時間が巻き戻ったので今度こそと死ぬつもりで助けたら、何故か生還して激重感情持たれるやつ   作:二次創作を漁る爬虫類

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2話

 一旦召喚の場はお開きになり、今は親睦を深める時間という名目で沖田さんには俺の部屋に来てもらっているのだが──。

 

「……もしかして、覚えてる?」

「それはもうバリバリ。マスターの相棒、沖田さんです!」

「それ恥ずかしいからやめて?」

「えー!? 沖田さんはこのフレーズ気に入ってるのにー!」

 

 そんなフレーズを気に入るんじゃない。

 

「……で、沖田さんはどこまで覚えてる? 俺は沖田さんと話したあとにいつの間にか寝てたみたいで、起きたらここに……」

「私も似たような感じですね」

 

 なるほど、つまりお互い寝て起きたらここに居たと。どういうこっちゃ。

 

 ……いや、どうあれ、原因は今気にするところじゃない。

 

「……沖田さん」

「わかってます。このままだとまた、第4特異点で二人が犠牲になってしまいます」

「でも、特異点に対して無尽蔵に英霊を連れていけるわけじゃない。あの場に集まれる戦力は、前回とそう代わらないと思う」

「ですよねぇ……。でも、作戦を変えたからってどうにかなる戦力差でも無いですし……」

「いや、勝つ必要はないんだよ」

「へ?」

 

 目的は勝つことではなく、立香とマシュを死なせないこと。であれば──。

 

「アイツにとって、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「……それ、本気で言ってるんですか?」

 

 少し……いや、かなり怒りを含んだ表情で、沖田さんが距離を詰めてくる。

 

「それはつまり、()()()()()()()()()()()()()()()()()ってことですよね?」

「そういうことだけど……。えっと?」

 

 ズイっと、更に距離を詰められる。

 

「馬鹿なんですか? 残される2人の気持ちとか、考えたりしないんですか? あのときの私達と同じ気持ちを、二人にも味合わせるって言ってるんですよ?」

「そ、それはそうかもしれないけど、でも……」

 

 肩を掴まれ、お互いの鼻と鼻が触れるくらいに顔を近付けてくる。

 

()()、なんですか?」

 

 心なしか、沖田さんの綺麗な瞳が濁っているように見える。

 

 な、なんだろう……。回答を間違えたら何かが終わる気がする。

 

 お、おち、落ち着いて、慎重に回答するんだ。大丈夫、沖田さんならわかってくれる。

 

「確かに二人なら俺の死を悲しんでくれるかもしれないけど、でも、あの二人は強いよ。きっと、乗り越えていってくれるはずだ」

「…………」

「それに、最後まで着いてきてくれるんだろ?」

「………………はぁ」

 

 沖田さんは溜め息を吐くと、俺の肩から手を離した。

 

 そして、不満気にジトリとこちらを見つめてくる。

 

「確かに言いましたけどー。そういう使い方はズルいんじゃないかって、沖田さんは思うわけですよ」

「ごめん……」

「まったく、悪徳なマスターさんに捕まっちゃいましたね……」

 

 やれやれといった感じに肩をすくめると、沖田さんは腕を組んでこちらに尋ねてくる。

 

「それで、肝心の方法は考えてあるんですか?」

「方法?」

「だから、立香さんの身代わりになるプランですよ」

「あー、そのことか」

 

 ……ふむ、立香よりも俺の方が間引く価値があると思わせる方法か。うーん……何て言えばいいかな。

 

「修行して強くなる……とか?」

「あー、ホントにダメだこの人……」

 

 いかん、本気で呆れられている気がする。

 

「ち、違っ! 俺だって修行したところでアイツとまともに戦えるとは思ってないって!」

「えー、 ほんとですかー? なら理由(ワケ)を聞かせてもらおうじゃないですか!」

「それは──」

 

 前に、起源という話を聞いたことがある。

 

 起源とは存在の根幹を成すものであり、生物だろうがそうでなかろうが、あらゆる存在が持っているもので、それは時として使用する魔術にも顕れるとのことだ。

 

 例えばエミヤさんで言うと、その起源は【剣】なのではないかと、かつてダ・ヴィンチちゃんが考察していた。

 

