絢爛!エルフィンドールズ   作:えびたこ

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ガウン。

パンツ(タイツ)1枚の男たちや水着姿の女たちが入場時に纏うガウン。

まあ、ジャンパーやジャージ、チョッキ、中には鎖を纏っていたものもいたが。

ともかく、あっという間に脱がれるガウンだが

しかし、それを脱いだ時から試合の高揚感が一気に高まるのだ。

※ コミカライズ版オルクセン王国史の更新に伴い、今回からコミカライズ版はいままでの19話既読から20話既読の方向けとさせていただきます。まだ未読の方はメチャクチャ面白いコミカライズ版20話を先に読んで頂けるとよろしいかと思います。



第11試合 ファルマリア新国家記念祭

 

 

 レッドマスクの登場でとんでもないブック破りとなったオルクセン納涼ビアガーデンの旗揚げ興行だったが、その後のオルクセン女子プロレスは順調だった。エッダ軍曹のエースへの道な長期シナリオも順調に進み、冬には地上最強のオーク、ゾフィーからついに3カウントを取ってひと段落、それからはゾフィーの逆襲、逆襲からの最強タッグ結成と見事に進んでいる。

 

 他の選手たちも皆順調に育ち、ミーとゼッツのしょっきりは、最後のみガチンコの戦いになる新しいムーブへと変わった。エルフィンドールズのふたりは新しい空中技を次々と開発し、さらに観客を魅せる動きとなっていた。まあ当然ふたりの負けブックは多いのだが。

 

 リングを馬車で運んでの地方巡業も多々実施された。もちろんオルクセンの主力交通機関である鉄道でもだ。冬の寒い体育館で焚火をしながらの興行もあり、場外乱闘では外の雪に頭から突撃した選手も出すなど、地方の特徴なども試合に混ぜ込み、順調にプロレスはオルクセン王国に溶け込んでいったのだ。

 

 そして春、とても重要なイベント参加の話が持ち上がった。ファルマリアで行われる新国家記念祭のトリをオルクセン女子プロレスに任せたいとの話が参謀本部から来たのだ。

 

 エルフィンドの王室、旧政権が退き、オルクセン王国、グロワール帝国、キャメロット連合王国、各国の監視下に行われた選挙によって、エルフィンド自由党が政権を取り、首相が任命された。退位する女王の最後の仕事がこのファルマリア新国家記念祭となっていた。なお新国家はシンプルに『新エルフィンド国』という名になった。エルフィンドの名を捨てさせるコトに固持したオルクセンの軍幹部も多かったが、特にキャメロットからの後押しが強く『新エルフィンド国』で決定された。

 

 

 警備の関係上、グスタフがエルフィンド新首相および女王と会うのには、現状オルクセンが統治しているファルマリアが最適だろうというコトとなり、この地でオルクセンとエルフィンドの新しい友好条約の調印式を行うコトとなり、その付属行事として『ファルマリア新国家記念祭』という名のイベントが開催される運びとなったのである。なお、このイベントを持って退位するエルフィンド女王は完全に市井の人となる。

 

 

 ディネルース・アンダリエル少将は今までで最大の警備体制を敷く必要のある中でオルクセン女子プロレスの興行を行うのは極めて厳しいと思ったが、エルフィンド側からのたっての希望であり、我が王グスタフも『エルフィンドールズがファルマリアのリングに立つのは素晴らしいコトだ。プロレスと政治には深い縁がある。政治の世界に入って、難問の外交問題をひとりで解決したレスラーも存在したほどだ』などと好意的に受け止めていた。

 

……またディネルースの酒量は増えた。

 

 実際にはシナリオライターの作戦参謀、ラエノアル・ケレブリン大尉と兵站参謀兼レフリーのリア・エフィルディス大尉がオルクセン女子プロレスの興行準備と当日進行を受け持ち、我が王の警備は特別警備班がビアガーデンの時のように動き、ディネルースはダークエルフ代表としてリングを囲む宴席での来客の接待役となったのだが。

 

