直死の魔眼持ちとなんか英霊になってる奴のブルーアーカイブ 作:夜月詠
「う、ぅぅ……もう、ティーパーティの皆様に合わせる顔がありません……!」
と、そんな事を言うトリニティ生──阿慈谷ヒフミを先頭に、アビドス一行はブラックマーケットの一角に居を構える銀行へ堂々と突入していった。
先生は後方支援担当だ。どうも、先生の持つタブレット──"シッテムの箱"の管理AIだとかにハッキングさせるらしい。
あのアホっぽいAIにそんな大層な事が出来たとは驚きだ。
「さて。アヴェンジャー、私たちも仕事を始める。陽動はアビドス、奪取は私たち。
問題のアビドス一行だが、連中の役割は実の所陽動に過ぎない。アレだけ目立つ馬鹿馬鹿しい格好をした連中を隠れ蓑に、私とアヴェンジャーでこっそりと銀行に侵入し、資料を奪取する。
「────久しぶりに、死を視る」
最近この特徴が忘れられ始めた様な気がしていたのだ。
何故、私が
この私の眼こそは、かの神を原典とする魔眼。モノの終わりを視る直死の魔眼。あらゆる概念、あらゆる存在、あらゆるモノが内包する"終焉"と云う概念。それを以て、
この眼の前に、あらゆる物質の、その強度は意味を為さない。
「アヴェンジャー、この辺り?」
「あぁ、間違いない。先生から貰ったデータだと、ここの壁を3枚程抜いた先に例の輸送車がある」
故に。
「──此処に、世界を滅す」
魔眼殺しの眼鏡を外す。久々に視る、何物にも隔てられる事の無い醜い世界の姿を視る。
視界、悉く世界に奔る赤黒い線。ぞくりと脈打ちそうな程に、生々しく、あらゆる物質に奔るその線を見据える。
「吾こそ、死を視るものなれば」
一閃、壁1枚を数多の欠片に破断する。
「終焉、空を見上げ」
二閃、2枚目の壁を歪んだ四角に切り取る。
「死、此処に帰結を記す」
三閃、3枚目の壁、その硬質を斬滅する。
「直死……此処に、終着せり」
パラリと崩れ落ちる壁。その崩落の向こうに現金輸送車の姿を視る。共に、取り立て役のロボットの姿。その機体を蹴り飛ばし、アヴェンジャーによる魔術的拘束を施す。
サーヴァントの追加召喚は無くとも、『分割思考(偽)』による技能行使によって賄える。
「アビドス高等学校、その返済金、及び、総ての資料を要求する」
回収するはアビドスが支払った金と、やり取りを記録した資料の総て。ロボットの機体にナイフを突き付け、何処に目的の物があるかを吐かせ、効率的に物品を徴収して行く。
次いでに、アビドスによる返済の証拠を抹消し、この銀行強盗とアビドスは何ら関係がない事にしておく。
「例のモノの獲得成功。これより撤退する」
通信機でアビドスの連中に仕事の完了を報告し、ブチ抜いて来た壁の穴を通って堂々と脱出する。無論、止めるモノは無い。
壁をブチ抜いてあらゆるセキュリティを文字通りに無視・粉砕して来たのだ。
物理的に私を止めない限り、この脱出は妨害できない。
「ふん。展開だけは早くなったらしい」
いつの間にやら、この銀行を取り囲う様にしてマーケットガード共が展開していた。数ばかりのでき損ない共だが、どうやら部隊を展開するのだけは早くなったらしい。私がボコボコにしてやった甲斐があると云うものだ。多少の肉には出来ているらしい。
だが。
「今の私は絶好調。久々に、
先生の指揮で云う所の
「オレが後方支援だろ? 強化はするけど、出来るだけ身の安全には気を付けてね」
魔力の余裕はまだある。アヴェンジャーの召喚維持、
私の最大同時使役可能数は計五騎。故に、まだサーヴァントを一騎追加で召喚する余裕がある。
「第17号ヴァルキューレ正式拳銃 - 魔術礼装改良型。山海経が数打ち品、無銘」
取り出したるはハンドガン。ヴァルキューレに無理を言って正式採用のモノを一つ買い上げたのだ。
背後に在るアヴェンジャーが、膨大な魔力を使い潰す感覚がある。そもそもの魔力燃費が極悪な上に、更にサーヴァントを召喚すると云う最悪の魔力燃費。
大英雄たる
「ハンドガンと、ナイフ……それと、壁を斬り裂いた跡──ま、まさか……!」
フルフェイスの防具の下から、マーケットガード共の引き攣った様な声がする。マーケットガード共はしょっちゅうシメ上げて居たから、私の正体に気が付いたのだろう。
「私はナナシの銀行強盗。……それとも、他に何か?」
だが今は『ナナシの銀行強盗』。それで通す。無理を通して道理を引っ込ませる。こうして置けば後日、銀行強盗等という謂れのない罪で傭兵バロールが詰め寄られる事は無いだろう。
「……クッ……! だが、どう見ても──貴様は──」
「他に、何か?」
「……!! えぇい、制圧しろ! 敵は銀行強盗! ただの! 銀行強盗だ!!」
──召喚成功。クラス:キャスター、真名"
魔力の
マーケットガードから見れば私の背後に、突如として人が顕れた様に見えるのだろう。
「っ、アヴェ──と、仲間の強盗も居たのか!?」
──宝具、真名解放。
「▓▓▓▓、▓▓▓▓、▓▓▓▓。『
魔力による身体強化。その強化率を超越した、超常の身体性能の向上。爆発にも似た肉体の励起、焼滅にも通じる魂の覚醒。
英霊"
英霊ならざるこの身に、英霊にも届き得るほどの奇跡を齎す。
「この、光は──!」
「──此処に、絶望を実証しよう」
地面を蹴り、地面スレスレを滑るようにして駆け抜ける。
それはさながら蛇の如く、地面を蛇行する一陣の風となりてマーケットガード共の装備を裂く。我が眼の前に防具は意味を為さず、装備の悉くを破壊する事で無防備に晒し出された地肌を銃撃する。
先ずは一人。次いで、間近にあったマーケットガード、その防具の隙間から喉を撃ち抜く事で呼吸難を引き起こす。これで二人。
三人目。身体を跳ね上げてムーンサルトの要領で顎を蹴り抜き。
四人目。みぞおちの同じ箇所を二連続で撃ち抜いて気絶させ。
五人目。銃器を斬り裂いて暴発させ。
六人目。一人目と同じ様に意識を奪う。
「ゴリアテ? 不足だと分からないのか」
マーケットガード共が持ち出してきたのは、ゴリアテだとか云う人型兵器。個人を相手取るには鈍重に過ぎる兵器だ。
「し、ぃ────!」
地面を蹴り上げて空を舞い、ゴリアテの表面を駆け登る。僅かな傾斜、表面の凹み。そう云うモノを足場に兵器を登り上げてその頸を一閃にて破断する。都合良く頸をぐるりと一周線が奔っていたから楽だった。お陰で数手は早くなった。
「ん……たかが六人とゴリアテ一つで戦意喪失? 雑魚共、その程度で邪魔をするな、時間の無駄」
ゴリアテを破壊した途端、マーケットガード共は戦意を喪失したのか次々と武器を落として行く。この程度で戦意喪失するとは不甲斐ない。
「クッ……強すぎる……! 何故、そんなナイフ一つでゴリアテを壊せるんだ……!」
戦意喪失したマーケットガード、その武器全てを破壊してその場を後にする。行先は事前に決めて於いた合流地点。アビドス一行も既に離脱したと連絡があった。
後は私たちが落ち合うだけだ。