 確かにエミヤさんの宝具はこれでもかってくらい剣がたくさん出てくるし、それに近しいものなんだろうなぁとは思う。

 

 だとすれば、俺の起源は何か。そして、その起源とはどのような魔術と相性が良いのか。なんとなくではあるけど、最近それがわかってきた気がする。

 

 聞く所によると、人間の魔術は神秘やらなんやらの関係で普通のサーヴァントにすらあまり通用しないらしいが、そこはダ・ヴィンチちゃんになんとかしてもらおう。武器自体に魔術を付与してもらうとか、色々やり方はあるはずだ。

 

 つまるところ、俺の作戦っていうのは──

 

「……それ、かなり無茶言ってません?」

「ほ、ほら、舐めプで一回当たってくれるかもしれないじゃん?」

「確かに前回は気にせず受けてる場面もありましたけど……」

 

 そもそも避ける価値すらないとか思ってそうな顔で、攻撃を受けてもピンピンしていた姿が記憶にある。

 

 もしあんな感じに油断してくれれば、可能性はあるかもしれない。

 

「……考えてみれば、今回も慢心があって、手加減してくれるのなら、可能性はあるかもしれません」

「──ッ! なら──!」

「ただし!」

 

 ピッと、沖田さんは指を立てて強調する。

 

()()()()()()()()()()()()。これが条件です」

「……へ?」

「ターゲットが立香さんからマスターに代わった瞬間、喜んで死にに行くとか、そういうのナシでお願いします」

「…………」

「その反応やっぱりやろうとしてましたね!? 立香さん達に感謝してるのはわかりますが、ちょっと覚悟ガンギマリすぎやしませんか!?」

「だ、だって……」

「だってもでももありません! いいですか!?」

 

「『全員で無事に第4特異点から帰還すること』! これを第一目標に据えると、約束してください!」

「………………ハイ」

 

 あまりの圧に、俺は素直に頷くことしか出来なかった。

 

 

 

 


 

 

『とりあえず、この先に起こることを知っていることについては、二人だけの秘密にしておきましょう! 全部教えてしまってはイージーモードになってしまって、立香さんだけでなく、カルデアのためになりません!』

 

 

『そして、マスターの当面の目標は、まぐれでもアレに一撃を与えられるくらい強くなることです!』

 

 

『なので、超スパルタで行きます。マスターには死んでほしくないので、超超超スパルタです。優しい沖田さんに感謝してくださいね!(ニッコリ)』

 

 

 

 括弧(かっこ)ニッコリ括弧閉(かっこと)じじゃないんだよ。ほんとに死ぬかと思ったんだけど。

 

 修行を初めて2週間ほど経ったけど、毎日のように沖田さんにボコボコにされている。

 

 ほ、ほんとにあの動きについていけるようになるのか……?

 

 癒しの時間と言えば、今のように食堂のカウンター席でエミヤさんの作ったご飯を食べている時くらいのもんだ。

 

「お、美味しい……」

「な、泣くほどかね……?」

「骨身に染みます……」

「物理的に染みていそうに見えるのは気の所為か?」

 

 多分気の所為じゃないと思う。めちゃくちゃ染み渡ってると思う。

 

「しかし、君は随分と自分のサーヴァントとトレーニングに励んでいるようだが、何か思うことでもあるのかね?」

「あー……なんというか、その……何があるかわかりませんし、備えられるだけ備えておきたいなぁと」

「……ふむ」

 

 エミヤさんは意味深に頷くと、食器を洗いながら話しかけてくる。

 

「しかし、同じ相手とばかりトレーニングをしていても、変に偏ってしまう可能性があるな」

「確かに……天才剣士と戦う前提の動きしか出来なくなっちゃうかもしれませんね」

 

 まあその天才剣士ともまだまともに戦えてないんだけどね。沖田さん強すぎるって。あれでまだめちゃくちゃ手加減してくれてるってマジ?

 

「そこでだ、君さえ良ければ私もトレーニングに付き合おうと思うのだが、どうかね?」

「えっ!?」

 

 エミヤさんが修行相手に!? 色んな武器で戦うエミヤさんと戦えれば、確かに幅広い経験が出来るかも……!

