この乙女ゲームの攻略情報は、妹だけが知っている〜主人公の師匠ポジになってしまった兄より〜 作:ゲスト047562
結論。MU⭐︎RI
そりゃそうだ。俺は加護無し、チート無し。前世の知識も役立たず。モブな役割、ろくでなし。今まで護られてきた、一般人。
そもそも加護持ちなんて公式チートみたいな奴らがウヨウヨいるんだから、加護無しが強くなる手段なんて限られてるわな。
何でや! ちょっとくらい夢見てもええやんか! ざけんなや、何も出来へんドブカスが!!
やるせなさに思わず地団駄と韻を踏んでしまったぜ……!
「おにい、無理しなくて良いんじゃない? ウチがいるんだし……」
「確か加護って他人に与える事も出来なかったか?」
「それは主人公だけが受けられるの! 普通は一人一体しか付かないし、それだって前例が無い異常事態って言われるんだから!」
うーんゲーム特有のチートっぷり。俺がそれに期待しちゃ駄目か。
「乙姫ちゃんも無理無理って笑ってるヨ!」
「嘲笑かな?」
神霊にまで煽られるとは、余程俺の努力が滑稽に視えたんだろう。ぶん殴るぞ、殴れないけど。
あ、そうそう。加護持ちは加護をくれた相手と対話が出来るらしい。特に何か会話している様な素ぶりは無かったが、テレパシー的な会話手段でもあるんだろうか。
因みに、妹に付いてる加護は乙姫。浦島太郎に出てくる玉手箱テロ女だ。日本昔話の登場人物も神霊としているのね、この世界。
「うーむ、いきなり手詰まりになったな。これがモブに厳しい世界ってやつか」
「おにい、別に原作に関わってく気ないんでしょ? 何で強くなろうとするの?」
「ん? あー……男なら、一度で良いからチート能力手に入れて無双したいって思うもんなんだよ」
「……ふーん」
俺の理由に疑いの目を向けてくる。何だよ、別に嘘は言ってないし良いだろ。
さて。今世も凡人である事が判明した俺ですが、どうにかして力は欲しい。その為のヒントと言えばやはり我が妹、結の持つ知識なんだが……こいつ、バトル面に関してはタイプ相性すら覚えられないからな。システムを憶えてるとは思えん。
となると、俺の記憶力が頼りなんだが……確か、あった様な気がするんだよな。加護以外の力……ん? それって続編だったか?
「なあ、カミカゴって続編あったよな?」
「え? あったけど……」
「続編って前作と繋がってたりするか?」
「うん。2は京都がモデルになってるの。どしたのおにい」
「……」
確か、2の主人公は……。
◇◆◇◆◇
はい、やってきました、試練の祠。所謂ダンジョンってやつですね。
名前に『試練』とあるが、実際は妖魔や神霊が生み出す空間。祠の主が棲みやすい世界であり、具現化した心の様な場所だ。
妖魔達は自分達の住む世界『
言ってみれば、試練の祠とはあの世とこの世の架け橋みたいな役割をしている。神霊も「別に入ってええで? 君らが強くなれば我も強くなるし」と、祠へ入る事を禁止どころか推奨しているので、誰も止める者はいない。
まあ、当然入り口は加護持ちしか見えないし入れないという(俺からすれば)
俺は所持品扱いですかそうですか。所持品というよりお荷物ですが。兄の威厳ェ……。
「ねえおにい、本当に試すの?」
「おう」
閑話休題。ここに来たのは、か細い可能性を検証する為だ。
という訳で、引き続き結に引っ付いて進む。
「お願いしますマイスイートシスター」
「! ふっふーん、良かろう! ウチに任せたまえ」
チョッロ。持つべきものはチョロい妹ですなあ(ゲス顔)。
気を良くした彼女は、祠で出会う妖魔共にこの世界における異能、神技を振るっていく。
「水流よ、悪鬼厄難を打ち払わん事かしこみかしこみも申す!
