直死の魔眼持ちとなんか英霊になってる奴のブルーアーカイブ 作:夜月詠
「ば、バロールだ!! 皆逃げろぉ! バロールが出たぞ!!!」
「うわぁああ!? なんで居るんだよ!! 最近居なかったのに!!」
「ひ、ひぃいいい!!」
あいも変わらず、此処は喧しい事この上ない。どいつもこいつも、黙っていれば良いものをピーチクパーチク囀るなんて。
「煩い」
愛用しているライフルを適当な通行人に向けて威嚇射撃する。
馬鹿は暴力で抑えつければおしまいだと云うのが、素晴らしい。相手が悉く│不良《ゴミ》なのがまた素晴らしい。罪悪感を抱かなくてすむ。
「黙ります黙ります!! 黙るから撃たないで!?」
「……アヴェンジャー、一体ここで何をやったの?」
「違法取引の現場を襲ってモノを奪ったり、不良を倒したり……傭兵としての活動を……ちょっと過激めに……」
依頼も無いのに適当に襲い掛かったりしていただけだ。ここには悪い事をやっている奴が山程居る。そう云う奴は襲撃しても公に文句を言えないから襲い得なのだ。
法を守らないと云う事は、法に守られないと云う事。
外道に堕ちたのなら、外道を以て報いられる覚悟をしておくべきだ。
「あ、そうだ。おい、そこの
「わ、分かんねぇよ、あたしら兵器とか買わねぇし……」
「チッ。……何見てるの? さっさと消えて」
役立たず共を蹴飛ばして、道行く不良やらを次々とシメて行く。ブラックマーケットに戻った時の日課だ。日頃禄でも無い事ばかりやってる落ちこぼれの不良共なのだから、偶に禄でも無い目に合う事は許容範囲だろう。
こんな目に会いたくなければ日頃から大人しく、慎ましやかに真面目に生活していろと云うのだ。散々揉め事ばかり起こしやがって。なんでただ歩いてるだけで銃撃戦に巻き込まれねばならないんだ。私は弾丸一発でも死ねるんだぞ。
「シキちゃん、凄く柄が悪いね〜。理不尽過ぎやしない?」
「うわ……ちょっとどうかと思うわ」
「ヤバいですね☆」
一人なんか世界観違う気がする。こう、なんと云うか……破茶滅茶な大食いしそう。
「……ふん、御苦労。褒美に
適当に捕まえたロボ不良が『オークションでそんな兵器は見たことない』と吐いた。つまり、この兵器の出処は裏オークションでは無いと云う事。このキヴォトスで生産中止の兵器やらを手に入れる手段はそう多くは無い。
どんな手段を用いるにしろ、金が掛かる。つまり、連中のバックに在るのは金を持っている存在だと云う事。
その上、あの様な不良共に依頼するとなれば、後ろ暗い連中なのだろう。便利屋以前の襲撃犯がカイザーグループの雇われであった事から推察するに、今回もまた、カイザーグループが依頼犯であるのだろう。
「自白だけで十分だと思う、けど。証拠が必要なの?」
「自白だけだとね。捏造も良くないし、やっぱり現物の証拠が必要だ」
チッ、面倒だ。第一、カイザーPMC理事は中々のやり手だ。下手に証拠なんぞを残す訳が無い。あるとすれば、何らかのやり取りが起きた直後だけだろう。以降は、閉鎖ネットワーク内で電子化してやりとり、現物の書類は破棄──と、物理的な紙面は残していないだろう。
「誰ぞ、奥空書記に連絡を。強気で無視していたカイザーローン、その返済に応じさせる。その後、カイザーローンを張る。あそこの利子は、少なくとも合法の範疇に無い。違法金利の捜査の名の下に、立ち入りを行えば良い」
違法な金利による金融業。少なくとと連邦生徒会法には反している。別件捜査を以て本命の証拠を押さえよう。
奥空書記が待機を選んでいて助かった。アビドスの校舎まで態々戻る手間が省けた。
「ん。アヤネに連絡した」
「じゃあ暫くは待機ね。ん──お腹空いたぁ〜! ねぇ、何か食べない?」
「……あ、たい焼き売ってますよ。私、買ってきますね」
十六夜ノノミが道端のたい焼き売りを指差した。そちらを見るに、なる程丁寧な焼き方をしている屋台だ。焼き方を見るだけで、その美味さが伝わってくる様だ。
「おー、ありがとね、ノノミちゃーん」
「大丈夫だよ、ノノミ。私が払うから」
「……ここなら問題無い」
店主の方を確認したが、このブラックマーケットでは珍しい"白い人間"だった。カードを使ってもスキミングなどはされないだろう。
