絢爛!エルフィンドールズ   作:えびたこ

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貧乏になるオルクセン王国、その貧乏にダークエルフたちは自分の身を売る決意をする。

何に?戦いにだ。


だが万事物事は簡単には進まない、すぐに挫折はやってくる。

頼るべきは我が王、グスタフ・ファルケンハイン!

これは我が王が昔、あれを愛していたという空想の物語!


第2試合 アンファングリア-アインス

 

 

 エルフィンド王国からダークエルフの移住に掛かった費用も回収されることにはなった。ただ、今後の生活については難問となる。オルクセン王国は戦時よりはるか前までの軍備縮小を各国に望まれてしまった。素直に軍備縮小するほどオルクセンも愚かではなかったが、縮小のポーズを取る必要が出た。そのしわ寄せは正規軍であるが一番歴史が浅いアンファングリア旅団に真っ先に降りかかり、あっさりと予算縮小が為されてしまった。アンファングリア旅団は縮小か経費節減が必要だが、縮小など出来るワケもなく、副業による補填がないと生活レベルの維持は困難となった。当然旅団あってのダークエルフたちなので兵ではない民も厳しい生活になってしまう。

 

 アンファングリア旅団の団長であるディネルース・アンダリエル少将は誰にも、我が王グスタフにもアンファングリア旅団への風当たり、居心地の悪さの理由を聞いてはいなかった。当然我が王グスタフからも話はなかった。あの追撃の場に記者がいたコトも知らされてはいなかったが、戦争の終わりのタイミングでなんとなくは色々と感づいていた。平和の中で彼女の火酒の量は日を追うごとに増えて行った。

 

 もちろんダークエルフたちも少なくなった軍の運営費を賄う方法を多方面で模索した。ただ野菜などの農作物はどう頑張ってもダークエルフの胃袋を賄う分が精いっぱい、パンなどについても民間に卸せる量などたかが知れていた。旅団は騎兵が中心だったから騎乗体験なども行った。木彫り細工やおもちゃなども作って売った。だがしかし……

 

 

「もう拳奴でもやるしかないのでは?」

 

 騎兵第一連隊長のアーウェン・カレナリン中佐が言った。

 

「ほう、私とやるか」

 

 山岳猟兵連隊長のエレンウェ・リンディール中佐が言う。

 

 もはや残っているのは徒手空拳だけなのだ。

 

「やってみましょうか、それ」

 

 砲兵大隊長のフレダ・メレスギル少佐が言う。本当に彼女たちに残っているのは徒手空拳だけなのだから仕方ない。そして少しの時を経て、ヴァルダーベルクの体育館にてアンファングリア旅団の格闘大会である『アンファングリア-アインス(略称A-1)』が開催された。

 

 体育館の床にマットを敷いた周りを観客が立ち見する簡易な中で、軍服の上を脱いだ姿での徒手空拳の戦いを行った。案外と試合は好評だった。当然、もとよりしっかり武芸は訓練している。殴る蹴るの立ち技も、投げたり関節を決めたりもなんでもあり、勝ち負けは10カウントで立てるかどうかだけのシンプルな方法で決めた。

 

 ヴァルダーベルクの酒場に張ったポスターと口コミから軍部以外の観客も思ったよりも多く来てくれた。騎兵第一連隊長のアーウェン・カレナリン中佐と山岳猟兵連隊長のエレンウェ・リンディール中佐の壮絶な殴り合いは伝説の試合と言われるようになったほどだ。試合はアーウェン・カレナリン中佐が強烈な右フックで勝利した。

 

 A-1は月一回程度のペースで開催されたが、ここに無理があった。腕自慢達が戦う中でケガはつきものだが、なにせ多すぎた。骨折者も必ず数名は出ていた。エリクシエル剤と包帯などの消耗が激しく、平時の半年分が三週で消えた。いつも笑顔で皆に愛されている兵站参謀のリア・エフィルディス大尉はいつもと違う笑顔で隊の診療所に入院した腕自慢たちを見舞った。腫れに腫れてどす黒くなった目を眼帯で隠し、全身包帯ぐるぐる巻きで片足を吊ってベッドに寝ていたエレンウェ・リンディール中佐は「人生で一番恐ろしい笑顔を見た」と後に語ったという。彼女にそう見えただけかもしれないが……

 

 凄惨な試合は会場から子供、家族連れの客を失い、いつしか軍部の者ばかりが残る形となっていた。当然に収益も減り、『やはりダークエルフは野蛮だった』という評判ばかりが増えて行った……

 

 

 当然、団長であるディネルース・アンダリエル少将も頭を抱えた。そして彼女は我が王ことグスタフとのある夜の一時、こうこぼした。

 

「そんなこんなでケガ人ばかりだ。私たち(ダークエルフ)は血の気が多いというか、私の教育が悪いのか……もはやエリクシエル剤購入のために戦っているようなものだ」

 

 我が王は言う。

 

「勝ち負けに注視しすぎではないのかね?それより長期に渡り観客に受けるストーリーを付けたほうが良いのではないだろうか。弱い者が勝ち上がって行く様を魅せたり、悪しきものが心を入れ替える様子などを……子供にも楽しめる形で」

 

「私たちに八百長をやれと?子供の演劇をやれと?」

 

「八百長か……確かにそんなコトを言う奴もいた。でも鍛え抜かれた身体と技のぶつかり合いを真面目に見せれば大多数の観客はきっとついてくる。ついてきてくれるハズなのだ!」

 

「そんなコトを言う奴もいた?まさかあなたの元いた世界にもそんな催しが?」

 

「……ああ、それはプロ・レスリング、いやプロレスと呼ばれていた」

 

 ディネルースは数夜に渡って我が王グスタフからプロレスのなんたるかを聞き、ぶ厚い黒革の手帳にびっしりとメモを取った。後にグスタフノートと呼ばれるそれの、最後のページにはこう記された。

 

「プロレスとは鍛えられた者たちのメルヘン。それは戦うもの、レスラーの心技体と観客のあたたかさで出来ている」

 

 メルヘンとは低地オルク語で物語、特に民間伝承を主とした童話を指す言葉である。ダークエルフの旅団はレスラーと名乗り、伝承を、新たな童話を自らの身体で民に届けるための旅に出るのである。

 

 

 

~ つ づ く ~

 

 




我が王は某ラーメンハゲ程度にはあれを愛していたのだと思っています。

さて格闘技編はさらっと終わりました。少し残念です(笑)

個人的には立ち技も総合格闘技もプロレスも大好きです。

札幌開催のK-1は観にいったし、さいたまへPRIDE観に行って幸運にもあの人に握手してもらったのは素晴らしい思い出。

でもプロレスも好き。プロレスの重力から離れられないレスラーもファンも大好きです。

「プロレスとは鍛えられた者たちのメルヘン」ずっとそう思っていました。

メルヘンはドイツ語、グリム童話は低地ドイツ語のお話。これも縁ですね。
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