直死の魔眼持ちとなんか英霊になってる奴のブルーアーカイブ   作:夜月詠

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帰るべきは何処・その12

 阿慈谷ヒフミを伴って先に帰還していたアビドス一行と合流する。落ち合った座標はアビドス高校校舎、その裏手だ。

 回収した書類と集金鞄を対策委員会の部室で広げ、皆して書類に目を落とす。

 

「ふむ。大した証拠では無い。不良グループによるアビドス襲撃、その背後にカイザーがある証明にしかならない」

 

「えぇ……これでは、言い逃れされてしまいます」

 

 然し、一方でカイザーグループが反社会的グループを支援している証拠でもある。これを盾に強制捜査からの別件逮捕のコンボなりを決めてしまうのが一番楽だ。

 この書類の出処を求められる可能性もあるが、そんなもの幾らでも捏造できる。例のAI──A.R.O.N.A.だとか云う奴に『カイザーグループの社員による犯罪の告発』とでも捏造させてやれば良い。

 

「先生、シャーレの権限を以てすればこれから強制捜査を始められる。書類の出処は捏造すれば良い」

 

 カイザーグループの目的はアビドスの土地。それはほぼ確定だ。だが、何故? こんな痩せた、何の資源も無い土地を何故求める。

 何故、何故、何故、何故、何故?

 

 今さらブラックマーケット擬きを一つ増やしても、アビドスの借金を取り返せる程の利益は出ないだろう。何しろ土地が悪い。

 

 そんな事をぐるぐると循環させ続けている内に、その日の会議は終了した。阿慈谷ヒフミはトリニティ生徒会(ティーパーティ)にカイザーの違法行為を報告する、と帰って行き、この日は解散と相成った。

 

 翌日──

 

「カイザーPMC理事を捕え、尋問する。奴は所詮機械(ロボット)。先生のAIによるハッキングなり、出足を落とすなりして吐かせれば良い」

 

 私の出した結論は、やはりコレだった。

 

 所詮は生命に届かざる機械。プログラムに従い動く冷徹なる鋼のカタマリ。自白を強要するプログラムをインストールしてやるなり、手足を落として拷問するなりして吐かせれば良い。

 それでも吐かない様ならカイザーPMC理事をこの世から抹消すれば良い。最高責任者を失い混乱に陥るカイザーPMCをシャーレか、或いはアビドス生徒会の権限で潰す。それでこの話はおわりだ。

 

「アヴェンジャー。この子、ナチュラルに拷問を提案してるんだけど大丈夫なの? おじさん、ウチのシロコちゃん以上に、道を踏み外しそうな子始めて見たよ〜」

 

「犯罪じゃない! 思いっきり!」

 

「ん。流石に、それはちょっとどうかと思う」

 

「シキさん、本当に大丈夫な人なんですか……?」

 

「喧し──! 爆発音と衝撃……方向は……柴関ラーメン方向。どうする?」

 

 銀行強盗までしておいて、今更日和るアビドスの連中に呆れ果てながら反論しようと口を開いた途端、僅かに爆発音と衝撃を感じた。方向は柴関ラーメンの在る方角。この感覚からして、爆心地は柴関ラーメンだ。

 

「え!? た、大将が!!」

 

「あ、待ってください、セリカちゃん!」

 

「うへ〜、また不良達かな〜? 先生、行くよ〜?」

 

「ん、アヤネは残ってサポートして」

 

「了解しました!」

 

 黒見セリカが真っ先に飛び出して校舎を駆け抜け、それに続く様にして十六夜ノノミ、小鳥遊ホシノ、砂狼シロコが続いて行く。

 最後尾は先生と、その護衛である私たちだ。

 

「ぜ、ぜぇ──み、皆、早──!」

 

「アヴェンジャー、先生を担いで。私は強化の出力を引き上げる」

 

 四肢に魔力を込めて身体能力を引き上げる。肌の下に奔る幾何学にも似た神経系の魔力発光。それを合図に身体性能が向上する。

 宝具による強化には届かないながらも、貧弱なこの身を人の限界以上にまで跳ね上げる。

 

「ふ、ぅ────!」

 

 砂地をマトモに走ると体力の消耗が凄まじい事になる。故に、パルクールの要領で砂に埋もれかけた廃墟や放棄された車両の類を足場に跳ねて行く。

 

「ぜ──は、──ぐ、ぅ──!」

 

 魔力による身体強化で疾走するのは実の所効率が恐ろしく悪い。魔力の消費もさる事ながら、長距離だと単純に人体が耐えてくれないのだ。

 

「アヴェンジャー……!」

 