 調印式などは旧エルフィンドの陸軍施設、現オルクセン陸軍ファルマリア駐屯地で行われ、オルクセン女子プロレスの興行はイベントの屋台の並ぶ、港近くの大きな倉庫を使用するコトとなった。殺風景な倉庫だが、多くの市民を集めたいというエルフィンド側の意向で、ファルマリアで一番広いこの建物となったのだ。

 

 リング近くには丸テーブルを並べた宴席を作り、その外には一般客用に東西北側に階段状の席が仮設された。残った南側だけは一番高い大きな壇を並べた貴賓席となり、我が王グスタフ、エルフィンド新首相、旧女王が並ぶ形となった。これで収容人員はオルクセン女子プロレス過去最大の興行になる。素晴らしい会場(ハコ)が用意された。

 

 

 そして当日、昼過ぎから観客が入り始めた。観客の中にはチカたち孤児院の子供たちとか港湾労働者組合の面々などがいた。

 

 太陽が傾き出したところから試合が開始された。ミーとゼッツのしょっきりから始まり、どの試合もウケた。特に大鷲で吊る方式から背中に『スクランブー』という名の羽根……というか実際はマスクをした大鷲なのだが、大鷲との合体(背中の棒をつかむ)が出来るようになって、倉庫内を飛び回ったり、リングで幾分か動けるようになった『ジャイアントオークキング』改め『グレートジャイアントオークキング』は子供たちに大ウケとなった。

 

 最終試合、メインエベントにはゾフィー・エッダ組対エルフィンドールズのタッグ戦が用意された。オークとダークエルフのタッグと白エルフが戦う構図は戦争をイメージさせるもので、新国家記念祭の名に相応しくないという意見も出たが、だがそれが良いのではという話になった。しかし試合の最後にはオルクセンの王グスタフへの礼として戦争を模してオルクセン組、ゾフィーとエッダの勝利で締めるというブックが書かれていた。

 

 ビアガーデンの時と同様だが広くなった大きな天幕の控室で座ってブーツの紐を結んでいたマリンとニコの前に、体と同じぐらいある大きな袋を引っ張って来たミーとゼッツが現れた。

 

「コレ、作って来たけど着てくれない?」

 

「似合うと思うのだけどねぇ」

 

「うわぁ、これ凄い!」

 

 ミーとゼッツの話から袋を開けたマリンが驚いた。中に入っていたのは背に大きな羽の形に多数の白い羽根がついた白いガウンだった。ニコがゼッツに聞く。

 

「これは?ふたりが」

 

「いいえ、皆で作ったの。工兵の皆とか、今日戦うゾフィーたちとか。大鷲軍団にいる知り合いの、田舎の金物店の息子に頼んで大鷲さんたちの羽根を集めてもらって、皆で染めて」

 

「えぇ、大事な羽根を……そして皆で……」

 

「今日は故郷での凱旋試合でしょ、マリンとニコの知り合いもいっぱい来てるんだし、派手に行きましょう!」

 

 ブーツの紐を締めたマリンとニコはガウンに袖を通した。羽には型崩れしないように針金で型が作ってあり、ふたりが着ても綺麗な羽根が生えたように見える。

 

「あとはコレを!」

 

 工兵のひとりが同様に白い羽根が2本ついた髪飾りをふたりの頭に載せた。

 

「似合う似合う!」

 

「元が美人さんだからねぇ、これは観客にウケるわ」

 

 回りの皆からも声がかかる。

 

「ありがとなぁ……でも、俺たち今日も負け役なんだぜ?!」

 

「だからこそ、登場の時ぐらい豪華絢爛でいいじゃない!」

 

「いつも負け役やってもらっているお礼だから」

 

 マリンのぼやきにミーや工兵が言う。

 

 

 ガス灯やランタンの多くに火がともった。さあ、ファルマリア新国家記念祭の最後の試合、メインエベントが始まる時が迫る……

 

 

「それでは最終試合の前に一旦休憩を挟みます、皆さま御用があれば先に済ませて下さい」

 

「ジャン!たまには寄合に飲みに来いよ~」

 

