この乙女ゲームの攻略情報は、妹だけが知っている〜主人公の師匠ポジになってしまった兄より〜 作:ゲスト047562
さて、青春と天外の2人で試練の祠、土精の坑道を挑む事になったが、かなり順調に進んでいる。
まあ、それくらいはしてもらわないとな。今の天外なら、チュートリアルに使われる祠くらいなら軽く無双出来ると思っていたが、意外と青春との連携も悪くない。
「新たな命よ、遍く大地に根を張りたまえ。壱の矢、
青春から放たれた矢が大地に刺さり、そこから太い根が生まれる。根は、泥が人型となって暴れ回る妖魔、
「オ、オォォオオオオ!?」
「ガエ、ゼェェェェ……!」
「花水鬼!」
身動きの取れなくなった泥田坊の頭上で、水の散弾が幾度も弾ける。頭を撃ち抜かれた土人形共は、次々と形を失い霊力となっていく。
うんうん、中々良いコンビプレイだ。ゲームでも、青春は敵の妨害をメインに立ち回っているから、近中距離の火力型の天外とは相性が良い。
つか青春、名字に反してやってる事が害悪プレイそのものなんだよな。PVPでやったら嫌われる様なデバフや妨害技のオンパレードだ。草生えてる。
神技とは、加護持ちの心の在り方を世界に現出させたもの。つまり、青春はこれまでの人生で、大なり小なり
その辺を主人公がどう汲み取ってやるのかが、青春ルートに入る鍵なんだろうな。
「青春君、サポートありがとう!」
「天外さんこそ、見事な攻撃でした。私も戦いやすく、即席のパーティとは思えません」
んー、良い雰囲気だ。天外が前衛よりの中距離で銃による牽制を担当し、青春が敵の足止め、トドメは天外の神技で絨毯爆撃。
本来ならレッドが近距離を担当して、更に安定感のあるパーティになってたんだろうな。重ね重ね彼には申し訳ない事をしたと思ってしまう。
「では、引き続き進んでいきましょうか」
「うん」
「……」
簡単に言葉を交わし、周囲を警戒しながら2人は順調に試練の祠の奥へ踏み込んでいく。
……うん。警戒されてるね、俺。
先程から、青春は最後尾の俺から天外を隠す様に位置を調整している。俺が不意打ちを仕掛けた際、天外だけでも守れるようにする為だろう。
妖魔に対する危機管理の意識が低い中でも、献身的に支えようとする姿に、思わず溜息が出る。出来ればもうちょい早くやってほしかったよね。
青春が何を考えていようと、俺からしたらもう殆どやる事は無い。完全に力を抜いて欠伸を噛み殺している俺に、青春がおずおずと声を掛けてきた。
「……ところで、代陀羅さん」
「ん?」
「珍しい名字ですが、もしかして兄妹とかいらっしゃいますか?」
「ああ、結って名前の妹がここの中等部に通ってるんだ。会った事あるのか?」
「会った、というより……彼女は珍しい名字ですから、何となく覚えていたんです」
「まあ確かに。変な名字なのは認める」
俺も最初は『代陀羅ってダイダラボッチの事じゃね? じゃあ俺、もしかして妖魔の血筋だったりする?』なんて思ったもんな。実際は唯の珍しい名字だっただけなんですけどね。クソがよ。
「俺の知識の殆どは、結から教えてもらったんだよ。まあデータでしか知らねえから、加護持ちの動き方や神技とかは、実際に見た事が無いんだ」
「なるほど。燕次の神技を知ってたのは、そういう事だったのですね」
「ああ。だが、天外から師匠って呼ばれても、俺はもうアイツに何も教えてやれない。所詮、俺は加護無しだからな。だから、これからはお前やレッドに任せた。天外を強くしてやってくれよ」
これは嘘偽りの無い本音だ。
俺が教える常識と、加護持ちが共有している常識。そこに大きな差異があるのは間違いない。
俺がこれ以上、容易にその境界線を壊してはいけないのだ。
