時間が巻き戻ったので今度こそと死ぬつもりで助けたら、何故か生還して激重感情持たれるやつ 作:二次創作を漁る爬虫類
「……マスター」
「うん。ついに、来ちゃったな……」
第4特異点、俺達が立香とマシュを失った場所。
俺が、死ぬことすらさせてもらえなかった場所。
「そんな……モードレッドさん達が、一瞬で……」
「マシュ! 気をしっかり!」
「ッ! ……はい!」
前回と流れは
現地で知り合ったサーヴァント達は既に倒され、残っているのは俺達4人だけ。
でも、少しだけ前と違う点がある。それは────。
「──
「──え」
「先輩!!」
マシュが立香の前に立ち塞がった。しかし、盾を構えるのが間に合っていない。
しかし、このまま前と同じく──とは、ならない。
「──させません!!」
ここまでほぼ無傷で耐えていた沖田さんが、マシュよりも早く立香の前に割り込み、ソロモンの攻撃を刀で弾いた。
「……ほう?」
それを見て、ヤツは僅かに口角を上げる。
「不意打ちのつもりはなかったが、止められるとも思っていなかったぞ?」
「あれで不意打ちじゃないとか負け惜しみもいーとこじゃないですか!?
「吠えたな、犬風情が」
「へーんだ! 犬は吠えるものですよ!!」
相手から発せられる圧に屈することもなく、沖田さんはソロモンに向かって突っ込んでいく。
「マシュ! 常に立香の近くで盾構えといて! 後ろから来るかもしれないから、全方向警戒で!」
「──は、はい! で、でもっ、蒼介さんは!?」
「俺のことはいい!!」
ソロモンからすれば俺は眼中にないはずだ。狙われない人間を守っても、意味はない。
もし仮に俺が狙われるときが来るとすれば、それは立香よりも俺が障害に成りうると判断されたときだ。それならそれで構わない。
「……さて」
俺は結局、ただ人間にしては動けるという程度の範疇にしか収まらなかった。
こんな体たらくでは、戦いに混じった所で足を引っ張るだけだろう。
「……蒼介さん。それって──」
俺が今取り出したモノについて、マシュは見覚えがあるようだ。
さてはダ・ヴィンチちゃん、コレ作ってるとこ見られたな?
ま、俺も今からやるなって言われたことやるし、お相子ってことにしておこう。
俺が今手に持っているのは活性アンプルだ。それも、通常のやつよりかなりドぎついやつ。
一本打つだけで負担が半端ないから、一本使ったら向こう半月は使用するなと言われている。
それを──
「待ってください蒼介さん! そんなことしたら、蒼介さんが──!」
「……マシュ」
俺はマシュに向かって困ったような笑みを浮かべながら、自分にアンプルをぶち込んだ。
「──ダ・ヴィンチちゃんには、内緒な」
「なるほど」
戦い続けること十数分。まったく隙が見えず攻めあぐねていると、ソロモンはくだらなそうに俺を見た。
「人間にしてはよく動くと思えば、随分と馬鹿な真似をしているようだな。死にたがりか?」
「ゲホッ……! 死にたかないけど、死ぬことは怖くない!!」
「理解できんな」
俺がやってるのは、アンプルのおかげで溢れてくる無尽蔵の魔力で、常に身体強化を限界以上の出力で回して、一時的にそれなりの動きが出来るようになっているだけだ。
身体から聞こえてはいけない音ばかり聞こえてくる。人間に許された幅を越えた動きの代償は、少しずつ俺の身体を蝕んでいく。
きっと、これだけやっても並のサーヴァントの動きにも届いていないだろう。
それでも──
「しかし……上手く避けるものだ。先ほど潰した英霊共よりも、速度も力も劣っているはずだが……?」
確かに俺は弱い。けど、俺がメインでやっていた修行は、攻撃を当てるためのものでも、戦えるようになるためのものでもない。
避けるでも、逸らすでも、何でも良い。とにかく相手の攻撃から生き延び続ける。それが俺が注力していた修行だった。
攻撃は、一瞬生まれた隙に当てればそれで良い。むしろ、ただの人間の俺が攻撃方面を鍛えた所で、隙のないタイミングに当てることは不可能だ。
であれば、敵の攻撃をやり過ごし続けて、僅かな隙を見つける度に攻撃を当てるチャレンジをする。
これが一番、ギリギリ現実的とも言える案だった。……のだが。
「トロいな」
「クソッ!」
やはり、人間の出せる速度ではどうしようもない差があるらしい。
隙を見つけて攻撃しても、余裕飄々と避けられてしまう。
アンプルだけでなく、他にも色々とズルをしているというのに、それでもソロモンには届かない。