 

「いいんですか!?」

「無論だ。君を強くするということは、結果として私のマスターを守ることにも繋がる。等価交換というやつだ」

 

 とは言いつつも、俺のことを心配してくれてるのはなんとなく伝わってくるんだよな。伊達にママと呼ばれていないわけだ。

 

「なんだねその顔は。不満なら別に──」

「そんなことないです! 是非! 是非お願いします!」

「……フッ。そこまで言うのなら、仕方あるまい」

 

 洗い終わった食器を片付け、エミヤさんは覚悟を問うように語りかけてくる。

 

「言っておくが、生半可なトレーニングをするつもりはない」

 

「──────ついて来れるか」

 

 エミヤさんの売り言葉に、俺は買い言葉で返す。

 

「エミヤさんの方こそ、ついてきてくださいよ!!!!!」

 

 

 3秒で負けた。

 

 

 

 


 

 

 シミュレータールームにアラームが鳴り響き、戦いの終わりが告げられた。

 

「やるじゃねぇか蒼介。最初に比べりゃ随分動けるようになったもんだ」

「はぁ、はぁ……それは、どうも……」

 

 あれから俺の相手をしてくれる英霊の人達も増えて、それなりのバリエーションを経験できるようになった。

 

 でも、わざわざ一般人のトレーニング相手に立候補するような人達だ。そりゃあ、めちゃくちゃ強い。

 

 今の相手のクーフーリンさんだって例に漏れずめちゃくちゃ強い。

 

 というかもう無理。動けない。立ち上がれる気がしない。

 

「ただの人間にしちゃあ、結構頑張ってんじゃねぇの? 人間相手に2割も出せたことなんてそうそうねぇぞ?」

「これで、2割……?」

 

 無理無理無理無理無理。あまりにも別次元すぎる。

 

 並のサーヴァントくらいの実力があってもあの男には全然届かないのに、俺はそこから更に数段も格下。こんなんじゃ、まだまだ足りない……!

 

「……クーフーリンさん」

「どうした? 今日は結構やったし、こんくらいに──」

「もう1戦、お願いします」

「……へぇ?」

 

 面白そうに口元を歪ませると、クーフーリンさんは武器を構えた。

 

 構えた武器はもちろんゲイ・ボルクじゃない。刃先が潰された特訓用の槍だ。

 

「テメーには光るもんがある。その頑張りに免じて、オレの3割を見せてやる」

「ちょっ……!? 2割ですら着いてくのでやっとなのに、いきなり3割なんて──!」

「いくぞ蒼介ェ!!」

 

 

 6秒で負けた。

 

 

 

 


 

 

「特訓しすぎだよ蒼介くん。頻度を減らすように」

「えっ」

 

 ロマン先生にドクターストップをかけられた。

 

 どうして俺から修行を取り上げるんですか……? 俺にはこれしかないのに……。

 

「……表情からして、言いたいことはなんとなくわかるんだけども……」

 

 ロマン先生は頭に手を当てると、諭すように話し始めた。

 

「確かに、この先にどんな敵が待ち受けているかわからない以上、鍛えられるだけ鍛えて備えたいっていうのは、ボクにもわかる」

 

「でも、そのいざってときに身体が壊れてしまっていたら意味がないだろう? 」

 

「キミが立香ちゃんやマシュのことを大事に想ってるのはよくわかる。でも、だからってキミがどうなっても良いわけじゃないんだ」

 

「忘れないでほしい。ボクらは立香ちゃんと同じくらい、蒼介くんのことだって大事に想ってる」

 

「もう少し、自分を大事にしてあげても良いんじゃないかな」

 

「ロマン先生……」

 

 ロマン先生の言いたいことがよーくわかった。つまりは──。

 

「ギリギリを見極めて修行しろってことですね!」

「助けてマギ☆マリ! どうしたら蒼介くんにボクの心が伝わるんだ!!」

 

 

 

 


 

 

 

「さっきダ・ヴィンチちゃんが教えてくれた魔術なんだけど──」

「ああ、それはこうして──」

「出来た! 蒼くんありがとう!!」

「いいって、このくらい」

 

 修行のときは当然魔術も使うので、魔術の扱いは立香のそれを上回る勢いになってしまった。

 

 なので、誰でも使えるような簡単な魔術くらいなら、こうやって人に教えることも出来るようになった。

 

「むぅ……私にももう少し魔術の心得があれば……。……蒼介さん、やはり強敵です……」

「これだけで妬まれるの?」

 

 おかしいじゃん。こんなの気にする必要もないくらい普段から二人で一緒に居るじゃん。

 

「どうでしょう蒼介さん、私に魔術のコーチングを定期的に行うというのは」

「ごめん、特訓する時間減っちゃうから……」

なら特訓しながら魔術のコーチングをするのはいかがでしょう!?!!!?

