直死の魔眼持ちとなんか英霊になってる奴のブルーアーカイブ 作:夜月詠
拒絶の瞬間に放たれた弾丸と、先生目掛けて放たれる蒼白い
「身体が、動か──!」
「ユズちゃん!」
シッテムの箱を取り落として膝を付く先生と、目を回して倒れ込んだ花岡ユズを横目に最短最速で天童アリス目掛けて強襲する。
「痛──!」
「チッ、弾かれた」
カキン、と金属音と火花を散らして弾丸が弾かれる。神秘も魔力も込めて居ないとは云え、幾ら生徒であろうと生身で金属音と火花を散らして弾丸を弾ける訳が無い。
AL-1Sの
「この──!」
「舐めるな、此方は最強の傭兵だ」
咄嗟に撃ち返してくる才羽モモイ。地面を這う様に足を細かく素早く動かしてその銃撃を回避しつつ、低い体勢から彼女の顎目掛けて掌底を放つ。移動速度と体重の乗ったその一撃は、綺麗に才羽モモイの顎を撃ち抜いて脳を揺らした。
「モモイ!」
才羽モモイは白眼を剥いてぐらりと倒れ込んだ。脳震盪による気絶である。
「ミドリ、どうすれば──!」
「どうしよう、どうすれば……! ねぇ、誰か、誰でも……!」
不可能だ。攻勢に於けるイニシアチブを全て此方が掌握した上で、不確定要素となる先生を初手で排除した。
後に残るは、とても戦闘向きとは云えぬクリエイターと破壊兵器たるAL-1S。
前者は容易に処理でき、後者がこの窮地を覆す程の──生徒の域を越えた力を見せれば、それこそが天童アリスを排除する根拠となる。その学区の生徒会長に無許可で潜伏していた破壊兵器、なんて、存在が許される訳が無いのだから。
「天童アリス、武装解除の上、此方の拘束を受けろ」
天童アリスが持つ『光の剣』。嘘か真か、宇宙戦艦の主砲として設計されたレールガンは、脅威となる。例え天童アリスが──AL-1Sがその真価を発揮せずとも、強大な武装である。
私を殺し、アヴェンジャーの霊核を砕き得る
「シキ、駄目、だ──!」
「……! あぁ、もう!! 傭兵バロール! 戦闘を止めなさい! これは、セミナーとしての命令です!」
「そう。──では、セミナーに対する背反と見做す」
半歩後ろを振り向いて、銃撃する。
「くっ────!」
狙うは早瀬ユウカ、その鳩尾と眉間。続け様に放たれた二つの弾丸が彼女の意識を刈り取るべく迫る、その最中。早瀬ユウカはポケットから取り出した端末で、何やら操作を始めた。
「間に、合った……!」
環境パラメータをその場で打ち込む事で銃撃に対して最適な防御角を算出しているのか。僅かに角度を帯びた障壁が、銃撃を受ける事なく後方で反らして弾いた。
「けれど、手数は此方が多い」
「──霊基主権編制──『
バリアによって物理的な干渉が拒絶されようとも問題無い。アヴェンジャーが操る魔術の名は
物理的干渉ならざる、呪詛の類を多く扱う魔術系統。如何に断絶があろうとも、如何に隔てられていようとも。
呪詛の前に、物理的な拒絶は無意味に等しい。
「な、ぁ、力、が抜け……!」
展開されたバリアの、その内側に直接発生させた座標攻撃。藁人形に釘を打ち付ける丑の刻参りと同系統、類感呪術による遠隔攻撃によって早瀬ユウカの気力を削る。
そして、彼女の展開するバリアは状況が変わる度に環境パラメータを入力し直さなければ真価を発揮しないものだ。
故に、
「残るは、才羽ミドリと、
「こんな、こんなの、勝てる訳が……!」
才羽ミドリの背に庇われ、怯えた表情を見せる天童アリス。その眉間に銃口を向け、一歩ずつじりじりと歩み寄って行く。
銃撃で意識を奪えないのなら、直接絞めて意識を刈る。それで駄目なら、手足を縛り上げて運搬するだけだ。
「武装を捨てろ。膝を付き、頭の後ろで腕を組め」
アヴェンジャーが8時の方向から、私が4時の方向から。じりじりと歩み寄って行く。相対する才羽ミドリは、手にした己が銃器を手に額に汗を浮かべながら少しづつ後退して行く。
「───マスター、C&Cが接近してきてる」
「調月会長からは既に待機命令が下りている。故に、これは明確な命令違反。背反として処理を」
面倒な。C&Cまで
しかし、何故。あれは明確な、セミナーの下部組織。会長たる調月リオの命令を絶対遵守するエージェント集団。
何故裏切った。理解できない。いままでも、これからも。ミレニアムの為に奉仕し続ける
「──! まずい、一人突破してきた! コールサイン00……」
約束された勝利の象徴。ミレニアム最強の名を誇るチビメイド……!
