直死の魔眼持ちとなんか英霊になってる奴のブルーアーカイブ 作:夜月詠
明けて翌朝。アビドスの生徒共が登校してくると、先ず最初に目にはいるのは校門に縛り付けられた小鳥遊ホシノの姿だろう。
私の独断で処罰した。勝手な行動をした報いだ。手を焼かせやがって。
「マスター、なんか救世主みたいな感じで吊るすの辞めない?」
腕を真横に、両足を真下に縛り付けてやろうとすると勝手にこんな十字になるのだ。
「シキ、朝一番、起きるなりホシノを吊るしに行くのはどうかと思うよ」
「おじさんも、君が起きるなり縛り上げてくるから驚いちゃったよ〜」
朝一番、起きがけに人を吊るし上げると気分が良い。死の線に歪み狂った世界であっても、こんなに素晴らしく爽快な気分に成る事ができるとは。
まぁ魔眼殺しを掛けているから歪み狂った世界では無いのだけど。
「し、シキがついにおかしくなっちゃったの!? ホシノ先輩が吊し上げられてるんだけど!?」
吊るされた小鳥遊ホシノを見て、最初に言葉にするのがそれか、黒見セリカ。何故、吊るされている所を見ただけで私の犯行だと断定できるんだ。
「斯々然々」
「それで分かる訳ないでしょ!? 『かくかくしかじか』でホントに説明できる訳ないじゃない!」
「砂狼行動班長には通用した」
事前に小鳥遊ホシノの鞄を漁ったりと、何ともまぁ、アレな行いをしていたから、という可能性もあるが砂狼シロコにはこれで通用した。自分で云うのもあれだが、何かおかしいと思う。
「!?」
「ん。おはよう、セリカ」
「ホントに通用してるっぽい!?」
ツンデレキャラの黒見セリカが、陸八魔みたいなギャグ枠になっている気がする。特に
「ホシノ先輩は、カイザーグループに……黒服とか云う大人に身売りして、アビドスの借金をどうにかしようとしてた」
「!? 本当なの!? って、情報が多すぎ──」
「ほ、ホシノ先輩!?」
「あれ、どうしたんですか〜?」
「人も増えた!」
リアクション枠はもう
お陰で喧々諤々の大騒動だ。どいつもこいつも人の話を聞きやしない。私がおかしくなったと決めつけて、何かしら薬を処方しようとしてくる始末だ。
第一、病気なら直死で殺せるのだから私が病に掛かったままで居る筈が無いだろう。虫垂炎だって直死で殺せるのだ。ウィルスや癌細胞の類が殺せない訳が無いだろうに。
「煩い」
ぱぁん、と弾丸を一つ上空に打ち上げる。如何に阿呆で焦り散らかしてばかりのアビドス生だろうと、銃声の一つも聞けば冷静になるだろう。
「事あるごとに撃つの辞めないか?」
「なら、アヴェンジャーが止めるべき。全員の頭をはたくなりして黙らせて欲しい」
「えっと……それでこれは一体……?」
「斯々然々」
「だからそんなので分かる人は──」
「なるほど☆」
「……なる程……?」
「嘘ぉ!? 私だけ? 私だけなの!?」
二度目だ、この流れは。いい加減次のステップに進みたいものである。と云うか進ませろ。同じ事を何度も繰り返させないで欲しい。
「小鳥遊ホシノは、その身柄と引き換えにアビドスの借金を減額させようとした。取り引き相手は黒服と云う
早口てま全て言い切ってやった。面倒を掛けさせるな。
此処に来てからこんな事ばかりだ。シャーレの仕事なんて引き受けなければ良かった。
「後は適当に話してろ。私は所詮部外者。口出しはしない」
それだけ言い残してアヴェンジャーを伴い校舎に去る。
所詮、私もアヴェンジャーも部外者だ。口出しはしない。すべきでは無い。最後まで関わり続けるつもりの無い、無責任な部外者なぞ必要無いのだ。
「アヴェンジャー。貴方は、文句は無いの? 生前の貴方とは異なる選択ばかり。そんな私に付き従うのは、貴方の方針には合わない筈」
生前のアヴェンジャーの、その意思にはとても合う事の無い選択ばかりしているのだと、そう云う自覚はある。
けれど、どうしても。反りが合わないのだ。こんなに醜く、壊れやすい世界で、一体どうして他人と関われると云うのか。
自分も、他人も、それが酷く壊れやすいと識っているのに。
触れる事なんて、できる訳が無いんだ。
「それが、マスターの望みなら。オレは君の呼び掛けに応えたんだ。心情にそぐわないから、って見捨てないよ」
「ふ。つまり、私にめろめろ。そう云う事?」
「……覚えのある返事だなぁ」
どう云う事だろうか。私みたいなクールビューティがそうそう居る筈が無いのだけど。
……いや、アヴェンジャーの知り合いと云えば英霊か。なる程、それなら理解できる。英霊程の存在であれば、私程の人物も混ざっているのだろう。
「────痺れを切らすの早すぎないか?」
「アヴェンジャー、まさか、あのポンコツ、もう?」
「チッ、先生達に知らせ──!」
轟ッ、と低く響く重低音。仄かに煙る硝煙と、彼方に昇る黒煙。もう、あからさまに攻撃を受けている。アサシンクラスの報告によれば、カイザーPMC理事の連中による攻撃らしい。
昨日の今日でもう痺れを切らして攻めてくるとは、どうやら私はあの機械を過大に評価していたらしい。
これからあのロボはガラクタポンコツスクラップと呼ぶ事にする。
「……あーそういう……昨日、小鳥遊さんがここを出る前に連絡してたらしいんだよ。律儀と云うか、社会人みたいと云うか……とにかく、言質を盾に強制接収を始めてるらしいね」
「あの桃色チビ、そんな余計な事やってたのか……」
なんでこう、余計な事ばかりやるんだ。……先生の護衛を題目に、逃げても良いだろうか。……駄目そうだなぁ、あの人、アビドスの方を助けて欲しいとか云うだろうし。
「一応、サーヴァントの戦闘使役は許可しておく。……取り敢えず、アビドス共の所へ戻ろう」
考えてみれば、行ったり来たりしているだけの様な気がする。ずっとこんなんばっかりやってないか?
「先生、アビドスが攻められて──成る程」
グラウンドまで戻ってみれば、そこは見事にもぬけの殻。どうやら置いて行かれたらしい。……いや、億空──違った、奥空アヤネだけは残っている。
後方支援担当だからか、一人残って留守番ばかりしている様な気がしなくもない。
「シキさん! 座標は、そちらの端末に……端末あります?」
「無い」
必要無いから作っていないのだ。傭兵バロールに対する連絡は、ブラックマーケットの特定の地点、特定の形式の以来書を用いて、と云う事にしている。例外はお得意様連中に渡している、魔術加工を施した信号弾位のものだ。
「では、このインカムと端末を使ってください。以前、不良達から接収したものですが、問題なく使えるので」
個人情報の詰まった
いつかやらかすと思う。
「分かった。では、現場へ向かう」
黒服の代わりにホシノを縛り上げる奴が主人公なんてそんなまさか