それに加えて──────。
「どうやら、やけにその刀に自信があるらしいな」
「「ッ!!」」」
ついに、刀のこともバレてしまった。
俺が持っているこの刀には、ダ・ヴィンチちゃんとメディアさんに協力してもらって、特製の術式が組み込んである。
沖田さんに持ってもらうことも考えたが、どうにもこの術式は、俺でないと起動できないらしい。つまり、俺自身がソロモンに攻撃を当てる必要がある。
これを一撃当てることができれば、倒すことは不可能でも、傷を負わせることは出来なくとも、俺への警戒度を一気に上げることが出来るはずだ。
でも、今のソロモンは俺にさして興味はないらしい。たまに立香の方向に攻撃をして、その度にマシュが防いでいる状況だ。
今はまだ防げているが、マシュの限界がいつ来るかわからない。俺の身体だっていつまで動くかわからないし、ボサボサしている暇はない。
「ッ……! 今ッ!」
「ダメです! マスター!!」
「──あ」
焦ってしまったからだろうか。隙に見せかけた罠に、俺はまんまと踏み込んでしまった。
「やはりその程度か、人間」
ソロモンからすれば、軽く小突く程度のことだろう。それでも、人間の俺がそれを喰らえば──────。
無事でいられるわけがないのは、自明の理だった。
「わからんな」
蒼介が攻撃によって吹き飛ばされてから数分、沖田はまだソロモンと戦い続けていた。
「主人を失ったというのに、何故まだ抗う。単独行動もないお前では、保ってあと数分と言ったところだろう」
「自分でも驚いています。私、主人の仇を討つようなタイプだったんですね」
戦っているとは言っても、沖田が一方的に攻撃を凌いでいる状況でしかない。このままでは押し切られるのも時間の問題だということは、誰の目に見ても明らかだった。
(どう見ても、先はないはすだ)
このまま何も成せずに消えていくことが目に見えているというのに、目の前に立つ英霊から希望の色が消えていないことに、ソロモンは違和感を覚えていた。
(まさかコイツの刀にも何か細工が……? いや、そうは見えん。それに、仮にそうだったとしても、それは私に届かない)
二人ですら小さな隙を作ることが精一杯だったのだ。たった一人では、ただただ攻撃をやり過ごすことしか出来ない。
攻めのチャンスなど、あるはずがなかった。
(では何だ、ヤツは何を狙っている。この状況で、何を──)
瞬間、ソロモンの頬にパチリとした静電気のような衝撃が走った。
「なんだ、今のは──────」
衝撃の来た方向に目を向けると、藤丸立香がソロモンに向かって指先を向けているのが目に入った。
ガンド。藤丸が今身に着けている魔術礼装に組み込まれているスキルであり、命中させた相手の動きを一瞬止める効果がある。
ソロモンの動きを止められるようなものではないが、それでも、
「──一歩音越え」
「ッ──!?」
「二歩無間。三歩、絶刀──────!」
立香の生み出した僅かな隙。その時間が、沖田の宝具を展開する時間を稼いだ。
無明三段突き。
かの佐々木小次郎の燕返しのように、
燕返しが回避不可の技だとするならば、無明三段突きは防御不可の技と言えるだろう。
3つの突きが同じ位置に同時に存在することで、仮に初撃の突きを防いだとしても、その場所には2つ目と3つ目の突きが存在しているという矛盾が発生し、事象飽和現象を引き起こす。
その結果、仮に防御などしていてもお構いなしに、その突きは標的へと突き刺さる。
故に防御不可。もっとも─────
──────
「無明三段突──────!」
「惜しいな」
ガッと、ソロモンは沖田の刀の刀身を掴んだ。
「突く前に止めてしまえば、何も恐れることはない。仮に当たったところで、どうというわけでもないが」
「…………」
「まさかこれを狙っていたというのか? だとしたら呆れた話だ。一矢報いることさえ出来なかったわけだ」
ゆっくりと、ソロモンは沖田に手を向ける。
「さらばだ。主人を失い、仇を討つことも叶わなかった、哀れな犬よ」
「……ふふ。魔術王、ソロモン──」
「──両の手を、こちらに向けましたね」
「──────ッ!?」
一瞬遅れて、ソロモンは背後に居る人間の存在に気がついた。
「バカな…………!?」
先ほど殺された筈の相馬蒼介が、ソロモンに向かって刀を振るっていた。
「死んだフリをしましょう」
「えっ」
ある日のカルデアにて、沖田さんがそんな作戦を立案してきた。
