MCU転生チート主人公の思考実験   作:鳥ささみ

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第12話

 

1:農園サノスの自動処理(デッドコード化)

 

宇宙の因果律を内包した純白の光が地球を包み込んでから、短いようで長い数日が経過していた。

 

アフリカの超科学王国・ワカンダ。その広大な焦土には、未だに黎明駆率いるイージス重工業の自律防衛重機連隊『ブレイク・スルー(タイタン)』が規則的な駆動音を立てて整列していた。サノスの先遣隊であった「アウトライダーズ」のゴミデータは完全に駆逐され、ワカンダのインフラは一ミリのクラッシュもなく維持されている。

 

キャプテン・アメリカ(スティーブ・ロジャース)やティ・チャラ、ナターシャ・ロマノフら前線のアベンジャーズは、武器を収め、困惑と驚愕の入り混じった表情で静まり返る草原に立ち尽くしていた。世界中で「指パッチン」が起きたというのに、彼らの周囲では誰一人として灰になっていなかったからだ。

 

同じ頃、地球から何百光年も離れた、緑豊かな辺境の惑星。

朝靄が立ち込める小さな農園のテラスで、覇王サノスは静かにスープの入った鍋を火にかけていた。彼の左腕と顔の左半分は、六つのインフィニティ・ストーンのエネルギーを結合させた代償として、黒く焼け焦げて激しく損傷している。

 

だが、その鉄の顔には奇妙な満足感が漂っていた。

「これで……宇宙は救われた。歪んだ天秤は、正しく均されたのだ」

 

左腕を黒く焼け焦がしたサノスは、アベンジャーズが強襲を仕掛ける直前、自らの目的を永久に固定化するためにガントレットへ最後のコマンドを入力していた。

 

「これで……私の崇高な計画は、不可逆のシステムとなった」

 

サノスが残された全エネルギーを絞り、インフィニティ・ストーンそのものを原子レベルへと破壊するコマンド――そのプロセスが実行に移された瞬間、ストーンの莫大なエネルギーがサノスの肉体を内側から激しく蝕んだ。

 

ストーンの原子崩壊が引き起こす固有エネルギーの超負荷は、覇王の屈強な生体スペックをまたたく間に限界値へと引きずり下ろしていく。細胞が分子レベルで損壊し、生体電圧が急激に降下していく。

 

しかし、そのサノスの背後の空間が、前触れもなく青い熱線を伴って爆発した。

 

「そこまでだ、サノス!」

 

空間の裂け目から現れたのは、キャプテン・マーベル(キャロル・ダンヴァース)を先頭にした、地球の残存戦力――ソー、ブラック・ウィドウ、ウォーマシンたちの姿だった。

彼らはワカンダの前線でカケル・レイメイから「サノスの退避座標(ログ)」をパケットとして手渡され、イージスの独自ワープゲート技術によってこの星へインターセプト(強襲)を仕掛けたのだ。

 

「何……? 地球の戦士たちか。だが、もう遅い。私は目的を果たした……」

 

満身創痍のサノスが立ち上がろうとするが、激昂した雷神ソーが放ったストームブレイカーが、サノスの残された右腕を叩き斬り、次の瞬間にはその巨躯の首を力任せに撥ね飛ばしていた。

ドサリ、と覇王の肉体が農園の土へと倒れ伏す。宇宙を恐怖に陥れたタイタン人は、あまりにも呆気なく、ただの死体(デッドコード)へと変わった。

 

地球の最高機密軌道ドックからその戦況ログをリモート監視していた黎明駆は、白衣のポケットに両手を突っ込んだまま、ホログラム画面を冷淡に見つめていた。

 

「予定通りだな。サノスという親プロセスは、ストーンを自ら破壊しようとしてスペック(残生命力)を限界まで落とし、アベンジャーズの復讐心という自動デバッグ関数によって処理された。これで奴が今後、私たちの計画に干渉してくる確率はゼロだ」

 