「マスター、最初から頼んでね」

 

 呆れ顔のアヴェンジャーが、先生を抱えているのとは逆の方で私の身体を担ぎ上げる。小脇に人間二人を抱えてこの速度で走れるあたり、サーヴァントの最低スペックと云うのは恐ろしい。

 アヴェンジャーの様なクソ雑魚底辺ステータスであっても軽く人間を上回っている。

 

「──え、どういう状況?」

 

 目的地点に到着した途端、目に映るのは訳の分からない光景だった。爆発してもうもうと黒煙を上げる柴関ラーメンと、大慌ての便利屋共、それにゲヘナの風紀委員会とそれと応戦するアビドス一行。訳が分からない、本当に。

 

「ホシノ、シロコ……一体、どういう状況なのかな?」

 

「さぁね〜おじさん達が到着した頃にはもうこんなだったし」

 

「ぜ──は……ゲヘナ学園、風紀委員会に告ぐ。当方は、連邦捜査部S.C.H.A.L.E及びアビドス高校学校、廃校対策委員会。

 当地区はアビドス自治区であると承知の上での戦闘行動か?」

 

 大方、アビドス自治区に逃げ込んだ便利屋共を追い掛けて越境してしまった、とかそう云う事だろう。

 或いは、先生の身柄が目的か。

 

『……まさか、貴女がそちらに居るとは。

 お久しぶりです、傭兵バロール──名無(ななしの)シキさん』

 

 ヴヴ、とノイズと共に立体映像が投影される。

 映し出されたのは、馬鹿みたいな格好をした風紀委員長(空崎ヒナ)狂いの変質者──改め、行政官。

 その名を天雨アコ。変態だ。

 

「天雨行政官。繰り返すが、此処はアビドス自治区。貴校らの戦闘行動は行政権の侵害だ。即刻退去しろ。便利屋は此方で処罰のち、自治区追放処分に処す。その後は煮るなり、焼くなり、揚げるなり好きにしろ」

 

 便利屋共が死のうが生きようが、そんなものは私の知った事では無い。連中の身柄なんぞはどうでも良い。

 だが、行政権の侵害は問題だ。た

 だでさえアビドスの存亡が脅かされていると云うのに、アビドスが自治区を管理できている、と云う大義名分が無ければ行政権の没収も有り得る。

 

「ん。その通り。ここはアビドス。それを脅かすというのなら、容赦はしない」

 

 血の気の多い砂狼シロコが愛用のアサルトライフルと共に、風紀委員会のド真ん中へ突撃する。薄々察していたが、アイツは頭がおかしいと思う。

 

「チッ──天雨行政官、即刻部隊を撤収させろ。さもなくば、私たちが強制排除に移る」

 

 もうアビドスの連中は始めてるけども。流石に撤退を始めれば追撃しない程度の分別はあるだろう。と云うか先生、アビドスの連中の指揮を執っていないで交渉の方をして欲しい。

 護衛の私に交渉まで任さないで欲しいものだ。追加報酬を要求するぞ。

 

『はぁ……皆さん、武器を下ろして──って! なんで命令も聞かずに戦闘を始めてるんですか!!』

 

「だって、アコちゃん、こいつら、割と強い……!!」

 

「あの人はまさか──待って、皆さん戦闘は止め──!」

 

「あは、あはははははは!!! アル様アル様アル様アル様アル様アル様アル様アル様アル様アル様アル様アル様アル様アル様アル様アル様アル様アル様アル様アル様アル様アル様アル様!!!!! 

 みんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんな!!!!!! アル様の、敵敵敵敵敵敵敵敵敵敵敵敵敵敵敵敵敵敵────!!!!」

 

 い、いよいよ伊草ハルカ(キチガイ)の頭がおかしくなったらしい。キヒヒと悍ましい笑い声を上げながらショットガンを乱射するその姿は、なる程悪魔そのものだ。ヤベーなコイツ。頭がおかしい。

 

「は、ハルカがついにおかしくなったわ……」

 

「ストレス溜まってたのかな。ここまで振り切れるの久々じゃない?」

 

「それで、私たちはどうする? 今ならどさくさに紛れて包囲を抜けられるけど」

 

 便利屋共め、応戦をこちらに任せて話し合いしてやがる。

 連中、どさくさ紛れに逃亡する腹積もりだ。……その割にはキチガイが大暴れしている様子だけども。

 

「はぁ……アヴェンジャー、取り敢えず風紀委員会を制圧する。防御だけ宜しく」

 

