直死の魔眼持ちとなんか英霊になってる奴のブルーアーカイブ 作:夜月詠
今の私たちの仕事は先生の護衛だ。だから殆ど常に彼の周りでガードしている。このキヴォトスでは、気軽に銃撃戦や
弾丸一発でお陀仏になる存在が、丸腰で出歩くなど自殺行為以外の何物でも無い。ので、ガードは当然慎重になる。
例え先生が、暫く一人で出歩かせて欲しい、と頼んできたとしても、だ。霊体化した上に気配遮断を行ったアサシンを
「先生、最近ストーカー業に精を出している、と聞いた」
「す、ストーカー!? ち、違、私はセリカちゃんと仲良くしたくて──」
彼女の登校中に顔を出したり、付け回したりと結構やっているらしい。流石先生だ。生徒の為なら犯罪行為も厭わないとは。
「そ、そう言えば! セリカちゃん、バイトしてるらしいね! 何処でやってるのかなぁ!?」
無理矢理な方向転換だ。だとしてもちょっとストーカーっぽいけども。そのあたりアヴェンジャーはどう思う?
──ストーカーは大変だよね……?
アヴェンジャーもストーカーの経験あるんだ……。
いや、ストーカーされてた方か……? どっちもありそうな雰囲気が凄まじくてわかんない。
「セリカちゃんアルバイトしてたのか〜。んー、じゃああそこかな? 皆、セリカちゃんのバイト先に遊びに行こうよ〜」
「ん。行く。セリカのバイト姿を見たい」
◇
ここが柴関ラーメンか。看板の通り、柴犬みたいな店主が営んでいるらしい。毛とか混ざらないのだろうか。
「いらっしゃいませ! 柴関ラーメンで……わわっ!?」
ぞろぞろと入店するアビドス一行に驚いたのか、それとも自分のバイト先に仲間がやって来た事に驚いたのか。
黒見会計はもうあからさまに動揺していた。
「あの〜☆七人なんですけど〜!」
「あ、ははは……セリカちゃん、お疲れ……」
「ん。お疲れ」
「み、みんな……どうしてここを……!」
「うへ〜やっぱりここだと思った」
「お疲れ様、黒見さん」
「どうも」
こんなにも動揺している黒見会計相手に平然と挨拶して行くあたり、アビドスの生徒達は凄まじく図太いと思う。
「せ、先生まで……やっぱストーカー!?」
先生がストーカーと認知されている。まぁ、そりゃあそうか。
旗から見てもストーカーなのに、張本人からすれば、そりゃあそう認識される。……先生への差し入れは何が良いだろうか。
「うへ、先生は悪くないよ。セリカちゃんのバイト先といえば、やっぱここしかないじゃん? だから来てみたの」
「ホシノ先輩かっ……! ううっ……!」
「アビドスの生徒さんか。セリカちゃん、おしゃべりはそれぐらいにして、注文受けてくれな」
おぉ、この人……犬……? が店主か。本当に柴犬みたいな人だ。
毛がふわふわでちょっと触ってみたくなる。
「あ、うう……はい、大将。それでは広い席にご案内します……こちらへどうぞ……」
渋い
「流石に狭いね。良いよ、オレは。外で待ってるから」
サーヴァントに食事は必要無い。精神の安定や、魔力の足しにはなるが本質的に食事は不要だ。
だから、アヴェンジャーはそっと席を立つ。
「そう。……後で何か差し入れる」
「アヴェンジャーさん、食べないんですか?」
「うん。オレも座ると狭いし、マスター──シキの財布に負担を掛けるわけにも行かないしね」
アヴェンジャーにも稼ぎは渡していると云うのに、彼はいつの間にやら私の財布に全額戻しているのだ。
おかげで彼の個人資産はゼロ。禄に食事も取らないのだ。流石に悪いので、時偶無理矢理にご飯を食べさせているが。
「先生の奢りだよ〜? 食べなきゃ損だよ、損。それに、席は……シキちゃんを膝の上にでも座らせれば良いんじゃないかな?」
「小鳥遊副会長、それは、私を、チビだと言っているの?」
確かに、私は細い。もやしみたいな細さをしている。けれど、決して、小鳥遊ホシノの様に小さい訳では無い。背は160あるのだ。
私は高身長でスレンダー。そう云う事だ。チビでは無いのだ。チビでは。
「うへ、仲良いんだし、その位良いでしょ〜?」
流石に人の膝に座って食事をするのは無理があると思う。
