直死の魔眼持ちとなんか英霊になってる奴のブルーアーカイブ   作:夜月詠

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帰るべきは何処・その3

「────マスター」

 

「分かった。先生、私は仕事を遂行する。暫くこの生徒(ガキ)共と遊んでて」

 

 恐らくは襲撃だろう。ヘルメットを被ったファッションセンスの欠片も無い不良共が、アビドス高校目掛けてやって来ていると、アサシンクラスからの報告があった。

 アヴェンジャーはアサシンクラスを常に、最低でも一騎は召喚している。

 

「シキ、何かあったのかい?」

 

 アヴェンジャーの保有スキルの一つ、『召喚術:E』。霊体を喚起する召喚術の中でも、特に英霊(サーヴァント)の召喚に特化したアヴェンジャー。魔力消費の激増と引き換えに、彼はサーヴァントでありながらマスターとなれるのだ。

 

「恐らく、襲撃」

 

「し、襲撃!? ちょっと、それを早く言いなさいよ! ていうか、そんなのどうやって──」

 

「アビドスの出る幕は無い。私たちは、先生の護衛。先生を……先生が逗留している、アビドスを襲うと云うのなら──」

 

 それは、私たちの敵だ。

 

「アヴェンジャー!」

 

「!? シキさん、どうして窓から飛び降りて──アヴェンジャーさんも!?」

 

 奥空書記の言葉を横目に、地面と私の距離を計る。

 過ぎ行く風景と、袖を揺らす風の強さ。他の生徒(ヒト)とは違い、神秘(ヘイロー)とやらの護りの薄いこの身は容易に破壊される。

 故、この身が地面に激突し染みと化す。その刹那、視界に割り込む影が一つ。

 

 それは白い衣服を身に纏った、我が最強のサーヴァント。

 

「──戦闘を開始する」

 

 アヴェンジャーと、我が四肢に魔力を廻す。

 魔力を流す事による物質の概念強化。肉体を強化した場合は単純に、その性能が向上する。

 魔眼殺しの眼鏡はそのままに、背負っていた銃器を構える。

 ベルトに吊り下げたナイフを確認し、弾丸を一つずつ装填して行く。使う銃は百花繚乱正式ライフル-魔術礼装改良型。

 

 百花繚乱の不良から奪い取ったライフルをキャスタークラスに改造して貰ったものだ。属性付加や呪詛、魔術的な構造強化で威力を大幅に引き上げた一級品。理論上、戦車をスクラップにできる破壊力を叩き出す。

 

「一度だけ警告する。その場で武装解除し、投降するなら無傷でヴァルキューレに突き出す。抵抗する場合は、装備全てを破壊してヴァルキューレに突き出す。返答や如何に」

 

 無傷で帰る、目的を達成して帰る、と云う選択肢は存在しない。

 傭兵バロール(わたし)が居る以上、一切の失敗はあり得ない。不敗にして無謬たる最強。以来達成率100%。

 その看板が、たかが一介の不良程度に汚せるものか。

 

「ひゃはは! 何言ってんだ、たかが二人でよぉ!」

 

 返答は鉛玉だった。嘲笑と共にばら撒く鉛玉。

 その尽くを、アヴェンジャーがはたき落とす。

 

「承知した。ではこれより、戦闘を開始する」

 

 突出していた一人の不良(ばか)の脳天を撃ち抜いて意識を刈り取り、アヴェンジャーに廻す魔力量を増大させる。

 この程度の雑魚に、サーヴァントも宝具(ノウブル・ファンタズム)も不要なれば。

 

「『分割思考(偽):EX』──霊基主権編制」

 

 彼が保有するスキル『分割思考(偽)』。それは、彼自信の霊基の在り方を指し示す技能の()

 英霊に──幻霊は疎か亡霊にすら届かぬ▓▓▓▓という個人を、英霊の域にまで押し上げる為の、無数の霊。数多の存在が寄り集まって一つの英霊を構築した。

 

 故に獲得した数多の人格。故に宿す無数の能力。

 その中の一人から、スキルを劣化借用する──!

