣戦布告する。

 

「くっくっく……、我が部活メンバー相手にたった一人で勝負を挑むなんてとんだ命知らずがいたもんだ!」

 

「レナもね、ちょっとおしおきが必要かなって思ってた。だっていつもみんなを独り占めしてずるいもん!」

 

「いいわよ、圭一……。あなたが気絶した後、問い詰められて私がどれだけ恥ずかしかったか教えてあげる」

 

「あぅあぅ、僕は特に恨みもありませんのでシュークリームをおごってくれるほうの味方をしますのです☆」

 

一人もおじけづいた様子はない。それどころか、挑戦的な視線を返してくるのだ。

 

……まったくこいつら、いい根性をしてやがる。

 

「いいかてめぇら、この体育の時間いっぱい使って鬼ごっこで勝負だ! ルールはこの学校の敷地からは出ないこと、4人のうち1人でも逃げ切ればお前らの勝ち。ただし4人とも時間内に俺につかまったそのときは、今度の日曜日、お前ら全員朝から晩まで絶対服従、この前原圭一のメイドをさせてやるぁあッ!」

 

ぎらりと皆の目の色が変わった。俺がこれだけの条件を提示したのだから、この抜け目ない連中がそれ以上の勝利の報酬を望むのは当然……ッ!

 

「面白い……! だったら圭ちゃん、私たちが勝ったら……」

 

詩音が舌なめずりさえしながら交換条件を突きつけてくる……いったい何を!?

 

「今月の日曜、ひとりにつき一日ずつ……私たちと、『恋人として』ふたりっきりでデートしてもらうッ!」

 

「はぁッ!?」

 

俺は自分の耳を疑った。絶対服従とかじゃなくて、そんな条件でいいのかよ。

 

めちゃくちゃ楽勝じゃないか?

 

でも、なんだか残りの3人も俄然やる気になっている様子だ。

 

レナは『デートデートデート、圭一くんとデート……』と呟きながらレナぱんを空に唸らせているし、梨花ちゃんは『ふ、ふたりっきり、一日ふたりっきり……!?』とまだ見ぬ未来を夢見てきらきらと光を放っているし、羽入も『あぅあぅ、恋人だなんて、そんな……新鮮な響きなのです☆』とほんわか笑顔でいまにも空に浮かびそうな勢いだ。

 

こいつら、もう勝った気でいやがるのかよ……!

 

「じゃあ圭ちゃん、これ」

 

にやりとしながらなにかアラームらしきものを投げてよこす詩音。

 

「キッチンタイマーだよ。1分にセットしてある」

 

ななな、なんだか不吉なアイテム登場ッ!?

 

「オンにしたらゲーム開始、時間が来たら圭ちゃんは追いかけていい。終了の合図は授業終わりの鐘でOK?」

 

「くっ……上等だぜ。お前ら全員、この前原圭一様の一日限定ハーレムでたぁっぷり可愛がってやろうじゃねぇかぁあッ!」

 

気合の雄たけびとともにキッチンタイマーを天に掲げる俺だったが、

 

「そ、そっちも悪くないかもね……」

 

「現状に気づいてないのかな、かな」

 

「青い鳥ね……手の中にある幸福か」

 

「あぅあぅ、可愛がってほしいです」

 

なんだお前ら、その微妙に負けても別にいいやってノリ!?

 

この本気になった前原圭一を、そんなんで相手にできると思ったら大間違いだぜ!

 

「行くぜ、ゲームスタートだ!」

 

かちりと俺がキッチンタイマーのスイッチを押し込むのと同時、四人はいっせいにその場から駆け出していた。遠ざかっていく二色二対のブルマをこの目に焼きつける。

 

ここに、プライドを賭けた凄絶なる死闘が幕を開ける……!

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