直死の魔眼持ちとなんか英霊になってる奴のブルーアーカイブ   作:夜月詠

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死ぬほど忙しかった


境界・その5

 思考を廻す。魔力を以て神経伝達物質のやり取りを加速させ、タキサイキアを意図的に引き起こす。

 極度の集中と思考による視界、我が認識世界全域が遅延して視える。飛び来る弾丸の、ライフリングによって生み出された回転と、弾頭に奔る赤黒い命の線。

 その一切を死線/視線(まなこ)に捉え、息を吐く。

 

「直死──!」

 

 相対する美甘ネルが構えたるツイン・ドラゴン。両の手に構えられたその銃器、その銃口の硝煙を視界の隅に置いたまま無銘の刃を射線に置く様にして線をなぞる。

 

 加速する思考、その速度に決して追い付く事の無い身体駆動。もどかしく思いながらも、眼前の敵を打倒する為に全てのリソースを集約させる。

 

 ──アヴェンジャー、セイバーを護衛に残しアサシン二騎と共に突撃。一騎はAL-1Sの抑えに回したまま。

 

 言葉無く。マスターのサーヴァントの間に在る、魔力と存在維持の為の経路(パス)を通じ念話を飛ばす。

 この身が彼女の弾幕によって釘付けにされると云うのなら、我が使い魔たるサーヴァントを以て脅威を討つ。

 

「チッ──」

 

 二挺一対のサブマシンガン、両の手を以て為す弾幕の壁。その強度が落ちる事を承知で、彼女は左手の銃器を投げ捨てる。

 右手に構えたままのサブマシンガンの、その銃口の角度を変動させ私とサーヴァント達を纏めて牽制しながら、左手を懐に突っ込んだ。

 

 取り出されたのは、カーキ色の手投弾。先程見た煙幕を貼る為のものか、或いは見た目通りの爆弾か。

 どちらにせよ、2度は通じない。通じさせない。

 

「狙い撃てないとでも思ったか?」

 

 第17号ヴァルキューレ正式拳銃 - 魔術礼装改良型。愛用するハンドガン、その最速を以て手榴弾を撃ち抜いて爆散させる。

 途端、低く轟く轟音と爆炎。どうやら後者、純然たる爆弾であったらしい。

 

 我が弱点、範囲攻撃にはどうしようも無いと云う欠点。それを突く爆破攻撃。なるほど合理的だ。敵対する私を無力化するに、最適な武器だろう。

 

「───今だ、やれっ!!」

 

「な──!」

 

「ミドリ、EX──『ドローイングアート』!」

 

 その言葉と共に迫りくる5つの弾丸。緑に煌く軌跡を、世界に刻み付けながら飛翔するその弾頭。なるほど、例えるなら"絵を描く行為(ドローイングアート)"が相応しい。

 かの銃撃こそは、描画と云うに値する。

 

 ──だが、その程度で私は倒せない。

 

「無駄に足掻くな」

 

 僅かな時間差を付けて放たれた弾丸の、その一切を切断する。

 確かにナイフ一振りでは手が足りない。その線の、その細きをなぞる時間が足りない。

 

 だが、線をなぞるのがナイフである必要なぞ無いのだ。

 

「っ、髪で、弾丸を振り払った……?」

 

 細く、柔く、軽やかな我が髪の、その幾筋かを以て線をなぞる。

 直死にとって、斬撃の速度も威力もその一切は不要。ただ、死の線をなぞれさえすれば切断できる。

 

「アサシン!」

 

 ガンドを飛ばしながら、アヴェンジャーは麾下にあるサーヴァントの指揮をとる。人差し指の先に収束する青い光、それに意識を割く美甘ネルに、二つの騎影が襲撃する。

 

「くそっ、コイツら、巧い……!!」

 

 赤い外套の暗殺者がトンプソンコンテンダーの、ライフル弾にも相当する一撃を放つ。

 ガンドの青い光を回避した美甘ネルだが、時間差で放たれた銃撃はまともに避けられず、その腹に弾丸が直撃する。

 

「ぐ、ぅ──!」

 

 大きく吹き飛び、膝を付く少女。そこに飛びかかるようにして、吸血鬼にも似た暗殺者がその両の手の鉤爪を振るい抜く。

 霊体化の解除、気配遮断の強制解除と共に顕れた反英雄の、不意の一撃。

 

「ネル!」

 

 飛び散る鮮血と、空を舞う布の切れ端。衣服諸共に切り裂かれた皮膚には細く深い切創が刻まれ、淡い桃色をした肉の合間からとくとくと赤い血が溢れだした。

 

「──美甘ネル、制圧。守護者(アサシン)、拘束を」

 

