目が覚めたのは、まだ夜明け前だった。
窓の外は薄暗く、東の空がほんの少し青みを帯び始めたばかり。耳を澄ませば、遠くから大型の子たちが歩く足音や、ワイバーンの翼が動く音が聞こえてくる。
どうやら、夜の間も外周を見回っていた子たちが戻ってきているらしい。
最近では内門の自動開閉も安定してきたので、夜間も外門を開けておくことが増えていた。周辺の警戒は続けているし、居住区へ直接入り込めないようにもしてあるので、今のところ大きな問題は起きていない。
夜に活動する子も、朝早くから出かける子も、それぞれ好きな時間に出入りできているようだった。
「んん……もう朝?」
小さく伸びをしてからベッドを抜け出す。
ここで眠るようになって、もう何日かが経っていた。最初は何となく落ち着かなかった部屋も、今ではすっかり見慣れている。机には昨日使った地図が広げてあるし、棚には外で拾ってきたものを入れた小箱も置いてあった。
こうして少しずつ自分のものが増えていくと、本当にここで暮らしているんだなぁ、なんて思えてくる。
そんなことを考えながら窓へ近づくと、大きな紫色の顔がひょっこりと覗き込んできた。
「わっ! もう、シルヴィア!」
驚いて声を上げると、シルヴィアは嬉しそうに喉を鳴らした。どうやら私が起きるのを待っていたらしく、目が合った途端、もっと近づこうと鼻先を伸ばしてくる。
「おはよ、シルヴィア。朝から元気だねぇ」
窓から手を伸ばして鼻先を撫でると、シルヴィアは満足そうに目を細めた。
「ねえ、いつからそこにいたの? まさか、ずっと待ってたとか言わないよね?」
大きな瞳が、きょとんとこちらを見つめてくる。
「そんな顔されても分かんないよ。ちゃんと寝てるならいいんだけどさ」
心配になって尋ねてみたものの、返ってくるのはごろごろという喉の音だけだった。
まあ、これだけ元気なら大丈夫かな。
私はもう一度シルヴィアを撫でてから窓を離れ、身支度を整えることにした。
◆
部屋を出ると、拠点ではすでに朝の活動が始まっていた。
最初に向かったのは小型組の区画だった。まだ寝床で丸くなっている子もいれば、起きて餌場の周りを歩き回っている子もいる。近くではモスコプスが眠そうに身体を起こし、大きな欠伸をしていた。
「みんな、おはよー。あ、まだ寝てる子もいるか」
声を少し小さくすると、起きていた子たちがこちらを向き、あちこちから小さな鳴き声が返ってきた。
私は近寄ってきたドードーの頭を撫でながら、餌箱と水場を順番に確認していく。食料は十分に残っているし、水も問題なく供給されていた。床には少し草が散らばっているけれど、怪我をしそうなものは落ちていない。
「うん、今日も大丈夫そうだね。って、あなたは何してるの?」
ふと足元を見ると、ドードーの一羽が私の靴紐を引っ張っていた。
「こらこら、それ食べ物じゃないよ?」
しゃがんで靴紐を取り戻すと、ドードーは不思議そうに首を傾げる。どうやら、何か面白いものを見つけた程度にしか思っていないらしい。
「もう、何でもつつくんだから」
思わず笑いながら頭を撫でてやった。
そんなことをしているうちに、起きている子たちも少しずつ増えてきた。何羽かのドードーは早くも出入り口の方へ集まり、外へ出る機会をうかがっている。
「はいはい、外に行きたいのね。いいけど、いつもの草地までだよ? 森の方はまだ駄目だからね」
そう声をかけると、一羽がぴっと短く鳴いた。
「うん、いいお返事!」
どこまで理解してくれているのかは分からないけれど、最近では決めた範囲を大きく外れる子も少なくなっていた。何度か危ない場所へ入りかけたことはあったものの、そのたびに連れ戻しているうちに、少しずつ覚えてくれたのかもしれない。
ひと通り様子を確かめて通路へ出ると、向こうから主任が歩いてきた。
「あっ、主任! おはよー」
