この乙女ゲームの攻略情報は、妹だけが知っている〜主人公の師匠ポジになってしまった兄より〜 作:ゲスト047562
うう、やっぱり不安だなぁ……。
神霊学園。師匠と噂だけだけど、話は聞いていた。
曰く、『化け物養成所』『国の最終防衛ライン』『加護持ちの集う戦場』。
……師匠、流石にもっと言い方があったんじゃないかと思う。私達を守ってくれてる人達だよ?
……って、私もその1人になったんだった。
「はぁ……」
今日何度目か分からない溜息が出る。その息でさえ、チラチラと気にしてくる人達がいるから、気が重くなる。
私は今日から、その神霊学園に入学する。一般科ではなく、本来なら中等部から通う筈の守護科に。
周囲は皆顔見知りばかりで、私だけが新参。いきなり新たな加護持ちとしてやってきた私は、盗み見る様な無粋な視線に晒され、少し参っていた。
やっぱり、場違いだよぉ……。
◇◆◇◆◇
代陀羅君の妹、結ちゃんは校内を簡単に案内してくれた。彼女の天真爛漫な笑顔が、心にある不安を洗い流してくれる。
「おにいから話は聞いてましたよ! まあ神託の巫女の事漏らしたの、ウチなんですけど」
「え、そうだったの?」
「そうなんですー。おにいがウチにどーしてもって言うから、色々教えてあげたんですよ」
「じゃあ、私が師匠に会えたのは結ちゃんのお陰だったんだ。ありがとう、結ちゃん!」
「は、はわわ……何て屈託の無い笑顔……ヒロイン力が天元突破してる」
「ヒロイン力?」
彼女の会話は、所々理解出来ない所もあったけど、ちゃんと
でも、彼女はまだ中等部。入学式の前には別れなきゃいけなかった。
「またお話しましょー! 食堂は中等部も使えるんで、そこで会えますし!」
「うん! またね」
そう約束し、彼女は慌しく去っていった。結ちゃんは、最後の仕草まで可愛かった。
教室に着くと、それまで外からでも聞こえていた騒々しさがピタリと止み、中から無数の視線が突き刺さる。
妖魔から向けられる敵意ではない、場違いな異物を値踏みする様な目に、思わず身体が竦む。
視線の筵を避ける様に隅っこの席に移動すると、タイミングを見計らったみたいに入学式の為の移動が始まってしまう。とても友達を作れる雰囲気なんかじゃ無かった。
……はぁ、怖いなぁ。私、これからどうなっちゃうんだろ。代陀羅君は、『色んな加護持ちを見てこい』って言ってたけど、本当に出来るかな。
『神霊学園中等部へ入学の皆さん、そして高校から新しい風を齎してくれる次世代の友人達へ。まずは、同じ場に集えた事への歓びと感謝を送ります』
それにしても、結ちゃん可愛かったな。代陀羅君と兄妹らしいけど、疲れて死んだ様な目をした彼と全然違ったな。可愛くてキラキラしてて、アイドルみたいだった。
『神霊の守護が付いた我々は加護持ちと呼ばれていますが、まだ社会を知らぬ未熟者でしかありません。至らぬ点ばかり目立ちながらも、それを共に乗り越え飛躍する友を探す旅の途上です』
代陀羅君、もしかして結ちゃんが心配で一般科に来たのかな。あんな可愛い妹がいたら、誰だって心配しちゃうもん。
『我々は同じ世界を生きている、唯の人なのです。共に努力を惜しまず、夢に邁進しましょう』
入学式は守護科と一般科で列が分かれちゃってるから、全然見えない。代陀羅君、ちゃんといるよね?
『以上で、入学式を終了します。高等部守護科の生徒は、これより校庭へ移動をお願いします』
「えっ」
いけない。話を聞き逃しちゃった。生徒会長らしい男子が壇上で祝辞をしてたのは覚えてるんだけど……何をするんだっけ?
とにかく、周りの人達の邪魔をしないよう、流されるまま校庭まで行く。
そうして現在。私は何度目かの溜息を吐いてしまった所だった。
ああ、代陀羅君に会いたいなぁ。こんな時、彼なら何だかんだ言いつつ近くにいてくれるんだろうな。
それと結ちゃん。あの子、初対面の私にも凄く優しかったな。でも、私が神託の巫女だって話は誰から聞いたんだろ。それに……結ちゃんは、何か──。
「……ぃ。おーい、大丈夫か?」
「……え? あ、私っ?」
「おお、苦しそうだったから声掛けたんだけどさ。大丈夫か?」
思考の渦に呑まれていた私を、誰かが引き戻す。驚いて、声をかけてくれた人に振り向く。
ツンと尖った、燃える様な赤い髪をした、私と同じくらいの身長の男子だった。芯の強そうな赤い瞳が、真っ直ぐに私に向けられている。
私が反応すると、彼は快活な笑みを浮かべる。
「オレ、
「あ、天外理愛です。よろしくお願いします」
「燕次、いきなり走り出さないで下さい。他の方に見られてしまいます」
「ああ、ワリーワリー。へへ」
続けて、彼の後ろからまた男子がやってくる。
赤い髪の朱夏君とは対照的な、サラサラとした青い髪。長身で線が細い、疲れた顔が印象的な人だ。
眼鏡を直しながらやや早歩きでこちらに近づいて来るその姿は、弟を叱る前のお兄さんみたいだった。
「いきなり失礼しました。私は
「あ、どうも。はじめまして」
突然の出来事に困惑こそしたものの、やっと話せる人が出来てほっと胸を撫で下ろす。
すると、2人は少し顔を近付け、周りに聞こえないように小声で喋り出した。
「先生から話は聞いてるぜ。神託の巫女に選ばれたんだろ?」
「私達は、学園で貴方をサポートする役目を賜りました。どうかよろしくお願いします」
「え?」
サポートって……それなら最初からしてくれれば良かったのに。
口に出かけたその言葉をぐっと呑み込み、私も笑顔を浮かべる。
「ありがとう。もしかして、五行っていう人達なのかな?」
「お! 良く知ってるな。オレと幹也は、五行家って言われてもピンとこないんだけどな」
「こら燕次。我々のご先祖が、これまで神霊に支えられてきたのは事実でしょう。その彼らが神託を授ける程の事態なのですから、協力するのは当然です」
「悪かった。こんなの初めてだったから、段取りが全然取れなくてな。ホントだったらもっと早く会いたかったんだ」
「あ、そうだったんだ」
やっぱり、この人達も悪気があった訳じゃなかったんだ。
そうだよね。私の時だって、国の偉い人が来たぐらいだもん。彼らも、自分だけじゃ何も出来なかったんだ。
何となく彼らの境遇が分かり、モヤモヤとした気分が少し晴れる。
「大丈夫。私も良い人に会えたし、気にしてくれてありがとね」
「っ、そうか? そ、そうだ。この後、学校の行事で試練の祠に潜るんだ。一緒に行かないか?」
? どうしたんだろう。急に早口になって……。
それよりも、加護持ちが校庭に集められたのは、試練の祠に行くからだったんだ。あそこで集まってるグループは、試練の祠に行くパーティだったんだね。
「天外も1人は不安だろ? だから……」
「あ、それなら」
「え?」
「ちょっと誘いたい人がいるんだけど」