 客席の港湾労働者組合のオークたちからメガホンでアナウンスしたジャンに声がかかる。ジャンの父の店、ベルナール商店の荷もここで多く扱われていたし、荷役としてマリンとニコを連れて来たのもジャンなので港湾で働く人間の間でも有名だったのだ。

 

「最近、あまり飲めない親父のトッドばかり寄合に来ていたのはジャンがこれやりだしたからか」

 

「まあ、前からしゃべりは得意だったからな、天職じゃないか」

 

 色々と話があがる。

 

 

 そんな中、港湾労働者組合の強面のオーク……いや、組合長が瓶を抱えて我が王グスタフの元に歩いて行った。警護班のダークエルフが止めようとするのをグスタフが制した。

 

「何かあったのかね」

 

「ああ、この港の港湾労働者組合長で御座います。本日は我々の港にお越しいただきありがとうございます。不躾ではありますが、組合の皆で用意した火酒をお持ちしました」

 

 組合長と名乗る男は透明な酒瓶をグスタフの前に置いた。

 

「そうか、君たちがファルマリアに来て働いてくれて今日があるのだな、有り難う!」

 

 そう言うとグスタフは警護の者に酒瓶の封を切らせ、自らコップに注ぎひとなめした。

 

「おお、これはうまい酒だ。ただワインを飲みすぎたわたしにはちょっと強いな。すまんがあそこにいるオルクセン女子プロレスの責任者にこの酒を分けてもよろしいだろうか?」

 

 そう言ってグスタフはディネルースのほうを向いて酒瓶を掲げた。ディネルースは何事かと小走りで貴賓席に向かった。

 

「少将、彼は港湾労働者組合の組合長だそうだ。火酒を持ってきてくれたので飲まないか」

 

「港湾労働者組合の……この会場の設営や荷物の移動で皆に苦労をかけたと思う、ありがとう」

 

「いやいや、俺たちの仕事ですから!それよりジャンやマリンとニコをよろしくお願いいたします」

 

「ジャンにマリンやニコも知っているのか」

 

「ジャンの店の荷の仕事もしていたし、マリンとニコは同じ釜のパンを食った仲間です。今は白エルフも多く働いておりますが、あいつら程働く奴はいないので返して欲しいくらいです」

 

「もうオルクセン女子プロレスのエース格のふたりだから返せはしないが、本当にいい仕事をするふたりだ、今日も皆で応援してやって欲しい」

 

「勿論です!それでは俺たちの火酒、楽しんで下さい!」

 

「ありがとう、喜んでご相伴あずかるよ」

 

 ディネルースがそう言うと、組合長はジャンのほうに歩いて行った。

 

「よお、ジャン!元気にしていたか?」

 

「はい、組合長、お久しぶりです」

 

「なんか、いい仕事見つけたみたいだな、親父さんは?」

 

「今日は買い付けの出張でどっか行ったみたいで。仕事見せたかったのですけどね」

 

「そうか、残念だな。ところで皆で我が王のために買った火酒を王があの姐さんに渡したのだけど、姐さん飲めるクチかい?」

 

 そう言って組合長はディネルースのほうを指さした。

 

「ええ、そりゃ……って、俺たちの火酒って、もしやあの酒ですか?」

 

「そりゃもう、勿論お前が俺たちに紹介してくれたあの酒だよ。」

 

 ジャンは恐る恐る席に戻ったディネルースのほうを見直した。ディネルースは当然のように腰に手を当てて酒瓶をラッパ飲みしていた。

 

 ジャンが知る限り、この世で一番アルコール度数の高い透明な火酒を……

 

 

※ アルコールのラッパ飲みは鍛えられたエルフだけがなせる技です。決して真似するコトのないよう、お願い致します。

 

 

~ つ づ く ~

 

 

 




さあ、本作メインエベントのはじまりです。

おそらく、あと2話で完結するのではないかと思います。

まあ、説明するまでもなく、次は惨劇になるかと思います(笑)

そんな中でエルフィンドールズは地元の仲間たちに、孤児院の子供たちにいい試合を届けられるのか?

次回も応援の程、よろしくお願いいたします!
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