ヘルメット姿の主任は、いつものように片手を上げてくれた。その腕には何枚かの木の板が抱えられている。
何に使うのかと思って近づくと、どうやら水場の周りに設置する滑り止めらしかった。
「あ、それ、この前言ってたやつ?」
水場の床は濡れやすいので、小型の子たちが滑らないようにしたいと思っていたところだった。
「もう用意してくれたんだ。仕事早いねぇ、主任!」
主任は返事の代わりに、もう一度片手を上げた。
「ありがと! あとで一緒につけようね」
相変わらずのんびりした反応だけれど、最近は本当にいろいろと助けられている。以前は面白半分で被せたヘルメットも、今ではすっかり仕事道具の一部みたいになっていた。
本当に主任になっちゃったなぁ、この子。
◆
正門へ向かう頃には、東の空もすっかり明るくなっていた。
外門は開いていて、小型の子たちが少しずつ草地へ出ていく。日当たりのいい場所にはドードーが集まり、モスコプスも気に入った場所で草を食んでいた。
採取組の子たちも、朝からそれぞれの持ち場へ向かっているらしい。カストロイデスたちは森へ、アンキロサウルスは岩場へと歩いていき、その少し後ろには護衛役らしいティラノサウルスの姿もあった。
「おー、みんな朝から頑張ってるねぇ」
最近では、こうした光景もすっかり見慣れたものになっていた。
採取組が出かけると戦闘組が自然とその後ろについていき、疲れた子は戻ってきて休む。外が好きな子は日向ぼっこを楽しんでいるし、寝床でのんびりしている子もいる。
まだ私が確認しなければならないことは多いけれど、みんなも少しずつ自分たちで動くようになってきていた。
正門の横では、カイザーがいつものように伏せている。
「カイザー、おはよー!」
声をかけると、大きな瞳がゆっくりと開き、低い喉の音が返ってきた。
先日一緒に散歩してからも、カイザーは相変わらず正門にいることが多かった。けれど、ときどき外へ目を向けたり、少し離れた草地まで歩いていったりする姿も見かけるようになった。
「今日はどうする? またお散歩する?」
カイザーは大きな頭を少しだけ動かしたものの、そのまま元の姿勢に戻ってしまった。
「あはは、今日はのんびりしたい気分?」
まあ、本人がそうしたいなら、それでいいだろう。私は首元を軽く撫で、正門の様子を確認することにした。
すると、少し離れたところから小さな鳴き声が聞こえてきた。
振り返ると、草地で遊んでいたドードーの一羽が、いつもの行動範囲を外れて深い草むらへ向かおうとしている。
「あっ、ちょっと! そっちは駄目だってば!」
慌てて声をかけたところで、近くにいたモスコプスが顔を上げた。さらに、その奥で休んでいたティラノサウルスが立ち上がり、大きな身体で草むらへの道を塞ぐ。
ドードーは突然目の前に現れた大きな足を見上げ、ぴっと鳴いて立ち止まった。
「あ、止めてくれたんだ!」
私は急いで近づき、ドードーをひょいと抱き上げた。
「もー、こっちはまだ危ないんだって。さっきも言ったでしょ?」
ドードーは私の腕の中で首を傾げている。どうやら、あまり反省している様子はない。
「絶対分かってないよね、あなた」
苦笑しながら、いつもの草地へ連れ戻してやった。
地面に下ろすと、ドードーは何事もなかったように草をつつき始める。近くにいたティラノサウルスも、もう興味を失ったように元の場所へ戻っていった。
「ありがとねー! 助かったよ!」
そう声をかけると、ティラノサウルスは大きな頭を少しだけこちらへ向けた。
みんな、思っていた以上に周りをよく見ているらしい。もちろん、だからといって安心しきるわけにはいかないけれど、こうしてお互いのことを気にかけてくれているのは嬉しかった。
そのとき、上空から大きな羽音が聞こえてきた。
見上げると、シルヴィアがこちらへ向かって降りてくるところだった。
「あっ、シルヴィア。おかえり!」