 追い撃ち替わりに額に何度か撃ち込んで、美甘ネルの確実な意識の喪失を確認する。

 

「残るは"先生"、及び、才羽ミドリ、AL - 1S。戦闘を続行する」

 

「流石ね、バロール、アヴェンジャー。貴方達の部下……部下(暫定)の、彼女達も素晴らしい戦闘能力だわ。ハッキングで幾らか機能が低下しているとはいえ、ARMSすら鎧袖一触で殲滅するなんて」

 

 その言葉に振り返ってみれば、そこには調月会長とその後に控える飛鳥馬トキ(同僚)の姿があった。周囲には、黒煙と紫電を吐き出す幾つものロボットの残骸。調月会長が連れて来ていたARMSとか云う兵器だ。特に何か活躍するでも無く、雑にハッキングされてAL - 1S側に回ったポンコツ共。

 

 流石は常勝たる騎士王の異霊(オルタナティブ)。黒き極光を放つその聖剣は、例え異世界だろうと曇りは無い。

 

「けれど、トキにも見せ場が必要ね。バロール、AL-1Sは引き続き貴女達に任せます。叛逆者一行は──」

 

「お任せください、リオ様。

 ──ミレニアムサイエンススクール、C&C所属(・・・・・)、コールサイン04、飛鳥馬トキ、応戦します」

 

 メイド服を纏ったまま、アサルトライフル『シークレットタイム』を構える彼女を視界の隅に置いたまま、今度はAL-1Sの方へ向き直る。

 

 呪腕(アサルト)一騎(ひとり)に無理をさせすぎた。

 正面戦闘に優れている訳では無いのに、一騎でAL-1Sを抑える、なんて。素晴らしい戦果だ。

 ならば、その奮闘に応えぬ訳にはいかないだろう。

 

「C&Cの、コールサイン04……!?」

 

『そんな、C&Cの名簿には、飛鳥馬トキの名前は──』

 

「専属エージェントとして活動するのに不要な情報は削除してあるわ。……それはそれとして。ミレニアムのデータに不法にアクセスできるなんて、一体どんなAIを載せているの?」

 

 護衛サーヴァントを入れ替える(オーダーチェンジ)。消耗した呪腕(アサシン)と、黒き騎士王(セイバー)の立ち位置を瞬間的に変更させる。

 私の纏う魔術礼装──限定礼装に仕込まれた魔術の一つだ。

 

 聖剣の騎士王を正面に配置し、背後から女性特攻を持つ吸血鬼(アサシン)で奇襲、騎士王の背後から魔術支援を行うアヴェンジャーという構図だ。私は後方支援である。

 

吸血鬼(アサシン)、宝具限定解放。壊れていなければ(生きていれば)それで良い」

 

 アイアンメイデン。現実には存在し得ない、幻想の鉄処女。

 その内に閉じ込められた存在(モノ)は、血の一滴の残さず絞り上げられる。

 

 これはその限定解放。出力と持続、攻撃判定を抑えた拘束目的の拷問器具としての召喚。

 流血による殺害(はかい)では無く、肉体の損傷(はそん)による拘束を行う為にこそ。拷問器具として、苦痛と不自由を齎す為に貴き幻想(ノウブル・ファンタズム)は現実を超克する。

 

「▓▓▓▓▓▓▓、▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓──限定解放『▓▓▓▓▓▓(ファントム・メイデン)』!」

 

「──回避──!」

 

「させない」

 

 私の合図と共に、黒き騎士王が烈風を放つ。『▓▓▓▓(インビジブル・エア)』の、その真名解放たるストライク・エア。

 圧縮された轟風の、その一押しがアイアンメイデンによる拘束を避けんとしたAL-1Sを吹き飛ばし、鉄処女の暗がりに少女のカタチを叩き込んだ。

 

「ぁ、あぁあああああ──!!」

 

 鉄処女の、その鋼の内側から苦悶の声が響く。鉄処女の下部から溢れだす紅は、処女のカタチをした兵器の冷却液か、はたまた少女の血潮なのか。

 

「ッ──アリス!!!」

 

「調月会長、目標の拘束に成功した。私たちはこのまま帰投し、拘束、及び封印作業に移る」

 

 襤褸切れの如くボコボコにされ崩れ付した先生と才羽ミドリの前に立つ飛鳥馬トキと、調月会長に声を掛ける。

 如何に先生の指揮が優れていようと、気絶した仲間(お荷物)を抱えたまま、生徒一人──それも、然程強くは無いゲーム開発者単騎で、ミレニアム最高のエージェントの一人に敵う筈が無いのだ。

 

「……えぇ。先生、私たちはこれでお暇するわ。後日、連邦生徒会には正式な抗議をさせて貰います。──御機嫌よう」

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