「えっと、死んだフリしたところで見逃してくれないんじゃ? 熊じゃあるまいし」
「別に見逃してもらうためじゃありませんよ。それに、熊に死んだフリは効きません」
「え、そうなの?」
マジかよ。じゃあ今後熊に会ったらどうしよ。
「まったく……。いいですか? 戦いの最中、マスターは良い感じに相手の攻撃を食らって、そのまま無様にぶっ飛んでください」
「無様て」
「そこ、重要ですからメモしておいてください」
「ホントに言ってる?」
まあ、死んだと思わせるなら不格好にぶっ飛ぶのがそれっぽく見えるのかもしれないけども。
「で、死んだフリしたあとはどうするんだ?」
「隙を作るので斬ってください」
「……索敵されるんじゃ?」
「マスターのことですし、どうせ活性アンプルぶっ込むつもりですよね? 戦ってる間は索敵するまでもないくらい魔力を発してる状態になるでしょうし、飛ばされた場所に強い魔力を発するダミーを置いて、それに魔力を流し込んだらコッソリ近づいてきてください」
「さっきから説明めちゃくちゃガバいんだけど、これ上手くいくんだよね?」
「それはマスターの腕次第ですかね! アサシンの方々に隠密行動を習いましょう!」
「うげ」
「ちなみにわざと攻撃を受けてぶっ飛ぶ訓練もしますから、受けて良い技とダメな技の見極めも含め、頑張ってもらいますよー!」
「ワ、ワァ………………」
「バカな…………!?」
表情を驚愕に染めるソロモンに対し、俺は背後から刀を振るった。
両の手は沖田さんの方……つまり前方にある。気づくのが遅れた今、間に合うはずがない──!
「──────いやはや驚いた。少しな」
ソロモンの身体に当たった刀身が、バラバラに砕け散った。
「ッ!?」
「──────ハハ」
ソロモンは嗤う。まるで何でもないかのように。
「もし、お前が並のサーヴァントであれば、当たっていただろう」
「だが所詮人間……ここまで積み上げても、最後の最後で絶望的なまでの
「そん、な…………」
当たった感触からして、ソロモンは局所的に刀身が当たる部分に薄い魔力の壁のようなものでも張ったんだろう。それも、刀身すらも砕けるような硬度で。
「ここまでやっても、届かない、なんて……」
沖田さんの表情に、最早希望の色はない。絶望に染まった表情を、ただただソロモンに向けていた。
「……なるほど、これで全て終いというわけか」
彼女の表情を見て察したのか、ソロモンは俺への興味を完全に失い、再び沖田さんに手を向けた。
「まずはお前を八つ裂きにする。そのあと藤丸立香も殺して、それで終わりだ。お前の主人は……殺す価値すらない」
まるで絶望を噛み締めさせるかのように、ソロモンはゆっくりと沖田さんに手を伸ばしていく。
そんな光景を前にして、俺は力なくソロモンに拳をぶつけた。
「……何の真似だ」
「──知ってるか、魔術王」
「術式は、
「ッ!?」
ソロモンが驚いた表情で振り向くが、もう遅い。俺の術式は、ソロモンに触れた時点で発動させている──!
「なんだ、これは……!? 貴様、どうなっている、これは──!?」
外見上、ソロモンに変わったところは見られない。しかし、確かに俺の魔術は、ソロモンの何かを傷つけた。
「
「……そうか、私は勘違いをしていた。人類史焼却の障害に成りうるのは、
「……はは」
一番欲しい言葉が聞けた。この言葉のために頑張っていたと言っても、過言じゃない。
「
「は──────ぐぁッ!?」
初めてソロモンから感じた、俺に対する明確な殺意だった。
気づいた時には、俺はボロ雑巾みたいにズタボロになっていた。
息をするのもやっとの状態で、俺は血だらけになった身体に目を向ける。
「何、が──?」
何が起きたのかすらわからない。手加減されていなければ、そもそも手も足も出ない存在だったんだろう。
こうなっていたのが立香でなくて、本当に良かった。
「忌々しい。死体すら残らずズタズタにしてやりたいところだが、これ以上お前らに構っていれば、
そう言って、徐々にソロモンの姿が薄くなっていく。
「さらばだカルデア。また会うことはないだろうが──」
「……ふむ、そうだな。7つの全ての特異点が消失した、そのときには──」
「──お前達のことを、私が解決すべき案件として見てやろう」
『蒼介くん! 血だらけじゃないか! 皆、一刻も早く彼らをカルデアに──!!』
アイツが消えて、カルデアとの通信が復旧すると、ロマン先生の顔がドアップで表示された。
よっぽど心配してくれていたらしい。音声だけ届いてたとか、そりゃあ不安になるよな……。
