直死の魔眼持ちとなんか英霊になってる奴のブルーアーカイブ 作:夜月詠
人間工学に基いたとか何だとか調月会長が言っていたコクピット内部で、操作パネルを流れる様に操って行く。四つの腕にマウントされた武器と盾。その角度と攻撃タイミングを調整し、何処を穿つべきかを定め、思考加速の魔術を廻す。
魔力は潤沢。此処は工房、魔術師の城塞なればこそ、その主たる魔術師はそれこそ、全能にも近しい膨大な魔力が齎される。
「────たかが教師一人では、私たちには勝てない」
彼方、"時間"を削って奇跡を起こす先生。
此方、世界を救った英霊の一柱と最強を名乗る傭兵。
如何に強力な生徒を呼び出そうとも、此処が工房であり、此処に居るのがアヴェンジャーである限り負けは無い。
「──
手札を一つ、切る。
それは、人類そのものが誇る決戦術式。その
「
真名解放──
サーヴァントが持つ絶対の切り札、人類が生み出した尊き幻想たる宝具を自壊させて、本来の性能を越えた爆発的破壊力を生み出す"
ソレを、宝具どころか
退去した英霊の記録を留め連続性を維持できる英霊『カルデア』の特性と、此処が魔術工房であるが故の無尽蔵の魔力供給があって始めて成立する、数多無数のサーヴァントによる特攻。
それこそ、ミサイルにも匹敵……或いは、凌駕する破壊力が雨霰と炸裂し、エリドゥ諸共に視界全てを打ち壊して行く。
「くっ、すまない、C&C、私たちは、ここまでの様だ……!」
吹き込んだ風で晴れた視界。灰燼と硝煙の拭い去られた戦場に、全身に大小無数の傷を浮かべ、壊れた銃器を杖に何とか膝を付くエンジニア部の連中の姿が見えた。
流石はミレニアムでも最高の技術者集団。加減しているとは云え、壊れた幻想を受けて尚、武器としてカタチを保っているとは。
「申し訳ありません、どうやら、我々も……!」
然し、地に付すはC&Cも同様だ。どれだけ強いと云えど、所詮はエージェント。美甘ネルに及ぶべくも無いのであれば、どれだけ居ようと有象無象の雑魚に過ぎない。
「安心しろ、殺しはしない。精々が、叛逆者として晒し、牢に繋ぐだけ」
意識を刈り取る最後の一手として、壊れた幻想を叩き込む──その瞬間、機体が爆炎に包まれて激しく揺れ、数多の合金板からなる装甲が悲鳴を上げ、ダメ押しに仕込まれた魔術強化が鳴動する。
「ッ──ミサイル……!」
攻撃の正体は、ミサイルだ。エリドゥを覆う魔術結界二十四層を突き抜けて、ミサイルがこのアヴァンギャルド君に直撃したのだ。
後方の連中も、中々に大胆な事をやるものだ。この距離で、味方を巻き込む事を恐れずに叩き込んでくるとは。それほどまでに仲間の耐久性能を信じているか、或いは、コラテラルダメージと割り切ったのか。
「……いや避けて……違う、回収されて……? その人員はどうやって……!」
爆炎、轟音、鋼の擦れ合う鋼の絶叫。再びの爆炎と衝撃に、コクピットが激しく揺れて焦点が定まらない。
──アヴェンジャー、どうなってるの?
◇
ゴボ、と咳き込む様に喉の奥から血が溢れる。舌の奥に感じるザラつきと、金属臭。生暖かくどろりと粘ついたソレを、誰にも見られない様に飲み込んで、然りと前を向く。
其処に居るのは、黒衣を纏ったアヴェンジャー。右手の人差し指を伸ばして、まるで銃のような格好をした彼をまっすぐに捕らえて、握りしめたカードに力を籠める。
「アヴェンジャー、防壁は、突破したよ……!」
「先生、まだ、やるの? 人間には苦しいだろ、その負荷。オレにも覚えがあるからね、その苦しさは理解できる」
「あぁ、勿論……苦しいさ。けどね、それでも、だ。此処で立って、この子達の友達を……私の、大切な生徒を守らないと。
例えそれが、兵器であったとしても」
チカチカと白飛びする視界。震える身体と、縺れそうになる舌を必死に動かして、脳を駆動させ、限界を越えて頭を回し、戦場を睨む。
この配置、この視界であれば、問題無い。
だから──
「ッ、ミサイル!? 不味い──防御を!!」
読んでいたよ、アヴェンジャー。
君は、敵である私たちを殺しはしないと。見殺しにする事は無いと。だから、自分すら巻き込む配置でミサイルを放てば、私たちをも護ろうと意識を割くと。
「スモークを!!」
「「はい!!」」
合図に合わせて、ミドリとモモイが発煙筒を使って世界を白い闇に溶かし込む。彼に視界不良が通じるかは分からないが、それでも私たちの追跡難度は向上するだろう。
「皆、これが最後だよ……時間稼ぎを、宜しくね……!」
カードの力で呼び出した子達に、最後のお願いをする。
ここで時間を稼いで、シキとアヴェンジャーを足止めして欲しいと。そうすれば、私たちで中央タワーに侵入し、アリスを奪還して見せる。
「行かせません、私は、誰も通すなと命じられた……!」
襲撃。白い闇を斬り裂いて、メイド服を脱ぎ捨てたトキが何やら機械を纏って私たちに襲い掛かる。
想定外だ。アヴェンジャーにばかり意識を取られていて、彼女にまで警戒しきれなかった……!
「る、ッせぇ、よ──! お、らぁあああああっ!!」
がギィんと、鋼鉄の擦れ合う衝撃音。爆炎と轟音の中にあって尚、甲高く響くそれはトキの纏う
圧倒的な質量差を、それでも何とか相殺して押し返さんとするネルと、それを押し切って私たちを打ち倒そうとするトキの視線が交錯する。
「まさか、残骸でアビ・エシュフの一撃を止めるなんて……!」
「先輩、だから、なぁ──っ! 行け、先生っ! 此処は、あたしが抑えてやるよ……!!」
更に力を加えて、そのままネルを押し切らんとしたトキに対し、ネルは自ら後方へ跳んでその衝撃と威力を受け流し、半壊した銃をトンファー代わりにしてトキが纏う機械と激しく打ち合った。
「召喚式起動! 行かせません、この先へは──!」
複雑な魔法陣が浮かび上がり、その中央から何体もの化け物が流れ出す様に顕現して行く手を阻む。けれど、この程度で、私たちは止められ無い……!
「ミドリ、モモイ、ユズ、行くよ! アリスの所へ!!」
「「「はい!!!」」」