この乙女ゲームの攻略情報は、妹だけが知っている〜主人公の師匠ポジになってしまった兄より〜 作:ゲスト047562
なるほどなるほど。
これはアレじゃな? 負けイベ+死亡ペナルティのチュートリアルだな?
つか、コイツこんな序盤に出るのかよ。これ普通の乙女ゲー期待してた奴らからしたらトラウマもんだろ。
『……』
血紅御前。ゲーム内において、同じ試練の祠に籠って金策していると何処からともなく現れる、金策絶対許さないマン。
これがもう、下手なボスより滅茶苦茶強い。ボーッとしている時に出くわすと一瞬で蹂躙してくるとかいう、馬鹿糞ゲリラ戦法をかましてくるヤベー奴だった。乙女ゲームに居ていいキャラじゃねえだろ。
ついでに言うと、俺がカミカゴという乙女ゲームを知るきっかけになった相手でもある。結が俺に助けを求めに来たのが懐かしいなぁ。
まあ、主人公が最初に負ける相手としては不足は無い。見てるだけでも圧ヤバいもん、実際に対峙するとやっぱ怖いっすね。
が、今アイツはこちらを見るだけで動く気配が無い。どうやら俺の言葉とボディランゲージが伝わってくれたようだ。
「良かったな、話通じるぞコイツ」
「どこが!? 本当に伝わってると思ってる!? 馬鹿じゃない!?」
「さっきから俺への信頼低くない?」
こっちもこっちで大分混乱してるな。ヒロインから罵倒されるとは思わなかったよ。
俺に掴み掛からんばかりに泣き叫ぶ天外を宥め、青春を呼び寄せる。天外と同じく顔を青ざめさせた彼は、逃げる様にこちらに近付いてきた。
「……み、皆さん。落ち着きましょう、あれは」
「血紅御前ねはいはい知ってる知ってるテンプレテンプレ」
「頭おかしくなったんですか?」
「ね!? そう思うよね!?」
こ、コイツら……! こんな状況じゃ無かったらしばき倒してるからな。感謝しろよ。
「知ってるよアイツは。つか、妖魔について調べるなら知らない方がおかしいだろ」
「そ、そんなに有名なの?」
「……血紅御前。加護持ちでありながら、妖魔に魅せられた悪鬼。過去、多くの加護持ちが奴を討伐しようと躍起になり、その命を散らしていきました。正に伝説の妖魔です」
「……何で、そんな怪物がこんな場所に」
「分かりません。しかし……」
チラ、と青春がこちらを見る。その目には猜疑心が宿っている。
あー、同じ妖力持ちだからって事? 関係してますか的な? まあ疑われても仕方ない。実際は何の繋がりも無くて、唯のチュートリアルですよなんて言っても伝わらないしな。
まあ、責任の押し付け合いなんて不毛な事はする暇無いんだが。
「で、このまま逃げて試練の祠って出れそうか?」
「……血紅御前の妖力のせいで、土精の坑道が崩れかかっています。不可能では無いですが、かなり不安定な道のりになるかと」
だよね、知ってた。
「そんな……じゃ、じゃあやるしか、ないの……!?」
「……時間さえ稼げれば、私が帰り道を安定させます。唯……」
青春はここでも、俺を見てくる。しかも、苦々しそうな顔で。
え、何? 別に裏切らないよ? 背後からグサっといかないから安心して?
「……あの怪物の足止めを、お願い出来ますか?」
「…………あ、俺に言った?」
「あ、当たり前でしょう!? 状況が分かっているのですか!」
「いやー、信用してない奴と一緒に戦えるか! って感じだったし」
「そ、れは……」
「いや、お前は正しい。使えそうな戦力は使うべきだ。自分の力を良く把握してるな」
若いのに大した判断力だ。嫌な言い方をしてしまったが、俺みたいな奴にも頭を下げれる胆力と行動力には敬意を払うさ。
労いの意も込めて、彼の肩に手を置く。目を驚きで白黒させながらも、青春は力強く頷いた。うんうん、闘志が戻ってきたな。
「代陀羅君がやるなら、私も戦う」
天外も冷静になってきたのか、言葉に力が戻ってきている。
青春の肩に置いた手に、彼女の手が重ねられる。震えは感じない、それどころか滾る様な熱が伝わってくる。
「代陀羅君がいてくれるなら、きっとやれる。私達なら勝てるよ」
「……さいで」
その意気や良し。負けイベを無理ゲーだと諦めて勝負を投げ出す輩より肝が据わってるな。
「で、では、戦ってくれるのですか? あんな怪物と……」
「良いぞ。寧ろ、俺だけで戦おうと思ってたくらいだし」
「え? そうなの?」
「ああ。俺結構好きなんだよな、血紅御前」
「えっ!?」
「はぁ?」
殺気が飛んでくる。咄嗟に青春を突き飛ばし、天外の手を振り払う。彼のいた場所に黒いオーラが落ち、地面を砕いた。
殺意が充満していくのが分かる。ピリピリとした緊張感が肌を打ち、何かを投げた状態で固まる血紅御前に神経を傾ける。
「時間切れだ。青春、帰り道は頼んだぞ」
「いえそれよりもあの……」
血紅御前のオーラが手に集まり、薙刀となる。妖しげな光を自ら放っているかの如きその業物は、獲物を探す様にゆらゆら揺れている。
「いやーぶっちゃけ推しなんだよな。こういう武器のデザインとか好きだし、格好良いし」
「だだだ代陀羅さんそれ以上は」
「ああ、寝返りたいって意味じゃなくてな? 単純に血紅御前の全体的なデザインが俺好みって話で……」
気を引く様に、正面を陣取る。血紅御前の動きが、俺に狙いを定めて──。
「花水鬼」
高圧の水のレーザーが、血紅御前の頭を撃ち抜いた。黒いオーラが揺らぎ、奴の身体が僅かにグラつく。
「……は?」
驚いて天外を見ると、彼女は見た事の無い虚ろで据わった目で、銃口を血紅御前に向けていた。
……神技を銃で圧縮して放ったのか。俺が教えずとも神技を応用出来る様になるとは。やはり天才か……つかどうしたんです? 顔怖いよ? ヒロインというかジェイ◯ンだよ?
更に3発の加撃。いずれも致命傷には至らないが、確実にダメージが入ったと分かる程の威力だ。
5発目。血紅御前の薙刀が振るわれ、神技が掻き消される。
あ、ヤバい。奴の注意が天外にいってしまった。そろそろ俺も前衛で加勢を……。
「どいてて、代陀羅君」
「アッハイ」
「
「ヒエ」
あの、キャラ変わりました? そちら神霊の方ですかね?