「らぁあああぁッ!」
叩きつけた拳が、固められた雪の壁に亀裂を生じさせる。
だが、まだだ。……まだ足りない。
……これで何発目だ?
レナならとっくに、こんな状況からは……!
そう思った瞬間、亀裂が大きな裂け目となり、頭上の雪が崩れた。
「な、なにぃぃぃ!?」
のしかかってきた大量の雪の中からもがき出るには小一時間を必要とし、すっかり身体が冷え切ってしまった。
「死ぬかと思ったぜ……さ、最近の罰ゲームは命にかかわるのが多すぎる……ッ!」
今日の部活でまたもやビリを引いた俺に課せられた無慈悲な罰ゲームは、みんなで作った出口のないかまくらに閉じこめられる、というものだった。殺す気か。
一応天井に空気穴は作ってくれたし、思ったより寒くはなかったが……、何時間も薄暗くて何もない空間に閉じこめられたら、さすがにどうかしてしまう。
「圭ちゃん、いよいよダメかもしれないと思ったら、このベルトのバックルを2回叩いてくださいね」
詩音はそう言ってベルトを渡してくれたのだが、いよいよダメだと思ったときには生き埋めになっていたのでそれどころではなかった。
……だいたい、最近俺の扱いが酷すぎないか?
罰ゲームに限らず、酷い目に遭っては体育座りで涙する羽目になっている気がするぞ……!?
もしかして俺、実はみんなに嫌われてないか!?
そ、そんな事あるもんか……。
都会にいた頃とは違うんだ、レナだって梨花だって羽入だって詩音だって俺を好きだって言ってくれただろ。
……そーいう意味の好きじゃなかったらどうしよう!?
「クールになれ前原圭一ぃぃぃっ!?」
俺はぶんぶんと首を振って、芽生えかけてしまった馬鹿げた考えを必死に否定する。
とにかくいまは、身体を暖めなければ……!
庭をぐるりとまわりこんで玄関に向かい、身体についた雪をはたき落としてからドアを開ける。
……すると、ちょうど外出の支度をしたレナがびっくりした顔で俺を見ていた。
「圭一くん、もう出てきたんだ。はやかったね!」
……みんなと一緒になってあんな酷い目に遭わせておきながら、なんだよこのレナの屈託のない笑顔は……!?
「晩ご飯の時間になったら出してあげるつもりだったのにまだ3時間くらいあるね。特訓の成果かな。かな!」
い、いや、気のせいさ。レナはちゃんと心配してくれていたからこそ、俺の無事を喜んでくれているんだ。
そうに決まってる。
「あ、圭一くん身体冷えてるよね。レナがあっためてあげるから、一緒に来てくれるかな」
「へ? あっためるって……」
思わずいけない考えが浮かんでしまう俺の手をとって、レナは笑顔で玄関を出る。
「レナの家にきて、圭一くん」
「へぇえっ!?」
ま、まさか、梨花や羽入のいる家の中じゃできないようなことをするつもりじゃないだろうなレナぁあっ!?
父さん、母さん、俺、大人になります……っ!
