この乙女ゲームの攻略情報は、妹だけが知っている〜主人公の師匠ポジになってしまった兄より〜   作:ゲスト047562

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第19話 オッサンはね、沢山の若者に睨まれると疲れるんだ

 ほーんなるほど。やっぱ、今日がチュートリアルの日だったんだな。

 校庭で集まっている加護持ちを見ながら、ぼんやりとそんな事を考える。

 奥の方には、見た事も無い程巨大な扉、試練の祠の入り口が聳え立っている。試練の祠には、洞窟タイプや遺跡など、様々な入り口があるが、あれだけデカいのは初めて見るな。

 

「なーなー、何見てるん?」

 

「肉壁」

 

「人の心とか無いんか?」

 

 隣に座る茂木裏を適当にあしらう。適当過ぎて、普段思ってる事がそのまま出てしまったが。

 つか何で横にいんだよ。席は自由なんだからとっとと他の男子の所行って勘違いさせるとかしてやれよ。俺はそれを眺めてニチャつくキモいおっさんになるからさ。

 

「なんや、カッコつけよってからに。そんなオッサンみたいな態度取らんと、莉乃ちゃんと青春しよーや」

 

「心はもうハードボイルドなおっさんなんだよ俺は」

 

「頭沸いとるやん」

 

「そのboiledじゃねえよ」

 

 上手い事言いやがって。

 さて、今はもう入学式も終わり、今日の予定はもう無い。あるとすれば、結の所に顔を出してお終いだ。

 献魂院奏先輩の所? 1年の加護無しが、上級生の加護持ちに会いに行くのは絶対に噂されるのでNG。

 

「この後どうするん? もう帰るんか?」

 

「んーどうすっかなー」

 

 改めて、この後の展開を軽くおさらいでもしてみよう。

 原作では、春の入学式から始まり、夏のイベントがあって、秋のイベントがあって、クリスマスイブにラスボスと対峙する。

 ……ガバガバじゃねえか! ふわっふわな知識しかねえからおさらいもクソもねえよ!

 まあ多分、最終決戦では恋人と一緒にラスボスに挑むんでしょ。その時、結の推しが死んでなければ万事オッケーかな。後は知らん。

 結論。にわか知識すらない俺が何を考えようと、結局無意味なのであった。原作改変は妹が頑張る部分なのでね。人生2周目なのに中身スカスカで草。

 

「……あ、図書室行きてえな」

 

「眼鏡しとるからってインテリキャラは無理があるやろ。その死んだ目治してからにしーや」

 

「キャラ付けじゃねえよ。つかお前、初対面でボロクソ言い過ぎだろ」

 

「ナハハ! ええやん、打てば響くっちゅーのはオモロい道具の証やで」

 

「おうそのドタマかち割ってやるよ」

 

 喧嘩なら買うで? ん? 男女平等パンチ喰らわそか?

 

「失礼する。代陀羅という名前の生徒はいるか?」

 

「ん?」

 

 突然、担任じゃない教師が困惑顔で俺の名前を読んだ。

 何だ? まだ何も問題起こしてないが。もしくは結と間違えたとか。

 

「1年1組、代陀羅団君。もう帰ってしまったか?」

 

 お れ や ん け 。

 おい茂木裏テメエ笑い堪えてんじゃねえよ。手を挙げようとするな。

 とにかく、これ以上の面倒ごとはごめんなので、適当に逃げるとするか。今日はもう店仕舞いや。

 

「あーソイツならもう帰っちゃいましたよ」

 

「おお、ありがとう、もうクラスメイトの名前を覚えたんだな。君は?」

 

「あ、代陀羅団です。よろしくどうぞ」

 

「……」

 

「…………だ、騙したな……!?」

 

「アホやwwwドアホがおるwww」

 

 テメエ笑い方に草生えてんぞ。

 

 ◇◆◇◆◇

 

「あ! 代陀「お前何してんの?」むぎゅぎゅ」

 

 お前かよォォォォォ!