高所の発着場所へ降りたシルヴィアは、私の姿を見つけるなり嬉しそうに首を伸ばしてくる。
その鼻先を撫でようとして、ふと気づいた。
「あれ? シルヴィア、見回りはもう終わったの?」
シルヴィアがぴたりと動きを止めた。
「もしかして、まだ?」
すると、シルヴィアは思い出したように翼を広げ、勢いよく空へ飛び上がっていった。
「ちょっ、今から!?」
思わず声を上げてしまった。
シルヴィアは拠点の上空を大きく一周すると、今度こそ仕事を終えたとでも言いたげに戻ってきた。
「いやいや、一周しただけじゃん!」
本人はなぜか、とても得意げだった。
「もう、しょうがないなぁ」
呆れながらも、その鼻先を撫でてやる。
「ありがと。でも、今度はちゃんと見回ってきてよ?」
シルヴィアは嬉しそうに喉を鳴らした。
これ、絶対分かってない気がする。
◆
午前中は、いつもの見回りや設備の確認をしながら過ごした。
主任と一緒に小型組の水場へ滑り止めを設置し、採取組が出入りする搬入口も確認する。内門の感圧板も今のところ問題なく動いていて、大型の子たちが通っても途中で閉まってしまうようなことはなかった。
そんなことをしているうちに、採取組の子たちが少しずつ戻ってきた。
最初に帰ってきたのは、森へ向かっていたカストロイデスたちだった。採取組用の搬入口を通り、仮置き場へ木材を運び込んでいく。
以前は通路のあちこちへ置いてしまっていたけれど、今ではちゃんと決めた場所を使ってくれていた。
「おー、すごい! ちゃんと覚えてくれたんだね!」
そう声をかけると、一頭が短く鳴いた。
続いて戻ってきたアンキロサウルスたちは、採取した石材や鉱石を持ち帰っていた。こちらも仮置き場の使い方を覚えてくれたようで、工業区画へ繋がる場所に資材をまとめてくれる。
それから、森へ行っていた別の子たちが持ち帰った植物も確認することにした。
繊維やベリーに似た実、見覚えのない葉っぱ。それから、薬草のような匂いがする植物まで、いろいろなものが集まっている。
「わぁ、結構いっぱいあるじゃん!」
思わず感心しながら中身を確認していると、見慣れないキノコが混じっていることに気づいた。
「あ、ちょっと待った」
私はすぐにキノコを取り分け、ほかの植物とは別の容器へ移した。
「これ、何のキノコだろ。とりあえず別にしとこ」
見た目は普通のキノコとあまり変わらないけれど、この島の植物なのだから、何が起きるか分からない。毒キノコかもしれないし、逆に何かの薬になる可能性だってある。
「知らないものは、ちゃんと調べてからだね」
そう呟きながら、ほかの植物も種類ごとに分けていく。
いつの間にか主任が浅い箱をいくつか持ってきてくれたので、木材や石材はいつもの保管場所へ、植物は素材と食料候補に分け、用途の分からないものは別にしておくことにした。
「主任、こっちの箱借りるね。あ、これもちょうどいい!」
用意された箱へ次々と採取物を入れながら、私は思わず笑ってしまった。
「ほんと、助かるなぁ。ありがと、主任!」
主任はいつものように片手を上げた。
◆
昼が近づく頃、ようやく自分のお腹が空いていることに気づいた。
「あれ、もうお昼?」
朝からあちこち歩き回っていたせいか、思っていた以上に時間が経っていたらしい。そういえば、みんなの餌や採取物のことばかり考えていて、自分の食事をすっかり忘れていた。
「あはは。私もちゃんと食べなきゃね」
私は保存してあった干し肉と、拠点に残っていた食材を少し取り出し、簡単な昼食にすることにした。
広場の端に腰を下ろして食べ始めると、いつの間にかシルヴィアが近づいてきて、私の手元をじっと見つめていた。
「なに?」
大きな鼻先が、じりじりと近づいてくる。
「シルヴィア?」
返事の代わりに、ごろごろと喉を鳴らされた。
「あー、そういうこと?」
どうやら、私の食事が気になるらしい。
