直死の魔眼持ちとなんか英霊になってる奴のブルーアーカイブ   作:夜月詠

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帰るべきは何処・その4

 アビドス高校の一角、無理矢理借り受けた空き教室でアヴェンジャーと私はリーダーらしき赤ヘルメットに尋問していた。

 無論、主に尋問しているのはアヴェンジャーだ。私は絶対にやりすぎるから、とアヴェンジャーに止められているし、自分でもその自覚があるので見ているだけ。

 

「だから、知らねぇんだって。あたしたち、アビドス(あそこ)を襲ってこーい、っていうバイト受けてただけで」

 

「なるほど、バイト……襲撃のバイトなんてあるんだ……。で、その依頼主は?」

 

「あー……言わなきゃ駄目?」

 

「困るかな。ヴァルキューレに連行する時に、庇う為の手札が一つ無くなる」

 

 自治区の行政を担う学校に襲撃を仕掛けたのだ。当然、下手人は更生局送りである。しかし、ここで大人しく喋ってくれれば幾らか減刑を願う、とそう云う取り引きだ。

 

「はぁ……どっちみちヴァルキューレ送りだしな……面子も信頼も、あったもんじゃねぇか……カイザーだよ、カイザーグループの。

 言っとくけど、それ以上は本当に知らねぇんだ。あたしたちは、アビドスを襲撃してこい、って言われて兵器やら弾薬やらを渡されただけで」

 

 カイザー。確か、カイザーグループとか云う悪徳企業のトップだったか。……いや、傘下のグループの方のトップだったか?

 どちらでも良い。今、私たちの背後にはシャーレがいる。

 現行犯の白状と、シャーレの強権があれば多少力付くではあるがカイザーグループに突撃できる。後は本人を取っ捕まえて書類の偽造でも何でもして檻にぶち込めばそれで終わりだ。

 

「兵器? ……もしかしてまだ仲間が居るのかな。アジトの位置は?」

 

 その前に、まだやるべき事はある。

 不良共の仲間が居ると云うのなら、根絶やしにしなければ。仕事中の私たちに……シャーレに喧嘩を売った事を後悔させてやる。

 落ちこぼれの不良如きに舐められる、なんて許せる筈が無い。

 

「そりゃ言えねえ。捕まったとは云え、仲間まで売る程落ちぶれちゃいないぜ?」

 

「問題無い。あなたの舎弟の、忠誠も仲間意識も無さそうな奴を一人、解放して追跡する。不良なんて落ちこぼれ、どうせ追跡の可能性も考えずにアジトに戻り復讐を計画する」

 

 それに、アサシンクラスを何騎か召喚して貰って探索して貰えれば良い。所詮は生徒(こども)。その中でも落ちこぼれ、ドロップアウト組の不良だ。歴戦の英雄からすら隠れられるほどの隠蔽技術を持ち合わせているものか。

 

「エッ」

 

「アヴェンジャー、後は任せる。……拷問は程々に」

 

 アヴェンジャーの人当たりはとても良い。何か勘違いでもされると困るので、赤ヘルメットに脅し文句を一つ叩き込んでおく。

 すると、見る見る間に彼女は青褪めた表情になって行き次第にはプルプルと震え始めた。

 

「しないよ!? オレそんな事しないからね!? ちょっ、シキ!? ……って、キミも本気にしないでね!」

 

「フッ……一つ、言っておく。彼の拷問技術は凄まじい。……腕の一つや、尊厳は、諦めた方が良い」

 

 くく、愉快愉快。たかが不良如きが、私のアヴェンジャーと対等に話せると思ったら大間違いだ。

 これからの尋問は、いつ拷問に切り替わるのか怯えながら受けていると良いのだ。

 

 置き土産を置いて教室を後にすると、脳内にアヴェンジャーの声が響き渡る。念話だ。やれ、どうしてあんな事を言ったのかなぁ!? とか、凄く脅えてるんだけど!? とか何とか、色々と喧しい。

 

「アヴェンジャー、煩い」

 

 と、一言アヴェンジャーに返して意識を逸らす。

 廊下を歩む脚の、その踵に感覚を集中させて、努めて念話から意識を逸らす。暫くそうしたまま歩き続け、対策委員会の部室前に到着すると共に、アヴェンジャーも諦めたのか念話が途絶した。

 私の勝利だ。

 

「先生、連中の雇い主が──ぐぶ……!」

 

「──私は認めない! って、ちょ──!?」

 

 扉を引き開けると共に、向こうから黒髪猫耳の黒見会計が飛び出してきた。非戦闘状態、と云う事もあって身体強化を切っていた私はそれを回避しきれずに、彼女が仕掛けた奇襲と正面衝突した。

