直死の魔眼持ちとなんか英霊になってる奴のブルーアーカイブ   作:夜月詠

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帰るべきは何処・その7

「……本当に、何の関係も、無いの?」

 

「無いよ、本当に。

 だって、オレがこの世界に召喚されたのは、間違いなくシキによる召喚が始めてだ。何しろ、この世界の知識が何一つ無かったんだから。聖杯による知識の付与も、座からの持ち込みも無いんだしね」

 

 サーヴァントは召喚される際、その時代、その世界線の知識を獲得する。サーヴァントを召喚する為の大規模な魔術礼装"聖杯(アートグラフ)"に与えられたり、座に蓄えられたそれまでの召喚履歴の中から知識を持ち込むのだ。

 

 だと云うのに、この世界で召喚されたアヴェンジャーの持つ知識には、このキヴォトスの情報なんて何一つ無かった。

 それに間違いは無い。あの円環(ヘイロー)を戴く(ビル)──サンクトゥムタワーに、彼は驚いた様子を見せていたのだから。

 

「じゃあ、なんで。アヴェンジャーも懐かしい、なんて」

 

「分からない。……何でなんだろう。何で何処かで出会った様な……」

 

 どうやら本当に分からないらしい。

 似たような存在にでも会った事があるのだろうか。平行世界の同一人物、とか、同じ能力の保有者、とかそう云う風な存在に。

 ……いや、それだな。私のような"直死の魔眼"の保有者(ホルダー)がこの世界(キヴォトス)にも居るのだ。

 こちらに居る存在が、かつてのアヴェンジャーの世界に居たとしてもおかしくは無い。

 

 うん。多分、きっと、おそらく、そうだ。

 

「……何処かで……似たような気配を……この、感覚は──」

 

 ぼそりと、自分の口の中だけで転がす様に紡いだ音の欠片。

 マスターだから、もうずっと一緒にいた私だからこそ、聞き取れた、その破片を紡ぎ合わせる。あぁ、彼は確かに、言い切った。

 ──神霊、と。確かに。

 

「お待たせしました。……その、シキって、本当にもう大丈夫なの?」

 

 むむむと眉間に皺を寄せるアヴェンジャーを観察していると、いつの間にやら黒見会計が幾つものラーメンのどんぶりを持ってやって来た。

 

 ……おぉ、アレがもしや私の柴関ラーメンなのか。凄い。輝いて見える。ラーメンなんて久しぶりに食べるから、胃が驚かなければ良いのだけど。

 

「問題、無い。復帰した。アヴェンジャーと砂狼行動班長の間には何の関係も無かった。おーけー?」

 

「おーけー。……じゃ、さっさと食べて出て行ってよね」

 

 ちゅるちゅるとラーメンを啜る。なる程美味しい。こんなカスみたいに辺鄙で寂れたアビドスに在って尚、これだけの客を集められているだけの事はある。

 ……アビドスでこれだけ人が集まるのなら、もっと発展した──それこそ、D.U.やミレニアムなんかに店を構えていれば今頃二号店や三号店を出せていたんじゃないだろうか。

 

「……おぉ、美味しい」

 

「アヴェンジャーの、一口貰う。代わりに私の一口あげる。……うむ。醤油も美味しい」

 

 隣の席のアヴェンジャーからどんぶりを掻っ払って一口啜る。醤油スープと麺がよく絡んで実に美味い。スッキリとした味わいでクドさを感じないスープは、正に職人芸だ。美味い美味い。

 

「ん。シキ、私の塩を一口あげる。代わりに柴関ラーメンを一口貰う」

 

「……むむ、塩も美味しい」

 

「シキちゃん、特製味噌はどう〜?」

 

「美味しい」

 

「えーと、私の味噌ラーメンも一口どうぞ……?」

 

「美味い。……特製味噌との違いはちょっと分からない」

 

「チャーシューを一つプレゼントしますよ☆」

 

「美味。……は! 私、今、餌付けされてなかった……?」

 

 不味い。生徒(ガキ)に餌付けされる傭兵なんて笑い話にもならない。私は最強の傭兵バロール。そのイメージを崩す訳にはいかない。

 

「……アヴェンジャー、どう思う?」

 

「されてたね、先生」

 

 されてない。アビドスの生徒達が、この私のカリスマとか、覇気とか、圧倒的な強さとか、そんな感じのアレに影響されて自ら進んでラーメンを捧げたのだ。……そう云う事にしておく。

 

「……む。そう云えば、言ってなかった気がする」

 

「何を?」

 

「先日の、不良達の雇い主。赤ヘルメットがカイザーPMC理事、と自白した。目的は不明」

 

 カイザーPMC理事は確かロボットだったか。

 ……獣人(どうぶつ)でも生徒(ガキ)でも無いなら簡単だ。

 

「実行犯の自白があれば十分。こちらは行政権を持つアビドス高等学校と、連邦捜査部S.C.H.A.L.E。捜査の名目でカイザーPMCに乗り込んで資産の差し押さえを行おう」

 

 当然の事ながら、ロボットは生き物では無い。

 万物に終焉()を視る私の眼は、ロボットの機体にも死の線を視るが、それと機械(ロボット)が生きているかどうかと云う問は別の話だ。

 ロボットは生き物では無い。パーツを取り替えれば再起動する存在は、生命では無い。

 

「理事ロボットも回収して、データの解析と機能停止を行うべき」

 

 生き物では無いのなら、カイザーPMC理事の身柄を"差し押さえ"る事も問題無い。第一、ロボットに人権が認められる訳が無い。人権を主張したいなら、せめて生命活動をしているべきだろう。

 

「それはちょっと過激じゃないかな」

 

「カイザー……? まさか。でも、なんでカイザーがアビドス(わたしたち)を襲撃する様な真似を……?」

 

「……奥空さん、どうかしたの?」

 

「いえ。その……カイザーなんです。私たち、アビドス高等学校が借金をしている金融企業は」

 

 ふむ。益々きな臭くなってきた。

 自分達が金を貸している学校を、自分達の命令で襲撃する?

 意味不明だ。そんな事をして、万一にでもアビドスの生徒が逃げ出せば貸した金が返ってこなくなる可能性があると云うのに。

 

 なのに何故、アビドスを襲撃する?

 生徒が逃げ出した後は、土地と人の居なくなった校舎しか遺らない……目的は土地か? アビドスの借金、その担保はアビドス自治区の広大な土地。アビドスの生徒全てが──債務者が逃げ出せば、晴れてその土地は全てがカイザーのものとなる。

 

 つまり、カイザーはこのアビドスの痩せた土地が欲しいという事になる。何故? こんな辺鄙で、痩せて、工業地帯にするにも交通の便の悪い辺鄙な土地を何故求める。意味不明だ。

 

「……先生。私たちは貴方の護衛。けれど、それと共に、貴方が雇った傭兵でもある。指示があれば、調べてくる」

 

 どんぶりの中、スープの中に沈んでいた最後の麺を飲み込んで。アヴェンジャーと共に席を立つ。

 お腹いっぱい。久しぶりにこんなに食べた。

 

「……頼めるかな、シキ、アヴェンジャー。……それと、危ない事はしちゃ駄目だよ」

 

「問題無い。私たちは最強の傭兵バロール。決して依頼を誤たない」

 

 私たちは最強の傭兵。依頼達成率100%。不敗にして無謬たる最強の傭兵。この程度の仕事、腹ごなしにもならない。




誘拐事件はなくなった。不良を全て刈り取ったから
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