「これ私のなんだけどなぁ」
そう言うと、シルヴィアは不満そうに鼻を鳴らした。
「もー、シルヴィアのご飯はちゃんと別にあるでしょ?」
もちろん、本当にお腹が空いているとは限らない。単に私が何か食べているのを見て、欲しくなっただけかもしれなかった。
とはいえ、あんな顔で見つめられると、ついつい甘やかしたくなってしまう。
「しょうがないなぁ。ちょっとだけだよ?」
私は別に用意してあった肉を少し取り出し、シルヴィアへ渡してやった。
「はい、どうぞ!」
シルヴィアは嬉しそうに喉を鳴らし、受け取った肉を食べ始めた。
「ふふっ、おいしい?」
そう尋ねると、今度は満足そうな鳴き声が返ってくる。
「よかったねぇ」
私も自分の食事を再開しながら、周囲を眺めた。
少し離れた草地ではドードーたちが日向ぼっこをしていて、正門の近くにはカイザーが伏せている。工房の方からは主任が何か作業している音が聞こえ、頭上ではワイバーンがゆっくりと翼を広げていた。
特別なことは何もない、いつもの昼だった。でも、こうしてみんなの近くでのんびりご飯を食べていると、なんだか妙に幸せな気分になる。
「いい天気だねぇ、シルヴィア」
そう言って隣を見ると、シルヴィアはすでに肉を食べ終え、次のおかわりを期待するような顔でこちらを見ていた。
「えっ、もう食べたの?」
大きな瞳が、じっとこちらを見つめている。
「いや、もうないよ?」
シルヴィアは不満そうに鼻を鳴らした。
「さっきちょっとだけって言ったでしょー! もう、おしまい!」
私は思わず笑いながら、残っていた自分の食事を口へ運んだ。
◆
午後になると、拠点の中も少し落ち着いてきた。
朝から動き回っていた小型の子たちは日陰や寝床で休み始め、採取組の一部はもう一度外へ出かけていく。戦闘組も交代するように外周を歩いていて、高所では休んでいるワイバーンと、上空を巡回しているワイバーンの姿が見えた。
私は午前中に集まった採取物を整理しながら、気になった植物の特徴を書き留めていった。食べられそうな実や薬草の候補もいくつか見つかったけれど、まだ安全かどうか分からないものばかりだ。すぐに使うことはできないので、ひとまず保管しておくことにした。
「うーん。調べたいもの、また増えちゃったなぁ」
書いた内容を見直していると、シルヴィアが私の近くへやってきて、そのまま大きな身体を横たえた。
私のすぐ隣に、大きな紫色の首が伸びてくる。
「シルヴィア、ちょっと近くない?」
そう言うと、シルヴィアは少しだけ身体をずらした。
本当に、ほんの少しだけだった。
「いや、そうじゃなくてさ」
もう一度言いかけたけれど、本人は何も問題ないと言いたげに目を細めている。
「はぁ、もう。しょうがないなぁ」
結局、諦めてその首元を撫でてやった。
すると、シルヴィアは満足そうに喉を鳴らし、すっかりくつろぎ始めてしまう。
まあ、邪魔になるわけでもないし、今はこのままでいいだろう。
そんなことを考えながらふと空へ目を向けると、遠くの海の方角だけ、少し暗くなっていることに気づいた。
「あれ?」
先日、カイザーと散歩したときに見つけた、あの黒い雲がある方角だった。ここからでははっきり見えないけれど、遠くの空には相変わらず厚い雲が広がっているようだった。
「あの雲、まだあるんだ」
思わず呟くと、隣で寝そべっていたシルヴィアが顔を上げた。私の視線を追うように遠くの空を見つめ、それから短く喉を鳴らす。
「シルヴィアも気になる?」
そう尋ねても、シルヴィアはしばらく空を眺めているだけだった。
何となく気にはなるけれど、今のところ雲がこちらへ近づいてくる様子はない。遠くでずっと雨が降っているだけなのかもしれないし、何か別の理由があるのかもしれなかった。
「ま、今はいいかな」
私はシルヴィアの首を軽く撫で、作業へ戻ることにした。
◆