ロマン先生の背後には、ダ・ヴィンチちゃんの姿が見える。
げ、あの顔は活性アンプルゴリゴリに使ったのバレてるな。帰ったら怒られそうだなぁ……。生きて帰れれば、だけど……。
「マスター!!!」
「蒼くん!!!」
「蒼介さん!!!」
「……おー」
良かった、皆無事みたいだ。これで実は攻撃の余波で大怪我してましたなんて言われてたら、死んでも死にきれないからな。
「あっ、あぁっ……こ、こんなに血がっ……。も、もうすぐカルデアに帰れるから! だからもう少し頑張って!」
「安心してください! Dr.ロマンの腕は確かです! カルデアまで頑張れば、きっと──!」
「……立香、マシュ」
ぶっちゃけ、意識を保ってるだけでも精一杯だ。
アドレナリンが出てるおかげなのか痛みはそんなでもないけど、身体の限界なんてもうとっくに超えている。
カルデアまでは耐えられそうにない、かな。
「はは……二人が無事で良かった」
「わ、私達のことよりも今は蒼くんのことでしょ!?」
「そうです! まるでそんな、お別れのような──!」
「……ごめん、あとは……任せた。二人ならきっと、なんだって出来るよ」
「やだ……そんなこと、言わないでよ……」
涙を浮かべる立香とマシュを見て、なんだか申し訳ない気持ちになってくる。
……ごめん。叶うことなら俺も、この先一緒に戦っていきたかったよ。……でも、こりゃ無理そうだ。
「……沖田さんも、ごめん」
「……なんとなく、こうなるんじゃないかって思ってました。まったく、聞いてませんよ。まさか骨にまで術式刻んでたなんて……」
「はは……」
ダ・ヴィンチちゃんとメディアさんに何度も頭を下げて、説得の末、骨に刻んでもらった術式。
刀という目に見える術式はブラフだ。これは沖田さんにも秘密にしていた、奥の手だった。
「二人のこと、任せて良いかな」
俺が死んだら沖田さんの契約周りがどうなるのかわからないけど、その辺はダ・ヴィンチちゃんが上手くやってくれるだろう。
そこら辺も含めて、ダ・ヴィンチちゃんにだけは事実を共有していたわけだし。
……まあ、何も言わずに暴いてきた金ピカの王様も居たけどね。
なんだよ見ればわかるって。やっぱり千里眼はチートじゃないか!!
なんてくだらないことを考えていると、沖田さんが俺の手を優しく、しかし力強く掴み取った。
「……お任せください、マスター」
「二人のことは、私が命に代えても守ってみせます。何があっても、必ず」
真剣で、頼り甲斐のある表情を見せながら、そう言ってくれた。
普段はお調子者みたいにふざけていることも多いけれど、こういうときの彼女ほど頼もしい存在は居ない。
……こんなサーヴァントと契約出来て、幸せ者だな、俺って。
「沖田さん」
「……なんでしょう」
「俺、あの日呼んだサーヴァントが沖田さんで、本当に良かった」
「──ッ!」
「俺と出会ってくれて、ありがとう。俺と一緒に戦ってくれて、ありがとう。
……最後まで着いてきてくれて、ありがとう」
「マス、ター……」
徐々に、沖田さんの表情が崩れていく。
「覚悟、してたんですよ……?」
「だから、マスターが安心して逝けるように、頼り甲斐のある沖田さんの姿を見せようって、そう思ってたのに……」
ポツリと、沖田さんの瞳から涙が零れ落ちる。
「なんで最期に、そんなこと言うんですかぁ……」
「……ごめん。どうしても、伝えておきたくて……」
「そんなこと言われたら、私だって……」
……あぁ、そろそろかな。なんだか瞼が重くて、意識が遠のいていく。
「ま、まだ伝えられてないこと、いっぱいあるんです! 話したいことだって、たくさん!」
「マスターがその気なら、私も全部ぶちまけてやりましょうとも! ですから、もう少し、もう少しだけ──!」
もう、声もあまり聞こえない。
ごめん沖田さん。最後まで聞けそうにないや。
「……言い逃げなんて、卑怯すぎますよ」
第4特異点……というよりはソロモンから立香を守ることに成功した俺は、後のことを三人に任せて──。
──何故か、カルデアの医務室で目覚めていた。
「……ん?」
あ、あれっ? 俺死んだはずじゃ……?
もしかして、また巻き戻ったのか……? いやでも、周りにあるお見舞い品っぽいやつは誰がくれたものだか大体わかる。
特にあのお菓子は絶対ジャルタだ。ジャルタの部屋でしか食べたことないもんあれ。
……てことは、えっと? もしかして……
「………………えっ?」