キングクリムゾン!(1500秒)
「いくぞ、レナっ」
「うん、いいよっ!」
どさどさと音を立てて、最後の雪の塊が竜宮家の庭に落ちる。ふうと息をついて俺は手袋を脱ぐと額の汗を拭う。
「圭一くーん、梯子、滑って危ないから気をつけて降りてきてねー!」
「おーう」
下でぶんぶんと手を振ったレナは、俺の返事に笑顔で答えるとすぐに周囲の雪を積み上げる作業に戻っていった。
「はあ……確かに身体は暖まったけどさ」
週に一度くらい、レナはこっちの家の雪かきや雪おろしもしにきていた。それを手伝うのは別に今日が初めてのことじゃない。
別にレナが意地悪なわけじゃない……妙な期待をした俺が馬鹿だったというだけのことだ。
「ありがとう、圭一くん! レナ、今夜は梨花ちゃんを手伝って圭一くんの好きなロールキャベツを作ってあげるから楽しみにしててね!」
帰宅して、汗だくだったので着替えたあと、俺は泣きながらやるせない気持ちを抱えつつ園崎家へと向かった。
詩音なら、詩音ならきっとなんとかしてくれる……。
「あ、圭ちゃん。案外早く脱出したんですね。……どうしたんですか? 雪かきなら葛西の部下らしき人がやってくれちゃいましたけど」
奥から出てきた詩音は半纏を着ていた。
……うちの連中も全員お気に入りの半纏を好んで着てるけど、詩音のははじめてみるから新鮮だな。
「どうして俺がわざわざこの無駄に広い屋敷の雪かきをしなきゃいけないのか聞いてもいいか」
「そりゃそうですね。……まぁどうぞ」
掘り炬燵のある居間に通される。
これってはじめてだけど足が楽でいいなぁ……とぬくぬくしていたら、ずいっと蜜柑の山が目の前に出てきた。
「ノルマは5個ですんで。もっとも、圭ちゃんなら10個はいけますよね……?」
流し目でそう言われて、反射的に「20個はいけらぁ!」と答えそうになった俺がいるのは内緒だ。
「だが断る。この前原圭一の好きなことは、当たり前のように俺ルールでノルマとか言ってくるやつに反逆してやることだ!」
レナが確か今晩はロールキャベツだと言っていたはずだ。せっかくの冬の最強メニューを腹いっぱい食べられなくなるのはごめんだぜ。
「へえ……」
すぅっと詩音が目を細めた。
「そう……、圭ちゃん。この雛見沢で園崎に逆らうってことがどういうことか、いまだによくわかってないみたいですねぇ……」
「けっ、またポン刀でも持ちだすのか? 相手は婆さんかそれともお前か? どっちでも俺は構わないぜ……!」
嘘だ。内心がくぶるにゃーにゃーだ。
いやいやヘタレとか言うな、よく考えてくれ。
秋に婆さんとやり合ったときゃマジで怖かった。なにが怖いって、刃物そのものよりも、刃物持って平気な顔してる婆さんが怖かったんだよ。
こっちゃガキ同士の喧嘩でも勝ち星のないひよわな都会育ちの中学一年生、向こうは人殺してるんじゃねーかって据わった目をして刃物持った婆さんだぜ?
あれで怖くないって言うヤツの常識を疑うぜ、俺は。
「いまのうちに謝れば爪一枚くらいのけじめで許してもらえますよ? どうします?」
爪一枚ってなんだよ!
いやな想像しか浮かばないよ!
蜜柑を食べる食べないでどうしてそこまで話が飛ぶ!?
こ、こうなったら……とりあえず誤魔化してやる!
「上等だ……お前にもそれ相応の覚悟をしてもらうぜ」
俺は、手のとどく棚の上に乗っていた鉛筆立てから一本のペンをとると、こたつ机の上に広げた自分の指めがけてその先端を振り下ろす!
「……ったく!」
あと数センチというところで詩音が滑り込ませてきたスタンガンが振り下ろした俺の右腕に当たって火花を散らす。
「あづっ!?」
さすがにペンを握っていることができずに放してしまい、俺は蜜柑の山に突っ伏すしかなかった。
「いきなりわけのわからない行動をとらないでください、圭ちゃんはどこの漫画家ですか」
やれやれとため息をつきつつ立ち上がった詩音は、かろうじて意識を失わなかった俺を引きずってこたつから引っ張り出すと、廊下に向かって呼びかけた。
「葛西~。圭ちゃん帰るっていうから、運んであげて」
くそう、お客様がお帰りだぞってモードかよ。
葛西さんが来るのを待ちながら詩音はちょんと俺の頬をつついて、微笑んでみせる。
「わけわかんなくてハラハラしちゃいますけど、そーゆーとこ、結構好きですよ?」
ちっとも褒められた気がしない。しかもさりげなく俺の服の内側に10個ほどの蜜柑を詰めるのはやめてくれ!