夕方になると、外へ出ていた子たちが少しずつ戻ってきた。
採取組は集めた資材を仮置き場へ運び、護衛についていた戦闘組もそれぞれの持ち場へ戻っていく。高所ではワイバーンたちが翼を畳み始め、小型の子たちも眠そうな顔で寝床へ向かっていた。
私は正門の近くでその様子を眺めながら、今日も大きな問題が起きなかったことにほっとしていた。
もちろん、全員が戻ってきたわけではない。夜に活動する子たちもいるし、これから外へ出かける子もいる。それでも、昼間の賑やかさが少しずつ落ち着き、拠点の中が夕方の雰囲気に変わっていくのが分かった。
「みんな、おかえりー! 今日もお疲れさま!」
近くにいた子たちへ声をかけると、あちこちから鳴き声が返ってきた。
近くへやってきたドードーの頭を撫でてやると、その子は気持ちよさそうに目を細めた。
夕食を済ませたあと、私は最後にもう一度、居住区を見て回ることにした。
小型組の寝床には、すでに丸くなって眠っている子たちがいる。大型組の区画でも何頭かが身体を休めていて、高所のワイバーンたちも、思い思いの場所で翼を畳んでいた。
正門の近くでは、相変わらずカイザーがどっしりと伏せている。
「カイザー、今日もありがとね」
声をかけると、大きな瞳が少しだけ開き、低い音が返ってきた。
「おやすみ、カイザー」
そのまま工房へ向かうと、主任が最後の片づけをしていた。
「あ、主任! まだやってたの?」
私に気づくと、主任はいつものように片手を上げてくれる。
「今日はいっぱい手伝ってくれてありがとね。そろそろ休んでいいからね?」
そう言うと、主任はもう一度手を上げた。
ちゃんと聞いてくれたのかな?
少し怪しいけれど、私は笑って手を振り返した。
最後に高所の方へ目を向けると、シルヴィアがこちらを見つけて嬉しそうに首を伸ばしてきた。
「あっ、シルヴィア。今日もありがとね」
鼻先を撫でると、いつものように優しい喉の音が返ってくる。
「おやすみ。また明日ね!」
ひと通りみんなの様子を確かめ、私は自分の部屋へ戻ることにした。
◆
自室へ戻る頃には、窓の外もすっかり暗くなっていた。
遠くからは波の音が聞こえ、正門の方では大型の子がゆっくりと歩いているらしい。高所からはときおり翼の音が響き、外周を見回る子たちの足音も、夜の静けさの中に混じっていた。
私はベッドへ腰を下ろし、今日一日を振り返った。
朝は小型組の様子を見に行って、主任と水場を直した。そのあとは採取物を整理して、知らない植物を分けて。
「あれ? そう考えると、今日も結構忙しかった?」
思わず笑ってしまう。
何か特別なことがあったわけでもないのに、気づけば一日が終わっていた。毎日こんな調子では、いつまで経っても暇になることはなさそうだ。
「まあ、退屈しなくていいか」
そう呟いて、私はベッドへ身体を横たえた。
最近は、私が細かく指示しなくても、みんなが自分たちで動いてくれるようになってきている。採取組が資材を集め、戦闘組が周囲を見張り、疲れた子たちはそれぞれの場所で休む。
こうして考えてみると、私が知らないところでも、みんなはちゃんと暮らしているのだ。
窓の外では、シルヴィアが身じろぎする音が聞こえる。正門にはカイザーがいて、工房には主任がいる。外へ出ている子たちもいれば、もうぐっすり眠っている子たちもいるだろう。
まだまだ直したいところはいっぱいあるし、知らないことだって山ほどある。でも、今はこうしてみんなが元気に過ごしてくれている。
それだけでも、十分嬉しかった。
「さて、明日は何しよっかなぁ」
小さく呟きながら布団を引き寄せる。
明日もきっと、何だかんだで忙しくなるのだろう。
「おやすみ、みんな」
そう言って目を閉じる。
外では、夜の巡回を続ける子たちの足音が聞こえていた。時折響く小さな鳴き声や、遠くから聞こえる翼の音に耳を傾けているうちに、私はいつの間にか眠りに落ちていた。