この乙女ゲームの攻略情報は、妹だけが知っている〜主人公の師匠ポジになってしまった兄より〜   作:ゲスト047562

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第1話 おかしい。これは一体何エンドに突入したんだ

おにいの妹:神魔(しんま)大戦終わった! おにい無事!?

 

ダイダラぼっち:おー生きてる

 

おにいの妹:なら良し! 主人公がラスボス倒してくれたって事ダヨ!

 

ダイダラぼっち:バドエン以外は普通にラスボス倒すんだっけか

 

おにいの妹:そう! 悪魔の軍団が消えた直後だから、今は共通EDやってるかな。その後個別ルートでー

 

ダイダラぼっち:まあ世界は救われたって事ね。めでたしめでたし。疲れたから暫く消えるわ

 

おにいの妹:え! ウチはどうすれば良いの?

 

ダイダラぼっち:死亡ED迎えてない推しでも眺めてれば? 後は知らん。俺の事聞かれたら死んだとか適当に言っといてー。メリクリー

 

おにいの妹:りょ! メリクリ!

 

 

 

 

 

おにいの妹:バレたヨ!

 

おにいの妹:【通話時間:6秒】

 

おにいの妹:【不在着信】

 

おにいの妹:【不在着信】

 

 ◇◆◇◆◇

 

 古い建物。軒先に『団子』のノボリが置かれた、昔懐かしい風情を感じさせる団子屋の縁側。

 パチパチと何かが燃える音を聴きながら、ゆっくりお茶を一口。うーん、この苦味が団子に合うな。

 

()()さぁ……酷いよ。何で私に嘘ついちゃうの? 悲しいじゃん」

 

 あ、自己紹介がまだでしたね。

 どうも。異世界転生きめて16年、今世での名前『代陀羅(だいだら)(だん)』です。よろしくどうぞ。

 え? ネームドキャラっぽい名字? 分かる。重要な感じするよな。でも俺、転生特典とかなーんも無かったっすね。全部努力と卑怯と根性で手に入れました。

 

「私にこんなことさせないでよ。今度は私も、ちゃんと約束守るつもりだったのに」

 

 俺が今生きてる世界は、何やら世界滅亡前の乙女ゲームの舞台らしい。『らしい』っていうのは、俺があんま詳しくないから。主人公ちゃんが、色んなイケメン達とイチャイチャしながら魔王(だよな?)を倒す、バトル要素ありの乙女ゲームだった。

 妹がそのゲームのファンでねぇ……バトル部分だけ手伝ってただけで、俺は本編の詳しい設定とかマジで知らんのですわ。

 そんなもんだから、原作を知らない俺なりに原作を壊さない様に、でも出来るだけ妹の要望を聴きながら事勿れ主義で生きてきた訳です。

 

「『師匠より強い人』が最低条件だもんね? なのに何でこんな真似するの? 嘘吐かれたら、師匠の事助けてあげれないよ」

 

 ……さて。そろそろ現実逃避はやめよう。諸君、いきなりですまないが聞かせてほしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう閉じ込めるしかなくなっちゃったよ」

 

「いやその理屈はおかしい」

 

 世界を救った筈の本編の主人公ちゃんが、病んだ目で俺を見てくるのは何故なんだろうか。

 器の中で揺れる水面から目を離すと、何とまぁ可愛らしいお嬢さんがいるではありませんか。俺に向けられた拳銃と、背景に燃える山さえ無ければ、素敵なボーイミーツガールが出来た事でしょう。

 おかしい。今は正月。原作のルートなら、彼女は今頃攻略キャラの誰かと初詣をしてるシーンの筈……妹もそう言ってたぞ。何でここに、俺なんぞに執着してるんだ?

 銃口から光が放たれる。光は網を作り、俺を逃すまいと大口を開ける。

 その光に触れたらヤバいという第六感に従い、串にこの世界で手に入れた力……妖気(ようき)を纏わせ投げる。網の一部を食い破らんとした串はしかし、網に触れた瞬間紫電を弾けさせて砕け散ってしまった。

 

「おっと」

 

 知ってた。まあ元々くらう気なんぞ無いので、見てから回避余裕でした。

 横に飛んだ俺を囲う様に、今度は地面から岩が突き出す。

 

天岩戸(あまのいわと)

 

「ちょおま」

 

 それ引き篭もり専用だよなぁ!? 何閉じ込める用に改造してんねん!! やはり天才か……!

