この乙女ゲームの攻略情報は、妹だけが知っている〜主人公の師匠ポジになってしまった兄より〜 作:ゲスト047562
血紅御前の薙刀が、空間を裂く。
迫り来る死の一撃をギリギリでかわして、私は引き金を引く。
「貫け!!」
もっと強く。もっと神力を込めて。その想いが神力となり、より強力な攻撃へ進化させる。
『──』
それでも、血紅御前には届かない。神力の弾丸が真正面から突き貫かれ、返す刃となって私を襲う。
「きゃああッッ!?」
自分の神力と妖力が混じり合った衝撃波。直撃は避けれたものの、私の身体は簡単に宙を舞った。
何て破壊力……! 妖技でも何でもない、唯の武器による攻撃が、神技を凌駕するなんて!
【理愛!!】
「大丈夫! 花水鬼!」
セオリツさんの焦った声に応え、吹き飛んでいく方向に神技を撃つ。
身体にかかるGを何とか抑え込み、地面を転がる。
体勢を立て直そうと顔を上げると、すぐ目の前に迫る死の刃。
「──ッ!」
間一髪。髪が風圧で切られ、霊力の塵となる。
「青光剣!」
祝詞を唱える暇なんて無い。がむしゃらに神力を剣に注ぎ込み、空から落ちてくるとしか表現出来ない薙刀の一撃を受け止める。
「ぐ、ぅう……!!」
お、重い……! まるで大きな岩を相手にしてるみたい……!
不完全な状態で出した青光剣にヒビが入る。すぐに剣を引っ込め、横に飛んで逃げる。
「はぁ、はぁ……!」
強い。一体どれだけ強いのか、まるで底が見えない。
それに、あの噴き出し続ける黒いオーラ。そのせいで、相手の特徴が見えない。水属性の攻撃が効いている様子が無いから、火属性でない事だけは確か。
「くっ……!」
肺が痺れたみたいに、呼吸が上手く整えられない。握りしめた剣が汗で滑らない様に、ひたすら力を込め続ける。
最初に浴びせられた恐怖は、未だ私の身体を鎖の様に縛り付けている。本能が危険信号をガンガンに鳴らし続けている。
けど。
『俺結構好きなんだよな』
「──ッ、ああ!」
恐怖以上に沸き上がる怒りが、軋む肉体を動かしていく。
許さない。ぽっと出のくせに、敵のくせに、代陀羅君にあんな言葉を言われるなんて。
私だって言われた事無いのに!!!
そう思う度、神力が内から溢れてくる。とめどなく流れてくる力を全身に巡らせ、銃を放ち剣を振るう。
『……』
「このッ……!」
弾が切り裂かれ、剣が壊れそうな程強く弾かれる。それでいて、血紅御前には欠片の変化も見られない。
まるで機械と戦っている様な手応えのなさ。一手一手が奈落へと呑み込まれていく、不気味な感覚。
「はぁ……はぁ……」
【理愛……】
気持ちだけでは凌駕出来ない、圧倒的な差。レベルという名の暴力。
私は……!
【理愛!】
セオリツさんの言葉にハッとなり、心臓が強く波打つ。
【貴女のお気持ちは分かります。戦うという選択肢を止めはしません。ですから聞いて下さい、私の言葉を】
「セオリツさん……」
怒りのままに動かしていた身体を止めて、心を静かにする。彼女の声を聞く為に。
【血紅御前。非常に強力な妖魔です。ですが、気を付ける点はそこではありません。最も重要な事は、
「え……」
言われてみて、初めて気付いた。
試練の祠では、加護持ちは死なない。何故なら、神霊が肉体による損傷を肩代わりしてくれるから。
そう、そうだ。なのに、血紅御前は多くの加護持ちを殺している。
つまり……。
「アイツには、
【そうです。それだけは、絶対に受けてはいけません】
「どんな攻撃なの?」
【見れば分かります。来ます!】
反撃が来ないと思ったのも束の間。すぐに息が詰まる程の距離まで接近され、薙刀が振り下ろされる。
それをかわしながら考える。どうすれば勝てるか。
代陀羅君……。
『俺結構好きなんだよな』
ピキ。
「その危険な攻撃が来る前に、私達の全力を当てて倒す!」
【分かりました!】
完膚なきまでに倒す。その為に必要なのは……。
『超神技はやり過ぎじゃない?』
「……ッ! 神霊よ、私は新たな未来を切り開く!」
攻撃を逃げて、銃で牽制しながら祝詞を唱える。
それに呼応して、セオリツさんから力が流れてくる。
「【道を拓く剣を、今ここに!】」
ありったけの神力を剣に凝縮させる。
朱夏君がした様に、戦いながら祝詞を唱えるやり方。超神技なんて大層なものじゃないけど、それを真似る事なら!
剣を握る手が熱い。血紅御前から距離を取り、その神技を高らかに叫ぶ。
「青光剣!!」
初めて出した時より大きく、強く輝く剣。間違いなく、今私が出せる最大最高の神技。
「どう、だあああああああああああッッ!!」
私達の、渾身の、攻撃が。
黒い斬撃で、打ち砕かれた。
「……そん」
【理愛!!】
空白になった思考の外から、強烈な衝撃が全身を叩く。
咄嗟に防いだが、剣が砕かれそのまま吹き飛ばされる。地面を何度もバウンドし、意識を失いかける。
「──カハッ……!」
痛い。セオリツさんが護ってくれてるのは分かってる。それでも、今まで生きてきた中で1番の衝撃を受けて、全身が悲鳴をあげている。
神力を使い果たした身体から力が抜けていく。首を掴まれて無理矢理起こされ、足が宙に浮く。
「こ、の……!」
息が出来ない。私の首にかかる手に爪を立てるも、僅かな抵抗を阻む力すら出ない。
『……』
薙刀が、赤黒く光る。
今までとは違う、まるで周囲の光を吸い込んでいるかの様な、禍々しい輝き。
それを見た瞬間、生理的な嫌悪感が走る。
これが、加護持ちを殺す……!
「や……」
「それは無し!」
思わず目を閉じてしまった時、私の心を軽くする人の声が近くで聞こえた。
金属同士が弾ける、聞き馴染みのある音が響く。首から手が離れ、地面に落ちる。
「ゲホッ! ごほ……だ、代陀羅君……」
「大丈夫か?」
「うん、ありがとう……」
「良く頑張ったな。後は青春のサポートを頼む」
「で、でも……!」
血紅御前と代陀羅君。2人が互いの武器を境目にして向かい合っていた。それが、妙に近く感じる。
助けてくれて嬉しいという感情と、早く離れてほしいという理不尽な感情が湧き上がって、見てるだけで胸が痛くなる。
「……あれ?」
代陀羅君の剣を受け止めたからなのか、血紅御前の黒いヴェールが剥がれて──。
『……ン?』
口を、開いた。