「それでは、こちらへ」
やってきた葛西さんと部下らしき人に肩を借りて、俺は園崎家からつまみ出されてしまった。
「歩けそうですか? なんでしたら車でお送りしますが」
葛西さんはそう言ってくれたけど、玄関まで出る頃にはある程度回復していたので丁重にお断りした。
……レナも詩音も俺の心までは暖めてくれなかったか。
ならばたよれるのは梨花か羽入か?
いいや、違うね。
俺には心の安まる場所がもうひとつあるんだ。
1メートルほどまで順調に成長しつつある雪の壁に手をつきながらどうにかやってきたのは、林の中にひっそりとたたずむメイドさん☆ハウス、北条家だ。
……なんだかてっぺい☆ハウスと呼びたい気分に駆られたけど、これはもちろん気のせいだよな?
我が前原屋敷に帰っても常識を超越したアホ姉妹とさっき脱出直後の俺を笑顔ひとつでこき使ってくださった小悪魔ちっくなハイスペック少女しかしないが、ここは違う。
いまや雛見沢の良心、レアな常識人として貴重な存在になり果てたなまいき天使の沙都子、そして癒しと潤いをもたらしてくれる雛見沢最強メイド鷹野さんがいるんだ!
「沙都子ぉう~、鷹野さぁ~ん☆」
呼び鈴で出てきたのは、……悟史だった。
「やあ、圭一。どうしたの?」
「どうしたのはこっちの台詞だッ!」
悟史は、俺の親友は……この寒いのにタンクトップを着て眼鏡をかけていた。ご丁寧にキャップまで。
こいつ……脳が大変なことになってるんじゃないのか!?
「あ、これ? ハハハ、いやぁ参ったなぁ……鷹野さんが帰ってきたら、驚かせてあげようと思ってね。内緒だよ」
気付けよ、サニー……!
お前はいま、ここにいないあいつの口調で喋ってるんだ!
「どうしてこんなになるまで放っておいた! さ、沙都子はどこだよ、サニー!」
「検診で鷹野さんと一緒に診療所だよ」
違うだろ……!?
いま一番、診療所にいくべきなのはお前なんだ……!
誰がみたって、そうなんだよ……悟史!
「悟史……。迎えにいってやれよ、二人を」
「え?……そうだね、ちょっと寒いけど、そのほうが驚くかもしれないな。アッハッハ!」
これでいい……この格好で診療所にいけば、きっとイリーがなんとかしてくれるさ。一応電話だけ入れておいてやるから、はやく正気に戻るんだぜ……悟史。
「じゃあな……」
俺は踵を返し、打ちひしがれた気分で帰途についた。
悟史……もう『ひぃっ』って顔してみろとか、頭にアンテナ立ててみろとか無茶は言わない。
お前はお前、北条悟史であればそれでいいんだ……。
そんなことを考えながら、家に帰り着く。
「ただいま……」
「あぅ、圭一。おかえりなさいです」
ぱたぱたとスリッパを鳴らしてやってきたのは羽入だ。
「かまくらが壊れてるのに戻ってこないから、生き埋めになっているのかと思って心配したのですよ」
いや、それ以前にかまくらに閉じこめるという発想そのものを心配しようぜ羽入。
「寒くなかったのですか?」
それでも、心配そうに見上げてくる純粋な瞳は俺のささくれだった心をちょっぴり癒してくれた。
「圭羽もいいかもな……レアだしさ」
「なにを言ってるのです?」
きょとんとする羽入を撫でてやると、くすぐったそうに目を閉じてされるがままになる。
「あぅ……あの、圭一。お風呂を沸かしておいたので、ごはんの前に入るといいのです」
「おお、ありがとな。よし、羽入も一緒に入ろうぜっ☆」
「……あぅ。こ、困るのです」
もじもじと恥ずかしそうな上目遣いで見られて、思わず気勢をそがれてしまう。い、いつもと反応が違うぞ……?