出来るわけないだろ

ぶおおおおおおおお! ぶおおおおおおお!

「別に音圧で勝負してるわけじゃないんだけど」

「──────!?!!!?」

「というかマシュ、どこから法螺貝出したの……?」

 

 立香の質問に鼻息を荒くして答えているマシュを横目に、俺はふと考えてみる。

 

 思えば、こうやって立香から相談されることは巻き戻し前はあんまりなかったな。

 

 もしかすると、巻き戻し前は俺を不安にさせないように立香が頑張っていたのかもしれない。

 

 でも、今こうやって色々と相談してきてくれるってことは、肩の力を少しは抜けているってことだと思いたい。

 

 もしそうなら、俺はとても嬉しい。

 

 ……絶対に、死なせてたまるもんか。例え俺が、死んだとしても──。

 

 

 


 

 

 

 

 ロマン先生のドクターストップを無視して修行を続けていたら、ついに実力行使に出られてしまった。

 

 具体的には、シミュレータールームの出入りに色々と制限が追加されて、入室に必要なIDカードに直近1週間のルーム使用時間が保存されるようになり、使用時間が一定時間を越えていた場合、入室が出来なくなってしまった。

 

 流石にこんな対策を取られてしまってはどうしようもない。制限時間中の修行は諦めて、ゆっくりすることにした。

 

 そんなとき、カルデア内で彼女と出会ったのだ。

 

「ジャルタ、入っても大丈夫?」

「大丈夫よ」

 

 ジャンヌダルク・オルタ。略してジャルタ。黒い方の聖女様だ。

 

 なんと見た目に反して密かにサブカルチャー文化にハマっているという側面があり、偶然その趣味を目にした日から、こうして暇なときは部屋を訪ねさせてもらっている。

 

「何? また制限時間に引っかかったの?」

「いやいや、時間が短すぎるんだって。せめてあと1.5倍は増やしてほしいんだけど……」

「……アンタ、無理しすぎて脳のブレーキぶっ壊れてんじゃないの?」

 

 言いながら、彼女はゲームのコントローラーをこちらに渡してくる。

 

「ほら、さっさとやるわよ。アンタが使うキャラの対策もバッチリ練習してきたし、リベンジしてやるんだから」

「……ふふ」

「な、何です……? 急に笑いだして……」

「ジャルタ。始める前に言っておくことがある」

 

 首を傾げたジャルタに対し、俺は前に使ったのとは違うキャラを選択して口元を歪ませた。

 

「俺のメインキャラ、こっちなんだよね」

「こんにゃろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──ふぅ、いい勝負だったわね」

「勝率0%のお気持ちはいかがでしょうか」

「燃やすわよ?」

「ごめんなさい」

 

 あらかたゲームもやり尽くして、俺は食べ終わったお菓子をゴミ箱に捨てると、そのまま扉の方に向かっていく。

 

「あら、もう帰るんです?」

「ダ・ヴィンチちゃんから、今の状況なら明日辺りに新しい特異点が見つかりそうって聞いてるんだ。だから、早目に休んでこうかなって」

「ふーん……ま、そういうことなら休んどくべきよね」

 

 特に気にする様子もなく、ジャルタはゲーム画面を見ながら別れの言葉を口にする。

 

「じゃ、また暇になったら来なさい。今度こそボコボコにしてあげるんだから」

「おう。また──」

 

 『またな』と言いかけて、俺は言葉を止めた。

 

「……さいなら」

「なにそれ」

 

 気取られていないか不安になりながら、俺はジャルタの部屋を出た。

 

 『またな』なんて、言うつもりにはなれなかった。

 

 だって明日は、第4特異点が見つかる日なのだから。

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