傍らでナノアーマーの回路を逆アセンブルしていたトニー・スタークが、作業用ゴーグルをずらして不敵に笑う。

「ほっておいても勝手に自滅するバグに、わざわざ俺たちのリソース(戦力)を割く必要はなかったってわけだ。本当に冷徹なCEOだよ、お前は」

 

「非効率なコストは徹底的に削減するのがイージスの流儀だ、スターク」

カケルは画面を閉じ、青い瞳の奥に鋭い知性を宿らせた。

「奴は自分が全宇宙の生命を半分に間引いたと錯覚したまま死んだ。だが、私が仕組んだ『パーティション・トリアージ』の本質を、奴の単純な脳では理解すらできていなかった。……さあ、これより5年間のメンテナンス・モード(地球凍結計画)を開始する」

 

2:5年間のビルド時間と「タイム・レプリケーション」

 

それからの5年間、地球は人類史上、最も「奇妙で超秩序的な停滞」を迎えていた。

 

原作のタイムラインであれば、人口が半分になった絶望から、世界中の都市は荒廃し、生き残った人々は喪失感に苛まれていたはずだった。しかし、この世界線は違った。

黎明駆が世界全域に発信した『プロジェクト・エンドゲーム:仕様書』により、全人類は「消えた人々は死んだのではなく、5年間の期限付きで宇宙の安全な領域(アーカイブ)に退避しているだけだ」という絶対的な数理的事実を共有していた。

 

イージス重工業の圧倒的な経済・軍事インフラが世界各国の政府をバックアップし、消去された人々の資産、住居、指示、家族の生活は「データ保護セクター」として100%完璧に維持・管理されていた。暴動は起きず、経済クラッシュも発生しない。人類はただ、5年後の「完全解凍(エンターキー)」の日を信じて、淡々と日常を回していた。

 

その裏で、ニューヨークのイージス本社ドックでは、トニー・スタークとカケルによる、宇宙の根源に挑む共同ビルドが続けられていた。

 

「スターク、ナノマシンの量子還流効率が0.002%遅れている。これではストーンを結合した瞬間の初期電圧(ファースト・パルス)でアーマーの右腕が焼き切れるぞ」

 

「言うねえサイトウ。人間の肉体が神のエネルギーをアースするってのがどれだけ無理難題か分かってるか? メビウスの輪の形に配置した磁気シールドの反転アルゴリズム、お前の『ソロモンの知恵』で数式をもう一本最適化してくれ」

 

二人の天才の頭脳が並列処理(マルチタスク)で噛み合い、開発は驚異的な速度で進んでいく。そして4年目が経過した頃、システムに大きな「割り込みログ」が発生した。

 

サンフランシスコの廃倉庫に放置されていた量子トンネルの起動実験データから、イージスの観測衛星が一つの異常な量子オブジェクトを検出したのだ。

 

「――うわあああ! なんだこれ、何が起きてるんだ!?」

 

量子世界から5年(彼にとっては5分)ぶりに現実世界へとサルベージ(救出)されたスコット・ラング(アントマン)は、這い出た瞬間に腰を抜かした。目の前に広がっていたのは、廃倉庫ではなく、イージス重工業の精密な隔離シールドと、数機の自律浮遊ドローンだった。

 

「オブジェクト・スコット・ラングのサルベージを完了。精神状態、健康状態ともに正常」

ドローンの電子音声が響く。

 

スコットはわけも分からぬままニューヨークのドックへと移送され、そこでトニーとカケルに対面した。

彼が持ち帰った「ピム粒子」と「量子世界における時間の相対性データ」をひと目見た瞬間、カケルの脳内OS『プロトコル・シャザム』が火花を散らすような速度で演算を開始した。

 

「なるほど、量子世界をバックドアとして利用すれば、因果律のタイムスタンプ(過去の時間軸)へアクセスが可能か」とトニーが顎をさする。

「過去に戻ってストーンを直接盗んでくる(タイムハイスト)って作戦はどうだ?」

 

