この乙女ゲームの攻略情報は、妹だけが知っている〜主人公の師匠ポジになってしまった兄より〜   作:ゲスト047562

15 / 15
第15話 強くなる道

「いやいや、そうじゃない。確かにそれだけだったなら、今頃お前は剣の錆になっていたが」

 

 オイオイオイ、死んでたわ俺。

 アカンガチで覚えてねえ。そんな最低な事口走ってるなら、師範は養豚場の豚を見る目で見てくる筈だよな? え、俺ライン越えから入れる保険に入ってたの?

 恥を偲んでというより、恐怖を飲み込んで恐る恐る聞いてみることにする。

 

「こ、好感度マイナスの状況を挽回出来る発言しましたっけ」

 

「……本当に覚えてないのか? その後、私をあれだけ辱めたのに」

 

「あれだけ辱めたのに!?」

 

 オイオイオイ、(社会的に)死んでたわ俺(今日ぶり2度目)。

 や、やべえよ……年頃の乙女を辱めたって、そんなドグサレ外道ムーブいつかましたんだ俺!? それを覚えてねえのはやべえって!!

 アカンホンマ吐きそう。二日酔いより酷い眩暈が俺を襲うが、ここまで来たら最後まで聞かない訳にはいかない。

 教会で罪を懺悔する罪人の如く、師範の言葉を待つ。

 

「そう、お前は私に……如何に道場経営が下手なのかを説いてきたのだ」

 

「はぁ…………は?」

 

「献魂護身術を学ぶ上で、生活上のメリットを具体的に示さない。五行家と比べて知名度が圧倒的に低い。周辺地域の理解度などなど……張り紙や広告などの、地道に知名度を上げていく事を教えてくれたじゃないか。私が名を上げる為に試練の祠を練り歩こうと、凄いのは神霊と私であって護身術ではないと見られてしまう。その事にすら気付けず、一足飛ばしで名を売ろうとしていた私が愚かだったと、お前は教えてくれたじゃないか」

 

「……ま」

 

「私の恥ずかしい思い違いを……ん? どうした?」

 

「紛らわしいんじゃあァァァァァァァァ!!!」

 

 ガチで焦ったじゃねえか!! 唯当たり前の経営戦略話しただけでここまで言う!? どんだけ恩を感じてんだよ! 俺何も特別な事してねえよこのポンコツ娘がぁ!!

 

「何を言う。お陰でウチは、ヒッソリと避けられていたご近所付き合いも良くなったんだぞ。お前には感謝しているんだ」

 

「もっと言い方あるでしょうが! 無駄に重い責任を背負わされてた俺の身になれ!」

 

「勿論責任は取ってもらうが」

 

「脅迫じゃねえか!!」

 

 嫌だよそんな降って湧いた責任。

 今時の若い子ってのは視野が狭過ぎる……いや、この世界も加護持ちいなきゃ割と詰んでる世界だし、早い内から子孫を残す的な意味でもあるのか? 結構ヤバい世界なの? 乙女ゲームなのに?

 

「はぁ……もう良いや。このポンコツはいつもの事だし」

 

「今私を馬鹿と言ったか」

 

「言ってない。丁度いいから聞くんすけど師範、修行は分かるんですけど、何で()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ん? どういう意味だ?」

 

「いや、師範の神霊は土属性でしょ」

 

「ああ、彼の名は吉備津彦(きびつひこ)という。そういえば、まだ紹介してなかったな」

 

 ききき吉備津彦!? 桃太郎の元ネタやん! そんな凄いお方が神霊なの!?

 え、ちょっとそれは気になる。お、お話とかさせて……駄目? 時間ある時で良いんで……。

 

「安心してくれ。私は彼にそんな気は無い」

 

「どうした急に。そうじゃなくて、強くなる為なら何で火属性の妖魔がいる祠の行かないんすか?」

 

「……?」

 

「……相生(そうじょう)って知ってます?」

 

 首を横に振られた。マジかコイツ。

 相生とは、五行思想における重要な要素だ。

 簡単におさらいしておくと、五行思想は『互いに影響を与え合う』のだ。

 それは弱点相性以外にも、輪廻転生の様なシステムとしても機能している。それが相生。1つの属性を討ち滅ぼし、新たな属性を生み出すという仕組みだ。

 ゲームだと、加護持ちはその相生の法則に則って妖魔を倒す事で、自分の属性を強化するのが普通だった。そうじゃなくとも、他の属性への適性を上げる事も出来るから、一概に無駄とは言えないが。

