この乙女ゲームの攻略情報は、妹だけが知っている〜主人公の師匠ポジになってしまった兄より〜   作:ゲスト047562

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第13話 千尋の谷に落ちるのは、子だけじゃない

ダイダラぼっち:私達、距離を置いた方が良いと思うの

 

天外理愛:嫌だけど

 

ダイダラぼっち:ワガママ言わないの! 全くこの子は〜

 

天外理愛:何でお母さん風なの?

 

ダイダラぼっち:俺といたら緊張感薄れるだろ。偶にはソロで試練の祠に潜って戦闘してきな

 

天外理愛:分かった! 後で結果送るね。また来週もよろしく

 

ダイダラぼっち:来週も1人で頑張れよ

 

天外理愛:嫌だよ?

 

天外理愛:【不在着信】

 

天外理愛:【不在着信】

 

ダイダラぼっち:うるせェェェェェ!! いつでも保護者同伴出来ると思ってんじゃねえぞ甘ちゃんが!!

 

天外理愛:強くしてくれる約束はまだ有効だもん!

 

ダイダラぼっち:俺がいたらまた心がヘタれるかもしれねえから、その弱さを自覚してこいって事! おk!?

 

天外理愛:ご褒美欲しい

 

ダイダラぼっち:じゃあ何が欲しいか考えとけ

 

 ◇◆◇◆◇

 

 ここ暫く、天外に付きっきりだったせいで自分の強さに不安が出てきた。

 だってあの子、人の教えを吸収するのがマージで早いんだもん。自信無くすわ。最近の若い子って、皆あんな感じなのかねえ……時代は変わったもんだ。

 そんな訳で、天外とはしばしのお別れ。俺も自分のレベルアップに勤しむ事にした。

 天外とは行けない、()()敵が強い試練の祠。強い妖魔は知能が高く、少しでもこちらの心を揺さぶろうとより悪辣な戦い方をしてくる。

 

「クク……我に挑んでから、我が攻撃を受ける事しか叶わぬとは。脆い脆い、やはり人とは脆弱で身の程も知らぬ愚者ばかり」

 

 流石にここに天外は連れて来れないな。アイツは俺の言葉でシーソーみたいに心が揺れるし。

 

「威勢が良いのは最初だけだったな。否、我が強いだけか。幽世から現世の狭間に来て幾年、ようよう地上に我が降臨出来るのか」

 

 ……天外は強くなった。それは間違いない。後は最後の仕上げとして、1人でも戦えるという覚悟の土台が必要なのだ。

 

「ほう、この状況でも心に絶望は湧かず、身体は震え上がらぬか。その度胸だけは認めてやろう」

 

 …………俺の目的の為には、彼女にはどうしても強くなって、出来ればイケメン達と恋仲になって、ラスボスを討伐して欲しい。

 しかし、この考えはあくまでゲーム内でそうだったから、そうなって欲しいという希望的観測。彼女の選択を強制するつもりは無いし、彼女が世界の滅亡を選ぶなら、それならそれでまあ仕方ないよね。だって俺、別に原作やらキャラに愛着がある訳じゃないし。結は悲しむかもしれんが。

 

「ああ、楽しみだ……! 生の肉、しかも妖力をも含んだ極上の馳走。どうやって喰うてやろう、どうすればその顔w「さっきから五月蝿えなこのカス」……何?」

 

「人のモノローグの最中に喋ってんじゃねえよ。まだ俺が心の中で喋ってるでしょうが。自語りが好きなら壁とでも喋ってろよ老害蛇肉モドキがよ」

 

 全身の鱗が人の腕で出来た、巨大な蛇に話しかける。瞳の部分には顔があり、俺を丸呑みに出来る程の巨大な口から覗かせる舌は、綺麗な女性の見た目をしていた。

 イケノカミ。そう呼ばれるこのクソ蛇は、名前に「神」が付く通り、強い。強いんだが……まあうん、俺の()()()になる程度の強さでしかない。神の名を騙る妖魔が、この世界には多数いるんだなぁ。団を。 

 俺の罵詈雑言を受け身を固めていたイケノカミが笑い出す。そして、瞳に埋め込まれている顔が再び喋り出した。

 

「貴様……何と不敬な。この期に及んで、口から出る言葉がそんなものとは。滑稽を通り越し、いっそ哀れよのう」

 

「それな。妖魔にも認知症があるなんて思わなかったわ。無駄に何年も生きてるだけの老害は、見てるだけで可哀想で涙が出るわ」

 

「は?」

 

 受けの練習はもう良いや。コイツの妖技も参考になったし、そろそろご臨終タイムにしてやろう。

 剣を握り直し、止めていた足を前へ動かす。まだ全身に残る痺れを感じながら、無造作にイケノカミへ詰め寄る。

 