「却下だ、スターク。あまりにも原始的で不確定要素が多すぎる」

カケルは冷酷に言い放ち、キーボードを叩いて青い数式を空間に投影した。

 

「過去から現物を盗み出せば、そのタイムラインに新たな分岐バグ(並行世界)が生まれる。私のロジックにそんな不細工な設計は存在しない。ピム粒子によって開かれた量子バックドアを利用し、**『過去の時間軸に存在するインフィニティ・ストーンの固有波形(エネルギー・スタンプ)だけを、現在のこのドックへリモート・コピー(複製)する』**。タイム・レプリケーションを実行する」

 

「……ストーンの力を、時空を傷つけずにデジタルコピーするってわけか。最高にイカれたハッキングだな!」

 

トニーは歓喜の声を上げ、カケルの提示した数式をもとに、ついに人間がストーンの負荷を完璧に無効化できる究極のアーマー――『アイアンマン・マーク85』の最終ビルド(コンパイル)を完了させた。

 

3:過去からのインターセプト(不正アクセス)

 

5年目の節目が目前に迫ったある日。

イージスの量子レプリケーターが、過去の時間軸から六つのストーンのエネルギー波形を完璧に受信・複製し、トニーのマーク85のナノ・ガントレットへと格納しようとした、まさにその瞬間だった。

 

ドックの基幹サーバーに、凄まじい赤色の警告インジケーターが鳴り響いた。

 

`[WARNING: UNAUTHORIZED ACCESS DETECTED]`

`[EXTERNAL SOURCE: TIMELINE-2014 (SANCTUARY II)]`

 

「チッ……! 過去からの不正アクセス(ハッキング)か!」トニーが叫ぶ。

 

原因は、過去の時間軸を精密スキャンした際、当時のネットワーク内にいたネビュラのサイバネティクス回路が、未来(現在)のイージス・システムの高出力信号と一時的に「同期(シンクロ)」してしまったことだった。

 

過去(2014年)の覇王サノス、そしてその側近である天才エボニー・マウは、この微弱な同期エラーを執念深く捉え、未来のネビュラのメモリを逆アセンブルした。そこでサノスが目にしたのは、「未来の自分が指パッチンを成功させたにもかかわらず、地球の天才たちによってその因果律が完全にハッキング(無効化)され、地球が何一つ失わずに大繁栄を続けている」という、信じがたい不条理のログだった。

 

『私の崇高な計画を、ただのプログラム(仕様)として飼い慣らしたというのか……地球の羽虫どもが!』

 

過去のサノスの激怒の思念がログを満たす。エボニー・マウは未来のネビュラの脳内から、カケルたちが開いていた「2026年の地球へと直結する量子座標(アクセスキー)」を強引にダウンロードして奪い取った。

 

物質である「ピム粒子」の量に依存する原作のタイムトラベルとは異なり、彼らはカケルがデジタル化した時空のポート(接続口)そのものを逆探知したのだ。

サノスの超巨大戦艦『サンクチュアリII』は、その絶大な艦載主機関の出力を強引に「量子の波形」へと同調。カケルたちがストーンを複製するために開いていた時空の隙間へ、外部から特大の質量データを流し込むようにして――ニューヨーク上空へと強制割り込み(パケット・インジェクション)を仕掛けてきた。

 

ドォォォン!!

 

ニューヨークの空が割れ、雲を突き破って禍々しい巨艦が姿を現した。地を埋め尽くすほどの戦闘艇が放たれ、マンハッタンの超高層ビル群へと襲いかかる。

 

「お出ましだ、怒り狂った過去のバグデータが!」トニーがマーク85を装着する。

 

「古いシステムの分際で、なかなかの力技じゃないか」

カケルはマーク63『ゴッドキラー』のヘルメットをクローズし、ドックのテラスから空中へと舞い上がった。

 