 ルールは一見複雑に見えるが複雑だぜ。覚えると面白いんだけどな。

 

「吉備津彦が土属性なら、火生土(かしょうど)……つまり火属性の妖魔を倒せば、より強くなれるっつー事っすね」

 

「……」

 

「大丈夫ですか? 俺の言葉分かりますか?」

 

「何故そんな事を知ってるんだ?」

 

「はい?」

 

 気付けば、師範の目が鋭く俺を見つめていた。

 何故そんな目で見てくるか分からないが、まるで今にも剣を抜いてきそうな剣呑な雰囲気に、思わず押し黙る。

 

「神霊と言葉を交わし、神霊学園に通っている私ですら、その話は初耳だ。なのに何故、加護無しであるお前がそこまで知っている」

 

 ……そんな馬鹿な。

 五行思想が根底にある世界で、相生を知らない筈が無いだろう。あるのに無いとはこれ如何に。

 いや待て。五行思想を知らない人に対して、ゲームではチュートリアルが設けられている筈だ。相生も然り。ならば、相生はまだ見つかっていない要素なのでは?

 もし本来ある要素なのに、主人公の成長によって相生というシステムが説明される場合、どの様に補填するのか。

 ……まだ研究されていなかった分野、とか。ヒロインは、全ての神霊から加護を受け取れる完璧で究極なアイドル。彼女が成長する過程で、自分に必要な属性を鍛えるにはどうすれば良いか。そうやって、相生というシステムが見つかる予定だったのかもしれない。

 ……どうしよ。何でこんな基礎すら知らねえんだよこの世界。よく今まで妖魔の家畜になってないな人類。

 あっいかん。師範を無視して考え込んでたわ。そろそろ相手してあげないと拗ねるな、直感で分かる。

 

「どうしたんだ? 弟子」

 

「大丈夫です。ちょっとどう言おうか悩んでて。俺だって、強くなる為に色々調べたんですよ。中でも相生は重要な要素ですから、加護持ちは全員知ってると思ったんすけど」

 

「……なるほど、確かに。加護無しが強くなれる方法は限られているからな。だがなぁ……弟子、何故お前はそこまで強さに拘るんだ?」

 

「拘ってる訳じゃないんすけどね」

 

 別に俺は、強くなりたい訳じゃない。唯、目的を達成する為に必要だったのが強さだっただけで。

 2度目の人生もままならないものよ。はぁ、本当に……。

 

「俺だって、好き好んでこんな場所で戦ってる訳じゃないんすけどねぇ……」

 

「……だが、私は楽しいよ」

 

「んぇ?」

 

「私が護身術を身に付けていると知っている皆は、普段から私を避けていてな。だから、誰かと試練の祠に挑むのは初めてだったんだ」

 

「え、そうだったんですか」

 

 言われてみれば道理で、動きに協調性が無いと思った。パーティを組んだ事が無かったのか。

 良く今まで無事でいられたなこの人。加護持ちでも()()()()()()()()()とかあった筈だが、それをソロで突破出来る程度には実力がある……のか?

 

「しかも初めての相手が、同じ道を進む弟子なのだから、楽しくない訳がない」

 

「言い方気を付けてね? 誤解招くから」

 

「護身術は戦う術ではなく、身を守る術。そう言い聞かせてきたが、やはり同じ道で共に戦ってくれる仲間がいると思うと高揚するな」

 

「はいはいそうですね。言い方」

 

「なあ、これからも一緒に試練の祠に行かないか? 弟子、もっとお前を知りたいんだ」

 

「わざとやってる?」

 

 さっきから語弊のある言い方ばっかやぞ。やめようね、おじさん誑かすの。

 だが、その提案は魅力的だ。加護持ちの戦い方を生で見れるチャンスでもあるし、もっとレベルの高い試練の祠の事を聞けるかもしれない。結に聞いても、はぐらかすばかりで何も教えてくれないからなぁ……。

 

「まあ、俺で良ければ是非。師範の神技ももっと見たいですしね」

 

「ああ! 良いぞ!」

 

「とりあえず、ここは師範と相性悪いんでまた別の……」

 