「その、圭一。僕も今年に中学生にあがるのですし、一緒にお風呂というのはどうかと思うのです。圭一がどうしてもというなら抵抗しても無駄だとは思いますが……あぅ」
う、じたばたと抵抗されるうちはまだいいけど、こういう反応に出られると急激に相手がたった一歳しか違わない女の子なんだなぁ……と感じてしまい、いままで一緒に入っていたことさえもなんだか気恥ずかしくなってしまう。
「い、いや、その……羽入が嫌なら、無理にとは」
羽入は顔を伏せたまま、耳を真っ赤にしていた。
「嫌なわけではないのです。でも……困るのですよ」
「……そ、そっか。うん。すまん、風呂入ってくる」
なんだかいたたまれないような気持ちになって、俺はもう一度羽入を撫でて、安心したような笑みを浮かべるのを確認してからそそくさと自分の部屋に戻った。
ゆっくりと風呂に入って、すこし考えてみることにする。
レナも、詩音も、羽入も、それぞれに問題を抱えている。
レナは家庭の問題で、今日の様子を見ても親父さんはあの家にあまり寄りついていないらしいことがわかる。レナのほうもこっちに泊まりっぱなしだから、親子の間には俺にはかりしれないほどの溝ができているのだろう。
なんとかしてやりたいけど、いまだに親父さんの顔も知らない俺がおいそれと首をつっこめる問題でもないのかもしれない。レナの気持ちがまとまるまでは、ここにいてくれるほうが目が届く分だけ俺も安心はできる。
詩音は……なんだろうな。相変わらず話してくれないけどやっぱり園崎家次期頭首ってことでなにか重圧とかがあるんだろうか……それとは別に、詩音には『誰か』に対する負い目とか罪悪感みたいなものがあるようにも思う。
ときどき泣きそうな目をしたり、レナとコソコソ内緒話をしてるのはそれが関係しているんだろうか。
元気づけてやりたいと思うけど、詩音は少し前から微妙に俺から距離を置いている気がする。決して悪い意味でなくもっと落ち着いた関係を望んでいるんじゃないかと思う。
羽入は……時々消えてしまいそうになったり変な巫女服に変身する不思議なところがあるけど、それとは別に悩み事みたいなものがあるらしく、たまに診療所に通っている。
体調が悪いわけじゃなさそうだから、それほど心配はしてないけど……できれば話してほしいと思うのは確かだ。
もっとも、羽入は俺の言動が虚勢にすぎないことを誰より知っているわけだから、あまりたよりにしてくれなくてもしょうがないと言えばしょうがないけど……もうすっかり家族になれたと思っている手前、すこし残念だ。
……結局のところ、俺はみんなに何もしてやれない。
みんなが頼ってきてくれるまでは手出しのできない問題が多いし、もし頼ってくれたとしても何もできないかもしれないという怖さは確かにある。
それを考えれば多少酷い目に遭おうが、みんなが安心して笑っていられるいまの日常は得難いものかもしれない。
そう……俺が酷い目に遭う分には、きっと構わない。
痛いのも怖いのも嫌だけど、それが俺以外の誰かに向かうのは、きっともっと嫌な気持ちになるはずだ。
レナや詩音や羽入が泣かなくて済むのなら、俺が泣いてるのが一番平和でいいんだ。
それが俺が嘘をつく理由なんだから……。
両手で湯をすくって顔に叩きつける。
俺はみんなが思うほど強くない。やってくる障害も困難も拳の一撃で叩き伏せられるほどには強くなれない。
けど……みんなを襲うはずの痛みの前に飛び出すことくらいはできるはずだ。勇気なんて嘘で構わない、あとでやらなきゃよかったって後悔するだろうけどそれでいい。
神様……オヤシロさまでもそうでなくても、頼む。
強くしてくれなんて贅沢は言わない、俺に強いふりを続けられるだけの図太さをくれ。みんなの痛みが終わるまで、笑って一番前に立てるだけの図々しさを俺にくれ。
「いやっほーぅ☆」
……と、いきなり脱衣所のドアが開いて明るい声とともに飛び込んできたのは梨花だった。全裸で。
「圭一、一緒に入るわよ!」
「って、もう入ってきてるだろうが! 夕食の当番はどうした、レナとロールキャベツ作ってたんじゃねーのか!」
「大丈夫、羽入に押しつけた!」
シャワーをぱっぱっぱーと浴びて湯船に勢いよく飛び込んでくる梨花の小さな身体を慌てて抱き留める。
「ったく、あとで羽入に謝っとけよ」
梨花は向かい合う形で俺の足の間に潜り込んできた。
「……羽入が言ったのよ。『ここは僕に任せて、梨花はお風呂に行くのです、あぅ!』って」
……それ、死亡フラグなんじゃないか?