 アヴェンジャーと並走してアビドスとゲヘナの入り乱れる戦場に飛び込む。身体能力だけなら生徒相応に引き上げられるが、耐久力は貧弱なもやし人間相応だ。

 つまり、弾丸一つで死に至る。

 

「痛て、痛ててて! オレに攻撃通せる子が混ざってる!」

 

 神秘を持たぬ物理攻撃の一切を無効化する霊体たる彼は、ヘイローと云う名の神秘を持つ生徒達の攻撃を──無効化できたり、出来なかったりする。そのへんの雑魚なら攻撃は無効化するが、それなりの生徒からの攻撃は普通に素通りする。

 依って、

 

「アヴェンジャー!? どうしたの、血だらけじゃないか!」

 

「問題無いよ、先生! 直ぐ修復する!」

 

 総身から血を流すアヴェンジャー。私を庇い、銃弾の雨霰をその身を以て受け止め、或いはその身を盾にして振り払い、戦場を駆ける。

 

「アヴェンジャー、魔力を廻す! 防御はそのまま任せた!」

 

 魔眼殺しを外し、懐からハンドガンとナイフを取り出す。近接戦闘では此方の方が速い。ライフルよりもハンドガン、ハンドガンよりもナイフ。最速を以て、風紀委員共の武器、その悉くを破壊する。 

 

 同時に、アヴェンジャーへ供給する魔力量を引き上げて、その霊基(にくたい)の損傷を修復する。

 サーヴァントにとって、霊基(にくたい)の傷等些細なもの。霊核が傷付かなければ魔力を流すだけで損傷は修復される。

 

「直死──!」

 

 ナイフを握る右手で武装を破壊し、ハンドガンを持つ左手は風紀委員共を牽制しつつ、的確にみぞおちや顎を撃ち抜いて意識を刈り取る。

 

「助かった、▓▓さん……近接格闘上手いんだね」

 

 霊基主権編制(表層人格スイッチ)による技能行使。今回スイッチしたのは、六神通の内の三つを修めた始祖以来の天才。

 天狗道の魔術師が修めた体術を以て、アヴェンジャーは風紀委員会に傷一つ付けずその意識を刈り取って行く。

 アヴェンジャーも一騎のサーヴァントとしては弱い方だが、人間(ザコ)相手なら無双できる。雑魚狩りのプロだ。

 流石はアヴェンジャー。私と同じ様に、雑魚が相手でも徹底して戦えるとは。

 

「これがマジカル八極拳……? いや、ただの暗殺術……? 山育ちの人ってやっぱり何かおかしいよな……」

 

「チッ、そろそろ面倒になってきた」

 

 取り敢えず、私たちの周りにいた風紀委員共は全滅させた。

 アビドスの連中が突撃した方に目を向けてみれば、何だか知らない内に便利屋の連中と一緒になって銀髪褐色の銀鏡イオリをブチのめしている所だった。

 

「……これは、何の騒ぎ?」

 

「漸く来たか、空崎風紀委員長。さっさとあの変態をシメ上げて、風紀委員を連れて失せろ」

 

 呆れ顔と共にのこのこやって来た白髪のチビの名は空崎ヒナ。ゲヘナ最強だとか云う奴だ。何度か一緒に仕事をした事はあるが、仕事の話以外はした事が無い。

 彼女はワーカホリック過ぎるのだ。

 

「シキ、それにアヴェンジャーも……はぁ……うちの行政官が失礼したわね。直ぐおさめるから、戦闘は止めて貰える? 貴方達の相手をすると武器の損耗が凄まじい事になる」

 

 敵対組織と戦闘する場合、相手のリソースを削るのが最善手だ。負傷者を増やし、武装を破壊し、食料を奪い、睡眠を脅かし、安寧を奪う。単に殺すのは勿体ない。死体は何の益も産まないが、逆に云えば何の損失も産まないのだ。

 どうせなら相手に最大限の負荷を掛けるべきだ。

 

「良いだろう。だが、代わりに情報を寄越せ。貴方は、情報部の出身だろう?」

 

「そう言うと思っていた。貴方はそんな人だから。……これを。先生にも伝えて欲しい。カイザーグループは、アビドス砂漠で何かを探している」

 

 手渡さたのは何やら数字の書かれたメモの端切れ。恐らくは座標を記したものだろう。流石は情報部の出身、こちらが求めるものを把握している。

 

「感謝する。これで、この件は手打ちにさせる」

 

 どうしてこう、態々殴り合いをした後に話し合いで決着を付けなくちゃならんのか。どちらかだけにして欲しいものだ。

 両方やるのは時間が勿体ない。手軽に済まさせて欲しい。




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