直死の魔眼持ちとなんか英霊になってる奴のブルーアーカイブ   作:夜月詠

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帰るべきは何処・その16

「は、ッ──!」

 

「マスター、一気に抜けるよ!」

 

 アヴェンジャーの背におぶられながら、戦場と化したアビドス自治区を駆け抜ける。魔力温存の為、最速の勇者(アキレウス)を始めとした高速移動手段持ちは呼び出せないから。

 原始的に、支援魔術(バフ)を掛けたアヴェンジャーが私を連れて駆け抜け、その背に迫りくる攻撃の一切を私が斬り払う。

 

「──見えた!」

 

 兵士共の群を無理矢理にブチ抜いて、その先に漸く見えるアビドス生の姿。無数のウィンドウを虚空に投影し、指揮を下す先生を囲む生徒共の戦姿。

 幾度か先生を庇ったのか、僅かに砂煙と血に汚れたそのド真ん中へ、崩れたビルの側面を蹴り飛ばして飛び込む。

 

「直死──仕手を殺す……!」

 

 強襲、後、即座に刃を振るい抜いて悉く武装を破壊する。

 銃火器を破断し、防具を斬壊し、兵器を砕く。その隙に、アヴェンジャーの蒼い眼がゆらりと揺れる。

 表層人格の切り替え。それによる使用技能の変更。表層へ浮かび上がるその者こそは、時計塔の至宝と謳われし天才魔術師。

 

 重なる声が、此処に奇跡を齎す。

 

「天上の神々よ──!」

 

 振り注ぐ蒼い星の光。その炎熱と神秘とを以て、兵士共を纏めて吹き飛ばす天体魔術による魔術攻撃。

 神秘(ヘイロー)による護りがあろうと、その上から意識を消し飛ばす魔術の奔流。悉く、兵士共が崩れ落ちる。

 

 けれど、崩れ落ちた兵士共の後ろから、またもや新たな兵士共が姿を現す。けれど、その練度は然程高くは無い。一握幾らの不良共を揃え、武装を手渡し、取り敢えずの体裁だけを成り立たせたかの様な、遅く、淀んだ部隊展開だ。

 数だけはある。武器だけはある。けれど、悲しいくらいに練度が足りない。私たちは疎か、アビドス生に無双され、蹂躙され尽くされる程度の戦闘能力。アビドス生に手を焼かせているのは、偏に、その数が異常な程に多いからだ。

 

「バロール……!」

 

 人波の奥から、黒いスーツに身を包んだ人型機械が姿を現す。赤いストールを黒煙の混ざる風に揺らし、憎々しげに私の──私たちの名を呟くその姿。

 

「PMC理事! 企業が街を攻撃するなんて幾ら土地の所有者だからといって、そんな権利は無いはずです!」

 

『それに、学校はまだ私たちアビドスのものです! この様な侵攻は、明確な不法行為……! 連邦生徒会に通報しますよ!』

 

 十六夜ノノミ、奥空アヤネの誰何を背に駆け抜ける。砲撃に依って崩れたビルの残骸を足場に、三角飛びの要領で直接PMC理事の機体を狙う。

 

「理事!」

 

 面倒な事に、奴を取り囲う連中は他の一握幾らの雑魚兵士では無いらしく、私の強襲に反応してその身を盾にPMC理事をガードした。仕方ないのでその武装を破壊して次いでに顎を蹴り抜いて気絶させ、即座にバックステップを踏んで後退する。

 

「……揃いも揃って、何を言っているんだか。連邦生徒会に通報だと? 面白い、今すぐやってみたらどうだ」

 

 崩れ落ちる護衛の兵士を気に留める事も無く、黒色の理事は言葉を紡ぐ。皮肉げな、悪意の入り交じった言葉を。

 

「君達は今まで何度も、その窮状を連邦生徒会に伝えて来ただろう? その結果、それで借金の問題が解決したのか?