「私の吉備津彦は土属性なのは話したが、実は私の神技は防御系が殆どなんだ。剣は盾の役割も兼ね備えていて、神力を更に込める事で巨大な盾に変形するんだ。それと最近は火属性の神技も使える様になったぞ。これはお前の言う相生の効果の影響か? 後──」

 

「うるせェェェェェ!! 話は後で聞くからまずは帰らせろや!」

 

 やっぱこの人距離感バグってるよ。自分の事全部言うじゃん。

 うーむ、性格が道場経営に向いてなさすぎる。そっち方面の才能が無いと、献魂護身術の再興は難しいと思うが……そこは追々、成長してもろて。人生は色々あるやで、頑張ってな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……そうか。弟子は押しの強い女性は苦手か……」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

魔法少女世界で俺のエンカテーブルがクール系に偏り過ぎてるんだが(作者:TSから逃げるなぁぁ!!卑怯者おぉ!!)(オリジナル現代/冒険・バトル)

「大変だお前ら!魔物が現れ」「私には関係無い。」「騒ぎ立てる程の事ではないわ」「私が出る必要が無い…」「…………」「貴様に言われずとも分かっている!」「たぞああぁあああぁああッんああああぁあぁああ」


総合評価:1200/評価:7.71/連載:8話/更新日時:2026年06月16日(火) 19:00 小説情報

原作を諦めた男、原作が終わった後に原作キャラに絡まれる(作者:オワッター)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

好きだったゲームの世界に転生したものの、才能と環境が原因で原作に関われなかったセオドは、ある時原作が終わったことを風の噂で耳にした。▼そんな彼の元に、原作では死亡するはずだった少女リリシェラが現れる。▼しかも彼のことを師匠と呼び慕ってくるのだ。▼だが、そんな彼女は色々な理由から、世間知らずのお嬢様になっていた。▼結果として、リリシェラに生き方を教える「師匠」…


総合評価:2682/評価:8.54/連載:5話/更新日時:2026年03月23日(月) 12:04 小説情報

悪徳領主に転生して死亡フラグを折るために勇者パーティを育てたら、激重感情を向けられて逃げられない件(作者:激重大好き)(オリジナルファンタジー/コメディ)

目が覚めたら、プレイしていた百合RPGの「序盤のやられ役」である悪徳領主ルシアンに転生していた。▼しかも、すでに悪魔と契約済みであり、このままだと勇者に倒されなくても魔力タンクとして悪魔に殺されてしまう完全な『詰み』状態。▼どうしても死にたくない俺は閃いた。▼「原作開始前の勇者たちを見つけ出し、俺が育てて悪魔を倒す。これしかない!」▼悲惨な過去を背負うはずだ…


総合評価:2595/評価:8.31/連載:6話/更新日時:2026年04月02日(木) 18:30 小説情報

ヒロイン達の好感度を、何故か友人キャラの俺が知っている(作者:こなひー)(オリジナル現代/恋愛)

https://syosetu.org/novel/392769/▼先日投稿した「ヒロイン達の好感度を友人キャラが知っているのは何故なのか」の長編化版です。▼2章まですでにマルチ投稿済なので、そこまではまとめて投稿します。▼以降は週2話、水曜と日曜に更新していく予定です。▼「友田、今の彼女たちからの好感度を教えてくれ」▼「ああ、わかった」▼ 自称主人公の青野…


総合評価:2532/評価:7.74/連載:51話/更新日時:2026年07月12日(日) 21:00 小説情報

ソル&ヴァルキリー:かませ騎士に転生した俺、破滅回避のため落ちこぼれヒロインを育成していたらいつの間にか天才と呼ばれてしまう(作者:マテリ-AL)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

全51話・約32万字/完結済み▼毎日20:18更新▼『ソル&ヴァルキリー 』。神の代弁者・魂導者(ソル)となり、戦乙女(ヴァルキリー)を空へ育て導くヒロイン育成系学園RPG。▼これは、そんなゲームの世界で、▼「戦乙女という空を飛べて広範囲殲滅魔法を使える存在がいるのに、騎士になる意味はあるのか……?」▼と考えてしまい、魂導者となったやられ役のかませ騎士、ルシ…


総合評価:5915/評価:8.42/完結:52話/更新日時:2026年05月09日(土) 10:18 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>