「すいません、たい焼きを7つください」
「はいよ」
むぐぐ。美味い。
アンコの素朴な甘さがとても良い。飛び跳ねる程美味いと云う訳では無いが、何処か懐かしい感じの美味だ。私に懐かしい過去とか無いけども。
「む」
ふと顔を上げると、底にはカツアゲされているトリニティ生と絶賛カツアゲ中の不良の姿があった。私が戻ってきて慌てている奴らが多いであろう状態で、よくもまぁやるものだ。こんな奴らばかりだから苦労するのだ。
ので、腹いせに一発弾丸を撃ち込む。無防備な不良の横腹に、弾丸がブチ当たって膝を付かせる。
「「ば、バロールさん……!?」」
「チッ……おい
「ち、ちちち、ちっ、ちが、違いますよ! バロールさぁん、アタシらは、ちょっと、こいつ──この、生徒さんに……その、アレですよ、アレ、トリニティの……名物! そう、名物とか、そういうのを聞いてただけで……カツアゲとかじゃないんですよ!」
無理のある言い訳だ。
「黙れ」
「ぐふぅ……!」
「ば、バロールさぁん……!」
拳を叩き込み意識を刈り取った。こう云うのにはコツがあるのだ。脊椎には傷付け無い様に注意して、顎を良い感じに狙って脳を揺さぶると人間は気絶するのである。
「あれ、その制服……あなた、もしかしてトリニティの!」
トリニティ総合学園。ミレニアム、ゲヘナに並ぶキヴォトス三大校の一角、天使共の集う名門校だ。
生徒会──ティーパーティの連中に、護衛の仕事を依頼された覚えがある。いけ好かない金持ちの多い学校だが、その分金払いは良かった。
「え、あ、はい。トリニティ生です……その、ありがとうございました?」
「無事で何より……っていうか、シキ、凄く怖がられてない? 本当に傭兵してただけなの?」
「シキの通り名の中にね、"磔"っていうのがあるんだ」
「あぁ……大体何をしたかは分かったよ……」
逆らう奴を全員縛り上げて、適当な建物に括り付けてやっただけだ。敵対者を片っ端から吊るし上げ、晒し上げ、磔にする。
此処にはヴァルキューレの目も届かないからやりたい放題だ。ヴァルキューレに泣き付ける様な奴は此処には居ない。
「……御苦労。先生、今見張りに雇っていた
しかし、もうそろそろ此処でも私がアビドスに駐留している、と云う事ぐらい伝わっているだろうに。よくもまぁ、まだ雇われる馬鹿共が居る事だ。他所から流れてきた連中か?
……また、大掃除を敢行しないと。
「……こうなったら、例の方法しかない」
そんな事を言いながら、砂狼シロコは明後日の方向を向いて自分の鞄をゴソゴソと漁り始めた。
「お? シロコちゃん、やっちゃうの?」
「例の方法? なに、それは」
「あ、あのう……例の方法って……ていうか、何をする気で……」
「ん。銀行を襲う」
振り返った砂狼シロコは、大きく2と書かれた青い覆面を被っていた。
……正気か? 幾らダーティな銀行と云えど……そうか、強盗か……正気か? 本当に正気なのか? 先生は止めなくて良いのか?
「ぎ、銀行強盗……!? 先生、それは流石に……」
「せ、生徒がそう望むなら、私は力を貸すだけだ。……止まりそうにないし」
駄目だ。ちょくちょく思ってたけど、先生は割と駄目な大人だ。こいつ、流されやがった。特異点でも無いのに流石に銀行強盗は不味い。終わったら全部リセットと云うわけでも無いのに、人生に於けるリスクが高過ぎる。
「ん。シキと、アヴェンジャーの分」
手渡されたのはアビドスの連中のモノとは異なる、仮面だった。何処かで見た事のある気がする、なんだかちょっと格好の良いデザインだ。
「▓、▓▓▓▓▓▓の……そっか、オレ、アヴェンジャー仮面になるんだ……」
くっ、アヴェンジャーも断りきれないと察して仮面を付けてしまった。流石カジノや宝物庫を幾度も襲撃してきたプロだ。面構えが違う。
「あなたは……これで良いか。はい」
目の部分だけ孔の空けた紙袋を、スポッとトリニティ生の頭に被せる砂狼シロコ。滅茶苦茶だ。近くに居たからという理由だけで銀行強盗に付き合わせようとしている。
ブラックマーケットの
「たい焼きの入ってた紙袋じゃないですか! っていうか! 私は、銀行強盗なんてしませんよ!?」
そう云うのをフラグと云うのだ、トリニティ生。
この御時世だから実験レポート手書きせにゃならん