 そろそろ分かっただろう。お前達がどう足掻いた所で、何一つ解決しない」

 

 再度攻撃を仕掛ける。今度は背負っていたライフルを用いた狙撃を行う。当然、狙うはPMC理事ただ一人。スコープの照準器の中央にその頸を据え、引き金を引く。

 今度もまた、兵士の一人が身代わりとなって崩れ落ちた。

 

 そこへ、追撃を仕掛けるアヴェンジャーの魔術攻撃。天体魔術による爆光と、呪詛(ガンド)による二重攻撃。爆発は盾持ちが犠牲となって防ぎ、呪詛もまた同様に防がれる。

 この調子なら、削り切るのは少し面倒だ。仕方ないので、アビドス生や先生同様、大人しく話を聞いてやる事にする。

 

「そしてアビドスの、最後の生徒会メンバー、小鳥遊ホシノは、退学の意思を示し、我々の元へその旨を伝えて来た。

 今やアビドスの生徒会は存在しない」

 

 アビドスの生徒会は、今や小鳥遊ホシノ副会長ただ一人。前生徒会長、梔子ユメは死亡し、他の役員は存在しない。

 故に、法的決定力を保有するのはあの桃色チビだけと云う事になる。その小鳥遊ホシノが、退学の意思を示した、となればアビドス生徒会の消滅は決定的なものとなる。

 

「君たちはもう、何者でも無い……!」

 

「な、何を言ってるの!? 生徒会が無くても、アビドスには対策委員会が──」

 

「アビドス廃校対策委員会は、アビドス生徒会が、事実上消滅している時に発足されたもの。公式に認可されたものでは無い」

 

 所詮は非公認の委員会。アビドス生徒会の、その自治能力を代行する事は出来ない。許されない。

 

「──そうだ。正式な書類は無い。君達の所属を示すものは、何もないのだ。だが、喜べ。アビドス高校が無くなれば君達は晴れて自由の身だ。あの借金地獄から解放されるのだからな」

 

 借金地獄に突き落としていた奴が何を云うのか。そも、PMC理事のロジックは破綻している。まだ、アビドス生徒会は、消滅している訳では無いのだから。

 

「そんな事になったら今までの私たちの努力が……!」

 

「は、まさか、何百年も掛けて本気で借金を返済するつもりだったのか? これは驚いた。てっきり、自分達を慰め、言い訳する為なのだと思っていたが……」

 

 髄部と口が回る事だ。後少しでチェックを掛けられるのだと、浮かれているのか。よくもまぁペラペラと悪意と皮肉を口に出来る。

 

「一体君達はどうしてあんなに努力していたんだ? 何のために? アビドスが借金から解放されるのは、自分たちの遠く後の時代だと言うのに」

 

「アンタ、それ以上言ったら──」

 

「撃つ。……シキとアヴェンジャーはもうやってるけど」

 

 銃口を向ける砂狼シロコと、黒見セリカ。その鋼の向こう側に、薄く笑うPMC理事。どうやらもう勝ったつもりで居るらしい。

 ──此処に在るを、一体誰だと思っているのか。

 

「先生、このガラクタの言葉は聞くに値しない」

 

 我らは最強。以来成功率100%、不敗にして無謬たる最強。

 汚れ無き純白たる死滅の顕れ。負ける? そんな現象(コト)は有り得ない。

 

「これは、小鳥遊さんが書いた退学届けだ」

 

 アヴェンジャーが懐から、その紙切れを取り出す。対策委員会の部室に残されていた、昨晩のゴタゴタの根源。カイザーPMCが侵攻した、その根拠たる書類。

 

「それがどうした。小鳥遊ホシノは既に──」

 

 退学している、と、そう言いたいのだろう。けれど。

 

「顧問である先生の承認が降りていない」

 

「ッ──!」

 

「そうか、生徒の退学には担当顧問の同意が必要……! だからホシノはまだ、アビドス生のまま……!」

 

 ジャキン、と装弾の(おと)が聞こえる。正当性は未だ此方側。カイザーPMCがアビドス自治区を侵攻するにたる根拠は無い。

 

「そして、先生。シャーレの権限を以てすれば、アビドス生徒会の代わりに、アビドス廃校対策委員会の設立を承認できる。その、生徒会代行の務めすらも」

 

 シャーレが有する権限。その中に、部活動の設立を認可できる権限があると云うのは確認済みだ。

 

「──ありがとう、シキ、アヴェンジャー。お陰で、生徒達(みんな)の力になれそうだ」

 