「ここんとこなぁ、受験勉強やら()()の教育やらで溜まってんだよ。今日は久しぶりに羽を伸ばせる」

 

「……そうかそうか。貴様は既に壊れておったか。恐怖を感じぬ肉に興味は無い。一息に呑んでくれよう」

 

 イケノカミの腕状の鱗が逆立ち、無数の牙が生えた口を開ける。

 俺を甚振る為ではなく、呑み込み捕食する為に奴は上から俺目掛けて落ちてきた。

 

「ははっ、人の話が聞けねえ所まで老害でやんの。後お前、名前負けし過ぎ」

 

 名付けは大事だが、何でもかんでも強そうな名前を付ければ良いという訳ではない。神を冠する名前を付けたところで、それを扱う者に相応の実力が無ければ、それは自分を殺す刃となる。

 まずは自分の身の丈を知る事。それが出来ないから、イケノカミは神以下の存在しかなれないし、それが奴の死因でもある。

 

「なっ──」

 

 イケノカミが巨体を唸らせてこちらに飛んできた刹那、俺の剣が鈍色の光を纏う。

 そこに込められた妖力に気付き、捕食から一転、イケノカミが俺から逃げようとした。だが、さっきから散々舐めプかましていた大蛇如きが、今更回避とは片腹痛いんだよなぁ!

 

葬環斬(そうかんざん)

 

 剣を振り向く。その軌跡から生じた幾つもの剣閃が、イケノカミの身体を削り落としていく。

 

「ガアアアアオオオオオオッッ!?」

 

「うーむ、切れ味が悪いな。もっと改善の余地はあるか」

 

「き、キサマアアアアアアアアアアアア!!!」

 

 鱗を剥がされ肉が剥き出しになったイケノカミが激昂する。怒りに震える巨体が、俺に向かってくる。

 反撃する余力があるのか。見た目程ダメージは受けてないんだな。

 

「ゴッ──……」

 

「まあ、だから何だって話なんだが」

 

 俺に敵を甚振って愉悦する趣味がある訳でもなし。言葉も解さなくなった大蛇の首を、一刀で刈り取る。

 イケノカミが消え静かになった試練の祠で、俺は剣を納める事なく構えた。

 

「で? 次はお前か」

 

 先程から物陰で隠れている奴に声をかける。俺とイケノカミの戦いをひっそりと眺めていた奴は、俺が気が付いていると分かったのか姿を現し……って。

 

「師範じゃないっすか」

 

「ああ。見事な戦いだったな」

 

 幻影や変身の類……では無いな。本物の師範だ。

 試練の祠で師範と……いや、人と会う事自体初めてだ。結によると、加護持ちは恒常的に試練の祠に潜るから、休日は試練の祠には行かないのが殆どらしい。

 だから普段は会わない筈なんだが、何でいるんだ?

 

「最近、学園がどこか物々しい雰囲気でな。落ち着かなくて修行していたら、偶然お前がイケノカミと戦っているのを見かけたのだ」

 

「ほーん。なるほど」

 

「苦戦しているようなら、師範らしく手助けに入ろうと思ったのだが……随分と強いんだな? 弟子」

 

「強くなる為に来てるんで」

 

「それに口が悪いな」

 

「ウス」

 

 それはガチでサーセン。性分なもので。

 師範の服装は、いつもの道着じゃない。動きやすい軽装の胸当に、関節を守るプロテクター。戦国シミュレーションゲームの姫武将みたいな出立ちだ。

 修行に来ているという意気込みは本物のようだ。なら邪魔する訳にはいかないな。

 軽く会釈して、先輩に踵を返す。回れー右。

 

「じゃ、頑張って下さい。俺は」

 

「ま、待てっ!」

 

「ハァイ?」

 

 何故か呼び止められ、説教は嫌だなーと思いながら振り向く。はい回れー右。

 師範は、見慣れない装いを見られるのが恥ずかしいのか、若干モジモジしながら俺に目配せを送ってくる。

 ……「似合いますね」なんて言う場面じゃないよな? どうしたんだ?

 

「その……今日は一緒に、挑まないか……?」

 

「…………うん?」

 

 別に良いけど、何で?

 

「ほら、師範たる私が、実はどれ程強いのか弟子は疑問だろう?」

 

「いや別n「それに弟子の今を知らなくては、何を教えて良いのか分からなくなるからな!」」

 

「まあたs「ここで会えるのも縁だと思わないか? 今日は共に修行しようじゃあないか」

 

「あの、良い「そうかそうか! よし、なら先に進むか。安心しろ、私は強いぞ?」話を聞けやァァァァ!!」

 

 一々言葉を被せないと会話出来ねえのかこの人!

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