「え、奢り……? 私の!?」
「そうはさせないよー」
脱兎の如く逃亡しようとした先生を、これまた見事な身のこなしで小鳥遊ホシノが取り押さえた。
「うう……また来月までもやし生活か……はぁ、仕方ない。皆、ここは私の奢りだ。好きなものを頼んでよ」
この人、今さらっと
どうやらもやし生活の経験があるらしい。……この人がキヴォトスに来て、まだ2カ月も経っていない筈なのだが。
「セリカちゃーん、注文良いかなー?」
「うう……ご注文はっ!?」
「『ご注文はお決まりですか』でしょー? セリカちゃーん、お客様には笑顔で親切に接客しなくちゃー」
「そういえば、バイトはいつから始めたの?」
「い、一週間前から……」
「セリカちゃん、バイトのユニフォームとってもカワイイです☆」
「いやぁー、セリカちゃんってそっち系か。ユニフォームでバイト決めちゃうタイプ?」
「ち、ち、ち、違うって! 関係ないし! こ、ここは行きつけのお店だったし……」
酷い
「……決まった。私は柴関ラーメン、アヴェンジャーは醤油ラーメン。私のは炙りチャーシューと卵を追加で」
「あ、アンタたち……! この状況で、よくもまぁ普通に注文できるわね!?」
「黒見会計。
「うう……分かったわよ!」
オーダーを取った黒見会計が大将の下へ伝票を持っていくのを横目に、アビドスの連中に目を向ける。
魔眼殺しの、異能を封じる硝子の向こうにある生徒達。
頭上に
人間と同じ様に笑い、喰らい、眠り、生きる者達。
「……アビドス。その名は
この世界は異常だ。人を殺す為の武器が、人を殺す事無く。
男は無く、遍く
この眼は、
──やはり、生徒の本質は
「……そういえば。アヴェンジャー。貴方は、私と何処かで会った事がある?」
「砂狼行動班長、それはナンパの常套句と受け取る。表へ出ろ」
アヴェンジャーは私のもの。私に仕える最強のサーヴァントだ。
「うへへ、修羅場だね、アヴェンジャーくん〜」
「小鳥遊さん、面白がってないで2人を止めてくれない? オレが入ると火に油を注ぐ事になりそうだから」
令呪の一角を切る事も辞さない。アヴェンジャーは私のもの。
これは私がこの世界で生き永らえてよりの、絶対。
「ナンパ? 違う。……本当に、会った事は無いの? あなたと会った時、なんだか懐かしい感覚がした」
「この子、記憶喪失でね。昔の事、あんまり気にしてないみたいだけど……そっか。そりゃ知りたいよね、自分の事なんだもん」
ジロリ、とアヴェンジャーを横目に睨む。
懐かしい、とは一体全体どう云う事か説明して貰おうか。
「先生の護衛でアビドスに行った時、キミと始めて出会った。それは間違いないよ」
それはそうだ。アヴェンジャーはサーヴァント。
私が召喚するまで、この世界に顕れる術を持たない──いや、『境界を越えるもの』があるから顕現できるな──容疑を完璧にゼロに出来なくなった。
「けど……確かに、オレも何処か懐かしい様な気配を──」
つまり、砂狼シロコは、アヴェンジャーの昔の──!
「くぁwせdrftgyふじこlp」
「し、シキさんが倒れちゃいました! 大丈夫ですか!?」
「シキちゃん!? き、気付けを! 誰かシキちゃんに気付け薬を!」
奥空書記と十六夜一般委員が煩い。
あんまりにも煩いものだから遠のきつつある意識が、そのまま素直にブラックアウトしてくれない。
「し、シキが壊れた……! どうしよう、アヴェンジャー」
「マスター!? 何があったんだ!? もしかして魔眼の!?!?」
あう、アヴェ、アヴェンジャーの昔の女なななな!!!!???
「ぐ、ぐぶぶぶぶ!!!!???」
「シキちゃんの脳が破壊されてるよ!?」
「ちょっと! 煩い! 騒がないでよ──って、シキ!? ど、どど、どうしたの!?!?」
あう、アヴェンジャーに昔の
こ、この私以外に!!!??? アヴェンジャーのマスターは、未来永劫、この私独りの筈じゃ無かったのか!?
「セリカちゃん、アビドスの生徒さん達、どうかしたの──だ、大丈夫か!?」
ぐ、ぐぶぶぶぶ──きゅう。
勝手に脳を破壊される女