「圭一がなんかしょぼくれた顔してるって心配してたわ。レナも、最近圭一が元気ないって気にしてたし」
梨花の言葉で、はっとしてしまう。
……顔色を見ているのは、俺だけじゃないってことか。
小さく笑みを浮かべた梨花は、俺の胸にもたれかかった。
「あのね。……私の知ってる前原圭一って奴は、ヘタレで馬鹿で単純で筋金入りの変態でどーしようもなく鈍感で、そのくせ天然ジゴロで達者なのは口先だけなのよ」
ぐさぐさと突き刺さる言葉の刃。
とどめを刺しにきてますか梨花さんッ!?
「……でも、そいつの言葉ひとつで、みんな明るくなったり勇気が出たりするの。ムードメーカーってやつかしら」
ちょん、と俺の胸をつついてくすくすと笑い声をこぼす。
「だからね、圭一。あなたはそこにいるだけで、私たちに元気とか勇気とかくれてる。……あ~、何が言いたいかって言うと、ね……」
こほん、と咳払いしてから拳を固めて、ぺこんと俺の腹を殴りつけた。
「元気だせ!……ってこと☆」
小首をかしげたその微笑みに、自然に笑い返していた。
こいつはこいつで俺の顔色を見ていて、みんなと同じように俺を心配してくれていたのだとわかったから。
「……梨花」
ん?と俺を見る梨花の腰を両手でつかみ、ぐいっと持ち上げると背中を向けさせてまた俺の膝の上に下ろす。
「な、なによ……?」
背後をとられた梨花が肩越しに振り向きながら、すこし警戒の色を滲ませる。ふ……勘のいい奴め。
「なにか無駄に元気が出たから、とりあえずお前の夢を強力サポートする気になった俺がいるぜ!」
「私の夢……って、ま、まさかッ!?」
「昨日のお前を超えてゆけ梨花ぁぁぁッ!」
もはや梨花に逃げ場なし。
「みぃぃぃぃッ!?」
その悲鳴はどこにも届くことはない。
……いや、もしかするとキッチンに届いているのかもしれないが、レナも羽入も結局現れることはなかった。
それからしばらくして、のぼせかけた梨花を小脇に抱えて俺はキッチンへと向かい、ぐったりした梨花に牛乳を飲ませてやった。
「けほ、けほっ……失神するまでやることないでしょ」
それで意識が戻ったのか、涙目で俺を睨む梨花だった。
「……あぅ。僕の妹にいったいどのような責め苦を!」
「梨花ちゃんが真っ赤になるなんて何があったのかな!」
エプロン姿の羽入とレナも興味津々なようだった。
「……今度二人にもしてやろうか?」
爽やか笑顔でそう言ってやったのに、なぜかぶんぶんと首を横に振りまくる二人だった。
「やっぱりこの男、多少凹ませておいたほうがいいような気がしてきたわね……」
冷蔵庫の扉に火照った身体を寄せてその冷たい感触を楽しみながらぼやく梨花がちょっと可愛い。
「それでロールキャベツはまだか、かーさんや」
と尋ねたら、レナと羽入はお互いに顔を見合わせる。
「……どっちのことかな、かな?」
「……あぅ。それは当然僕なのです」
なぜか火花を散らす二人。
「羽入ちゃん、レナのほうが年上だよ。だよ……?」
「設定上そうなっていますが、問題は包容力なのです」
不敵な笑顔を向け合う二人がなんだか怖い。
……どうでもいいけど、ロールキャベツをはやく食わせてくださいお前ら。
それだけが、俺の願いです。