この乙女ゲームの攻略情報は、妹だけが知っている〜主人公の師匠ポジになってしまった兄より〜 作:ゲスト047562
ふと思った。
この人、キャラ濃いな。原作キャラじゃね?
「で、でで弟子。良い天気だな」
「試練の祠で天気も何も」
「じゃじゃあ本日はお足元の悪い中」
「屋内で天気関係ねえって言ったよ? 情緒バグってんのか?」
な? おもしれー女だろ? 何故試練の祠で一緒に戦う事になるだけで、ここまでバグるのか。
ぶっちゃけ、女受けしそうな顔面してるから、この人ワンチャン攻略キャラなんじゃね疑惑があるんだよな。護身術の師範代、同じ加護持ち、濃いキャラクター性。これで原作に関わってない方がおかしいだろってレベルで完成されてると思うんだが。その辺どうなってんだ運営。
カミカゴは乙女ゲーム。男キャラを攻略して当然ではあるものの、女キャラを攻略して百合エンドとかの需要もあったのかもしれん。奥が深いわぁ……。
さて、いつも以上に様子のおかしい人を眺めるのは面白いが、ちょっと場所が悪過ぎる。別に2人で出掛けるぐらいなら、前もしただろうに。俺の財布からほぼ全財産を食い尽くした事、決して忘れぬぞ。
「どうしたんすか師範。今日はいつも以上におかしいっすよ」
「す、すまないな。弟子に良い所を見せ、献魂護身術をより精進してくれるのを妄想してだな」
「全部言うじゃん。心の中ダダ漏れかよ」
大丈夫かこれ。ここ試練の祠ぞ?
とか思ってたら、俺の死角を縫う様に妖魔が飛び出してくる。
壁と地面を縦横無尽に飛び跳ねながら向かってくる妖魔に反応し銃を構えると、それより速く師範が動いた。
「
「!」
俺と妖魔の間に、半透明の剣が幾つも展開される。剣は互いに重なり合い盾となり、妖魔の攻撃を受け止めた。
「くっ……!」
「アイアン・トリガー」
衝撃で師範が苦しそうに顔を歪め、身体が後退する。盾がヒビ割れそうになったその時、俺の銃が妖魔を撃ち抜く。
銃弾は貫通こそしなかったものの、奴は苦しそうに呻いて盾から飛び退いた。
「ノモリムシか。手強いぞ、気を付けろよ」
「っす」
6本の足に、6本の指を持つ巨大な蛇。目に見えて異様な形状の妖魔が、こちらを威嚇する様に発光し、足が大地を抉らんばかりに握り込んでいる。
師範の手に茶色い光が宿り、盾となっていた剣が1つになる。普通の剣とはまるで違う、根本が円を描いた剣。それを盾の様に構えながら警戒を強める。
瞬間、ノモリムシが一際強く輝き、姿が掻き消える。
「来るぞ!」
「gyuryyyyyyyyyyyy!!」
一瞬で視界から消える脅威の速度。まるで稲妻だ。
その勢いを乗せた攻撃を受ければ、ひとたまりもない事は火を見るより明らかだろう。
「
今度は俺が、ノモリムシの巨体を受け止める。
俺達を守る様に張り巡らせた鉄条網が、ノモリムシの足を絡め取り肉を削ぐ。
「師範!」
「剣よ、我が誇りを貫き通せ《シュヴァルツ・アインファッツザシュトゥルン》!」
鉄界網が生き物の様にまとわり、食らいつく。それでも雷速で突っ込んできたノモリムシを完全に制止するには至らず、師範の目前で大口を開けた。
その無防備な体内へ、茶色い螺旋の閃光が吸い込まれた。閃光はノモリムシの胎内を駆け巡り、内側を破壊し尽くして尻尾から飛び出す。
防御不能な一撃を、文字通り喰らわされたノモリムシは、霊力を落としてミキサーにされてしまった。
「……無事か?」
「はい。師範もナイスです」
「当然だ。私は師範だからな」
師範が嬉しそうにフンスと胸を張る。思春期の自己肯定感に、思わずこちらもほっこり。
つか師範、こう言っちゃ悪いがちゃんと戦えたのか。まあそれならそれで良いんだが……それよりも、
「弟子、良いアシストだったぞ。さっきの戦いでも何か使っていたが、今のは妖技か?」
「そっすね。今のは金属性の妖技です。妖力は神力と違って、全部の属性に変化出来るんで」
「そうなのか?」
「つか師範、良いんすか? 俺、これでも自分の立場は理解してるつもりなんすけど。妖力持ちって加護持ちから嫌われてるんじゃ?」
やっとマトモになった師範に聞きたい事は色々あるが、とりあえず喫緊の問題を聞いておく。
加護持ちとの共闘は、俺としても有難い。だが、それが原因で師範が周りから白い目で見られるのだけは御免だ。道場の再興も経ち行かなくなるだろう。
そんな俺の懸念を、師範は軽く笑い飛ばした。
「はっはっは、心配するな。学園の生徒は、妖力を持った人間を実際に見た事が無い。変な目で見られる事はあっても、正面から嫌ってくる者は殆どいないだろう」
「そう……なんですかね」
「それに、妖魔に魅入られた人間がそんな事を気にするものか。それだけで信頼できるよ。流石は私の弟子だ」
そうして、献魂院奏は笑う。まるで、自分の事の様に嬉しそうに。
……やっぱ良い人だよな。俺も、その期待に少しでも応えたくなってしまう。
「……ははっ。弟子として、恥ずかしい姿は見せれないっすね」
「ああ! さあもっと行くぞ! 献魂護身術はまだまだ強くなる!」
「あっちょっ師範待っ」
早い早い! 立ち直ったと思ったら行動早過ぎるって! まだ聞きたい事あんのに!
