この乙女ゲームの攻略情報は、妹だけが知っている〜主人公の師匠ポジになってしまった兄より〜   作:ゲスト047562

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第25話 不退転

 血紅御前の薙刀が、空間を裂く。

 迫り来る死の一撃をギリギリでかわして、私は引き金を引く。

 

「貫け!!」

 

 もっと強く。もっと神力を込めて。その想いが神力となり、より強力な攻撃へ進化させる。

 

『──』

 

 それでも、血紅御前には届かない。神力の弾丸が真正面から突き貫かれ、返す刃となって私を襲う。

 

「きゃああッッ!?」

 

 自分の神力と妖力が混じり合った衝撃波。直撃は避けれたものの、私の身体は簡単に宙を舞った。

 何て破壊力……! 妖技でも何でもない、唯の武器による攻撃が、神技を凌駕するなんて!

 

【理愛!!】

 

「大丈夫! 花水鬼!」

 

 セオリツさんの焦った声に応え、吹き飛んでいく方向に神技を撃つ。

 身体にかかるGを何とか抑え込み、地面を転がる。

 体勢を立て直そうと顔を上げると、すぐ目の前に迫る死の刃。

 

「──ッ!」

 

 間一髪。髪が風圧で切られ、霊力の塵となる。

 

「青光剣!」

 

 祝詞を唱える暇なんて無い。がむしゃらに神力を剣に注ぎ込み、空から落ちてくるとしか表現出来ない薙刀の一撃を受け止める。

 

「ぐ、ぅう……!!」

 

 お、重い……! まるで大きな岩を相手にしてるみたい……!

 不完全な状態で出した青光剣にヒビが入る。すぐに剣を引っ込め、横に飛んで逃げる。

 

「はぁ、はぁ……!」

 

 強い。一体どれだけ強いのか、まるで底が見えない。

 それに、あの噴き出し続ける黒いオーラ。そのせいで、相手の特徴が見えない。水属性の攻撃が効いている様子が無いから、火属性でない事だけは確か。

 

「くっ……!」

 

 肺が痺れたみたいに、呼吸が上手く整えられない。握りしめた剣が汗で滑らない様に、ひたすら力を込め続ける。

 最初に浴びせられた恐怖は、未だ私の身体を鎖の様に縛り付けている。本能が危険信号をガンガンに鳴らし続けている。

 けど。そ(・)ん(・)な(・)事(・)よ(・)り(・)。

 

『俺結構好きなんだよな』

 

「──ッ、ああ!」

 

 恐怖以上に沸き上がる怒りが、軋む肉体を動かしていく。

 許さない。ぽっと出のくせに、敵のくせに、代陀羅君にあんな言葉を言われるなんて。

 私だって言われた事無いのに!!!

 そう思う度、神力が内から溢れてくる。とめどなく流れてくる力を全身に巡らせ、銃を放ち剣を振るう。

 

『……』

 

「このッ……!」

 

 弾が切り裂かれ、剣が壊れそうな程強く弾かれる。それでいて、血紅御前には欠片の変化も見られない。

 まるで機械と戦っている様な手応えのなさ。一手一手が奈落へと呑み込まれていく、不気味な感覚。

 

「はぁ……はぁ……」

 

【理愛……】

 

 気持ちだけでは凌駕出来ない、圧倒的な差。レベルという名の暴力。

 私は……!

