この乙女ゲームの攻略情報は、妹だけが知っている〜主人公の師匠ポジになってしまった兄より〜 作:ゲスト047562
「超神技はやり過ぎじゃない?」
「やり過ぎじゃないんじゃない?」
いややり過ぎだろ。
レッドとのやり取りを無事に終え、俺は晴れて天外との同行が認められた。
が、まあやっぱり新人2人は心配という訳で、結の推しであるブルーも付いてくる事になった。現在は試練の祠を潜ってすぐの所で屯し、先程のレッド戦を思い返していた。
いやぁそれにしても、レッドさん本気過ぎて超怖かったわ。武器はともかく、もうちょっとこう……手心をですね。ゲームの知識があったから、火柱に合わせて彼の後ろに跳んで逃げたから良かったものの、なしてキャラの固有必殺技の超神技までされなアカンねん。
「神霊学園の若者って皆頭バーサーカーなのか? ブルー」
「青春幹也です。勘違いしてもらっては困りますが、私達も好き好んで戦っている訳ではありません。神霊の加護を賜ったが故の責任、そしてもし強大な災厄が国を襲った時の備えとして、常日頃から動ける様にしているだけなんです」
「ほーん、そうなのか。だが試練の祠には潜ってたんだろ?」
「そうですが、大抵は教師の引率があったり、3人1組のパーティで挑みます。それに時間的な制約もありますから、深く進んで妖魔を倒す事は稀でしたね」
なるほどなぁ。恒常的に潜っているから、てっきりそれなりに強いんだろうと思ってたが、良くも悪くも安全第一、それこそ原作におけるチュートリアル程度の実力しかないって事か。天外やブルー達も、加護持ちである前に1人の中学生。大人に守られる存在だという事実が、すっぽり頭から抜け落ちてたな。反省。
結論。今回のレッド気絶事件の真相は、俺が加護持ち達を過大評価していただけっぽい。聞けずじまいだったが、アイツも妖魔に結構負けてるのかね。
「なので、一対一でやり合う事なんて数える程しかありません。ましてやあの時の貴方は……その、私達が見た何よりも常軌を逸してましたので」
「うーむ、スマンな。何を言っても嫌味に聞こえるかもしれんが、悪気は無かったんだ」
「いえ、元はと言えば燕次の暴走です。彼は昔から、思い込んだら一直線でして……止め時を誤った私の責任もあります。すみませんでした」
「
「え」
おっと、心の声が漏れてしまった。
結の推しであるブルーは、彼女と同じ色の髪をしている。しかし、彼女の明るく水色に近い青とはまた違う、深い青色の髪だ。眼鏡の奥に宿る知性を感じる瞳には、人当たりの良さが滲み出ている。
こういうのが結のタイプな訳ね、うんうんなるほど。確かに、将来誰かを庇って満足して死にそうなキャラしてるわ。
まあそのルートは、天外と結ばれなければ発生しない……と思うので、全力で止めさせていただく。
ごめんな、君の恋路を邪魔しちゃって。その想いを込め、彼の肩に手を置く。
「スマンな、うん……いやほんとスマン。悪い、ドンマイ。もっと良い事あるって」
「……何故私は、初対面の人からこんなに憐れみのこもった謝罪を受けてるのでしょうか」
「これからの分も謝っとこうと思って」
「何かをやらかす前提なの止めてもらえますか?」
「それにしても、学園はあんま試練の祠の攻略に力入れてないのか……そうかそうか」
「無視しないでもらえますか」
「あ、無駄だと思うよ。代陀羅君、基本的に人の話あまり聞かないから」
「それは師として問題大有りなのでは?」
ブルーは中々興味深い事を教えてくれた。
以前、献魂護身術が廃れていった話を覚えているだろうか。必要の無くなった護身術は、やがて人々からも忘れてしまっていたと。
それは、神霊学園や五行家にも当てはまるんじゃないか。そう俺は仮説を立てた。
人と神霊の歴史は、妖魔との戦いの軌跡でもある。文明が興る黎明期や、その過渡期。人の欲望が膨れ上がる時、妖魔の力もまた増幅される。その度に強大な争いが巻き起こり、国の存亡が左右される様な事変が繰り返されて来た。
そんな妖魔達が、この数世紀の間大規模な動きを見せていない。その間に人は新たな武器を生み、テクノロジーを進化させ、文明のステージを押し上げていった。
数多の戦いの技術や、妖魔の恐怖を引き換えにして。
「……」
「な、何? 私の顔に何かついてる?」
妖魔達は、『この時』を待っていたんじゃないか?
技術の伝承が途絶え、安寧を貪り、心が脆弱になる時を。
だから、自ら神託の巫女というイレギュラーを作り出し、警告をした。弱くなった人類を、再び鍛える為に。
そう考えれば、中学生から戦っている筈のコイツらが、何故こんなに弱いのか腑に落ちる。妖魔には、相当頭の切れる奴がいるようだ。
という訳で、このヒロインちゃんにはより一層励んでもらわないとな。
「大丈夫大丈夫。顔が変になってるとかじゃないから安心しろ」
「次そんな言い方したら、代陀羅君の顔を変形させるから」
「さーせんした」
「はい。一旦お喋りは控えて下さい。これから私達は、3人で
ブルー……青春だったな。彼が手を叩き、自分に注意を向けさせる。
「ここからは試練の祠、妖魔達の領域です。軽はずみな言動は即座に敗北してしまいますよ」
「「はーい」」
「……ええと、貴方はともかく、天外さんまで雰囲気が柔らかいのは、些か予想外でしたね」
「試練の祠は、もう初めてじゃないから」
「まあ、一応ある程度は教えてるからな。そこは安心してくれ。遠慮なく指導を頼む」
「それは頼もしい。私を守護してくれる神霊は、
蛟……確か、水に関係する蛇だったな。五行で表すと、鱗を持つから木属性って事か。
「武器は巫術に弓術です」
「ふじゅつ?」
「お札だな。色んな効果が込められた札を飛ばすんだよ。神力が必要だから、俺は使えん」
「へー」
「私の戦い方は遠距離が主体ですので、天外さんに前衛をお願いしたいところなのですが……」
「あ、うん。分かった」
……何か、塩対応っすね天外さん。恋仲になれとは絶対に言わないけど、これから試練の祠を共に攻略するチームメイトでっせ? もっと積極的にいきません?
「それと、代陀羅さんは……」
「ん? ああ、俺は戦力外で頼む」
「えっ!?」
え、じゃねえよ。当たり前だろ。
「だって代陀羅君がいれば、試練の祠でも安心だし……」
ちょ、やめて? そこまで俺に依存されても困りますよお客様。
アカン、流石に甘やかし過ぎたか? ここは一発、ガツンと言ってやらねば。
「あのなぁ。この試練の祠は、元々加護持ち同士のレクリエーションで来てるんだぞ? 俺が出張ったらお前の為にならねえし、これからの成長の邪魔にもなる。俺もお前も、ずっと一緒にいる訳じゃないし」
「それはそうだけど……」
「それに、ご褒美の件は覚えてるか?」
「!」
「覚えてるなら、今ここで自分が強くなった事を証明してみせろ」
「分かった!」
「青春。悪いが、コイツの自立心を養ってやってくれ。俺は後ろにいるから」
「わ、分かりました。貴方程の人がそう言うなら」
ヨシ! 上手く誤魔化す事が出来たぜ。
本来なら、レッドが前衛を担当する予定だったんだろうなぁ。スマンなレッド、その枠は空けておくから、後で追いついておいで。待ってるぞ。