サノスの艦隊が一斉に破壊光線を放つが、ニューヨーク全域に展開されたイージスの『絶対論理フィールド』がそのエネルギーをすべて安全に地中へとアース(中和)し、ビル一棟すら傷つけさせない。それどころか、イージス本社から放たれた数万機の自律迎撃ドローンが、圧倒的な物量と精密な連携でサノスの戦闘艇を次々と撃沈していく。

 

「バカな……! これが地球の力だと……!?」

サンクチュアリIIの艦橋で、2014年のサノスが驚愕に目を見開く。

 

そこへ、空間を音速で切り裂いたマーク63(カケル)とマーク85(トニー)が突入した。カケルがアーマーの両腕から量子拘束光線を放ち、サノスの巨体を床へと縫い付ける。

 

「サノス。お前がどれだけ時間軸を越えようが、私にとっては処理すべきただの『古いデッドコード』に過ぎない」

 

カケルが脳内で「フリーズ(処理停止)」のコマンドを送信すると、サノス軍の全兵器、全兵士の動きが物理的に完全停止(ロック)された。

 

「トニー、エンターキー(スナップ)を叩け。全宇宙の完全解凍だ!」

 

「合点承知!」

 

トニーは右腕のマーク85に、レプリケートされた六つのインフィニティ・ストーンの輝きを完全に結合させた。七色の凄まじい大電流がトニーの右腕に駆け巡る。だが、カケルが5年をかけて設計した『還流アースシステム』が、そのエネルギーの99.97%をナノマシンの微小振動へと変換し、宇宙の彼方へと安全に逃がしていく。トニーの肉体にかかる負荷は、わずか0.03%。生体へのダメージは実質ゼロだった。

 

トニーはサノスの目の前まで歩みを進め、不敵にニヤリと笑った。

 

「我が名はアイアンマン。……デバッグ完了だ」

 

――カチリ。

 

金属的な指の音が、戦艦の艦橋に、そしてニューヨークの空に鳴り響いた。

 

 

4:完全解凍(リコンパイル)

 

純白の光が再び世界を、そして全宇宙を優しく塗りつぶした。

 

トニーのスナップにより、過去から不正アクセスしてきたサノス、および彼が率いる大艦隊の肉体が、音もなく静かな塵へと変わって風に溶けていった。タイムラインの不具合が完全に消去されたのだ。

 

それと同時に、全宇宙のシステムOSに格納されていた「一時隔離パーティション」が一斉に開放(解凍)された。

 

地球上はもちろんのこと、何百光年離れた異星の荒野、アスガルドの避難船があった宇宙空間、そして外宇宙のタイタン星の廃墟に、5年前に灰となった半数の生命が、衣服も、所持品も、その瞬間の記憶も全く変わらない状態で、安全に再配置(リコンパイル)されていく。

 

地球ローカル限定ではない、全宇宙規模の完全救済が、一瞬にしてノーリスクで達成された瞬間だった。

 

タイタン星の赤茶けた大地で、灰から元の姿へと戻ったドクター・ストレンジは、自身の衣服を確認すると、すぐにニヤリと笑みを浮かべた。

「……やはり、あの男の仕様書通りか」

 

ストレンジはすぐさま両腕を回し、最大出力の魔術のポータル(ゲート)を展開した。そのオレンジ色の光の輪の向こう側は、100%無傷で超近代的にアップデートされた、イージス重工業のニューヨーク・ドックのテラスへと直結していた。

 

「トニーさん!? ペッパーさん!?」

 

ゲートをくぐって真っ先にドックへと飛び出してきたのは、ピーター・パーカー(スパイダーマン)だった。ピーターにとっては、さっきタイタン星で体が灰になりかけて消えたと思ったら、次の瞬間には見慣れたニューヨークの最高の設備の中に立っていたのだから、混乱するのも無理はなかった。

 

無傷のトニーがアーマーをハッチオフし、ペッパーを優しく抱き寄せながら歩いてくる。

 

「よう、ピーター。少し背が伸びたか? ……いや、5年ぶりだからな」

 

