直死の魔眼持ちとなんか英霊になってる奴のブルーアーカイブ 作:夜月詠
要塞都市エリドゥ。調月会長が、来たるキヴォトスの終焉に抗う為に建造した決戦都市。数多無数の防衛設備と、自立戦闘ドローンAMASによって守護される城塞だ。
キャスタークラスによる陣地作成によって、結界二十四層が張られ、警備代わりの使い魔が数十体、構造の一部は異界化までしている。容易に突破できる代物では無い。
「さて、どうする、調月会長。まさか──」
のだが。
「明星ヒマリに逃げられる、なんて」
"全知"の名を恣にする天才ハッカー、明星ヒマリ。飛鳥馬トキが捉え、此処エリドゥにて軟禁していた不確定要素。
ミレニアム史上、僅か三人しか存在しない"全知"を警戒するのは当然の事と云えるだろう。
だが、どうやったのか奴は軟禁室から抜け出しここエリドゥの何処にか逃亡してしまった。牢の電子錠を、おそらくは隠し持っていたデバイスでハッキングし、そのまま──だ。
「問題無いわ。ヒマリの車椅子、その駆動部に発信器を仕込んでいるから。それに、エリドゥ外縁部は貴方達が手を加えている。彼女が脱出する事は不可能。捨て置いて問題ないわ」
なるほど、それなら良い。工房化したエリドゥ外縁部には使い魔の
車椅子で移動する彼女に逃げ切る事は不可能だ。時期、捕らえられるだろう。
「それで、状況は? AL-1Sの解析は何れ程進んでいる?」
「全く、ね。Divi : Sionとの接触が"アトラ・ハシース"発動の条件、と云う事は状況判断的に把握できたけれど……」
「把握。なら、解析は諦め破壊する? 私なら、如何なる防御機構が存在しようと破壊できる、けど」
「……もう少しだけ、解析するわ。もしかしたら──いえ、未練ね、これは。……私も、同席するわ」
「了解。では18:00より破壊作業に──!」
轟音。それは爆発なんて比べ物にもならない程の、轟。大質量が硬質に直撃したかの様な爆発音と衝撃。幾重もの隔壁と魔術結界に閉ざされた、この中枢部にまで届くとは凄まじい衝撃だ。
『リオ様、バロール様に報告。エリドゥ外縁部に対し巡航ミサイルが複数回直撃、第一結界、崩壊しました。以降も複数回の巡航ミサイル発射を確認しています』
「じ、巡航ミサイル? 何処からそんなものを引っ張り出して──」
『セミナーの権限でミレニアムが保有する兵器類の使用権が、"先生"に委任されています。早瀬ユウカ、生塩ノア、黒崎コユキの権限は凍結されている為、ハッキングによる権限委譲と思われます』
「先生のあのタブレットか、ヴェリタスね。……どちらにせよ、彼らがここに攻め込んで来る、と云うのは確定事項──外縁部は放棄します。バロール、中枢部の魔術工房化に必要な時間は?」
「一日あれば外縁部のそれよりも強力な工房に出来る。けど、使役できる全サーヴァントをそちらに回す事になる」
私が召喚を維持できる最大数は、アヴェンジャーを含めて五騎。
その全てを工房の作成に充ててしまえば、戦力はガタ落ちだ。
故に、此処は──
「長期間維持できないけど、性能だけなら同等の工房化は施せる。そちらで良い?」
「えぇ、構わないわ。彼らを撃退してしまえば、再建の余裕は出来るもの」
「了解。──アヴェンジャー、スキル『陣地展開』発動。中枢部を
我がサーヴァント、アヴェンジャーが持つスキルの一つ『陣地展開』。キャスタークラスが有する『陣地作成』、その亜種に位置する派生スキルだ。
工房を作成する陣地作成に対し、霊基に内包する工房を展開する技能だ。
エリドゥを巡回しているアヴェンジャーを急ぎ呼び戻し、スキルによる中枢部の強化を急かす。どうやら、結構遠くにまで行っていたらしく戻ってくるには多少時間がかかるとか何とかと返答が返ってきた。
「一時間もあれば此処は強化できる。それまでに、先生達がどこまで来るか……」
飛鳥馬トキによる報告ではゲーム開発部、エンジニア部にC&C、そして
「……頭が痛くなるわね。今のうちに対処しなければAL-1Sは、ミレニアムだけの問題では無くなるというのに……傭兵バロール、アヴァンギャルド君の操作権を託します。彼らの撃滅を」
◇
爆炎と爆風、粉塵と灰煙が舞い散る戦場。それが、エリドゥ外縁部に於ける風景だった。幾つもの
そうして壁を乗り越え、エリドゥ中枢、中央タワーへと攻め込むと云う算段だったのだが──
『ちょっと! もう十発は撃ち込んでるのに、とうして外壁一つが壊せないのよ!!』
『計算上、外壁どころか内部の建築物まである程度は破壊できる筈なんですが……どうも、バリアの様なものが張られているらしく……』
インカム越しにユウカやノアの声が聞こえる。何でもミレニアムの技術体系に存在しない技術らしく、解析すらままならないのだとか。現状、彼女達がとれる手段はミサイルを何発も撃ち込んで力付くで叩き壊す以外存在しないらしい。
「アロナ、解析できないかい!?」
シッテムの箱、その管理AIたるアロナ。ミレニアムの機器すらハッキングし、解析できるこの子ならば、このバリアを解析できるのではと一縷の望みを託してみる。
『──解析できました! エリドゥ外縁部に、中央タワーを起点とした計二十四層の
空間の連続性が僅かに歪んでいて、物理攻撃の大半を無効化されています! このままでは、壁を越えるのにミサイルが後数十発は必要になります!』
『何かあるのは分ってるのよ! 問題は、それをどうやって越えるかっていう話で──!』
「チヒロ、何か抜け道とか無いのかな!?」
『物流輸送用の無人列車があるにはあるけど……明らかに罠。そこだけ、防衛設備が薄すぎる。オススメはしないけど、行くの?』
罠だと分かっているものを踏み抜きに行くのは、少し躊躇われる。けれど、その罠にかかる以外に道が無いというのなら、仕方が無い。
「案内して欲しい」
返答は無し。その代わりに、シッテムの箱に一つの座標データが転送されて来た。共に、その周辺の防衛設備や兵器類の解析情報も。
なるほど、此処だけ妙に防衛設備が少ない。まるで、この列車に乗って欲しいみたいだ。
背後に振り向いて、皆の表情を確かめる。
ゲーム開発部、エンジニア部、C&C。エリドゥまで同行してくれた皆と、後方で支援してくれるヴェリタスとセミナーの二人。
彼女達は、ただ、アリスを救う為に此処にいる。なら、私がやるべき事はただ一つ。その願いを叶える為に、全霊を賭すだけだ。
「これは多分罠だけど……私達なら、その罠を踏み潰して、きっと、アリスを助け出せる……!」