 

【理愛!】

 

 セオリツさんの言葉にハッとなり、心臓が強く波打つ。

 

【貴女のお気持ちは分かります。戦うという選択肢を止めはしません。ですから聞いて下さい、私の言葉を】

 

「セオリツさん……」

 

 怒りのままに動かしていた身体を止めて、心を静かにする。彼女の声を聞く為に。

 

【血紅御前。非常に強力な妖魔です。ですが、気を付ける点はそこではありません。最も重要な事は、何(・)故(・)加(・)護(・)持(・)ち(・)が(・)殺(・)さ(・)れ(・)た(・)か(・)です】

 

「え……」

 

 言われてみて、初めて気付いた。

 試練の祠では、加護持ちは死なない。何故なら、神霊が肉体による損傷を肩代わりしてくれるから。

 そう、そうだ。なのに、血紅御前は多くの加護持ちを殺している。

 つまり……。

 

「アイツには、加(・)護(・)持(・)ち(・)を(・)殺(・)す(・)方(・)法(・)がある……?」

 

【そうです。それだけは、絶対に受けてはいけません】

 

「どんな攻撃なの?」

 

【見れば分かります。来ます!】

 

 反撃が来ないと思ったのも束の間。すぐに息が詰まる程の距離まで接近され、薙刀が振り下ろされる。

 それをかわしながら考える。どうすれば勝てるか。

 代陀羅君……。

 

『俺結構好きなんだよな』

 

 ピキ。

 

「その危険な攻撃が来る前に、私達の全力を当てて倒す!」

 

【分かりました!】

 

 完膚なきまでに倒す。その為に必要なのは……。

 

『超神技はやり過ぎじゃない?』

 

「……ッ! 神霊よ、私は新たな未来を切り開く!」

 

 攻撃を逃げて、銃で牽制しながら祝詞を唱える。

 それに呼応して、セオリツさんから力が流れてくる。

 

「【道を拓く剣を、今ここに!】」

 

 ありったけの神力を剣に凝縮させる。

 朱夏君がした様に、戦いながら祝詞を唱えるやり方。超神技なんて大層なものじゃないけど、それを真似る事なら!

 剣を握る手が熱い。血紅御前から距離を取り、その神技を高らかに叫ぶ。

 

「青光剣!!」

 

 初めて出した時より大きく、強く輝く剣。間違いなく、今私が出せる最大最高の神技。

 

「どう、だあああああああああああッッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私達の、渾身の、攻撃が。

 黒い斬撃で、打ち砕かれた。

 

「……そん」

 

【理愛!!】

 

 空白になった思考の外から、強烈な衝撃が全身を叩く。

 咄嗟に防いだが、剣が砕かれそのまま吹き飛ばされる。地面を何度もバウンドし、意識を失いかける。

 

「──カハッ……!」

 

 痛い。セオリツさんが護ってくれてるのは分かってる。それでも、今まで生きてきた中で1番の衝撃を受けて、全身が悲鳴をあげている。

 神力を使い果たした身体から力が抜けていく。首を掴まれて無理矢理起こされ、足が宙に浮く。

 

「こ、の……!」

 

 息が出来ない。私の首にかかる手に爪を立てるも、僅かな抵抗を阻む力すら出ない。

 

『……』

 

 薙刀が、赤黒く光る。

 今までとは違う、まるで周囲の光を吸い込んでいるかの様な、禍々しい輝き。

 それを見た瞬間、生理的な嫌悪感が走る。

 これが、加護持ちを殺す……!

 

「や……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それは無し!」

 

 思わず目を閉じてしまった時、私の心を軽くする人の声が近くで聞こえた。

 金属同士が弾ける、聞き馴染みのある音が響く。首から手が離れ、地面に落ちる。

 

「ゲホッ! ごほ……だ、代陀羅君……」

 

「大丈夫か?」

 

「うん、ありがとう……」

 

「良く頑張ったな。後は青春のサポートを頼む」

 

「で、でも……!」

 

 血紅御前と代陀羅君。2人が互いの武器を境目にして向かい合っていた。それが、妙に近く感じる。

 助けてくれて嬉しいという感情と、早く離れてほしいという理不尽な感情が湧き上がって、見てるだけで胸が痛くなる。

 

「……あれ?」

 

 代陀羅君の剣を受け止めたからなのか、血紅御前の黒いヴェールが剥がれて──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……ン?』

 

 口を、開いた。

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