 

「「──明星の導よ!」」

 

 二重に重なって聞こえるアヴェンジャーの声。それは魔術の始まりを告げる詠唱句。天体魔術。天体より力を得る、魔術系統の一種。彼が内包するある霊が修めた、壮麗たる奇跡の業。

 

 それは極光。星光の洗礼。凶運を示す、星光の礫。

 群為す不良共の頭上より、蒼の星光が数多無数と振り注ぐ。

 

「う、うわぁああああ!!」

 

「な、なんだこれ!! ば、爆発!? 手榴弾──いや違うなこれぇえええええ!!」

 

 ぱぁん、ぱぁん、ぱぁん、とアヴェンジャーの魔術攻撃を運よく避けた連中の額を撃ち抜いて意識を刈り取って行く。

 スナイパーライフルの反動も、魔力強化を施した肉体は耐えてくれる。

 

「ど、どうなってんの!? アイツら、幾ら何でも強すぎない!? ていうか、あのビーム……爆発、何なの!?」

 

「アロナ、何か分かる?」

 

『突然、指向性を持った高エネルギー反応が発生して不良達を──ヘルメット団を倒してます! 一体何なんですかあれぇ!?』

 

 爆音と発砲音のただ中であっても、聴覚強化で校内に残してきた先生や、アビドス生の会話はきちんと聞こえる。

 

「「凶運の星よ!」」

 

 追撃に放たれる天体魔術の壮麗なる輝き。

 その一撃で、不良は全滅。アビドスの校庭に散らばる無数の不良すべてへ、保険のために弾丸を一発ずつ叩き込んで行く。

 

 ──完了。全員本当に気絶しているらしい。

 

「戦闘終了。アヴェンジャー、お疲れ様」

 

 アヴェンジャーと手分けして片っ端から不良を縛り上げて行く。

 目的は二つ、尋問とヴァルキューレへの連行だ。

 何故アビドスを襲おうとしたのか。襲ってどうするつもりだったのか。聞き出した後にヴァルキューレへ突き出す。

 

「マスターも。怪我は無い?」

 

 無論、掠り傷一つ無い。魔術をぶっ放し続けていたアヴェンジャーの後ろから狙撃をしていただけなのだから。

 ……最近、直死の魔眼と云う特級のキャラ付けを見失ってる気がしないでもないけれど。

 

「アヴェンジャーくん、シキちゃん、お疲れ様〜。それで、その子たちはどうするのかな?」

 

 いつの間にやら校庭へやって来ていた小鳥遊副会長が、へらへらニコニコしながらそう問うてきた。

 ……何やら含みのありそうな笑顔である。場合によっては、不穏分子として排除する、とでも考えていそうな。

 

 危険を予知し、その排除を厭わない。

 これもまた、最高責任者の素質なのだろうか。

 

「尋問、後、ヴァルキューレへ連行する」

 

 尋問はアヴェンジャーに任せる。私はどうも、その手の交渉が苦手なのだ。そも、ボコボコのボコボコにして、目の前で何やらモノをぶった斬って脅す位しか考え付かない。

 自分でも、尋問対象を酷い目に合わせそうだから、私はやらないと決めているのだ。

 

「そっか〜。何か分かったらおじさんにも教えて欲しいな。良いかな?」

 

「問題無い。得た情報は小鳥遊副会長と先生に共有する」

 

 途端、彼女の眼に剣呑な光が宿る。

 

「……副会長(・・・)? ねぇ、君は一体、何を知ってるのかな?」

 

「アビドス生徒会長の死。そして今なお"生徒会長"の()を継がない、貴方。……何を想っているのか。推察はできる」

 

 アビドス生徒会長の死。

 今なお副会長であり続ける小鳥遊ホシノ。

 大切なのだろう。手放したくないのだろう。忘れ去りたくないのだろう。その過去を。生徒会長の記憶を。生徒会長が居たという事実を。

 

「っ……!」

 

 私には理解し得ない、決して手の届く事の無い郷愁。或いは未練。後悔。呪縛。数多くの言葉を以て示される、人の感情。

 アヴェンジャーならば、理解できるのだろうか。彼女の感情を。

 

「……アヴェンジャーが、全員縛り上げた。私たちは校舎に戻る」

 

 小鳥遊副会長の表情は分からない。この手の情動は、私にはどうにも触れにくくて仕方ない。




『分割思考(偽):EX』
思考の分割。アトラス院の錬金術師が修める人体を演算装置として用いる術。その発生経緯上、偶発的に獲得した多重人格技能。
『専科百般』と同様、複数のスキルを内包し、各スキルをE〜Aランク相当で使い分ける事ができる。
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