結の握る拳銃から水の弾丸が放たれ、ふよふよ浮いていた小さな火の塊の精霊っぽい何かを撃ち抜く。空気の抜ける様な音と共に、火の塊が消滅してキラキラ光る半透明な物体が現れる。
「おお……!」
「どう? 凄いでしょ? 凄いでしょ」
「凄え。良いなあ」
半透明な物体──霊力が、結に吸い込まれていく。
霊力とはこの世界の全ての生命が持つエネルギー、システム的に言えば経験値の様な物だ。ゲームでは、レベルアップ以外にも通貨としての役割もあった。
……てか、あの火の塊って妖魔だったのか。紹介も出来なくてスマン。
結は更に気分を良くしたのか、次々と神技を放ってみせる。兄の威厳ェ……(本日振り2度目)。
「ヨシ! これぐらいで良いかな」
目に入る妖魔を片っ端から倒した彼女は、そう言って俺の手を握る。
すると、温かい感覚が俺の中に満ちてくる。
「お、おお? これが霊力か?」
「そう! これでレベルアップ出来る筈だから、ちょっと休憩しヨ!」
祠の内部には、妖魔が入り込めないセーフエリアある。試練の祠は人の写し鏡、人の心に隙がある様に、妖魔や神の蔓延る深淵にも空白が存在する……とか。フレーバーテキストにはそんな事が書いてあった気がする。神霊学園ではそういった事も学ぶそうな。ゲームの知識を授業で受けれるのか……ちょっと興味出てきたな。
閑話休題。セーフエリアに入った俺達は、いよいよレベルアップを試してみる事にする。
「おにい……」
哀れな生き物を見る目をすんなや。お兄ちゃんの心は硝子だぞ。
『神の加護の下、君と』は人気だったらしく、続編が出ていた。世界観やバトルシステムを引き継ぎ、新たな要素を追加されていた。
その中で俺が目をつけたのは、主人公が妖魔側のスキルである
2の主人公は、神技と妖技を組み合わせて戦う事が出来て楽しかったんだよな。まあ2はルート分岐が賛否両論あった問題作と言われてたらしいが。俺はバトルが面白かったから別に気にしてない。乙女ゲー? ああ、そういやそうでしたね。
「確か、神に霊力を奉納して恩恵に与るのがレベルアップだったな? じゃあ妖魔ビルドはその逆だと考えて……」
2の主人公のやり方を真似て、祈る様に手を組んで目を閉じる。
『霊力を捧げる』のではなく、『霊力を内に取り込む』。そんなイメージでとりあえず力を寄越せと身体に眠る霊力に念じ続ける。
すると、手の中に何かが出てきた感覚。目を開けてみると、黒紫色に輝く宝石が握られていた。
「うそ!?」
「おお、マジで出来た……」
感動しながら、その宝石を口に放り込んで呑み込む。
「ぐっ……!?」
「おにい!?」
マッズ!? 腐った牛乳が染み込んだ雑巾みたいな味に、思わず吐きそうになるのを必死で堪える。
「………お。おお?」
身体の内側で何かが目覚める感覚。視界が明瞭になった様な、新しい知覚を得た様な、不思議な全能感が満ちる。
これは……成功か?
自分の中で目覚めた何かに呼びかける。俺の呼びかけに応える様に、黒紫の力――妖気が噴き出す。
「えっ、えっ?」
「うん、うん……あー、感覚で使い方分かるな。頭の中でチュートリアルが流れ込んでくる感じか」
自分の身体から流れる妖気を見て、仮説を証明出来た事に安堵する。
……っしゃああああああああ!! 妖気ゲットだぜ!! うほほーいアッチ側に立つんは、俺や!! やっぱ異世界転生はこうでなくちゃなぁ!!
「射ち潮!」
「はばぁっ!?」
「ごめん、何かキモかった」
「そんな理由で神技撃たれる事ある?」
心の中で喜ぶくらいええやん。レベル0から1になれたんやぞ。村人から戦士に転職出来たら誰だって嬉しいやろ。
加護無しが加護無しと呼ばれる所以。それは偏に、彼らでは妖魔に
故に『加護無しは黙って守られてろよ』という感じで、学校のヒエラルキーに置いてはやや立場が低い。
まあ我々から見れば、加護持ちは率先して肉壁になってくれる貴重な人材ですからね。その扱いに文句は言いませんとも、ええ。
「おにい、平気なの?」
「全然何とも無い。サンキュな、やっとスタートラインに立てたわ」
「でもでも、おにい……」
「わーってるわーってる。誰にも言わねえよ」
さっきも言ったが、妖気は妖魔側の力。
……分かるね? そう、敵さんのお力だ。加護持ちからしてみれば、妖気を操る俺は妖魔に与する異端者にも見える訳で。
前例が無い訳ではない。俺は2の主人公しか知らないが、過去にも妖気を使う加護無しはいたらしい。
しかし、そんな彼等の殆どが妖魔堕ちする、なんて最期だったりして。
要するに危険因子な訳なんですね、ハイ。学生達からは「余計な仕事増やすんじゃねえよカス」なんて目で見られるのは想像に難くない。
まあ知ったこっちゃねえんだが。霊力を糧に成長するのは神も妖魔も同じじゃんね。加護持ちからすれば、神に捧げる供物を食い荒らす所業にでも見えてるんだろうが、俺は自分が強くなれればそれで良いんで。
「あ、でもバレたらどうすれば良い?」
「んー、おにい加護無しだし……警告か注意されて終わりじゃない? 試練の祠が見えるなら入って良いって、乙姫ちゃんが言ってるし」
「……ほーん」
「何今の間」
「別に。まあお咎め無しなら好都合だ。好きにやらせてもらうわ」
「言っとくけど」
「はいはい。あんま原作と関わんねえ様にするからよ」
何はともあれ、ここが俺のスタートライン。やっと自由に動けるぜー!
……なんて思っていた時期が、俺にもありました。
「ひっく……うう……」
「……」
なーんで、ここで主人公なんかと出会っちゃったかなぁ。