 

「き、貴様、黒見会計ッ……! こ、この私に、奇襲を……!」

 

「大丈夫!? シキ!」

 

 大丈夫な訳があるか。私の身体は弱い。それはもう弱くて貧弱だ。魔力による強化が無ければ10キロにも満たない徒歩移動で疲労困憊になって暫く歩けなくなる程。

 その上、神秘(ヘイロー)とやらの護りが酷く薄いのだ。先生と同じ様に……生前のアヴェンジャーと同じ様に、弾丸一発が致命となる。

 

 私が持つ円環(ヘイロー)は、殆ど飾りだ。

 他の生徒が防御や攻撃の強化に裂く分の神秘(リソース)を、私はアヴェンジャーの維持に……魔力の捻出に割り当てている。

 故に、素の状態では私は貧弱な小娘に過ぎない。

 

 どれくらいの貧弱さかと云えば、貧相な小娘(黒見セリカ)の当身一つにも耐えられない程だ。クソ雑魚である。本当に。

 

「く、黒見セリカぁ……! いつか、いつか復讐してやる……復讐者は、決して忘れない……ぃ! きゅう……──」

 

 意識が真っ暗闇に落ちて行く。

 ──アヴェンジャー、あの小娘はしばき倒して縛り上げた後、校門にでも吊り下げておいて欲しい。

 ──え、拒否? 待って、アヴェンジャー、復讐を──きゅう。

 

『……先生、シキさんは、もう完っ璧に気絶してます。流石少数精鋭のアビドス生ですね』

 

「……さ、流石だね、セリカ……君は、意識を刈り取るのがとても上手い!」

 

「褒め方が下手! って、それより! ねぇ、起きなさないよ! ちょっと! ごめんってば!」

 

「ん、セリカ。取り敢えず、ソファにでも寝かせるべき。そうすれば、取り敢えず言い訳は効く」

 

「言い訳って何の!?」

 

「まぁまぁ。さ、シキちゃんをソファに寝かせてあげようよ〜」

 

 

 ◇

 

 

 復帰した。ので、早速黒見セリカを詰めようと思う。

 返答次第では服を剥いた後で校門に吊るし上げてケジメをつけさせてやる。

 

「……それで? 先生を……アビドスを護って、あげた、この、私を。何の由あって奇襲した? 返答次第では、服を剥いた後で校門に吊るし上げる」

 

「奇襲っていうか……事故っていうか……」

 

「つまり、貴様は、接触事故を起こした、と。そういう事? アヴェンジャー、慰謝料は何処に請求すれば良いと思う?」

 

 取り敢えずは監督責任のあるアビドスか。

 アビドス生徒会──小鳥遊ホシノ──にクレームを入れて、それはもう長々と嫌味と苦情を言ってやる。

 絶対にネチネチと復讐してやる。

 

「咄嗟に避けなかったマスターも悪いんじゃないかな。……あ、咄嗟に避けられなかったんだ……それは、ごめんね」

 

 不都合な事を口にするな、とアヴェンジャーに目をやる。

 

「全く。小鳥遊ホシノ、貴方の後輩はどうなってるの? こんな校内で……それも、部屋の入り口で接触事故を起こすなんて。一体全体、どういう教育を──」

 

「うへへ……ごめんねぇ、シキちゃん。おじさん、きちんとセリカちゃんを叱っておくから許してよ〜」

 

 正座する小鳥遊ホシノと、その後ろあたりで顔を真っ赤にしてプルプル震えながら正座する黒見セリカ。

 

「くっ……!」

 

 どうやら私の説教が堪えているらしい。ので、ダメ押しに更に言葉を紡いで行く。滔々と溢れ出す無数の言葉と共に、やれ不注意が、とか謝罪が、とか。もうどんどん言って行く。

 段々楽しくなってきた。

 

「……先生、皆。なんか大丈夫っぽいからオレたちは不良達のアジトの制圧に行こうか。リーダーの子の自白通りなら、この位置にアジトがある筈だ」

 

 流石はアヴェンジャー。しっかりとあの赤ヘルメットに白状させたらしい。けれど、私も行きたいのでもう少し待ってほしい。

 

「そうだね。行こうか」

 

「ん。今度はアヴェンジャーに、私たちの戦いを見せてあげる」

 

「そうですね! 行きましょう行きましょう!」

 

「え、えー……良いのかなぁ、シキさん達をあのままにしておいて……」

 

 あ、私を置いて本当に行くんだ。




この主人公、ひょっとしてカスなのでは?
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