 崩れ落ちそうになる膝を必死に止め、呑気にこちらに手を振る天外の頭を鷲掴みにする。

 いや何てとこに呼んでくれるん? そろそろガチで親離れして? 主人公の大切な出会いイベントに異物混入してるよ?

 俺が校庭に訪れた瞬間、周囲が一斉にざわつく。うんうんごめんねー変なのが来ちゃって。さっさと退散するから。

 

「なっ──! お前!!」

 

「ん?」

 

 横から伸びてきた手が、俺の腕を掴む。少し背の低い赤い髪の青年が、怒りに燃える目で俺を睨み付けていた。

 おお、知ってる! 知ってるよコイツ! 火属性の五行家の奴! もう出会ってたのね、良かった良かった。

 

「その手を離せよ」

 

「おお、悪い悪い。人様に見せるものじゃなかったな」

 

 うーん、分かりやすい正義レッドって感じだな。彼の言葉に従い、天外を解放する。

 いやーヤバい。何がヤバいって、皆が俺を見る目が完全に女の敵か只の敵なんだよね。ふええ(低音)、早くお家帰りたいよぉ……。

 ん? おっと、横にいるのは結の推し、眼鏡ブルーではないか。なるほどなるほど、まずはコイツらと一緒に試練の祠に行くのがチュートリアルという訳ですか。

 

「で、何でいきなりお呼ばれされてるんだ?」

 

「今から試練の祠に行くから、一緒に行きたくて……」

 

「ちょ、正気かよ!? 今さっきお前の頭を掴んだ男だぞ!?」

 

「む。あんなのいつもの事だよ」

 

「常習犯!?」

 

「おい、どうした。何が……」

 

 様子を見に来たらしい教師が、俺を見て固まる。

 ……え? 白髪の混じった前髪に隠された、疲れた目をした義手の教師だと? 何だこの『私の好きな性癖セット』みたいな男。これも攻略キャラ? 俺使った事ある?

 

「……誰だ?」

 

「代陀羅団です」

 

「……何故ここに?」

 

「保護者同伴で試練の祠に行きたい子がいまして」

 

「先生! 俺は反対です!」

 

「ま、待って下さい! し、代陀羅君は私に戦い方を教えてくれた人なんです!」

 

 周囲のざわめきが一層強くなる。

 あの、天外さんや? 持ち上げてくれるのは嬉しいけどさ、場所考えよ? 今ね、同学年の加護持ち皆いるの。加護無しが戦ってるってだけで、彼らは俺を厳しい目で見るのよ? 勘弁して?

 いやいやちゃいますよ皆さん! この子が言ってる戦い方ってのは、もう底辺も底辺、最低限っすから! 君らからしたら鼻で笑っちゃう内容なんで!

 

「!? 何で……」

 

「……あー、天外だったか。確かに、誰でも良いとは言ったが……」

 

「待ってくれ! それでも俺は反対だ!」

 

「……朱夏」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だってコイツ、()()()じゃないか!」

 

「……アヤカシツキ?」

 

 知らん。何それ怖。新たな概念?

 凍りつく周囲を他所に、様子を見守っていた眼鏡ブルーにコッソリ近付く。

 

「なあ、妖憑きって何?」

 

「なっ、え? あ、妖憑きというのは、妖力を持つだけでなく、操る事が出来る人の事を指す……その、今では使われない言葉です」

 

「ほーん、なるほど。蔑称みたいな?」

 

「そ、そこまでは……」

 

 まあ確かに、今まで妖魔と戦ってきたんだもんなぁ。妖力を操る=妖魔と同類と解釈されても仕方ないか。

 年相応の視野に、心のオッサンがニマニマしてしまう。うんうん、ヒロインに良いとこ見せたいんだろうねぇ、強い言葉がつい出ちゃうくらいには男の子なんだねぇ。

 だからね、天外さん。そんな凄い目を向けないであげてね? ヒロインがしたらダメな目してるよ?