「美甘ネル……!」
まさか、サーヴァントの防衛線を突破する程とは。
……或いは、他のメンバーに任せてどうにか防衛線をすり抜けてきた、と云う所か。
「よぉ、クソ
窓をブチ破って突入してきた三甘ネル。ともすれば、小学生とも思える低身長の彼女は、全身のそこかしこに擦り傷や火傷といった軽傷を負っている。けれど、その程度の損傷でその女の戦闘能力が鈍る筈もなく。
彼女が愛用するツイン・ドラゴン。二挺一対の短機関銃の、その双腔が一つずつ、私とアヴェンジャーに向けられる。
「黙れ、背反者……!」
瞬間、鳴り響く雷鳴の様な轟音と共に放たれた無数の弾丸。
私は滑り込む様に床を滑走しつつ弾丸を弾いて回避し、アヴェンジャーは
「チッ、傭兵の方はともかく、アヴェンジャー、てめえ、その治癒力はどうなってんだ」
「そういう
十数秒の斉射から生存し、遂に装填の隙を晒す三甘ネル。魔力を以て傷を修復するアヴェンジャーを囮に、背後から強襲する。
「──ふ、っ──!」
身体を大きく捻って、遠心力を乗せた銃床の一撃。それをチビメイドの後頭部に叩き付けんとしたその刹那、超速で反応した彼女が割り込ませる様にしてツイン・ドラゴンの片割れを差し込んだ。
「見え透いてんだよ、クソガキ!」
ぎぃん、と鳴り響く壊音。銃身の大きく曲がったツイン・ドラゴンを投げ捨て、彼女は懐から取り出した手榴弾のピンを抜く。
不味い。身体強化と英霊召喚にリソースを費やしたこの身では、アレは致命傷に成り得るものだ。
「だろうな。だから、これは──」
空中に投げられた手榴弾、それは爆裂する事なく白く濁った煙をもうもうと吐き出して行く。
「発煙筒……!」
読まれていた。避けようのない反撃に対して私が過剰に反応する事が。しかし、何故。彼女に私の戦闘風景を見せた事は無い筈だ。
そして人読みでも無い。彼女とは精々、一、二度の共戦しかしていない。この精度で読める程の付き合いが無い。
──まさか。
「先生……! このタイミングでC&Cが来たのは、貴方の要請か……!」
ガンドによる身体硬直。それを受けて尚、彼はシッテムの箱に手を伸ばしていた。おそらくは、アレで連絡されたのだ。
C&Cに対する応援要請、そして私のデータ提供。面倒な事ばかりやってくれる。未来予測にも等しい攻撃範囲の割り出しや、各種リロードや後隙の予測、他にも先生の戦闘指揮は面倒だ。アレを相手にするのは本当に、とても面倒だ。
「アヴェンジャー、逃さないで!」
「ごめん、マスター! 皆、C&Cで手一杯だ!」
如何な英霊、サーヴァントであろうとも。このキヴォトスの影響を受けて弱体化した状態で、ミレニアム最強のエージェント集団を相手に不殺を押し通すのは骨が折れるか。
「視えない……!」
立ち昇る白煙に閉ざされて、先生やゲーム開発部、三甘ネルに奔る死の線は視えない。死の線を介した透視の類は不可能だ。
「──『元素魔術』!」
吹き荒れる突風が、室内に立ち込める白煙を払う。正常なるを取り戻した視界に写るのは、荒れ果てたゲーム開発部の部室だけだった。戦闘不能の連中も含め、三甘ネルや才羽ミドリ、天童アリスが回収して逃げ去ったのか。
「調月会長に応援要請を行う。あの人数を連れている以上、まだ遠くには行っていない」
懐から取り出した端末を使って、調月会長に要請する。
内容は、ミレニアムサイエンススクール、その校舎のロックダウン。内部の隔壁を全て下ろし、連中の逃げ道を塞ぐこと。
会長の権限があれば行える。向こうも、先生の権限で解除できるだろうがそれは諸刃の剣だ。強制解除をしたが最後、その居場所を私たちが把握できる。
「天童アリス──AL-1S……決して、逃さない」
アレはビナーと同様、原生人類の敵だ。人類の脅威、この世界に在ってはならないもの。必ず排除する。
──死にたくない、なんて当然のことなのだから。