この乙女ゲームの攻略情報は、妹だけが知っている〜主人公の師匠ポジになってしまった兄より〜 作:ゲスト047562
『神の加護の下、君と』。通称カミカゴと呼ばれる乙女ゲームがある。
……乙女、ゲーム? うん、まあジャンルはそう定義されてるからそうなんだろう。
この世界には、人の心を食い物にする妖魔と、奴らから人類を守護ろうとする上位存在、神霊とソレに選ばれし者である加護持ちがいる。
加護持ちとなった主人公は、妖魔との戦いを経ながら、神霊学園にいる様々なイケメン達と親睦を深めていき、彼らと共にラスボスを倒す。
バトル要素と恋愛要素を絡めようとしたゲームらしいが、肝心のバトル要素が割とシビアだったようで、俺はよく妹の手伝いに駆り出されていた。
そんな世界に転生してしまった俺は、同じく転生していたカミカゴを熱狂的なファンである妹の願いを叶えるべく、今日も奮闘中という訳だ。
ん? どうした急にとでも言いたげだな。いや、暇でさ。
「本来なら、試練の祠には加護持ちしか入れないんだぞ? 代陀羅」
「あーっす」
「妖力を持ってるからって、それが戦う理由にはならないんだ。お前が戦わずにすむように、加護持ちがこの学校で訓練してるんだからな?」
「いーっす」
「今回は
「うーっす」
「……ちゃんと聞いてるのか?」
「North」
クッソ怒られた。いや、的外れな説教なんか聞く価値無いだろ。
血紅御前の襲来は、それはもう大騒ぎになったらしい。臨時の職員会議が開かれ、試練の祠を一時封鎖すべきじゃないかという意見まで出たそうだ。
唯、そこで問題となったのが俺の存在。加護持ちでなし、五行家の様な由緒ある家系でもない一般人が、誰も倒せずにいた血紅御前を倒してしまった。
お上の面目は丸潰れ。当然これも会議の槍玉にあげられた。で、アレコレと意見を出し合った結果、カバーストーリーを作る事にしたそうだ。
曰く、『天外に付いてきた俺が、血紅御前を前に息巻いて前に出たところ重傷を負い、そんな俺を庇いながら天外と青春が血紅御前を何とか撃退した』そうな。
そんな訳で、教師目線で無謀な挑戦をした俺は、しっかり説教をくらいましたとさ。
「次からは無茶な真似はするなよ」
「えーっす」
「もっかい説教いっとくか?」
追加のお小言もそこそこに、職員室を後にする。
そこへ、進路を塞ぐ様に黒い影が現れた。
「ナハハ、お疲れさん」
「おう」
茂木裏が、新しい玩具を見つけた様にニヤニヤと擦り寄ってくる。
別に待ち合わせしていた訳ではないが、邪険にする理由も無し。2人で連れ立って教室まで歩く。
うーむ、奇異の目が凄いな。主に俺ではなく、俺の横に視線を向けているが。
「聞いたでー。なんや色々やらかしたらしいやん」
「やらかしたっつーか、
「なーなー、何したん? お腰に付けた
「一言で言えば、お見合いしたらお土産貰った感じ」
「ホンマに何しとるん?」
そう、視線が集まる原因は俺ではない。俺の腰に佩いている、血紅御前から貰った太刀のせいである。
……仕舞えないんだよね、コレ。
この世界の武器は、自身の神力や妖力と紐付いている。ので、普段なら体内に仕舞えるのだが……こやつ、どうやっても仕舞えない。
しかも周りからの俺の評価は、加護持ちに迷惑をかけた加護無し。事情を知らない者が見れば、俺は2人の戦利品をかっぱらい、それを見せびらかしてイキっているクソ野郎である。勘弁して下さい。
「可愛い莉乃ちゃんを置いてお見合いしたっちゅーんか。そら重罪や、皆から総スカン食らってもおかしないで?」
「はいはい、別に気にしねえよ。可愛くない莉乃ちゃんがここにいる時点で今更だろ」
「ああん!? どういう意味やハゲ!」
俺としては、泥棒扱いはともかく周囲の評価はマジでどうでも良いんだよな。
周囲に対して『天外と青春が血紅御前を撃退した』と喧伝するのは、個人的には大いに賛成だ。青春は五行家の面子を維持出来るし、天外もこれで味方を作りやすい状況となった。上々の滑り出しではなかろうか。
唯、その過程で俺との関係がバレる方がマズい。既に何か察してそうだし。いっそのこと、彼女を正式に献魂護身術の門下生にして、1つ上の先輩の庇護を賜った方が良さそうだ。
「おーい。何を黙っとんねんコラァ」
それにしても、まだ原作が始まったばかりだというのに考える事が多過ぎる。
攻略キャラクターが何人いるのかは知らんが、1番フラグが立ちやすそうなポジションにいるのは、よりにもよって妹の推しである青春。
青春ルートでは、彼は天外を庇って死んでしまう。そのフラグだけは、真っ先に折らなければいけない。
「そっちがその気なら、莉乃ちゃんにも考えるあんでー」
……まあ青春ルート自体、何も知らないんすけどね! なんせこちとら、バトルシステムしかカミカゴを知らないもので。
てか俺、乙女ゲームどころかギャルゲーも殆ど触った事無いんだよな。会話の分岐とか、どうやったら発生するんだ?
出来れば天外には、青春以外の奴と付き合ってもらい、愛と絆パワーでラスボスを倒してハッピーエンドを迎えてもらいたい。が、あくまで彼女の意思は彼女のもの。あまり介入はしたくないんだよな。
うーむ、結から青春ルートの概要ぐらいは聞いておくべきk
「莉乃ちゃんキーック!」
「ぐはぁ! 何すんだテメエ!?」
「気付けや! 莉乃ちゃんの気遣いに! 独りぼっちで寂しい青春を送りそうなおどれを、健気に支える可愛い女子との思い出作りに心躍らせろや!!」
「全部口から出てんだよなぁ欲望がよ! それなら文化系の部活に入りそうな男子でも狙っとけ肉食獣!」
「残ねーん、もう莉乃ちゃんズネットワークの一部となっとりまーす! 後は代陀羅クンだけやでー?」
「……ははっ」
「鼻で笑いよった!? 乗れやそこは! いきなり梯子外すなや!」
あの手この手で俺を揶揄ってくる茂木裏。ぶっちゃけ、有り難くはあるんだよな。クラスを上手く回してくれる陽キャポジは何人いても良いですからね。
だが、誰に何と言われようと俺の目的は変わらない。結の思い描くハッピーエンドを作って、事勿れ主義を貫く。それだけだ。