 

「……朱夏、今のは駄目だ。謝罪しろ」

 

「う……ごめんなさい。言い過ぎた」

 

「ええんやで」

 

「終わりましたか? じゃあ私、師匠と一緒に試練の祠に行きます。良いですよね?」

 

「……い、いや! やっぱ待ってくれ。俺──」

 

「朱夏君。代陀羅君が一緒にいるの、神霊は反対してるの?」

 

 尚も食い下がろうとするレッド──朱夏って言うんだっけ──に、天外の冷たい声が降りかかる。

 予想以上の低い声で発されたその声にレッドは思わずたじろぎ、周囲の喧騒が静まり返る。

 あ、アカン! ヒロインの好感度が下がってまう! 序盤からこの空気は不味いですよ! つか神霊関係無いやん! 巻き込まないであげてよぉ!

 慌ててレッドの側に回り、必死に彼をフォローする。

 

「まあまあ、落ち着けって。悪気があって言った訳じゃないだろ? 単純に、新入生のお前を心配してんだよ。な? レッド」

 

「え? あ、ああ」

 

「でも師匠」

 

「それに、さっきの発言はマジで気にしてないから。妖力を持ってる奴を警戒するのは当然だろ? お前を守ろうとして咄嗟に出た言葉なんだよ。そうだろ? レッド」

 

「! お、おう! そうなんだ!」

 

「…………」

 

 き、気まずい……天外の視線もそうだが、全員の視線がこっちに集中してるし。

 レッドと肩を組み、仲直りアピールを見せつけてみる。ほら、ぼく悪い加護無しじゃないですよ〜。

 ……天外さん? その、『え? お前を罵ったそっちの肩持つの? 何してん? お前はこっち側だろ』的な目は止めてくれます?

 

「……あー、なんだ。代陀羅、だったか?」

 

「ん? 何すか」

 

 俺達の様子を見ていただけだった義手の先生が、面倒臭そうに頭をかきながら近付いてくる。

 

「神霊、八咫烏から許可が降りた。天外との付き添いを認める」

 

「えっ」

 

「ちょっ!? 先生!」

 

「だが、朱夏の心配は尤もだ。我々としても、神霊の言葉を鵜呑みにし、突然現れたお前を無条件に信じる訳にはいかない。お前が妖力を持っている理由は不問にする。その代わり、力を見せてくれ」

 

「えっえっ」

 

 いや、ワイ別に行きたいって言ってないんやが? こちらの意見無視しないでクレメンス?

 

「朱夏。お前が相手してやれ」

 

「!」

 

「今声を上げているのはお前だけだ。共に試練の祠に入っても問題無いか、その目で確かめろ」

 

「はい!」

 

「そういう事だ。それで良いか? 天外、代陀羅」

 

「良くn「はい! お願いします!」」

 

 ちょ、遮んなや! 俺は行く気ねえんだよ!

 さっきまで俺とレッドに対して向けていた、虚無を感じる目から一転、彼女は嬉しそうな笑顔を俺に向ける。

 それを見るレッドが、信じられないといった目で俺を見てくる。うん、分かるよ。俺も信じられないもん。そんな目しなくても、君の恋路の邪魔はしないから頑張ってくれ。頼むから。

 

「信じてるからね、師匠!」

 

「師匠言うな」

 

 無邪気に何を言うとんねん。

 嫌じゃ嫌じゃ、何で転生モノのテンプレが俺に来るんだよ。こういうのは結がやるべきだろ。俺関係無いやん、帰って良いすか?

 

「駄目だよ?」

 

 ……あの。ナチュラルに心読まないでくれます? しっかり逃げ道塞ぐんじゃありません。逃げられないでしょうが。

 えーどうしよ。とりあえずふざけ倒しとけば良いかな。君達の敵じゃないですよアピールさえ出来れば、睨まれはしないでしょ。

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