◇◆◇◆◇
「ゴォォォオオオオ!!」
「剣よ吠えろ、我ら戦の為に舞い、堅固にして強壮たるをこの戦場に刻まん!」
人と蛇を合体させた姿をした妖魔、リザードマン。単体ではなく集団で狩りをしてくる奴らを相手に、俺は1人で囮を担う。
鋭い爪を掻い潜り、叩きつけられる尻尾を斬り飛ばす。遠距離から飛んでくる妖技には空掌を盾にして迎え撃ち、銃口を向けて警戒させ、祝詞を唄う師範に近付かせない様に立ち回る。
「弟子!」
「左!」
「破壊の壁を戴く誇りの剣《ツェアシュテールング・ヴァント・シュヴァルツ》!」
師範が剣を振るう。すると、大地が大きく唸りをあげて大波となる。土塊の大波は地を揺るがしながら、俺達の左側にいたリザードマン達を呑み込んでいく。中に入った者は、ミキサーの様にグチャグチャにされているだろう。
だが、恐らく致命打にはなり得ない。なのでその中に、銀色の光の粒を何個か放り込む。
「グレイワークス!」
瞬間、銀色の光が波の中で生まれる。光は幾つも溢れ出し、それを大波が巻き込んで銀の竜巻となって周囲を切り裂いた。
「今だ!」
「
群れの半分を滅ぼした竜巻を前に、リザードマンが狼狽える。それを見逃さず、金属性へ変化させた空掌でリザードマンを掴み、竜巻へ投げ飛ばす。
「ゴギガッ!」
「ガ、グゴッ!?」
『ギギー!!』
これ以上の犠牲を出さない為か、リザードマンが逃げ出す。視界の端にまでいた妖魔の集団は、あっという間に見えなくなってしまった。
「……消えた」
「ふぅ、何とかなったな」
「アンタが無闇矢鱈に突っ込まなかったらもっと楽だったんですが」
……ぁぁぁあああっぶねええええええええええ!! し、死ぬかと思ったああああああ!!
テンションの上がった師範と、それを追いかける俺。そしてリザードマン達が待ち伏せして襲いかかってきたのでさあ大変。
師範の起死回生の神技が無かったらヤバかった……いやこうなった原因も師範じゃねえか。マッチポンプやめてね?
「すまない。でも夢だったんだ、こうやって弟子と共に妖魔と戦うのが。何せ、献魂護身術は冷遇されているからな」
「お、おう……」
そんな無邪気な笑顔を浮かべないで下さる? おじさんに刺さっちゃうから。
何か良さげな雰囲気出してるけど、こっから過去回想でも始めないよね? それ主人公の特権だから。俺にその役目奪わせないで?
「力の無い人でも身を守れる術。聞こえは良いが、加護持ちからすれば『自分達の信用がないのか』と捉える者もいる。加護持ちで献魂護身術を学ぶ私には、特に風当たりが強かった」
あ、駄目ですわ。始まっちゃいましたわ。
スマン天外と読者諸君。百合ルート潰したかもしれんわ。
「別に加護持ちに理解されなくとも構わなかった。献魂護身術は、加護無しの人達の為にあるんだからな。そんな時だ、お前が来たのは」
「はぁ……」
「本当に驚いたさ。どこでこんな寂れた技術の事を知ったのか、何故護身術を習いたいのか、そして妖力を手にしてまで何をしたいのか。弟子、お前はどこまでも不思議な奴だった」
それはそう。人生2周目でーすwwwこの先人類滅亡ENDあるんで手助けしたりますかwwwなんて口が裂けても言えねえし。
献魂護身術も、ネットで都市伝説的な意味で馬鹿にされてたから藁にもすがる思いで門戸を叩いたから、完全に半信半疑だったしな。
「覚えているか? 私達が献魂護身術の再興について話していた時、弟子が何を言ったか」
「え?」
何か言ったっけ? 全然覚えてねえや。
俺の事だから絶対気の利いた台詞なんて言ってねえぞ。
「ふふ、今でも忘れられないぞ」
「ええ……俺何か言いましたっけ」
「ああ。
『いやー、きついでしょ(笑)』とな」
「それ根に持ってるって言うんですよ師範」
今回の件ってそれの復讐だったりする? 『貴様の日頃の行いを恨め』的な。