 心の中でツッコミながら、身体は逃げる為の動作に入っている。上から降ってくる巨岩の蓋を、妖気で作った手が受け止める。勢いが緩んだ隙をつき、囲いからひょいっと逃げる。

 

「アハ。やっぱり凄いね、師匠」

 

「そうだぞ、師匠だからな。だからそろそろ話を……」

 

「ダメだよ。だって逃げるじゃん」

 

 ご尤も。流石、()()を名乗るだけあって俺の手口を知ってるな。

 

「何が嫌なの? もう師匠が傷付く姿を見たくないの。師匠は私と一緒にいて、誰にも傷付けられずに、私達の愛の巣でずっと幸せに暮らすの」

 

「スマン。お前の気持ちには答えられん。第一お前には……」

 

「いないよ。師匠以外の人なんて、いらない」

 

 ゾッと底冷えする声音。同じくらい冷ややかな瞳は、本気で言っている事が伺える。

 

「師匠……ううん、団君。好き。大好き。団君が私を恋愛的な意味で好きじゃないのは分かった。けど私だって諦める気はない。今よりもっと私を好きにさせる自信がある。私も、今以上に君が好きになる。だから……絶対、絶対逃がさないから」

 

「そういう一生懸命な所は好感が持てるぞ」

 

「ありがとう♡だったら私に捕まってくれるよね?」

 

「スマンな!」

 

 不意打ち気味に放たれる超常の力──神技(しんぎ)をいなし、会話を続ける。

 確かに一途に想ってくれるのは純粋に嬉しいよ? 俺だって別に、恋愛をしたくない訳じゃないし、可愛い子に好意を持たれれば鼻の下だって伸ばすとも。

 しかしねえ。学生の頃の恋愛なんて長続きする方が珍しいのだから……吊り橋効果の様に、一時の気の迷いだったってケースが圧倒的だろ(偏見)。

 それに彼女が攻略キャラとくっ付く可能性だってまだまだあるし、俺も()の事が──。

 

「今他の女の事考えた?」

 

「滅相もございません」

 

 なので、そろそろ神技連打やめてもらって良いすか? 回避し続けるのもキツいんすけど……駄目? そっかぁ(諦観)。

 妹、おお妹よ。早く返事をしておくれ。一体何故こうなったのか、これはどういうエンディングでどう対処すれば良いのか、お兄ちゃんに教えてくれ。転生特有の前世知識というチートで、この状況を救ってくれ……!

 その祈りが通じたか、妹からの連絡を知らせる着信音が響く。

 これぞ起死回生の一手! 急いで内容を──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おにいの妹:ウチ女優になれるかな!

 

 てめっこの、クソガキぃぃいいいいいいい!!!! そんな状況じゃねえの分かってんのかあああああああ!!

 まさかこの状況になった原因お前じゃねえだろうな!? てめえの演技力なんて今聞いてねえんだよ! お前何したんや!?

 

(ゆい)ちゃんかな? 良いな、特別な着信音だなんて。それに私が団君としたい事全部してる……羨ましい」

 

 アカンアカンアカン! 火に油注いじゃったよ!

 更に苛烈になる色とりどりの神技。ちょっこれ下手したら死ぬレベルじゃないですか主人公様ア!? 無理心中は流石にノーセンキュー!

 え待って!? 終わり!? 俺の物語ここで終わる!? 嘘だろ!? こんなんリスポーンキル(リスキル)じゃん! 1話で詰む物語なんて聞いた事ねえよ!? 短編小説じゃねえんだこちとら! とにかく何とか──

 

 

 

 

 

 

 

 

おにいの妹:『助けてマイスイートシスター』って叫べば助かるかも!

 

 それ助からないやつ!!

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