直死の魔眼持ちとなんか英霊になってる奴のブルーアーカイブ 作:夜月詠
「お帰り、アヴェンジャー。収穫は?」
「兵器を鹵獲したよ。オレの方で幾つか確保したから、それはシャーレに買い取って貰うとして……ざっと、この位になるのかな?」
アヴェンジャーが何処からか取り出した電卓をポチポチと叩いてその画面を見せてきた。多分、サーヴァントが魔力で武装を編み上げる要領で構築したのだろう。
確か、彼の『分割思考(偽)』が内包するスキル群にAランク相当の『道具作成』や『魔術』が有ったからそちらかも知れない。
「今回の弾薬費は回収できる、ね」
百花繚乱正式ライフル。その弾丸は特殊では無いとは云え、一つの学園が正式に学園指定としたモノだ。闇ルートで手にしようとすれば、無駄に金が掛かる。
そこにキャスタークラスの『道具作成』を施せば、その材料も必要になってくる。魔術は金が掛かるのだ。
「皆お疲れ様〜。何か収穫はあったのかな?」
「ん。不良を捕まえた。……賞金は掛かっている無いから、何の足しにもならないけど」
しょうもない不良はこう云う所が面倒なのだ。
大した事をやってないから賞金がかからず、真面目に刈り取りに行く方がコストが掛かる。本当に、雑魚くてカスい不良は面倒なのだ。
「先生に売り払えば良い。ヴァルキューレが値を付けなくとも、シャーレは少額だけどまともな謝礼を出してくれる」
ヴァルキューレに突き出すとそうなるので、最近は先にシャーレに突きだしている。私たち→シャーレ→ヴァルキューレと云う風に、途中にシャーレを挟む事で先生が謝礼金を支払ってくれるのだ。
まぁ、ネームドの不良もモブ不良も同じ額なのでネームド不良はヴァルキューレに突き出した方が美味しくなる。
ネームドの不良はそのままヴァルキューレに突き出し、雑魚いモブ不良はシャーレに突き出す。これが賞金狩りのライフハックだ。
「なるほど。先生、不良達を買い取って?」
「シキ、シロコに変な事を教えないで。シャーレがそう云う取り組みをしてる訳じゃないんだよ?」
「キヴォトスの為に、シャーレが予算を割いている。だから問題無い。アビドスも、雑魚不良を狩った時はシャーレに連行すべき」
飽くまでも、キヴォトスの現状に嘆いた先生がキヴォトスの平穏と秩序の為に、個人的に報奨金を出してくれるだけだ。
「はぁ……またリンちゃんに……」
「私が補填しましょうか?」
あれはゴールドカード……だと!? 馬鹿な、こんなキヴォトスの辺境にあんなクレジットカードを持った御令嬢が居るなんて。
十六夜ノノミがネフティスの縁者だった、と云うのは真実だったのか……!
「いや、良いよ。私がリンちゃんに怒られれば済む話だからね。ノノミ、気持ちだけ受け取っておくよ。ありがとう」
ゴールドカードの誘惑を断ち切るとは。先生も中々の人物だ。
あの魅惑の輝きの前ではこの私ですら、ギリギリまで迷うと思う。
「……と。大事な事を思い出した。アビドスの借金、9億。あれは本当なの、億空──違った──奥空書記」
別に大金に引き摺られた訳では無い。
「奥空の何処で間違ったんですか? ……あ、いえ。アビドス高等学校が抱える借金、その総額9億6235万は間違いなく、事実です」
一体何処でそんな額の借金を作ったんだ。と云うか、担保や信用は──あぁ、だから、か。
アビドス自治区の地権、その殆どが、最早アビドス高等学校の手に無いのは。土地を担保に金を借りたのだ。
「……先生は、どうするつもり? シャーレの予算を割いて、債権者の名を書き換えるのか、はたまた債権者を抹殺して借金そのものを無かった事にするのか」
土地を担保に金を化す。それはまぁ普通の事ではあるが、ここはアビドス。キヴォトスの辺境、何の取り柄も無い砂漠と廃墟の墓場の如き世界。この土地に、9億もの価値は無い。
例え、自治区の殆どを一企業が掌握できたとしても、無茶はできない。そんな無法を連邦生徒会が許す訳が無い。
アビドス高等学校が正常に行列を行えなくなった、と連邦生徒会が判断すれば行政権は剥奪、地権を接収するだろう。
何かしらの裏がある事は確実だ。
「どうせ悪徳企業。叩けば埃が幾らでも出てくる。証拠なんて後付けの捏造でも、正当性は生えてくる。襲撃し、無茶苦茶にしてしまおう」
法を守らない、と云う事は法に守られないという事でもある。
真っ当に生きていないから、真っ当に生きていない奴に狙われる。法を盾に、正義の名の下に身を守りたいなら真っ当に生き続けるべきなのだ。
「マスター……一体なんでこんな性格になっちゃったんだ……」
「アヴェンジャーの教育が悪かったんじゃないかな?」
「……オレと出会ったばかりの頃からこんな性格なんだよね」
「じゃあ素なんだ。素でこの性格なんだ」
大人達が煩い。人の性格についてとやかく云わないで欲しいものだ。
「煩い、散れ散れ。……それで、本当にどうする腹積もり?」
「……シキとアヴェンジャーはどうするのが良いと思う?」
「襲撃」
「金策、かなぁ。オレも昔は色々やったなー」
マスターは契約したサーヴァントの記憶を、夢として見る事がある。私の場合は、夢を見る頻度が特に多い。
アヴェンジャーの様に無数のサーヴァントと契約しているのでは無いと云うに、私は何度も夢を見る。
特に、何でもない旅の一幕を夢見る事が多い。
苛烈な彼の旅路。その中にあった、一時の安らぎ。違うサーヴァントと、何時も一緒に居た後輩と。幾つもの記憶の中で、一等輝く星の様な記憶。
その中には、金策に四苦八苦していた彼の記憶もあった。
宝物庫を襲撃したり、カジノを襲ったり、カジノで大勝したり、金ピカの人からカツアゲしたり、宝箱を山程空けたりしていた。
……こうして口にすると、彼の金策も大概だと思う。
「アビドスは何かない、の?」
「ん。銀行強盗。計画は完璧」
「スクールアイドルです☆」
「バスジャック〜。身代金も良いし、そのままウチの生徒にしちゃって〜……うへへ……」
「ゲルマニウムネックレス! これを──」
終わってる。先生もアヴェンジャーも私の性格をとやかく云うけれど、アビドスの生徒も大概終わってる。
銀行強盗に拉致──多分身代金目当て──と、
本当に終わってる。借金で首が回らなくなって狂ったのかも知れない。マトモなのは奥空書記だけなのか。
「先生」
「あはは……何か、手を考えないとね」
呆れている内にふと、黒見会計が何処かへ姿を消している事に気が付いた。小鳥遊副会長が言うには『セリカちゃんは最近放課後になると何処かいっちゃうんだよね〜』との事だ。
バイトだろう。アサシンクラスからの報告では、黒見会計は柴関というラーメン店でアルバイトをしているとあった。
大方、アビドスの連中に隠れてこっそりと金策しているのだ。
ゲルマニウムがなんだと言っていたが、アレは冗談か何かなんだろう。アルバイトで真面目に借金を返そうとしているのだ。
実にマトモである。……それで一体何百年掛かるのか、という話だけども。
宝物庫を襲撃したり、カジノを襲ったり、カジノで稼いだり、英雄王を絞ったり、箱イベ回したりと色々やったよね