ぶっちゃけ、元々原作に無い事してるんだから、もう原作のキャラ達と関わるのはごめんっすね。ホントに頼むよ。
あ、頼んでおいてアレだけど、君のルートだけは潰すから。そこだけは譲れん。スマンな。
「ふむ……分かりました。それにしても……妹さんと、仲が良いのですね」
「ん? まあ人並みには?」
一応前世からの付き合いだしな。そりゃ、そこらの兄妹よりかは互いの事を知ってるつもりだ。
つか今の言い方的に、青春にも年下の兄妹がいるのかね。良い関係じゃなさそうだし、無闇に聞かないけどさ。
「そういや、何で急に結の話を? アイツが何かやらかしたか?」
だったら盛大に揶揄ってやるが。
「いえ。そんな事は無いのですが……時々、私や燕次が話しているのを、遠くからジッと見てるんですよね」
「……アーウン、ソウネ。話したりは?」
「いえ、近付こうとすると何故か逃げてしまうのです。私や燕次が、彼女に何かしてしまったのでしょうか……」
「へーえ?」
なんだなんだ、結の奴しっかり推しに認知されてるじゃねえか。良いじゃん、そういうのだよ求めてるのは。
まさかアイツ、無自覚勘違い系の主人公ポジ? もう救済ルート入ってたり、はたまた色んな攻略キャラ達と会ってたりする? もう全然アリよ、俺も気が楽だし。
なるほどなぁ。我が妹も、ちゃんと裏でコソコソしているようだ。なら、兄としてここは1つ、我が妹の援護をしてやろうではないか。
「あー実はアイツはな、
「は、はぁ……」
「だから遠くからお前を眺めてるんだ。お前が困ってたら助けてやりたいと思って、常に物陰でお前を見てるんだよ」
「それはそれで怖いのですが」
「意外とシャイな奴なんだ、許してやってくれ。それにほら、家族の贔屓目抜きに見ても結は可愛いだろ?」
「……まあ、はい」
「つまり、そういう事だ。分かるな?」
「分かりません」
何でやねん。狙いに行けよ、草食系男子。
結からお前への矢印はどデカいんだぞ。お前から話しかけてやれば、目をハートにしてオチるから。そしたら自動的に天外とのルートも消えるし、お前も超絶可愛い恋人が手に入る。一石二鳥なんだぞ。
しかし、そんな事を伝えても青春は困るだけだろう。俺も無理強いはしたくないし、出来るだけ本人の意思を尊重したい。
だから、少しずつ彼を妹に近付けていって、2人の時間を作ってやろう。恋愛の密度は共に過ごした時間と比例するのだ。過ごす時間が長くなれば、自然とくっ付く可能性も上がるって寸法よ。お互いが合意であれば誰も文句言わねえよなぁ〜〜??
「今度また妹が覗いてたら、是非近付いてやってくれ。その方が面白……妹も喜ぶから」
「今面白いと言いかけました?」
「ちゃんと我慢したから」
「残りが漏れてますよ」
「あ、俺は合法煙草吸うが気にしないでくれ。ちゃんと身体に害は無いから」
「さっきからツッコミ所しか無い発言やめてもらえますか」
「楽しそうだね」
優しそうな言葉に似合わない、怒気を孕んだ声が俺達に向けられた。
背筋に緊張が走る。こちらを振り向かずに話しかけてくる天外の背中に、鬼が宿っている気がする。
「楽しそうだね」
「す、すみません。試練の祠で気を抜くなと言ったばかりで……」
「悪かった。もう邪魔しない」
「楽しそうだね」
「……うん、スマン。もう喋らないから」
「楽しそうだね」
「あ、天外さん肩揉みましょうか? 前衛お疲れっす、流石の強さっすよ」
「こ、腰巾着……」
「五月蝿えぞ青巾着。お前も早くご機嫌取りになるんだよ」
「何で彼とばっかり喋ってるのかな?」
「す、すみません! 索敵を代わります!」
すいません姫。後はあちらのお兄様が担当致しますので。おっと、その高まる神力はあちらの妖魔にお向け下さい。彼は貴方の味方ですよ?