 故に、これは純然たる連中の違法行為。

 不法な自治区への攻撃が許される筈は無い。例えそれが、債権者によるものであろうとも。自治区の行政権は生徒会の手にあるのだから。

 

「ッ、サインをさせるな!」

 

 先生はその手に持つタブレット端末──シッテムの箱に、各種書類を表示させて次々とサインを描いて行く。

 この作業が終わりさえすれば、アビドス廃校対策委員会は晴れて行政権を獲得する。

 

 そう。

 

 自治区内の、犯罪行為を咎める権限を。

 

「ん、させない」

 

「おじさんたちを無視できるなんて思わないでね」

 

 砂狼シロコと、小鳥遊ホシノの銃撃が交錯し、兵士共を次々と撃ち抜いて行く。身の丈程もある盾を構えた小鳥遊ホシノが勢いよく距離を詰めて行き、その手にしたショットガンをぶっ放して次々と兵士共を薙ぎ倒して行く。

 

 彼女が開けた動線を駆け抜け、砂狼シロコが前線を蹂躙する。その愛銃と、飛び抜けた身体能力を生かした近接戦闘。私の戦闘方式(それ)にも似た、銃器と格闘術の融合戦。

 勢い良く暴れ始めた二人の後に続く様に、他の者達からも援護が行われる。

 

『援護は任せてください!』

 

「先輩たちはそのまま突っ込んで! 雑魚は──!」

 

「私たちが引き受けます!」

 

 黒見セリカはその手にした愛銃で、十六夜ノノミはマシンガンから弾丸をばら撒き続け戦域を制圧する。

 その戦闘能力は正に、一騎当千。少数精鋭の名こそが相応しい、アビドス廃校対策委員会の戦姿だ。

 

「──カイザーPMC理事。貴方達を、アビドス自治区への攻撃の容疑で捕縛する」

 

 最後の一筆。完成した書類を見せ、先生は我らの正当性を保障する。最早加減も何も要らない。犯罪者として連中を捕え、その身を以てカイザーグループ本社に突撃すれば良いのだから。

 

「──バロール……バロール、バロール、バロール……ッ!! 貴様だ、貴様さえ居なければ……!」

 

 狂った様に恨み節を口にするPMC理事。驚きた。どうやら生命も無い機械の癖に、生物(にんげん)の様に人を恨めるらしい。

 

「応援を呼べ! ブラボー小隊はまだ──通信途絶だと!?」

 

 彼方に爆音が轟いた。その残響が遠く耳に響いて聞こえた。大方、連中の兵器による──

 

「ん、あれは、便利屋……?」

 

 便利屋、だと? 連中、またぞろ此方を狙って来たのか。懲りない連中だ。PMC共と一纏めに叩き潰して矯正局の檻に閉じ込めてやる。

 

「これ、どういう状況なの……?」

 

「一転攻勢、って感じだねアルちゃん。どうする? このままでも行けそうだし帰っちゃう?」

 

「あ、アル様、あ、あそこにシキが……!」

 

「……なるほどね。シキとアヴェンジャーが何か入れ知恵したらしい。ま、私たちの援護も無駄にはならないでしょ」

 

 何をグダグタやっているのか。参戦するならさっさとやって欲しいものだ。敵として、或いは味方として。どちらでも良いが先に始末するか、利用した後始末するかは連中の立つ側で決めてやる。

 

「……アレを出せ! この手で、バロールを始末してやる……! 私の計画を妨害した、その報いを……!!」

 

 小鳥遊ホシノ、砂狼シロコを始めとしたアビドス生と応戦するカイザーPMCが兵士。その部隊が、左右にばかりと割れる様にして散開し、後ろから大きな輸送車が迫り来る。

 ゴリアテ数機によって護られたその輸送車に積まれたソレは、いつか見た鋼の煌めき。

 

『っ、何か来ます──あれは!?』

 

「アビドス砂漠の、蛇……?」

 

「うへ、あんなものどうやって……」

 

 かつて、アビドス砂漠に住んでいた機械の蛇。

 その()をビナー。円環(ヘイロー)持つ、生命無き鋼鉄の傀儡(きかい)である。




マスカーニャ+サーフゴー+ガブリアスでマスター乗せた
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