「ご、5年!? 何を言ってるんですかトニーさん! 僕はさっきタイタン星で消えそうになって、それでストレンジ先生が魔法の穴を開けて……って、えええええ!?」

 

ピーターは、傍らに立つストレンジから、この5年間に地球で起きていた「黎明駆とトニーによる全宇宙ハッキング・完全フリーズ計画」の全貌を早口で説明され、徐々に目を丸くしていった。

 

地球は一ミリも壊れていない。ペッパーもみんな無事。自分たちは死んだのではなくアーカイブされていただけで、トニーは死なずにサノスを完全に消去した。すべては5年前から「予定されていた仕様」だった。

 

全貌を理解した瞬間、ピーターは安堵でトニーに泣きつきながらも、両手を広げて最高に彼らしいトーンで猛抗議を開始した。

 

「トニーさん! ペッパーさん! ……いや、ちょっと待ってください! そんな完璧で安全な極秘ハッキング計画があったなら、タイタン星で僕が消える前に、最初に言ってよ!!」

 

「おいおい、声が大きいぞ、キッド」トニーが苦笑する。

 

「だって僕、本当に世界が終わると思って、トニーさんに抱きついて『消えたくない』って、めちゃくちゃ恥かしい感じで怖がってたんですよ!? 最初から勝つって分かってたなら、仕様書の一行だけでもいいから教えておいてくれれば、もっとカッコよく灰になれたのに!」

 

その様子を、ドックの階段の上から腕を組んで見下ろしていた黎明駆は、白衣のポケットに手を突っ込んだまま、フッと鼻で笑った。

 

「パーカー。お前がタイタン星で死に物狂いでサノスのスペック(処理能力)を削り、時間稼ぎという『遅滞戦闘』のデバッグタスクを完遂したからこそ、私のメインシステムは100%の精度でトリアージ(隔離)をビルドできたんだ。お前の恐怖心も含めて、すべてはサノスを騙し通すための不可欠なログ(必要経費)だ」

 

ピーターはカケルの冷徹な正論に「うぐっ」と言葉を詰まらせたが、トニーがその若い肩を優しく叩いた。

 

「悪かったな、ピーター。だが、最高の答え合わせ(完全勝利)だ。よくやった」

 

トニーのその言葉に、ピーターはついに破顔し、「はい!」と元気に頷いた。

 

 

5:エピローグ

 

ニューヨークの管制モニターに、全宇宙のネットワークから次々と信号が同期されていく。

 

`[GALAXY-NETWORK: RECOMPILE COMPLETE]`

`[WORLD POPULATION STATUS: 100% RESTORED]`

`[SYSTEM ERROR: 0]`

 

全宇宙の生命の半分が、何のリスクもなく完璧に元の日常へと帰還した。神が用意した理不尽なバグ(サノス)は、力でねじ伏せられるのではなく、二大天才の理性によってシステムの一部として飼い慣らされ、完全に上書き消去されたのだ。

 

数日後。トニー・スタークは、愛するペッパー、そしてこの5年の間に生まれた愛娘のモーガンと共に、静かな湖畔の邸宅へと居を移していた。マーク85という最高の遺産を造り上げた彼は、もう命を賭して戦う必要のない、一人の幸せなエンジニアとして穏やかな隠居生活を始めていた。

 

一方、イージス重工業の最深部。

黎明駆は、全宇宙のシステム稼働率が「100%」のまま完璧に安定して時を刻んでいるログを見つめていた。彼の青い瞳には、すでに目の前の平和など映っていなかった。

 

「神のシステム(宇宙の因果律)のハッキングログの解析を完了。これより、次なる仕様(フェーズ)へ移行する」

 

カケルがキーボードを叩くと、画面には無数に枝分かれする多次元宇宙――『マルチバース』の膨大な構造解析コードが展開された。宇宙のルールすら書き換えた若き天才は、人類の知性をさらなる高みへとアップデートするため、静かに次なるコードのビルドを開始するのだった。

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